土 地球最後のナゾ「藤井 一至」(光文社新書)

人気ブログランキング

土と岩の違いは、有機物を含むかどうかと思っていたがそうではないんだそうです。
岩が一度水に溶けて再結晶化してできた粘土が無いと土とは言わないだって。
だから、金星や月には水が無い・無かったから土は無いという。

岩石の種類は腐るほど(石は腐らないが)あるが、土は12種類なんだって。バリエーションすくねぇ。
泥炭土、ポドゾル、チェルノーゼム、粘土集積土壌、永久凍土、若手土壌、黒ぼく土、強風化赤黄色土、ひび割れ粘土質土壌、オキシソル、砂漠土、未熟土
の12個。
東日本は火山灰のために黒ぼく土、西日本は若手土壌の2つに大きく分類されるそうです。

雨が多いと土壌は酸性になり農業には向かない=そのままでは日本は農業に向かない
雨が多い→酸性雨で酸性になる という論理ではなく、水が多いので葉っぱなどの腐食が進みそれに伴い有機酸が作られて酸性になるらしい。
農地に適しているチェルノーゼムは雨が少ないので、腐食が進まず中性であると。
石灰をまけば中性になるので、日本も農業にOKだということです。



2023年1月 追記

土がパサパサ」の件があったので、本書を読み直しましたので追記します。

腐植の多い日本の火山灰土は黒くなりやすい。腐植は光を吸収する炭素の二重結合(主に芳香族化合物)を多く含むためだ。炭素の二重結合を分解するには多くのエネルギーを要するにもかかわらずおいしくもないため、微生物たちに敬遠され、土壌に残存しやすい。
芳香族がいっぱいなんですね。
芳香族に関しては「我が国の腐植物質研究とその展望" "日本土壌肥料学雑誌」のシリーズが面白い。

乾いた腐植もまた、優れた撥水機能を持つ。突然の雨が乾いた土に降ると、森の土にうまく水が浸み込まず、斜面を雨水が流れ落ちて川に流れ込む。これが、豪雨の後、急激に川が増水する一因だ。
それでも、一度湿ってしまえば腐植も水となじむ。腐植の保水力は高く、スポンジのように水を吸収する。腐植と粘土を含む土壌が一体となって水を保持し、植物へ、そして下流の私たちへと少しずつ水を供給してくれている。森の土が緑のダムと呼ばれる所以である。
森のダムと呼ばれる所以はそこにもあるんですね。
どの記事か忘れたが、雨が降った時に木の表面で水を結構保持してくれるとありました。
また、長雨の後には緑のダムは逆の効果が出ると「ダムと堤防」という本に書いてありました。

乾燥地では、毎月の降水量よりも蒸発や植物の蒸散に必要となる水の量の方が大きい。すると、地下水が毛細管現象によって上昇し始める。乾燥地の地下水は塩化ナトリウム(食塩と同じ)などの塩辛い塩分を多く溶かしこんでいるため、地表面で水が蒸発すると、塩分を置き残す。
砂漠土が塩辛いという説明がされている。
言われれば、そうですねという内容です。過去海の底だった土地だと地下水に海水がふくまれるということも書いてありました。

熱帯雨林を語る本のたぐいには、豊かな森の下の土壌は薄く脆弱で、伐採すると不毛化す......ということが常套句のように書いてある。しかし、私の調べた限りでは、熱帯土壌が薄いというのは落葉層、腐植層に限った話であって、土そのものは深い。日本の山なら1メートルも土を掘れば岩石面に到達するが、熱帯雨林では数十メートルの深さまで土が続く。高温で湿潤な熱帯雨林では、活発な生物活動が岩石の風化を加速するためだ。
巨大な樹木は大量の栄養分を吸収するために、土へ多量の酸(水素イオン)を放出する。土だけで足りなければ、岩も溶かす。1年間に0.3ミリメートル厚の土ができる計算だ。これは、日本の3倍、世界平均の5倍だ。結果として深くまで風化した土壌が残る。風化は、粘土を生み出す母のような一面を持つが、程度が過ぎれば土から栄養分を奪い去る死神のようにもなる。
熱帯雨林の土(強風化赤黄色土)の話ですが、赤字の部分はよく聞きますね。
風化が進んで不毛になったら別の土(オキシソル)でしょうね。

