デマ本が売られる
「日本が売られる」を読みました。
ただし、実際に読んだのは第一次産業に関連する部分だけです。
その低レベルさから、とても他を読む気にならない。
著者は、国際ジャーナリストという肩書で商売しているようですが、国際ジャーナリストというのは一次情報を見ない人種なのでしょうかね?
種子法第七条を見てみましょう。
こちらを見て下さい、コシヒカリ系が7割を占めていること。
なにをもって種類が多いと言えるのでしょう。
種子法は優秀な種子を決定と、その種子の普及・生産に関するもので、種子開発関係ありません。
第一条の目的を見てもらえばわかりますが、種子開発のことは一言も触れていません。
種子法で都道府県の負担が大きめなものは以下の3つで、種子開発は関係無し。
・第五条(ほ場審査証明書等の交付)
・第七条(原種及び原原種の生産)
・第八条(優良な品種を決定するための試験)
参考までに「主要農作物種子法」の全文です。
著者などのデマ屋が、ラウドスピーカーの電源ボタンON/最大音量で騒いでいますがね。
大間違い: 「公共種子の開発データ」を民間企業に無償で提供する
正しい内容:「独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進する」
有償無償かは、農業競争力強化支援法に記載されていないが、有償となっています。
詳細は「農業関係で胡散臭い人の見分け方」をご覧ください。
FAOSTALって何でしょうね?この本は2018年のなのですが、2013年8月4日に見たデータって、5年近く温めてきたのでしょうか?
上のインチキ図ではなく、まともなものを作りました。
主要国の定義がわかりませんが、オランダが登場してきているので、オランダの農業生産高(畜産等除く)以上の国の農薬使用量をグラフにしました。
FAOSTAT(FAOSTALではなく、FAOSTAT。FAOの統計ってことです)の「Pesticides indicators(農薬指標)」と「Crops(農作物)」のCrops Primaryの合算(=農業生産高)のデータから作っています。
同じように2018年のデータでも作ってみました(2021年で2018年のデータにアクセスできるので、2018年には2015年頃のデータを使えたと思うのだが)。
面白いことに、ドイツとフランスが増えているのですよね。
やたら、農業に関してヨーロッパ推しなのにおかしいな~。
農薬使用量は、気候(気温・湿度)、栽培している植物に大きく関係することがまるで考慮されていないのですよね。
農薬のくだりで、面白い記述を見つけました。
残留農薬基準やADI(一日摂取許容量)をまるで理解していないか、騙す気満々かは知らないが、どちらにしてもヒドイ。
散布濃度と残留農薬基準やADIと比べることに、ほとんど意味はない。
意味があるとしたら、この茶葉のように十分低い濃度で散布されているので、残留農薬基準値やADIに達する可能性が低いことが推察されることぐらいだ。
そもそも、散布したものが、そのまま残留農薬にはならない。雨で洗い流されるし、分解もされる。
2000年をスタートラインにて、各年で前年との比をグラフにしています。
誤:「ヨーロッパでは2008年に全ミツバチの3割が、ドイツに至っては8割が消滅した」
正:「ヨーロッパでは2008年に全ミツバチの1.4%が減り、ドイツに至っては3.2%増加した」
嘘も大概にしろって感じです。
2008年の単年で減ったのではないという反論が来そうですが、そうであれば、いつ基準として減ったかを書いていない時点でおかしい。
また、「ヨーロッパでは2008年に」ではなく「ヨーロッパでは2008年までに」とすべき。
ミツバチに関しては以下が参考になりそうです。
「ネオニコチノイド系農薬の使用規制でミツバチを救えるか」
「世界におけるミツバチ減少の現状と欧米における要因」
「きちんと管理する気がない」ではなく「現に経営管理が行われておらず」です(森林経営管理法の十九条)。
樹齢55年がどうのという件が「森林経営管理法施行令」「森林経営管理法施行規則」にもなく、どこから出てきた話だろうと調べました。
すると『豪雨に負けない森はどこへ…。今国会で成立「森林経営管理法」が日本の山と林業を殺す=田中優』に、この本と同じ記述が沢山ありました。
そして、その記事の中で鈴木宣弘教授の記事にリンクしていました(教授の森林経営管理法に関するコラムには、こちらでツッコんでいます)。
デマ屋、イモヅルですな。
田中優 氏を他で引用しているし、山田正彦 氏、安田節子 氏、鈴木宣弘教授 と、そうそうたるメンツです。
「林野庁が出した資料」とやらは見つけられなかったが、アンケート結果は簡単に見つけられました。
「平成21年度食料・農林水産業・農山漁村に関する意向調査林業経営に関する意向調査結果」
この結果より以下引用します。
「8割の森林所有者は経営意識が低い」は正確でなく「1ha以上20ha未満の森林所有者の約8割の経営意識が低い」が良いですな。
どちらにしても、堤氏は調査もせず、想像力をフル回転(または、伝聞を鵜呑みに)して本を書いていることが良くわかりました。
中学の理科で「メンデルの法則」を勉強しなおした方が良いのでは?
