間違い探し超初級編に最適、山田正彦元農林水産大臣の本

売り渡される食の安全」を読みました(まずは1ページ半だけ)。

ちょっと煽るタイトルにしたが、ヒドイのなんのって。
まだ1ページ半で、この指摘量(誤り4か所、非常に不適切な記述2箇所)なのだが、このペースで読み終わるだろうか。

この本、AmazonのレビューでMAX★5個の評価で、平均4.5になっている。
いわゆる、情弱の人しか読まないのだろうか?
でも、Amazonのレビューにアクセスできるのだから、少なくともインターネットは使えている。
う~ん、世間一般の評価とは思いたくないな~。

安全・安心・安価に提供されることが種子法によって定められていた?

あまりにも当たり前でその意義はほとんど知らされていなかったが、私たちの生きる糧である米を、安心、安全に、しかも安価で提供することは、法律で定められていた。種子法という法律だ。
ぶぶー。全く違います。
種子法の正式名は「主要農作物種子法」ですが、そんなこと定めていません。
種子法は全8条、1600文字弱と短いものですが、山田氏は読んだことあるのだろうか?

稲・大麦・はだか麦・小麦・大豆の優良種子の生産・普及を図るための法律です。

目的外のため当たり前であるが、種子から育ててできた生産物については一切規定していません。
優良な種子を汚染された土壌にまけば安全でないものが出来るだろうから、米の安全な提供を定めたものでないことは明白だ。

そして種子が安価で提供されたとしても、米を消費者が安価で入手できるとは限らない。
米60kg当たりの生産コスト
上記表は「米の生産コストの現状 - 農林水産省」からの引用だが、種苗コストは平均で全体の5%未満。
種子は安価でも生産物が安価とは限らない良い例でしょう。

そもそも、種子を安価で提供することを明確にこの法律でうたってはいません。
種子を普及させるには、安価であった方が良いだろうが、十分普及したら安価に提供する必要はない。

そして、種子の安心ということには全く触れていないので、米の安心というのは全く持って関係ない。
なお、農業関連の法律で「安心」に触れているのは「養豚農業振興法」のみ。
※この養豚農業振興法だが、安全と安心を併記していて、個人的には頂けない。


種子法廃止に関して国会でほとんど審議されなかった?

ところが、この種子法が国会でもほとんど審議らしい審議もされず、新聞やテレビでも報道されないまま2018年4月をもって、廃止されてしまった。
馬鹿の一つ覚えのように、強行採決と言わなかったことは褒めてあげましょう。
ただね、何を根拠にこう言っているのでしょうね。主観?

日本経済新聞の「審議時間 1法案5時間 データで読む国会」によると、1本当たりの審議時間は5時間30分(衆議院)とのこと。
そして、しんぶん赤旗の記事によると、種子法の参議院での審議時間は5時間。

審議時間は平均ですが(朝日新聞によると、参議院の審議時間は衆議院の8掛けというのが慣例とのこと)。

あとは、審議内容ですね。

国会の議事録を見ると、野党が低レベルの質問していますな。
例えば、山田氏が民主党だった時の同僚でもある森ゆうこ氏の発言を紹介します。
だから、直接的には種子法の中には確かに知的財産を保護するというような項目はないと思いますけれども※1、それぞれの県における財政的な裏付けのある、言わば本当の基礎的な、本当の基礎的な研究、そして原種、原原種の維持、保存、そして新しい品種の開発というものが、言わば結果的に各地域における、そして我が国の知的財産権を守ってくることにつながった※2のであろうと、私はそのように認識をしているところでございます。
※1 短い法案なので、読めば知的財産権保護は全く関係ないことすぐにわかる。
 思いますレベルの理解度で議論しているとは恥ずかしい。
※2 「原種、原原種の維持、保存」は種子法には規定されていません。
 あくまでも、優良な原種及び原原種の生産・品質の維持を目的にしているだけ。
 関係無い種の保存を規定しているものではない。
 ましてや、優良な新品種の開発については全く触れていない。

安定した種子生産を目的とした種子法と、新品種開発の話をごっちゃに語っている時点でお話になりません。
こんなレベルでは、まともな審議はできません。
まあ、お門違いな話しかツッコむ事が出来ない内容だったのでしょう。

政府は民間の種子を全国に推奨して回ったのか?

