なぜ憲法解釈変更が許されないのか?
『「法の番人」内閣法制局の矜持』を読みました。
本の副題は「解釈改憲が許されない理由」です。
この副題が目にとまり読んでみた次第です。
結論を先に書くと「解釈改憲が許されない理由」は書かれていません。
Amazonのレビューを見るとえらい評価が高いのにびっくり。
内閣法制局がどんなところかわかったので、それは良いが、副題に対しての答えがないので、私なら☆一つですわ。
内容に入る前に著者を紹介します。
阪田雅裕氏:弁護士資格も持っている元役人で、大蔵省・国税庁を経て内閣法制局に異動となり法制次長(事務方トップ)になった人です。
川口創氏:日弁連の憲法委員会副委員長。
この二人の対談本というか、川口氏が阪田氏に質問をするという本です。
内閣法制局のことを説明していて、各省庁からの出向の人で構成されていて、それぞれ2・3人だす。
出向者は出向元から出される法律案が、他の法律に矛盾しないかなどのチェックをする、QA対応するというのが内閣法制局の仕事だそうです。
阪田氏は、大蔵省・国税庁畑の人なので、内閣法制局でもそれ関係をやっており、法制次長をやった時もPKO法案が出来た後で、安保関係の話は詳しく知らないそうだ。
でも、この本は半分以上を安保関係に費やしている。
不適格者に質問をするということ自体、この本の企画おかしいと思いながら読んだ。
日本の法律について面白いことが書いてありました。ベトナムの司法大臣が日本の法律が加除式(追加削除する方式)であることに感動したらしい。
そう言われると、アメリカ・台湾憲法は追記式で、後から出てくるもので前に出たのを打ち消しているのです。
同じことに対して追記・追記・追記したら何が何だかわからなくなる。
アメリカで弁護士が多いのもこれが理由だとか。
でも、なぜ憲法違反であるか言っていない。
また、次のように言っています。
だが憲法の枠内というのを最終的に決めるのは、行政府たる内閣ではなく、裁判所だ。
一つ例をだしましょう。
「憲法の枠内」がA・B・Cの集合だった時、今まではAだと解釈していた。
でも、Bに解釈変更します、というのは「憲法の枠内」だ。
AからDにするならば枠外なので、違憲と言ってよいでしょう。
憲法解釈について平成16年6月に国会で質問している人がいました。
それに対する回答がここにあります。
阪田氏の経歴を見ると、内閣法制次長をしているときの政府答弁です。これに内閣法制局が絡んでいないとは全く思えず、内閣法制次長であった阪田氏が知らないはずがない(どこかの省庁個別の案件ではないから)。
しかし、阪田氏はこの件を全く本の中で触れていない。
あからさまにおかしい。この時の政府の回答を引用します。
だが、その後ろの緑字の部分が違う。
もとの憲法解釈がなされた時の社会情勢と今を比べ、解釈変更が妥当となったなら良いと言っている。
この質問のなかで、過去の憲法解釈変更があるのか聞いている。
その回答をまとめると以下となる。
・靖国神社参拝が違憲か・合憲かの判断を下せていなかったが、津地鎮祭判決の結果から、合憲の判断に変更した
・警察予備隊/保安隊のつながりから、自衛官は文民としていたが、文民に当たらないと変更した
なお、己の主義主張のために、他人の議論を抑圧するのは憲法違反です。
「法の番人」内閣法制局の矜持
阪田 雅裕、川口 創
大月書店
2014/2/20
本の副題は「解釈改憲が許されない理由」です。
この副題が目にとまり読んでみた次第です。
結論を先に書くと「解釈改憲が許されない理由」は書かれていません。
Amazonのレビューを見るとえらい評価が高いのにびっくり。
内閣法制局がどんなところかわかったので、それは良いが、副題に対しての答えがないので、私なら☆一つですわ。
内容に入る前に著者を紹介します。
阪田雅裕氏:弁護士資格も持っている元役人で、大蔵省・国税庁を経て内閣法制局に異動となり法制次長(事務方トップ)になった人です。
川口創氏:日弁連の憲法委員会副委員長。
この二人の対談本というか、川口氏が阪田氏に質問をするという本です。
内閣法制局のことを説明していて、各省庁からの出向の人で構成されていて、それぞれ2・3人だす。
出向者は出向元から出される法律案が、他の法律に矛盾しないかなどのチェックをする、QA対応するというのが内閣法制局の仕事だそうです。
阪田氏は、大蔵省・国税庁畑の人なので、内閣法制局でもそれ関係をやっており、法制次長をやった時もPKO法案が出来た後で、安保関係の話は詳しく知らないそうだ。
でも、この本は半分以上を安保関係に費やしている。
不適格者に質問をするということ自体、この本の企画おかしいと思いながら読んだ。
日本の法律について面白いことが書いてありました。ベトナムの司法大臣が日本の法律が加除式(追加削除する方式)であることに感動したらしい。
そう言われると、アメリカ・台湾憲法は追記式で、後から出てくるもので前に出たのを打ち消しているのです。
同じことに対して追記・追記・追記したら何が何だかわからなくなる。
アメリカで弁護士が多いのもこれが理由だとか。
憲法解釈変更は許されないのか?