F1種子は遺伝子工学全く関係ないし、1年しか発芽しないわけでもない。
■在来品種の品種登録
■グリホサートの効果
そんな話、はじめて聞きましたが。
■遺伝子組み換え・ゲノム編集
「まだ(未だ)」とは「その時点までに実現していないさま」で、「未」も同じ意味のため、二重否定で結局は肯定されます。
素直に「まだ100%未知数だ」を読むと「100%解明されている」ですが、文脈的には「100%未知数だ」と理解すべきでしょう。
(ちなみに、著者の堤 未果 氏の名前にも「未」が使われています。素直に「未果」の字だけの意味を考えると「未だ果たさず(いまだはたさず)」で不吉だ。字の持つ意味ではなく、読みだけで命名したのでしょうね。)
その上で、読むと噴飯物もよいところだ。
ゲノム編集が「100%未知数だ」ならば、ランダム遺伝子改変である自然で起きる突然変異や従来の品種改良も「100%未知数だ」となりますわ。
そもそも、遺伝子組み換えが「遺伝子そのものに手を入れない」と言っていることからして、お話にならない。
以上、デマ本の紹介でした。
しかし、Amazonでの評価が☆4.3っていうのは驚きです。
日本が売られる
堤未果
幻冬舎
2018/10/4
ただし、実際に読んだのは第一次産業に関連する部分だけです。
その低レベルさから、とても他を読む気にならない。
著者は、国際ジャーナリストという肩書で商売しているようですが、国際ジャーナリストというのは一次情報を見ない人種なのでしょうかね?
主要農作物種子法に関する数々の間違い
日本人の主食である「コメ・麦・大豆」という3大主要農産物が、どんなときにも安定供給されるよう、それらの種子の生産と普及を国の責任とした「種子法」を導入する。国の責任ではありません。都道府県の責任です。
種子法第七条を見てみましょう。
(原種及び原原種の生産)
第七条 都道府県は、主要農作物の原種ほ及び原原種ほの設置等により、指定種子生産ほ場において主要農作物の優良な種子の生産を行うために必要な主要農作物の原種及び当該原種の生産を行うために必要な主要農作物の原原種の確保が図られるよう主要農作物の原種及び原原種の生産を行わなければならない。
農産物の種類が多いことは、国家にとって食の安全保障にかかわるリスクヘッジとして有効だ。事実誤認はなはだしい。
万が一、台風や疫病などでコメがやられても、他の地域に別の品種が生き残っていれば、主食が手に入らないという国レベルの惨事は防ぐことができる。
こちらを見て下さい、コシヒカリ系が7割を占めていること。
なにをもって種類が多いと言えるのでしょう。
種子法が廃止された今、公的制度の予算なし農家が自力で種子開発をするのは経済的にも物理的にも厳しくなる。これも間違いです。
種子法は優秀な種子を決定と、その種子の普及・生産に関するもので、種子開発関係ありません。
第一条の目的を見てもらえばわかりますが、種子開発のことは一言も触れていません。
(目的)
第一条 この法律は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を行うことを目的とする。
「種子法」によって、「種子の開発予算」は都道府県が負担するようになった。これも大間違いです。
種子法で都道府県の負担が大きめなものは以下の3つで、種子開発は関係無し。
・第五条(ほ場審査証明書等の交付)
・第七条(原種及び原原種の生産)
・第八条(優良な品種を決定するための試験)
参考までに「主要農作物種子法」の全文です。
嘘つきを見分けるのに適切な「農業競争力強化支援法」第8条4項
企業が喉から手が出るほど欲しがっていたのは、市場規模の小さい希少米よりも、日本人が持つ、もっとずっと大きな資産の方だった。「大手マスコミのミュートボタンは、依然として押されたままなのだ」だって。
その願いは、種子法廃止と同時期に導入された「農業競争力強化支援法」が叶えてくれることになる。
こちらも種子法に負けず劣らず知られていない。
大手マスコミのミュートボタンは、依然として押されたままなのだ。
それは今まで日本の都道府県が多大な努力をはらい蓄積してきた「公共種子の開発データ」を民間企業に無償で提供するというショッキングな内容だった。
著者などのデマ屋が、ラウドスピーカーの電源ボタンON/最大音量で騒いでいますがね。
大間違い: 「公共種子の開発データ」を民間企業に無償で提供する
正しい内容:「独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進する」
有償無償かは、農業競争力強化支援法に記載されていないが、有償となっています。
詳細は「農業関係で胡散臭い人の見分け方」をご覧ください。
FAOSTALってなに?