政府は、種子法が民間の優良品種の普及をさまたげているとし、さらに、三井化学のみつひかり、日本モンサントのとねのめぐみなどを全国に推奨して回った。これらの品種は本文の中でも詳しくふれるが、F1品種と呼ばれる種だ。
ホントかいな、と「みつひかり とねのめぐみ site:go.jp」でググってみた。
※「site:go.jp」は検索対象を日本政府のページに限定するという意味。

出てきたのは「産地品種銘柄設」と国会の農林水産委員会議事録の「奨励品種」に関することぐらい。

■産地品種銘柄設について
農産物検査法に基づくものです。
農産物検査を行う産地品種銘柄について」をみると、「必須銘柄」「選択銘柄」について書かれている。
産地品種銘になったら生産者・輸入業者が検査を求めたら、「登録検査機関」は検査をしないといけない(と理解している)。
必須銘柄、選択銘柄の違いは、必須銘柄の場合、その県にある登録検査機関はその銘柄の検査体制を整えないといけないが、選択銘柄は任意。
ちなみに、登録検査機関はJA関連法人などが認定されている。

あくまでもこの制度は、公的に認証された機関による品質検査できるか、できないかの違いなので、推奨する・しないとは関係ない。
※産地品種銘への申請は育成権者ができて、それを登録するかは有識者などの意見を聞いて決めるらしい

参考までに「みつひかり」「とねのめぐみ」について調べてみる。
令和2年産産地品種銘柄一覧」によると「みつひかり」は選択銘柄で、「とねのめぐみ」は茨城県では必須銘柄で栃木・埼玉・千葉は選択銘柄になっている。

■奨励品種について
○柄澤政府参考人 今まさに委員御指摘のように、試験を行って、普及すべき優良な品種、いわゆる奨励品種に指定されますと、都道府県はその種子の増産や審査に公費を投入しやすくなるということから、都道府県が開発した品種は優先的に奨励品種になっておりまして、例えば稲で見た場合に、純粋な民間企業が開発した品種で奨励品種に指定されているものはございません。
 具体的な例を申し上げますと、例えば、委員も御指摘のみつひかりという品種について見ますと、一部の県で、奨励品種に指定するための調査の対象とされるところまでは行ったということはございますが、結果、奨励品種となっていないという事例がございます
○柄澤政府参考人 稲の種子の品質自体、決して劣るものではないと存じます。
 ただ、私どもの問題意識を申し上げますと、民間企業にとりまして、制度として、都道府県中心の制度になっておりますので、事実上、長い歴史の中で、都道府県の奨励品種になることが非常に困難だということは間違いない事実でございます。
※「第193回国会 農林水産委員会 第4号(平成29年3月23日(木曜日))」より引用
この参考人という方は、農林水産省政策統括官とのこと。
推奨していないし、推奨するとしたら、それは政府ではなく都道府県と言っているので「政府は~全国に推奨して回った」というのは間違い。

■「みつひかり」「とねのめぐみ」はF1品種?
三井化学のみつひかり、日本モンサントのとねのめぐみなどを全国に推奨して回った。これらの品種は本文の中でも詳しくふれるが、F1品種と呼ばれる種だ
「これらは~F1品種」と書いていて、それは複数形であり、前の文では「みつひかり」「とねのめぐみ」の2種しか出ていないので、両方ともF1品種であると山田氏は言っていることになります。
※F1品種についてはこちらを参照。

では、登録品種データベースを見てみましょう。
みつひかり 2003
この品種は,「MHA23」を母系,「リバース422」を父系とする交雑品種であり・・・
交雑品種とはF1品種のことです。

とねのめぐみ
この品種は、「どんとこい」に「コシヒカリ」を交配して育成された固定品種であり・・・
固定品種とかいているので、「とねのめぐみ」はF1品種ではありません。
※育成者権を見ると「株式会社ふるさとかわち」となっています。こちらの記事をみると、第三セクターである株式会社ふるさとかわちは、日本モンサントからライセンスを受けているそうです。

日本のF1品種は海外の多国籍企業によって生産される?

ところが今では、野菜の種子はほとんどが一代限りのF1の種子になり、大半が海外の多国籍企業によって生産されている。
正しくは「国内種苗企業の海外委託先」です。
こちらこちら参照。

種子価格は20倍になったか?

価格もかつて一粒2円ほどだったものが、今では40円から50円になっている。
まったくもって、あり得ない書き方しています。
種子の種類(コメ・ムギなど)が無く、かつ比較対象の時期も書かれていない。
昭和30年代のムギ一粒の値段と今の有機メロンの一粒を比較しているかもしれない。
そして、情報ソースも書かれていないので確認しようもないという、全くクソのような文章です。

調べるのも馬鹿馬鹿しいですが、やってみました。
先ずは、国内の種子市場の規模です(矢野経済研究所より引用)。


2014年から2019年でほとんど変わっていません。

長期的推移として「ばれいしょ原原種の配布価格の推移」というのを農林水産省が公開しています。
これによると、昭和32~34年で1kg当たり14.1円、平成26~30年で140円。
貨幣価値の変動を一切無視しても10倍でしかない。

最後にAmazonにおける野菜種子の小売価格を見てみましょう(農家向けに比べ少量のため大分高いでしょう)。
「F1種」で検索して1ページ目に出てきたもので、粒の数がわかるものを対象にし、1粒当たりの値段を出してみました。
※粒の数がレンジで書かれているものは、少ない数字を採用
20種類で、平均は14円、最高264円、最低1円未満です。
(見てみると、有機種子の高いことが良くわかります)



売り渡される食の安全
山田 正彦
KADOKAWA
2019/8/10

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