鶏卵の国内自給率は96%だが、それを0%という大学教授

シリーズとなっている鈴木宣弘・東京大学教授の記事へのツッコミです。

我々は何を食べて生きたらいいんだ
というコラムが今回の対象です。
まあ、ヒドイもんです。

鶏のヒナは、ほぼ100%海外依存?

それに加えて、飼料の海外依存度を考慮すると、牛肉(豚肉、鶏卵)の自給率は現状でも11%(6%、12%)、このままだと、2035年には4%(1%、2%)と、信じがたい水準に陥る。さらに付け加えると、鶏のヒナはほぼ100%海外依存なので、それを考慮すると、実は鶏卵の自給率はすでに0%という深刻な事態なのである。
ほぼ100%というのならば、99.5%以上で四捨五入すると100%になる範囲だということですね。

では、農林水産省の「鶏の改良増殖をめぐる情勢」を見てみましょう。
種鶏の供給
卵の状態だと輸入している間に孵化してしまうし、ヒナの状態では輸送中のエサ・衛生確保など大変だし、ヒナをどうやって輸入しているかが、まず気になりました。
しかし、この図が答えを教えてくれています。
一つのつがいから何羽のヒナを産めるかわかりませんが、卵・ヒナで輸入するのに比べ極端に数を減らせるでしょう。
数が少なければ、空輸が可能となる。

話がそれてしまったので元に戻すが「採卵鶏96%、肉用鶏98%」が海外依存のため「鶏のヒナはほぼ100%海外依存」は大誤りです。
そして、そもそもの問題で、ヒナ自体国内で生産しているので「鶏のヒナ」も不適切。
「鶏のヒナの親の大部分は海外依存」「鶏のヒナの親の96%以上は海外依存」が正しい書き方だ。

親が海外から来ていれば海外依存だと言いたいのかもしれないが、ヒナを産み・育てる体制が国内に普通に存在するので、最悪は地鶏に切り替えれば良いという話。
海外産より、収量が減ると推察されるが、1/10などのオーダーにはならないだろう。

「だろう」では、説得力が無いので調べました。
農林水産省の「鶏の改良増殖目標(案)」には次のように書かれている。
卵用鶏については、外国鶏種の産卵能力と比較しても遜色はないものの、卵質等の面で外国鶏種との特色の違いをいかに示していくかが課題となっている。
卵質については、血が混じるとか、殻の厚さなどに幾分差があるとのこと。

養鶏学コーナー」「取扱鶏 | 株式会社ゲン・コーポレーション」を見ると、飼料要求率(必要な飼料の量)はほぼ同じ、育成率・生存率が1割程度国産が劣っているようだ。
※「養鶏学コーナー」は個人のページですが、用語なども載っているし、まとめられて良いです。おすすめ。

そもそも、「鶏のヒナはほぼ100%海外依存(実はそうではないが)」であるから、自給率0%ということ自体に意味は無い。
輸入国の多元化がされているか、輸入できなかった時の代替策があるかが大事なのだ。
鶏のヒナに関しては、国内種も継続的に開発されているし、親を育てる設備が整備されているので、生産性が多少減るが代替策はあるのだ。

原油の海外依存度は99.7%(これをほぼ100%と言うのだ!)で、ガソリンの自給率がゼロだから農業機械を使えず農業自給率ゼロと言ったところで意味は無い。
機械を使わない・EVを使えばよいという屁理屈を言うかもしれないので、農業に直結するリンを例にしましょう。

アメリカ地質調査所 (United States Geological Survey)でリンの産出量が公開されている。
そして、FAOには農業生産高がある。
この2つを合体した表を作りました。
リン産出高と農業生産高の世界シェア
ブラジル・インド・メキシコは農業生産大国でリンも産出するが足りない国ですね。
※リンは肥料以外に工業製品の原料になるので、あくまでも傾向を見るための表です
ウクライナ・カナダなど農業大国だがリンを算出しません。
ウクライナ・カナダはじめ、リンを算出しない国は、鈴木教授理論によると農業自給率0%になりますな(アホくさ)。

日本を鈴木教授理論における農業自給率100%にするには、日本の人口1億人以上虐殺して鎖国する必要がある。
さすが共産主義信奉者ですな。虐殺大好き。


2035年の鶏卵国産率19%の根拠は?

