間違い探し超初級編に最適、山田正彦元農林水産大臣の本⑥

人気ブログランキング

売り渡される食の安全」を読みました(やっとのことで153ページ読了しました)

過去分は、タグからどうぞ。

農業に肥料は不要?

実家は米と麦の二毛作を行い、さらに輪作として大豆と芋も栽培していた。
 大豆は根にくっついている瘤のような器官に、根粒菌と呼ばれる土壌微生物がすんでいて、土の中でいわゆる窒素固定の働きをしたので肥料は必要なかった
大丈夫ですか?

小学生向けと思われる農林水産省の『「植物は何を栄養にして育っているの?」』から以下を引用します。
植物の3大栄養素

もしや、農林水産大臣をやった人が3大栄養素を知らないのですか?

窒素は山田氏が書くようにマメ科の植物(レンゲとか)を植えれば根粒菌が固定化してくれるので窒素肥料を与える必要はありません。
しかし、リン酸/カリウムは空気中から補給出来ないので、別の場所から取り入れる必要があります。

昔ながらの農業ならば、「お爺さんは山にしば刈りに」っていうのが、外部からの取り入れる方法です。
江戸時代以降であれば、魚肥などでしょう。
この前、珍しくテレビを見たら、福島の農家のお婆さんが「山にしば刈りに」行って肥料としているところを放映していました。
まさにそれです。


菌類が土壌を守る?

雑草は田畑だけに生えてくるわけではない。ランドアップを散布すれば何も生えなくなる。しかし、長い間散布を続けると土壌中の菌類なども死滅しまうのか、あぜ道の土手の土壌が崩れてきて危険だ、という声を各地で聞いた。
森を含め土手も、その土壌を守っているのは何なのかを全く理解していない記述ですね。
菌類が土壌を守ってるわけではない。
植物が土壌を守っているのだ(もちろん、菌類がいないと成長できない植物は多々あるし、有機物の分解に困るが、それは別の話)。
植物が生えていることで、土に直接雨があたらず流出を防ぐし、根っこがあるおかげで崩れにくくなる。

農家の人は「あぜ道の土手の土壌が崩れてきて危険だ」と言ったかもしれないが、「だから、散布時期など工夫が必要だ」と言ったのではないかと思われる。
農研機構の「除染後の省力的畦畔管理技術マニュアル」によると「連続使用により裸地期間が長期にわたると畦畔が崩れることがあります。」とあります。
期間調整が必要ってことですね。

調べた時に見つけた千葉県の「除草剤にたよらない畦けい畔法面はんのりめんの管理をめざして」が面白い。
「ムカデシバ」というのを植えると、他の雑草は生えてこないし、背丈は20cmぐらいで、田にも侵入せず、1回植えると半永久的に使えるとのこと。
素晴らしい!

自然界では他の生物の遺伝子は取り込まれない?

遺伝子組み換えは、目的に適した遺伝子を見つけて取り出し、まったく別の生物の遺伝子を人為的に取り込む作業のことだ。
 交配や品種改良は自然界で起こりうる一方、遺伝子組み換えは決して起こりえない
自然界で他の生物の遺伝子が入ってくることが起こりえないと断言しましたね。

では、それを否定する例を2つご紹介しましょう。
国立研究開発法人産業技術総合研究所:共生微生物から宿主昆虫へのゲノム水平転移の発見
育種学研究:イネゲノムによるウイルス断片の取り込みとその進化

ちなみに、この後に遺伝子組み換え食品を否定する記述として「遺伝学的分野で深刻な健康への脅威に至る」というのがある。
自然界で「遺伝子組み換えは決して起こりえない」のならば、遺伝子組み換え食品を食べても「遺伝学的分野で深刻な健康への脅威」は無いはずですけどね。
この大いなる矛盾をどう説明しますか?

中学生からやり直したらどうでしょうか?

グリホサートの裁判に関する話で、以下のように書いている。
植物の細胞壁へ物質が浸透することを助ける界面活性剤とグリホサートが結合したときに、特定の相乗効果が生じることをその科学顧問が知っていたことも明らかになっている。
山田氏もしくは、その科学顧問とやらは、中学理科レベルの知識がないということですね。
(少なくとも、何の疑いも無く引用してる時点で山田氏に知識が無いことは推察できる。単なる編集などでの手違いかもしれないが)

文部科学省の「学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)(理科)生物の細胞と生殖」から引用します。
細胞レベルでの動植物相違点がわかる
説明するのもアホくさいですが、動物には細胞壁はありません。
そのため「動植物の細胞壁」などと書いたら中学理科のテストで×となります。

そのアメリカは、どの時空間にあるアメリカですか?

19年時点で約3億3000万人を数えるアメリカの人口の3分の1弱となる、約1億人がスマートフォンやパソコンなどを持っていないとされている。つまり、目の前にQRコードやURLがあっても、情報にアクセスすることができない。実質的な遺伝子組み換えの非表示ではないのか、とされたのだ。
酷いですな。

調べるのもアホくさいですが、ITU: International Telecommunication Union(国際電気通信連合)を見てみますか。
この本は、2019年8月出版なので、2018年のデータを「Development Dashboard」から引用します。

Households with a computer at home (%):自宅にパソコンを持っている世帯(%):83.0
Households with Internet access at home (%):自宅でインターネットを利用できる世帯(%):85.3
Individuals using the Internet, total (%):インターネットを利用している個人、合計(%):88.5

類は友を呼ぶ

ゲノム編集について次のように書いています。
遺伝子の一部切り取りは、オフターゲットといって標的外の遺伝子まで切り取ってしまうので、安全性が問題視されている。・・・最近の研究で、一つの遺伝子が、複数のタンパク質を作っていること、遺伝子同士が連絡を取り合っていることがわかってきた。遺伝子を切り取って安全なのか。まだだれにもわからないのだ。
 ゲノム編集の問題については、天笠啓佑さんの新著「ゲノム操作・遺伝子組み換え食品入門」に詳しく書かれている
デマ屋がデマ屋の本を紹介していますな。

天笠啓佑氏のインチキ具合については、こちら参照ください。

遺伝子切っても大丈夫かなどと言うのならば、放射線を使った品種改良や自然界の突然変異も全てダメだっていう話になる。
突然変異がなければ、ホモサピエンスなどという種も存在しえない。アホかっていうレベルです。
オフターゲットについては、こちらが詳しいです。

売り渡される食の安全
山田 正彦
KADOKAWA
2019/8/10


この記事へのコメント