Q:憲法改正の国民投票にかけるとういことですね。それをしないで解釈変更でというのは邪道です。このように、憲法解釈変更は憲法違反だと言いきっています。
A:そうれは、それこそ憲法違反、立憲主義に反する行いです。
でも、なぜ憲法違反であるか言っていない。
また、次のように言っています。
憲法規範というのは、一内閣がこうしたいと思ったからといって変えられる性格のものではない。憲法の枠内でどの内閣も動くのでなければ立憲主義は成り立たないわけですから、気に入らないから俺たちはこう解釈するということはできないということです。この主張は一理あります。コロコロと解釈が変わるのはよろしくない。
だが憲法の枠内というのを最終的に決めるのは、行政府たる内閣ではなく、裁判所だ。
一つ例をだしましょう。
「憲法の枠内」がA・B・Cの集合だった時、今まではAだと解釈していた。
でも、Bに解釈変更します、というのは「憲法の枠内」だ。
AからDにするならば枠外なので、違憲と言ってよいでしょう。
憲法解釈について平成16年6月に国会で質問している人がいました。
それに対する回答がここにあります。
阪田氏の経歴を見ると、内閣法制次長をしているときの政府答弁です。これに内閣法制局が絡んでいないとは全く思えず、内閣法制次長であった阪田氏が知らないはずがない(どこかの省庁個別の案件ではないから)。
しかし、阪田氏はこの件を全く本の中で触れていない。
あからさまにおかしい。この時の政府の回答を引用します。
前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。赤字の部分は阪田氏と同じですね。
このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えられるが、いずれにせよ、その当否については、個別的、具体的に検討されるべきものであり、(二)のお尋ねについては一概にお答えすることは困難である。
だが、その後ろの緑字の部分が違う。
もとの憲法解釈がなされた時の社会情勢と今を比べ、解釈変更が妥当となったなら良いと言っている。
この質問のなかで、過去の憲法解釈変更があるのか聞いている。
その回答をまとめると以下となる。
・靖国神社参拝が違憲か・合憲かの判断を下せていなかったが、津地鎮祭判決の結果から、合憲の判断に変更した
・警察予備隊/保安隊のつながりから、自衛官は文民としていたが、文民に当たらないと変更した
憲法改正に関する意見
憲法について、いかなる条文の変更も許さないという護憲の立場も問題だと思います。・・・しかし、日弁連などでそういうシンポジウムを提案すると、改憲につながると取り上げてもらえない。改正が必要かどうかを議論することは全く問題ないと思うのですが、あまりにも姿勢が硬い
「時代が変わった」ならば、時代遅れの法律は憲法にのっとり国会で改正されます。どうしてもご本尊というべき憲法だけが、デュープロセスの例外になるのでしょうか。これに関しては至ってまともな主張です。
なお、己の主義主張のために、他人の議論を抑圧するのは憲法違反です。
「法の番人」内閣法制局の矜持
阪田 雅裕、川口 創
大月書店
2014/2/20
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