香港の憲法(香港特別行政区基本法)

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外国の憲法を読んで面白いと思ったところを紹介します。
第4回は、香港です。
香港は香港特別行政区基本法というのが憲法に相当するものになります。

香港ポストに日本語訳があります。そこからの引用となります。

見出し
致命的欠陥
面白い条項
中国のあり得ない物言い



致命的欠陥

第17条 香港特別行政区は立法権を享有する。

香港特別行政区の立法機関が制定した法律は、全国人民代表大会常務委員会に報告し、記録しなければならない。この記録は当該法律の発効に影響しない。

全国人民代表大会常務委員会は香港特別行政区基本法委員会に意見を求めた後、香港特別行政区立法機関が制定した法律が本法が定めた中央の管理事務および中央と香港特別行政区との関係についての条項に合致しないと認めた場合、その法律を差し戻すことができるが、改正はしない。全国人民代表大会常務委員会によって差し戻された法律は直ちに失効する。当該法律の失効は、香港特別行政区の法律が別に規定したものを除いて遡及力を持たない。
香港政府が法律を作っても、中国政府が認めないものは施行されないと。
都合が悪い法律(普通選挙など)は、今の中国政府が存続する限り無理ってことですね。

第18条 香港特別行政区で実施される法律は、本法と本法第八条に規定されている香港の現行法律および香港特別行政区の立法機関が制定した法律とする。
・・・・・
全国人民代表大会常務委員会が戦争状態を布告あるいは香港特別行政区内で香港特別行政区政府が統制できない国家統一および安全に危機をもたらす動乱が発生して香港特別行政区が緊急事態に突入することを決定した場合、中央人民政府は関連する全国規模の法律を香港特別行政区で実施する命令を発令することができる。
この条項はダメでしょ。
例えば、香港のデモを「国家統一を損なう動乱」と認定すれば、香港の法律を停止できる。しかも、その認定するのは中国政府。

第45条 香港特別行政区行政長官は当地において選挙または協議で選出され、中央人民政府から任命を受ける。

行政長官の選出方法は香港特別行政区の現実の状況と順序に従って漸進するという原則に基づいて規定し、最終的には広汎な代表性をもつ指名委員会が民主的手続きによって指名し、普通選挙で選出するのが目標である。

行政長官の具体的な選出方法は、附属文書1「香港特別行政区行政長官の選出方法」に規定する。
第68条 香港特別行政区立法会は選挙によって選出される。

立法会の選出方法は、香港特別行政区の実情と順序に従って漸進するという原則にもとづいて規定し、最終的に全議員を普通選挙で選出することを目標とする。

立法会の具体的な選出方法と法案、議案の決定順序は、附属文書2「香港特別行政区立法会の選出方法と決定順序」に規定する。
これを改定するために、香港のデモはあったのでしょうね。
香港政府が仮に改正を認めたとしても、第17条で失効する。
デモで何とかしようとしても、第18条で潰される。
詰んでいます。香港返還時に最初から普通選挙を導入しなかったのがダメでしたね。
天安門事件の後だったにもかかわらず、なぜこんな条項にしてしまったのだろう?

附件1 香港特別行政区行政長官の選出方法
7、2007年以降、各期行政長官の選出方法を修正する必要が出た場合、立法会全体議員の3分の2の賛成と行政長官の同意が必要であり、同時に全国人民代表大会常務委員会に報告して批准を受けなければならない。

附件2 香港特別行政区立法会の設立方法と表決手順
3、2007年以降の立法会の選出方法と表決手順
2007年以降の香港特別行政区立法会の選出方法と法案、議案の表決手順を本附件の規定に従って修正する場合、立法会全体議員の3分の2以上の賛成で採択され、行政長官の同意を得た後に全国人民代表大会常務委員会に報告されなければならない。
普通選挙に変更するには、行政長官というハードルを越えなければならず、その後に、第17条の中国政府の了承が必要。
こりゃ無理ですね。

第158条  本法の解釈権は全国人民代表大会常務委員会に属する。
第159条 本法の修正権は全国人民代表大会に属する。
憲法の解釈、修正ともに中国政府に権限がある時点でアウトですね。

第14条 中央人民政府は香港特別行政区の防衛を管理し、その責任を負う。

香港特別行政区政府は香港特別行政区の社会治安を維持する責任を負う。中央人民政府から派遣されて香港特別行政区に駐屯する軍隊は、香港特別行政区の地方事務には干渉しない。香港特別行政区政府は必要に応じて社会治安の維持と災害救助のために、中央人民政府に駐留軍の出動を要請することができる。

