安田浩一氏の話は学校で教えてはならない(誤りがあるので)

人気ブログランキング

学校では教えてくれない差別と排除の話」を読みました。

Amazonのレビューを見て知ったが、以前読んだ「ネット右翼の矛盾」と同じ安田浩一氏が著者とのことなので、重複する指摘はここでは書きません。

外国人労働者


外国人労働者、特に外国人研修制度について触れています。
日本人と同じ法律が適用されるのだが、守られず、低賃金・長時間労働の実態があると書いています。
それについて、著者が言う通り是正されるべきとは思います。

渡航費用と補償金を借金して払い、派遣先で首になったり止めたりした場合には、その補償金が没収されてしまうため、労働環境が悪くてもやめられないそうです。
もちろん、日本人の雇用主・斡旋業者にも問題があります。
しかし、上記の事情をみると、根本原因は、派遣元のブローカーだと思いますが。
止めて、別の派遣先に行く自由があれば、悪徳なところは自動的に淘汰されるでしょう。

外国人労働者に依存しているという話で、北海道について触れていました。
 北海道の水産加工も、外国人の働き手なしでは考えられません。ホタテの殻を取っているのも、エビの仕分けをしているのも、その多くは外国人です。
※北海道に「ほっかいどう」とルビが付いていました。小学生だって読めるのに、どういう了見だろうか?
私のイメージでは、漁師の奥さん・お母さんがやっているイメージだったが違うのね。
では事実確認をしてみましょう。

日経新聞によると、北海道の技能実習生の35%が水産加工品製造業に従事①。2018年に技能実習生には約1万人②
食品産業をめぐる情勢についてを見ると、2018年時点で外国人で飲食料品製造業に就いている技能実習生の割合は5割弱③
食品加工業と地域経済 ~北海道を中心に~を見ると、2004年で少し古いが、食料品製造業従事者は8万3千人弱④

1万人(②)×0.35(①)×2(③)/8万3千人(④)=8.4%

ふふっ、8.4%でその多くは外国人というのですね。
多くというのだから、半分以上、少なくても3割程度あると想像していましたが。
もちろん、無視できる数字ではありませんが、ミスリードを誘う記述です。
なお、日経の記事には、寮は個室、光熱費は会社持ちで月15万もらうベトナム人の話が書いてありました。



普天間、田んぼの中にあった発言はデマか?


作家の百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞は潰さないといけない」「普天間基地は田んぼの中にあった」などと発言しました。・・・そうです、ネット上で見られる沖縄に関するデマと彼の発言が、とても似ているのでした。
普天間のこと、デマとは言い切っていませんが、文脈からはデマと言っています。

1945/12/10(昭20)の普天間飛行場の航空写真です。
1945/12/10(昭20)の普天間飛行場
国土地理院からの引用
周りが田んぼかわかりませんが、家が無いのはわかります。
「俺の実家、田んぼしかねーよ」なんて比喩的表現をしますが、それと同じ文脈で使ったのならデマでも何でもありません。
そして、デマであるという根拠を安田氏は述べていません。

また、普天間基地の中に墓があって、許可が無いとお参り出来ないのに対し、米軍関係者は基地外を自由に移動できると書いていましたが、そんなの当たり前でしょう。
軍事基地に自由に入れるわけがない。民間用の空港だって一緒だ。
※普天間基地関係な、こちらに書いています。

沖縄県の基地依存度は5%に満たないのか?


沖縄の基地依存度について次のように書いています。
5%に満たないですよ」と現実を知らせると、誰もびっくりする。・・・1950年代までは50%くらいで、72年に沖縄が日本に復帰してからは15%くらいに落ちました。そして、現在は5.1%にまで下がっている。
安田さんよ、5.1%は5%に満ちていますが。。。

