元役人が言うダムの効果は理解するが、変な主張も多々あり

ダムと堤防」を読みました。

熊本の川辺川ダムの話もあったので読んでみた次第です。

読者に解ってもらおうという意思が読み取れない本でした。
高水敷(こうずいじき)とか何の説明も付けず使っているのです。
河川敷のように普段は水が浸かっていない所をさすのですが、普通の人は何のことかわかりませんよね。
Amazonのレビューでも出典が書かれていないとか色々書かれていますね。

切れない堤防は無い、堤防を高くすると決壊した時の被害はより大きくなるという主張には同意しますが、
おかしなことも書いてあったのでそれを紹介します。

河床の高さ

我が国の平野部の河川は、そのほとんどが世界でもあまり類を見ない天井川となっている。
ほう、そうなのね。知りませんでした。
数が書いていなかったので、調べました。

Wikipediaの「日本の天井川」を見ると240、「日本列島における天井川の分布とその成因」を見ると358とのこと。
1級河川で河川コードが振られている河川だけでも2万以上あります。
平野部の河川が数パーセントしかないってことはあり得ないので、主観でものを言っていますね。

それは置いといて、天井川であると支流側の排水が間に合わず、本川から越水しなくても氾濫するというのは、そうなのでしょう。

この本に限らず、河床低下を問題にしているのが理解できない。
橋などがえぐれてしまうのを問題にしているようだが、そこピンポイントで補強すれば、堤防嵩上げする必要が無くなって良いと思うのだが。

この本では、ダムと同じ効果を上げるには、とてつもない金をかけて堤防の嵩上げをしないとダメだと言っている。
そして、堤防を高くすればするほど、決壊した時の被害は大きくなると。
それは理解するが、河床を下げようとしないことに理解ができない(堤防低くなれば決壊した時の被害は小さくなるし)。
治水は何かやれば終わりではないと著者は言っているので、河床を下げることを続けることは矛盾しないと思う。
※ダムがいらないと言っているわけではない。矛盾しているから指摘しているだけ。



緑のダムは意味が無い?

しかし、森林大の場合、表層土は厚く事前の降雨で飽和しているので※1、そこからの地下水流量は森林小の場合の表層土が薄い場合より遥かに大きいと考えられる。したがって、河川流量は表層土の厚い森林大の場合の方が森林小の場合より有意に大きくなる※2
すなわち、「緑のダム」の治水効果はマイナスで、大洪水時には、森林大の方が洪水ピークは大きくなる。
ダムの機能は”洪水の時に水を貯め、渇水時に水を補給する"ものであるが、・・・緑は、一般に信じられているダムの機能とは逆の働きをする。
確かに、緑のダムにはピークを調整することは出来ないが、この主張はどうだろうか?
※1 長雨の後で集中豪雨が来ることもあるでしょう。その場合は飽和していると言えるだろうが、それを大前提にするのはおかしい。
   本書の前の方で、著者は日本の洪水はヨーロッパとは異なり、短期間に一気発生する洪水だと言っている。
   必ずしも飽和しているとは限らない。
※2 全く理解できない。なぜ、「表層地下水流量=河川流量」となるのだ!あり得ない。

「※2」のところが、全くの誤りなので、その後の主張も大いに疑わしいと言う話になる。

■森のダムの効果
・土壌流出を減らす
 ⇒洪水の量を減らす
  日本の川では、洪水時に流量の3割が砂・泥と著者は前の方で書いている。
・地下水量が増える
 「表層地下水流量=河川流量」とアホな事を言っているが、表層地下水流量が増えれば、深層の地下水量が増えるのは自明。

黄河断流が上流に植林されたことにより発生したという福嶌義宏氏の説に賛同し、緑のダムを下げようとしている。
福嶌義宏氏の「黄河断流の原因解析」を見ると、2000年、2001年の断流日数ゼロという結果に説明がつかないのですけど。。。
1999~2000年にかけて、植林したのを伐採したのでしょうか?

ちなみに、著者が言っている緑のダムにピーク調節機能が無いことについては賛同する。
そのため、ダム・堤防強化・河床を下げるなどが必要であることはわかる。

ダムと堤防: 治水・現場からの検証
竹林 征三
鹿島出版会
2011/9/7

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