正しい懸念は正しい情報から。鈴木宣弘東大教授、違います?

シリーズとなっている鈴木宣弘・東京大学教授の記事へのツッコミです。
今回は『コメ生産・流通「囲い込み」の懸念』です。
懸念があると主張するのは良いですが、正しい情報をもって主張しましょう。

種子法・種苗法に関する間違いの数々

種苗法の改定で、次の流れが完成した。国・県によるコメなどの種子の提供事業をやめさせ(種子法廃止)、その公共種子(今後の開発成果も含む)の知見を海外も含む民間企業に譲渡せよと命じ(農業競争力強化支援法)、次に、農家の自家増殖を制限し、企業が払下げ的に取得した種を毎年購入せざるを得ない流れができた(種苗法改定)。
のっけから飛ばしていますね。
①種子の提供事業をやめさせた?
 止めさせていません。現に例えば青森県は続けると言っています。こちらを参照のこと。

②公共種子(今後の開発成果も含む)の知見を海外も含む民間企業に譲渡せよと命じたか?
 これもそんなことは命じていません。「種苗の生産に関する知見」の提供を促進しましょうと言っているだけで、種子開発の知見だったり、種子の権利を譲渡しろとは言っていない。
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③企業が払下げ的に取得した種を毎年購入せざるを得ない流れができた?
 「払下げ的に取得した種」とは、②のことを指しているのでしょうが、そもそも、種の権利を低価格で譲渡せよとは言っていないので、これは誤り。
 そして、一般品種であれば好きに自家増殖できるので、企業から買いたくない人は買わないで一般品種を育てろという話。
 人の褌で相撲を取るな!
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種苗法改定による育種企業の権限強化と農家の自家増殖制限、それに、コメ検査の緩和は、企業が主導して、種の供給からコメ販売までの生産・流通過程をコントロールしやすい環境を提供する。種を握った種子・農薬企業が種と農薬をセットで買わせ、できた生産物も全量買い取り、販売ルートは確保するという形で、農家を囲い込んでいくことが懸念される(印鑰氏の模式図参照)。
前提が間違っている(育種企業の権限強化ではなく、育種権不当制限の是正。また、育種者は企業であるとは限らない。個人も26%いる。こちらを参照)ので、それから導き出される主張も誤っている可能性が高いと言えるでしょう。
JA/政府・自治体などの囲みこみが良く、一般企業がだめである理由は何でしょう?
GAFAなどが個人情報をもって囲い込んでいるが、マイナンバーで政府は信用できないと言うのと矛盾しませんか?

生産から消費までのトレーサビリティを確立すれば、表示義務がなくともゲノム編集食品などの不安な食品を地域社会から排除できる(「ゲノム編集ではない」という任意表示は可能であることが活路になる)。
ゲノム編集食品と通常の品種改良と科学的に区別できないのによく言いますわ。
通常の品種改良には放射線照射も含まれます。ゲノム編集は遺伝子を狙ってちょん切る、またはちょん切ったのを別のところにつけることを指しますが、放射線照射は完全にランダムです。
大いに煽っておいて、「不安」とか言う人は、科学者の風上に置けない例としてピッタリでしょう。
※ゲノム編集技術については、こちらを参照。

農産物検査法におけるコメ等級の見直しは、消費者サイドも求めてきた点である。「カメムシ斑点米(着色粒)に厳しい等級があり、着色粒が1000粒に1粒(0.1%)までなら一等米だが、それ以上になると二等米、三等米になってしまう。そうするとコメの価格が下がるため、農家は一等米をめざしてカメムシ防除に励むことになり、ネオニコチノイド系農薬が大量に使われる」(安田節子さん)。この見直しは評価できる。
この、安田節子さんという方を知らなかったので少し調べました。

安田節子氏の主張

見た目より安全を!斑点米と農薬とミツバチ大量死のブックレットのご紹介」に色々面白いことが書かれていたのでそれを紹介します。
日本の田んぼで一番多く使われている殺虫剤はカメムシ防除用です。今問題になっているネオニコチノイド系の農薬が大量に使われ、米にも残留しています。
カメムシは斑点米を作るとして、徹底的に防除されますが、殺されるのはカメムシだけでなく、田んぼの生物から鳥にいたるまで生態系を破壊します。特にミツバチの大量死はカメムシ防除の農薬が原因と農水省も認めています
ほう。
では「衆議院議員川内博史君提出ネオニコチノイド系農薬等に関する質問に対する答弁書」を見てみましょう。
政府として、ネオニコチノイド系農薬の使用と蜜蜂の大量死等との因果関係が科学的に確認されているとまでは認識していない。
農水省は政府の一機関であり、政府が認めていないので、農水省が認めているというのは誤りですな。

有機農業者の田んぼでは農薬は一切使用しないのに、カメムシが大量発生することはありません
来ました。断定しています。
農薬施用の異なる水田の畦畔におけるカメムシ群集の多様性」を見ると、農薬で一時的に減らせるが、傾向としては農薬使っている方がカメムシが多いようです(ただし、2箇所しか調べていないので、他の環境でも適用される一般的なものであるかは不明)。
傾向の話ではなく、断定できる理由を聞きたいところですな。

そして、「有機農業者の田んぼでは農薬は一切使用しない」と大ウソ(知らないはずはない。知らなかったらモグリ)をしれっと書いていますね。
有機農業で使用して良い農薬はこちらを参照のこと。
一切使っていない農家もあるだろうが、全体に適用される話ではない。

カメムシ防除は収穫量を減らすなどの実害はありません。
面白いことを仰りますな。千葉県の「イネクロカメムシの被害と防除対策」には次のように書かれています。
イネの被害としては、生育初期では葉の黄白色斑点、葉先枯れ、株の矮小、心枯茎が、幼穂形成期以降では出すくみ穂、白穂、不稔粒、屑米が発生します。
実害が無いというのは大間違いです。

日本の田んぼで一番多く使われている殺虫剤はカメムシ防除用です。
農薬の ADI 及び ARfD 値 一覧表(含、我が国における出荷金額)」にある殺虫剤の中で50億円以上(2010年)のを出荷額順に並べ、用途を書きました。
一般名日本名出荷額(億円)用途
Chloropicrinクロルピクリン90.5畑作物の圃場の土壌を消毒
Dinotefuranジノテフラン77.7カメムシ、ハエ、ハキリムシ、ガ
Acephateアセフェート76.1アオムシ・アブラムシ、畑作・花卉・茶など
Fipronilフィプロニル69.2キャベツ、ブロッコリー
Acetamipridアセタミプリド57.8野菜・果樹
Dichloropropene1,3-ジクロロプロペン51.5畑作物の土壌燻蒸
Imidaclopridイミダクロプリド50.1稲・野菜・果樹、アブラムシ・ウンカ
おっ!珍しく間違っていない。調べずに適当に言ってあっているのかどうか知りませんが。
まあ、「一番多く使われている」というのが、使っている農家の数が多い/単位面積当たりの使用量が多い/使用量の絶対量が多い/出荷額が多いなど、何を指しているかわかりませんが。

このブックレットの全文は、こちらで見られます。

ということで、安田節子氏の書いていることは、大間違いだらけです。
こんな全く信用のならない人の発言を引用する鈴木教授、お似合いです。

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