沖縄県のいわゆる基地依存度推移
※沖縄県の資料から引用。
5%程度というのは正しそうです。

 沖縄の場合、72年までアメリカの占領下にあり、本土のように高度経済成長などしていないことから、「国庫支出金」よりも使い道の自由度が高い「沖縄振興予算」として国からお金をもらうようになりました。つまり、沖縄が国からもらっているお金は、本来は各省庁からもらえる「国庫支出金」をまとめてもらっているような性格のものです。
 そのことを理解せず「沖縄振興予算」を本土の都道府県がもらっている「国庫支出金」と違った特別なお金だと勘違いしたうえで、「沖縄特権」などとデマを飛ばす人たちがいます。自分らの無知や不勉強を世にひけらかしているようなものですね。

Wikipediaによると高度経済成長期は、1954年12月~1970年7月で、72年の復帰までの期間がすっぽり含まれます。

国土交通省の「実質GDP、実質経済成長率の推移」と「戦後沖縄の経済開発振興政策の変遷とその課題」をもとグラフを作りました。
高度経済成長期・沖縄本土復帰までの沖縄と本土の経済成長率積算
経済成長率の観点だけを見た場合、沖縄の方が成長していたことになります。
成長した分は、あぶく銭として使って、資本投資に使ってこなかったということでしょうか。

参考までに、日米両政府援助の推移(1957年度~1971年度)を付けておきます。
日米両政府援助の推移(1957年度~1971年度)
※上記、戦後沖縄・・の資料から引用
食べ物を援助して、畑の作り方を教えなかったという援助と同じ感じのようだ。
自由度の高い「沖縄振興予算」をもらうようになって久しい現在でも、状況が変わっていないというのは、民間の企業家意識が足りないのかな?

「沖縄振興予算」についてだが、「国庫支出金」よりも自由度が高いだけで、特別多く貰っているわけではないと読めます。
では、事実を見ていきます。
平成29年度沖縄振興予算についてを見ると、平成29年には、3150億円とあります。
総務庁統計局のページによると、平成29年の沖縄県の人口は144万人。人口が141万人でほぼ同じである滋賀県と財政状況を比較してみましょう。

平成29年沖縄県予算
平成29年沖縄県予算

平成29年滋賀県予算
平成29年滋賀県予算

上記をもとに、主だったところを比較してみました。
沖縄県と滋賀県の平成29年歳入比較
これから、わかること
・消費税収入がほぼ同じだが、沖縄の県税が少ないのは、事業税が少なく、所得も少なく貯蓄が少ないだろうことが推察される
・沖縄振興予算の3100億円が予算上見えないので、各種歳入に散りばめられていると言える。
(沖縄県の特別会計合算は1184億円なので、そちらに計上されているわけでもない)
 地方交付税・国庫支出金・その他の差が大きく、その差は2610億円で、おおよそ沖縄振興予算に一致する。

このことから、特別なお金を貰っているというのはデマという安田氏の主張は破綻しております。
「自分らの無知や不勉強を世にひけらかしているようなものですね。」そのままお返ししましょう。

基地依存度5%の話に戻りますが、そもそも、この数字の算出の仕方が適切なのか?
基地依存度は、米軍基地だけのことを指していて「軍用地料、軍雇用者所得、米軍等への財・サービスの提供」のみが含まれます。
県民総所得4兆5千億円の5%は2250億円で、3100億円の沖縄振興予算を含まれていないのは確実です。
それを加味すると余裕で10%超えます。その他関係支出を積み上げるとどの程度になるのでしょう。
米軍だけでなく自衛隊もありますから、本当の基地依存度はどの程度か?

僕は、「沖縄タイムス」と「琉球新報」の記者に、こう問いました。「なぜ、米軍基地のことばかりかくのか?」と
「何を取材していても、最後は米軍基地に行きついてしまうからです」
彼らはそう答えました。経済の取材をしていると基地にたどりつく。
などと書いています。
米軍基地依存度が5%しかないのに、経済の話でも全部米軍基地にたどりつくのですね。
おかしいな~。

色々デマと決めつけていますが、かな~り怪しい話ばかりです。
ということで、こんな話は、学校で教える話ではありません(こういう人に騙されちゃだめだよ、と反面教師として教えるなら話は別だが)。
学校では教えてくれない差別と排除の話
安田浩一
皓星社
2017/10/10

この記事へのコメント