間違い探し超初級編に最適、山田正彦元農林水産大臣の本②

売り渡される食の安全」を読みました(やっとのことで4ページ読了)。
第1回はこちら
2回目(1ページ半~4ページが範囲)には、5カ所の間違いまたは不適切な記述がありました。

日本の米は、ほぼ100%が固定種か?

日本の国産ほぼ100%の伝統的な固定種子である米、麦、大豆を支配するために、種子法が廃止されたと私は考えている。
どう考えるかは個人の勝手ですが、正しいことをちゃんと書きましょう。

この本が出たのは2019年なので、2018年のデータで見てみましょう。
米・麦・大豆の生産量は以下の通り(単位は1000t)。
米:8,324
麦:907
大豆:253
※「平成29年度食料需給表(確定値)」より

この中の87%を占める米の作付面積を見てみましょう(厳密には作付面積と生産量に完全な相関は無いが傾向を見るだけなので、細かいところは無視)。
平成29年産うるち米(醸造用米、もち米を除く)の  品種別作付割合上位20品種
※米穀安定供給確保支援機構の「平成29年産水稲の品種別作付動向について」より引用

そして同じ米穀安定供給確保支援機構の「日本の在来稲とその現状」には次のようにある。
特に「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」「あきたこまち」はコシヒカリのF1品種であり、この直系品種だけでも作付割合の約6割を占めている。

8234 / (8324 + 907 + 253) * (9.4 + 8.9 + 7.0) / 100 = 22.0%

米・麦・大豆のうち、約2割はF1品種であり、ほぼ100%が固定種子というのは大間違い。


2021/02/23 訂正。
「登録品種データベース」によると「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」は固定品種であることが明記されている。
「イネ品種 データベース」によると「あきたこまち」はF1から作られたが、3代目以降で固定化されたとある。
そのため、「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」「あきたこまち」F1品種ではない(F1の子孫)。

作付面積トップ20を「イネ品種 データベース」で調べると「ゆめぴりか」「きむすめ」は固定品種でないことがわかった。
「ゆめぴりか」は「平成20年度における世代はF1A12代である」とあり、「きむすめ」は「2005年の世代は雑種第16代である」とあり固定品種ではない(F1でもないが)。
「ゆめぴりか」「きむすめ」の作付面積1.6%と1.3%
8234 / (8324 + 907 + 253) * (1.6 + 1.3) / 100 = 2.5%

先に書いた22.0%よりは1桁少ないが2.5%は固定種ではないので「ほぼ100%の伝統的な固定種子」というのは、どちらにしても間違い。


遺伝子組み換えの表示について

■遺伝子組み換えの安全性
農水省や消費者庁などの監督官庁は、「遺伝子組み換えの安全性は確保されている」と力説しており、市場に出ていくのは時間の問題だ。
そんなことは言っていなません。消費者庁のページには次のようにあります。
どうやって安全性を確保しているの?
日本で遺伝子組換え食品を利用するためには、
・「食品」としての安全性を確保するために「食品衛生法」及び「食品安全基本法」
・「飼料」としての安全性を確保するために「飼料安全法」及び「食品安全基本法」
・「生物多様性」への影響がないように「カルタヘナ法」
に基づき、それぞれ科学的な評価を行い、問題のないもののみが栽培や流通させることができる仕組みとなっており・・
まず、全ての遺伝子組み換え食品が安全であるなどとは一言も言っていない。
安全基準を満たしたものを栽培・流通させると言っているので、「満たさないもの=安全性が確保されていないもの」は栽培・流通させないと言っている。
そのため「遺伝子組み換えの安全性は確保されている」などと言っているというのは大間違い(公式には。どっかの良くわかっていない役人が口を滑らしたりしたことはあるかもしれないが)。

そもそも、山田氏も含めこういう界隈の人は根本的に「安全」というのを理解していない。
「安全」≠「リスクゼロ」 であることを理解していない。
メリットを超えるほどの許容できないリスクが無いことを「安全」というのだ。
自動車の安全基準ってあるが、安全基準を満たす(=安全)といっても、毎年数千人の死者がでる。

■ゲノム編集
先の文の後、以下が続きます。
買わなければいい、食べなければいい、と考えている読者もいるかと思うが、その表示制度までも現政権で変えられた。
ゲノム編集は単たる遺伝子の一部の切り取りに過ぎないので安全であるとして、何の表示もないままに今夏から流通させることになっている。
「ゲノム編集」=「遺伝子組み換え」と誤認させたい意図が感じられますね。
「ゲノム編集」≠「遺伝子組み換え」です。
既存の品種改良技術の中に、ガンマ線などの放射線を使って遺伝子を切り取るものがあります。
それと何が違うんだっていう話です。
ゲノム編集については、こちら参照。

■「遺伝子組み換えでない」の表示
遺伝子組み換え食品も、これまでは、5%以上の混入があるものは表示義務が課され、それ未満であれば「遺伝子組み換えでない」と表示できたが、23年から変更され、遺伝子組み換えでない大豆でできた納豆や豆腐などの表示が、事実上できないようになってしまった。
またいい加減なこと書いていますな。
消費者庁のページには次のようにある。
大豆及びとうもろこし以外の対象農産物については、意図せざる混入率の定めはありません。それらを原材料とする加工食品に「遺伝子組換えでない」と表示する場合は、遺伝子組換え農産物の混入が認められないことが条件になります。
2023年の変更前も、大豆・トウモロコシ以外は混入を認めていない。
そんな現状で、例えば「コイケヤポテトチップス」は「遺伝子組換えでない」と表示している。
ジャガイモの混入は防げるが、大豆・トウモロコシの混入は防げないから「事実上できない」のだ!って言いたいのかもしれません。
では、広島県の「『遺伝子組換え食品』の検査について」にある大豆の検査結果を見てみましょう。
平成30年度~令和2年度で23件の検査をしているが、5%未満が1件、不検出が22件となっている。
「事実上できない」のですね、ふ~ん。95%以上で不検出を実現できているようですが。

種苗法改正されると自家増殖が原則禁止になる?

自公による安倍政権は、「種苗法」と言う法律の改正案を次の国会に提出しようとしている。これも地味な法律の改定で、ほとんど注目されていないが、別名モンサント法案と呼ばれるものだ。自家増殖(採種)の原則禁止、つまり自分の畑や田んぼでとれた種を翌年使ってはいけない、・・
必要な説明を意図的だと思うが削っているので「全ての種が全ての人に対し永遠に自家増殖が原則禁止」と読み取れる。
正しくは「育成者権の有効期間中の登録品種の自家増殖(ただし、家庭菜園・研究目的などは除く)は許諾性」です。
種苗法改正についてはこちら参照
「モンサント法案」とアホなこと言っているのは誰だと調べると、以下3名がよく出てくる(敬称略)。
印鑰智哉
山田正彦
安田節子

笑えます。「農業競争力強化支援法の第8条4項」でウソをまき散らしている人達ですな。


売り渡される食の安全
山田 正彦
KADOKAWA
2019/8/10

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