駐留軍は全国的な法律を遵守すると同時に、香港特別行政区の法律も守らなければならない。
デモの最中、香港島の対岸に軍が待機していたそうだ。
この条項の通り、香港政府は「治安の維持」を目的に中国軍を引き入れることができるのですね。
「地方事務には干渉しない」とか書いているが、第18条と組み合わせれば、何でもござれですね。

面白い条項

第109条 香港特別行政区政府は必要な経済、法律環境を整え、香港の国際金融センターとしての地位を維持する。
第112条 香港特別行政区は為替規制政策を実施しない。香港通貨は自由に兌(だ)換できる。外国為替、金、証券、先物取引などの市場を引き続き開放する。

香港特別行政区政府は資金の流動と出入りの自由を保障する。
香港を金融センターとして維持するために、自由が必要であることは認識していたようだ。
中国政府の法が、第109条に反することは明白だが、憲法の解釈権は第158条にある通り、中国政府にあるので、憲法違反だと言ったところで無駄。

第61条 香港特別行政区の主要な政府職員は、香港に連続して十五年以上居住し、外国の居留権を持たない香港特別行政区の永住民の中の中国公民がその任に当たる。
第99条 香港特別行政区の各部門の公務員は、香港特別行政区の永住権を持つ住民でなければならない。本法第101条で規定される外国籍公務員、あるいは法律に規定されている一定の職級以下の者はこの限りではない。
日本にもこのような条項が欲しいね。

中国のあり得ない物言い

中国のプロパガンダ新聞である人民網に香港に関する中国報道官の発言が載っています。
瀬戸際で踏みとどまり、香港地区と中国への干渉を直ちに止めるよう英側に忠告
この発言にツッコミをしましょう。

「中英共同宣言」における香港地区に関する基本方針・政策は中国側の一方的な政策表明であり、英側への約束ではないし、ましてやいわゆる国際的義務ではない。
「中英共同宣言」については、こちらをご覧ください。

以下は、香港特別行政区基本法の前文です。
国家の統一と領土の保全を維持し、香港の繁栄と安定を保持するため、また香港の歴史と現状を考慮して、香港の主権回復にあたっては、中華人民共和国憲法第31条の規定、また「一つの国家、二つの制度」の方針に基づき、香港では社会主義の制度と政策を実施しないことを国家は決定した。

国家の香港に対する政策の基本的方針は、中英共同声明の中で明らかにしている。
このように書いてありますが。
そして、5条には
第5条 香港特別行政区では、社会主義制度と政策を実施せず、現行の資本主義制度と生活方式を五十年間維持する。
ともあります。

「中英共同宣言」における香港地区に関する基本方針・政策は中国側の一方的な政策表明であり、英側への約束ではないし、ましてやいわゆる国際的義務ではない。
大いなる誤り。「中英共同宣言」によると次のようにあります。
八、本共同声明は批准を受けなければならず、批准書交換の日から発効する。批准書は一九八五年六月三十日以前に北京で交換されるものとする。本共同声明とその付属文書は同等の拘束力を持つ。

一九八四年十二月十九日、北京で調印、中国語と英語で二部作成され、ともに同等の効力を持つ。
これのどこが、中国の一方的な政策表明だ。

1997年に中国が香港地区に対する主権行使を回復したことに伴い、「中英共同宣言」の定める英側と関係する権利及び義務はすでに全て履行を完了した。
これは誤りですね。
三、香港イギリス政府は、「共同声明」発効の日から一九九七年六月三十日まで、期間が二〇四七年六月三十日以前の新規土地契約を許可することができる。当該地の借地人は追加借地料および名義借地料を一九九七年六月三十日まで納めなければならない。同日以降は、追加借地料を納める必要はない。ただし、同日の当該地の土地評価額の三%を毎年、納めなければならない。その後は、土地評価額の変化に応じて調整する。
2047年まで借地料を受け取る権利が残っています。
第11条 中華人民共和国憲法第31条に基づき、香港特別行政区の制度と政策は、社会・経済制度、住民の基本的権利と自由の保障に関連する制度、行政管理、立法および司法の制度を含め、いずれも本法の規定に基づくものとする。香港特別行政区立法機関が制定するいかなる法律も、本法に抵触してはならない。


ちなみに中華人民共和国憲法第31条は以下です。
第31条 国家は、必要のある場合は、特別行政区を設置することができる。特別行政区において実施する制度は、具体的状況に照らして、全国人民代表大会が法律でこれを定める。

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