トリチウムの海洋放出は有害か?③(中国趙立堅報道官/れいわ新選組代表)

福島の汚染水海洋放出(実際は処理水)は、通常の原発と違うからダメだ!というのをよく見かけます。
第3回は、その発言に何の意味もないことを見ていきましょう。
(過去分はをどうぞ)

日本下げをしたい人達

通常の原発と違うからダメだ!という例を2つ挙げます。

1.中国外交部 趙立堅報道官
福島第1原発では最高レベルの原発事故が発生した。そこから生じた汚染水は正常な稼働時の原発の汚染水とは全く別物だ。そうでなければ、日本もこれまで汚染水をタンクに厳密に密封しておく必要はなかった。両者を一緒くたにして論じることはできない。
※人民網の日本の記者「中国の原発も汚染水放出」に外交部がコメントより引用
この報道官は、「中国報道官が北斎浮世絵で処理水揶揄 外務省が抗議」の人です。

2.山本太郎 れいわ新選組代表
他国や日本国内の他の原発でもトリチウムが液体廃棄物として放出されている、という意見もあるが、それは原発事故が発生していない施設で、福島第一原発の条件と全くことなる。
【汚染水放出に対する声明】山本太郎 れいわ新選組代表 2021年4月17日より引用

東海再処理施設

原発ではないですが、東海再処理施設を見てみましょう(下の方で、上の話と繋がります)。

東海再処理施設は、茨城県那珂郡東海村にある使用済み核燃料から使えるウラン・プルトニウムを取り出す施設で、1977年から2007年まで運転をしてきました。
※東海再処理施設については、核燃料サイクル工学研究所のページを参照のこと。

東海再処理施設では、以下のように使用済み核燃料からウラン・プルトニウムを取り出しています。
東海再処理施設の主工程説明図
※原子力百科事典 ATOMICAの東海再処理施設より引用

簡単に言うと、核燃料をバラシて溶かして精製して固形化しています。
溶かしているので、その溶液の残りカスには放射性物質がタンマリ含まれています。
溶液等の流れはピンクの線です。
この図では最後に「AAF:廃棄物処理場」に矢印が向いています。

ただし、いきなり全量を廃棄物処理場に持っていません。
量が多いと管理が大変なので体積を減らしたいですよね。
そこで、以下のように減容化しています。
東海再処理施設における放射性廃液処理系統図
※ATOMICAの中・低レベル廃液の処理より引用

高放射性廃液 ⇒ 中放射性廃液 ⇒ 低放射性廃液 ⇒ 海洋放出
という流れです。

原発ではないですが、核燃料と接した(というか溶かした)ものを処理して最終的に海洋放出しています。
そのため、福島第一原発と再処理施設では大差ありません。
差があるとしたら、水の量が福島の方が多く、処理前の濃度が福島の低く、福島の水の方が中性に近いということです。

このことから、「正常な稼働時の原発」「原発事故が発生していない施設」という指摘は全くのナンセンスであることを御理解頂けたと思います。

ちなみに、この記事を見ると、
中国では2015年に再処理用の実験施設(年間50トン処理可能)が稼働していて、2030年には年間800トン処理できる施設を中国核工業集団とフランスのアレバが稼働させるそうです。
ロイターの記事によると、IAEAによる査察を再処理施設は受けていないそうです。
※なお、福島の件は、もろIAEAが関与しています


東海再処理施設からの海洋放出

再処理施設と福島で仕組みとしては大して変わらないことは見てもらいました。
では、放出量に差があるか見てみましょう。

東海再処理施設からのトリチウム・プルトニウム海洋放出量
サイクル機構技報 No.28 2005年9月の「東海再処理施設における液体廃棄物の放出モニタリングについて」より引用

上記から、1年間で多くてトリチウムは 105 GBq、プルトニウムで 10-1 GBq のオーダーで海洋放出していることがわかります。

福島の場合を見てみましょう。以下は、ALPS二次処理前後トリチウムとプルトニウムの濃度です。
ALPS二次処理前後トリチウム濃度
ALPS二次処理前後プルトニウム濃度
※「福島第一原子力発電所多核種除去設備等処理水の二次処理性能確認試験結果(終報)」より引用
トリチウム:851,000Bq/L
プルトニウム:0.570Bq/L
1年間の最大トリチウム放出量:22兆Bq = 2.2×104 GBq

二次処理されていない状態でのプルトニウム海洋放出量を計算してみましょう。

2.2×104GBq : プルトニウム放出量 GBq = 851,000 Bq/L : 0.570 Bq/L
プルトニウム放出量 GBq = 2.2×104 GBq × 0.570Bq/L ÷ 851,000 Bq/L = 1.5 ×10-2GBq

■トリチウム
東海再処理施設 : 105 GBq > 福島:2.2×104 GBq
■プルトニウム
東海再処理施設 : 10-1 GBq > 福島(二次処理無し):1.5 ×10-2GBq

トリチウム・プルトニウムともに問題ないことがわかりましたね。

東海再処理施設沖のプルトニウムはどこ由来か?

プルトニウムと聞くと過剰反応してしまう人もいるでしょうから、もう少しプルトニウムについて触れます。

以下は、放射能比(238Pu/239,240Pu)を示した表です。
ルトニウム同位体の放射能比(東海再処理施設)
※上記、サイクル機構の資料より引用

核兵器に使う場合239Puは90%以上が必要で、原発で出来るプルトニウムの場合、20%程度とのこと。
その比率を見れば、核兵器由来か原発由来かがわかります。

過去の大気圏内核実験時のフォールアウトにおける:0.034~0.043
軽水炉中の使用済燃料の放射能比:1.9~3.0

であるので、海洋放出口周辺海底土の1.5~3.5 は核実験由来であることがわかります。
日本では核実験していないので、原因は核実験をしている国となります。

1990年代までは、主に米ソの大気圏中の核実験が原因(大気圏内核実験のばあい、成層圏まで行って1年滞留するらしい)だったが、それ以降は中国がやった核実験が原因です。
中国がばら撒いたプルトニウムが黄砂と一緒に日本に飛んできているのです。
日本の表層土壌中(つくば)プルトニウム濃度(赤:1-5月、青:6-12月)
※「環境における人工放射能の研究2007」より引用

赤は1-5月で黄砂の多い時期で、青の6-12月は少ない時期の表層土壌中(つくば)プルトニウム濃度です。

まとめ

・東海再処理施設と福島の海洋放出は原理的に差は無い
 ・量的には、東海再処理施設の方が多い
・中国も2015年に再処理実験施設が稼働して2030年には本格稼働する
 ・中国はIAEAによる再処理実験施設への査察を受け入れていない
・現在の日本の自然界におけるプルトニウム由来の大部分は中国

このことから、中国外交部 趙立堅報道官の批難はチャンチャラおかしいどころか、逆に日本が中国を避難すべきと言える。

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