コラムでは、ヒナの海外依存度関係なく2035年に鶏卵国産率は96%から19%に減ると言っています(鈴木宣弘研究室の推計とのこと)。

※鈴木教授のコラムより引用

元データ出所は農林水産省と書いてあるが、農林水産省の何のデータをもとにしたかが書かれていない。
似たような記事が他にもあるが、それを見ても何なのか書かれていない。
そして、そのデータをもとにどのようなロジックで2035年の国産率を求めたかは、もちろん書かれていない(検証不可でゴミ記事ということだ)。

どの様に計算したら、鶏卵国産率が2035年に19%になるのだろうか。
2つのパターンで見ていきます。

■後継者有無から見てみる
2015年農林業センサスの「養鶏部門-販売目的の採卵鶏飼養羽数規模別統計」をもとに考えてみましょう。
2015年時点で後継者がいない割合は53%。20年後の2035年まで、ずっと後継者が見つからず廃業する割合が53%とすると、
96 ✖ (100 - 53)/100 = 45%
で、19%には程遠い。

なお、この統計は経営数ごとの後継者有無だけではなく、規模別の情報もある。
鶏の数で見ても後継者がいない割合は54%で大差ない。

そもそも、2015年の後継者無しという状態が2035年まで続くと仮定するのに無理があるにもかかわらず、19%にほど遠い。
以下を見て頂こう。
作付(栽培)延べ面積又は飼養頭羽数における法人経営体の占める割合(平成22(2010)年
※農林水産省の「担い手の動向」より引用
採卵鶏の法人経営割合は79.1%で水稲などに比べると格段に高い。
法人比率が高いということは、子以外の後継者が2015年以降に出てくる可能性が十分にあるということだ。

■農家の年齢から見る
養鶏部門-販売目的の採卵鶏飼養羽数規模別統計 」を見ると、採卵鶏を行っている人の総計は12260人(2015年時点)。
20年後に一般業種では引退しているだろう60歳以上の人は7934人。
96✖(1 - 7934÷12260) = 35%

これではないな。
では、2015年時点で50歳以上の人は9918人でどうだ。
96✖(1 - 9918÷12260) = 19%
ビンゴ!!これか

偶然合った可能性もあるが、もしこのロジックで出した結果をもって19%と言っているとすると常識を疑うレベルだ。
まず、2015年時点で50歳以上(2035年に70歳以上になる人)が全員引退するとしていることがおかしい。
採卵鶏飼従事者の人数と年齢(2015年)
70歳以上は約1/4(約4000人)もいるのに完全に無視するのはあり得ない。
ピークの65~69歳からの減少比率を2015年時点で50歳以上の人に当てはめると(90歳以上は0人と仮定)、約2500人が70歳以上で2035年も現役であることになる。
そうした場合は、96✖(1 - 7420÷12260) =39% となる。
また、新たにはじめる人を一切カウントしていないのも問題だ。

その他、自給率が高まると思われる要素を上げてみる
・一万羽未満飼育している場合の50歳未満の割合は2割だが、一万羽以上の場合は3割と高い
・採卵鶏の場合、約8割が法人経営であるため、外部から後継者を入れやすい
・年々大規模化、省力化している
・日本の農業生産性が海外と比較して相対的に高まる(人口増加による農産品の値上がり、農業輸出国の富裕化など)

これらを一切がっさい無視して19%とするのは、全くもってあり得ない。

飼料自給率を100%にすることは可能?

鈴木教授は、飼料自給率を加味すると物凄く自給率が低いから大問題だと言っている。

以下によると、2007年時点の飼料輸入量分を作るには、429万haの畑が必要とのこと。
 飼料自給率の現状と目標
※農林水産省の「飼料自給力・自給率の向上に向けた取組」より引用

そして、今の耕地は439万ha。
農地面積の推移
※農林水産省の「食料自給率目標と食料自給力指標について」より引用

今の耕地をほぼ全て飼料用に転用してやっと飼料自給率が100%になるのだ。
昭和40年からの耕地減少分の約160万haを全て耕地として復活させて飼料用にしても飼料自給率は50%にもならない。
この事実を言わずに、飼料も含めたら自給率が12%と言ったところで意味が無い。
どの道、飼料自給率は100%にできないのだから、何を捨てて・何を拾うかの議論が必要なのだ。

単に読者を煽るだけの農学部教授は不要だ。

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