間違い探し超初級編に最適、山田正彦元農林水産大臣の本③

売り渡される食の安全」を読みました(やっとのことで28ページ読了)

1回目2回目に続き3回目です。

米国の遺伝子組み換え農産物の作付面積は減ったのか?

世界の流れはこの2、3年で変わった。米国では遺伝子組み換え農産物の作付は減少して、有機栽培が年に10%の割合で、EUでは年に7%の割合で増えている。
面白いことを仰る。
では、ISAAA(国際アグリバイオ事業団)のISAAA Briefsをまとめたグラフを見て頂こう。
アメリカの遺伝子組換え作物 作付面積推移
主要3品目とは、大豆、トウモロコシ、菜種のことを指します。

理由不明だが2015年は減ったが、翌2016年には増えている。
この本は2019年8月出版なので、2017・2018年のデータを山田氏は見られなかったかもしれないが、2016年のデータは見られたはずだ。
どちらにしても、「米国では遺伝子組み換え農産物の作付は減少」は大間違い。

そもそも、100%に近づいているので、後は同じか減るぐらいしかならないでしょう。
もし、2014年→2015年で、93%から92%になったのだけをとらえて減ったと言ったのならば良識を疑うね(次の年増えたのを知っているはず)。

直接関係ないが、ISAAAのレポートを見ていたら以下を見つけました。
遺伝子組換え作物は、現在の15億ヘクタールの耕作地でより高い生産性を発揮できる土地節約技術であり、それによって森林破壊を防ぎ、森林やその他のその場の生物多様性保護区の生物多様性を保護するのに役立ちます。
ごもっとも。遺伝子組み換えが危険だ!と根拠なく騒ぐ人達は、こういうメリットは一切無視しているのでしょうね。

主要農作物種子法に関する数々の間違い

1回目にも種子法の話はしましたが、それと重複しない部分の間違いについて指摘します。
日本の主要農産物である米、麦、大豆の品質をたもち、それらの優良な種子を安定的に生産し、公共の財産として供給していくことを、国が果たすべき役割として定めている
はい。違っています。
国ではなく都道府県の役割として定めています。
※種子法の条文は「主要農作物種子法」を参照のこと。

最大の特徴は栽培用の種子を採取するためにまく種子となる「原種」と、原種のおおもとである「原原種」を栽培・生産し、一般の稲作農家へ供給していくことを書く都道府県に義務付けていることだ。
大間違いです。
「一般の稲作農家へ供給」は義務付けていません。
義務付けているのは、「原種」「原原種」の生産であって、農家がまく種子の供給ではありません。

現在の日本では、原種や原原種の栽培・生産は、農業試験場をはじめとする都道府県の公的研究機関が行っており、予算は国が担っている。
間違いではないが、実態をあらわしていないですな。原原種については良いのだが、原種に関しては、委託している場合が多い。(第七条2項に委託して良いと規定されている)

茨城県においては、コシヒカリの種趣旨は1キロあたり500円ほどで販売されている。・・・種子法で予算措置を取られているために価格も安い。
500円ね~。
山口県の「平成29年度版米・大豆・麦生産流通改善対策資料」を見ると、平成29年産のコシヒカリ種子の価格は、20kgで8,674円、1kgだと434円。
おぉ!正しいこと書いてある。

平成29年産なので、種子法廃止である2018年4月の前年であることから、種子法の恩恵が受けているということですね。
では、令和元年産(2019年)を見ると、20kgで8,814円、1kgだと442円。
あれれ?おかしいぞ~(by コナン)
種子法廃止されても価格たいして変わってない。

まあ、それはよいとして、民間企業の種子価格を見てみましょう。
農林水産省の「生産資材価格の引下げに向けて」にその情報が載っている。
「とねのめぐみ」は、20kgで17280円、「みつひかり」は80000円。
2倍・10倍の価格ですね。
高い!農家を潰すための種子法廃止だ!って言うのは短絡的です。

その値段で買う人がいるから民間企業は売っているのですよ。
では、なぜ買うか?
収量が多いのですよ。
「とねのめぐみ」は10%以上(この資料による)、「みつひかり」は30%以上(先の生産資材・・の資料による)収量が多いのです。
農業経営統計調査 令和元年産 米生産費」によると、米生産にかかる費用のうち種子購入費は、北海道で1.5%、全国平均では3.4%。
全国平均の規模だと、「みつひかり」はトントンなのでメリットがあまりないが、北海道の規模だとコスト当たりの収量が1割以上増える。
ちなみに、「とねのめぐみ」なら全国平均でも5%以上増える。

ここまで読んで来れば、自家採種派が全体の一割前後にとどまり、大半の稲作農家が公共の種子を毎年購入して栽培している理由がお分かりいただけたと思う。
公共の種子かどうかは別として、種子購入派が大半であることを理解していますね。驚きです。
自家採種が大変なことを理解しているのに、農家の52%が登録品種を自家採種していると言って、しかもその誤りを指摘されるとラジオから逃亡していますからね。

大ウソつき認定!


売り渡される食の安全
山田 正彦
KADOKAWA
2019/8/10

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