強風化赤黄色土をチェルノーゼムや粘土集積土壌と比較すると、腐植と粘土が少ない酸性の表土を持つ痩せた土壌という評価となる。一番の問題は、酸性土壌には植物の根に有害なアルミニウムイオン(Al3+酸性で溶けやすい)が多いことだ。樹木は根から有機酸を放出することでアルミニウムイオンを捕獲し、無毒化することができる。しかし、乾燥地で生まれた作物の多く(コムギやトウモロコシ)は、見たこともないアルミニウムイオンを処理する能力が低い。地球で最も植物の生産力の高い東南アジアの熱帯雨林だが、それは酸性土壌を好む樹木には適していても、作物栽培には厳しい環境だった。
土と作物に密接な関係があることが良くわかる例ですね。
その土に適したものを栽培しないと、無駄に肥料などが必要となるということですな。

幸運なことに、日本には貧栄養なオキシソルがない。鉄やアルミニウムの酸化物ばかりの土は、不毛な土という烙印を押されているが、見方を変えれば、純度の高い鉄やアルミニウムの塊でもある。遠い異国の土は、スマートフォンにも使われている。高性能にして軽量なボディを可能にしているアルミニウムは、もとをたどればオキシソルだ。
・・・
アルミニウムなら日本の土にも多いが、寂しがり屋のケイ素とアルミニウムの結合を切り離すのは難しく、コストが高くつく。オキシソルは鉄さび粘土(ヘマタイト)も多く含むため、アルミニウムを工場で分離すると赤色の泥(赤泥)がゴミとなる。
インドネシアはボーキサイトの輸出国であると高校地理で習ったが、そういう理屈だったのですね。
地殻に最も含まれるケイ素も風化で失われてしまうのですね。
ケイ素は必須元素ではないが、それが少ないと骨の形成を促進もするそうだ。

調べていくと、日本の国ぼく土の発達は非常に速いことが分かった。平均すると1万年のあいだに1メートル、100年に1センチメートルの厚さの土ができる。
・・・
チェルノーゼムやひび割れ粘土質土壌も黒いが、黒ぼく土に埋蔵される腐植の量は、これらのドジョウの10倍だ。チェルノーゼムとひび割れ粘土質土壌が乾燥によって腐植の分解を免れているのに対し、黒ぼく土は年中湿潤で温暖な、日本生まれ、日本育ちだ。蒸し暑い夏、食べ物が腐りやすいのと同じ原理で、土の中の微生物も元気だ。なぜ土の腐植は分解されて亡くなってしまわないのか。
・・・
実験の結果、落ち葉は二酸化炭素に戻ったわけではなく、細かく分解された腐植やそれを食べた微生物の遺体へと姿を変えただけだと分かった。植物遺体がそのまま堆積する泥炭土とは違い、植物遺体がどんどん変質し、粘土と交わり(吸着)、黒の組織へ姿を変える。
なぜ日本で土壌が形成されるかが不思議だったのですよね。
簡単に分解され有機物は残らないのではないかと。
吸着されることで分解されずに残っているのですね。リンも吸着されてしまうが、有機物も吸着していたとのこと。

肥沃な土壌は、そう多くないということだ。地球にある12種類の土のうちで単純に肥沃と呼べる土はチェルノーゼムと粘土集積土壌、ひび割れ粘土質土壌くらいだ。
メモメモ。テストに出るよ(かどうは知らんが)。

リン採掘の特殊能力を持つ作物が多くない中で、救世主になってきたのがソバだ。マカダミアと同じように、ソバは根から有機酸(シュウ酸)を放出することでアルミニウムや鉄を溶かし出し、リン酸を吸収することができる。有機酸には有害なアルミニウムイオンを解毒する作用もある。この特性によって、風味豊かなソバは北海道や東北、信州の黒ぼく土地帯の特産物となった。リン鉱石の資源枯渇が起きた時も、ソバは切り札になる可能性を秘めている。
ソバがアルミニウムを無毒化することは「そば学」に書かれていました。
そして、リン酸を吸収できるとのこと。
どこで見かけたか忘れたが、ソバは品種改良が難しいらしく、それが難点ですね。
品種改良しやすければ大きくするなどして収量を増やせるのに。

日本の田んぼのことにも触れている。
・田んぼは扇状地・沖積平野に作られるので、未熟土に分類される
・酸性だが水を引くことで中性になる
 このことは付随的に次の利点がある
 ・カリウム・カルシウムなどが補給される
 ・鉄さび粘土が水に溶け、それに拘束されていたリン酸イオンが解放されてイネが吸収できる
・連作障害がおきない
 この原理はこちらに書いていることと同じ

直接関係ないが、水田に浮かぶラン藻が窒素を固定化してくれるそうだ。

土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて
藤井一至
光文社
2018/8/17

この記事へのコメント