堤氏いわく、日本は世界で3位農薬使用大国らしい。FAOSTALって何でしょうね?この本は2018年のなのですが、2013年8月4日に見たデータって、5年近く温めてきたのでしょうか?
上のインチキ図ではなく、まともなものを作りました。
主要国の定義がわかりませんが、オランダが登場してきているので、オランダの農業生産高(畜産等除く)以上の国の農薬使用量をグラフにしました。
FAOSTAT(FAOSTALではなく、FAOSTAT。FAOの統計ってことです)の「Pesticides indicators(農薬指標)」と「Crops(農作物)」のCrops Primaryの合算(=農業生産高)のデータから作っています。
同じように2018年のデータでも作ってみました(2021年で2018年のデータにアクセスできるので、2018年には2015年頃のデータを使えたと思うのだが)。
面白いことに、ドイツとフランスが増えているのですよね。
やたら、農業に関してヨーロッパ推しなのにおかしいな~。
農薬使用量は、気候(気温・湿度)、栽培している植物に大きく関係することがまるで考慮されていないのですよね。
農薬のくだりで、面白い記述を見つけました。
茶葉に至っては、農家が茶畑にまく分(40ppm)よりも、お茶として飲む方(50ppm)の残留農薬の方が、基準濃度として高く設定されているから驚きだ。堤さん、貴方の記述に驚きです。
残留農薬基準やADI(一日摂取許容量)をまるで理解していないか、騙す気満々かは知らないが、どちらにしてもヒドイ。
散布濃度と残留農薬基準やADIと比べることに、ほとんど意味はない。
意味があるとしたら、この茶葉のように十分低い濃度で散布されているので、残留農薬基準値やADIに達する可能性が低いことが推察されることぐらいだ。
そもそも、散布したものが、そのまま残留農薬にはならない。雨で洗い流されるし、分解もされる。
ミツバチ激減だって
ヨーロッパではミツバチの減少や大量死が相次ぎ、アメリカ、カナダ、日本や中国では、ハチたちが巣から急に消える「蜂群崩壊症候群」が次々に報告され始める。FAOSTATの「Live Animals」から図を作ってみました。
2006年に養蜂場で7割のミツバチが突然消えたフロリダ州を筆頭に、全米で次々にミツバチが消滅、2007年には、北半球に住むハチの4分の1が姿を消してしまう。
ヨーロッパでは2008年に全ミツバチの3割が、ドイツに至っては8割が消滅した。
2000年をスタートラインにて、各年で前年との比をグラフにしています。
誤:「ヨーロッパでは2008年に全ミツバチの3割が、ドイツに至っては8割が消滅した」
正:「ヨーロッパでは2008年に全ミツバチの1.4%が減り、ドイツに至っては3.2%増加した」
嘘も大概にしろって感じです。
2008年の単年で減ったのではないという反論が来そうですが、そうであれば、いつ基準として減ったかを書いていない時点でおかしい。
また、「ヨーロッパでは2008年に」ではなく「ヨーロッパでは2008年までに」とすべき。
ミツバチに関しては以下が参考になりそうです。
「ネオニコチノイド系農薬の使用規制でミツバチを救えるか」
「世界におけるミツバチ減少の現状と欧米における要因」
森林経営管理法
自治体が森林を所有する住民の経営状況をチェックして、「きちんと管理する気がない」とみなされたら、どこかの企業に委託してその森林を伐採できるようにする。またまた、大間違いです。
所有者が「切らないでくれ」と言っても、市町村や知事の決定があれば、所有者の意思に関係無く伐採しても良い(樹齢55年以上のものは全て伐採)。
「きちんと管理する気がない」ではなく「現に経営管理が行われておらず」です(森林経営管理法の十九条)。
樹齢55年がどうのという件が「森林経営管理法施行令」「森林経営管理法施行規則」にもなく、どこから出てきた話だろうと調べました。
すると『豪雨に負けない森はどこへ…。今国会で成立「森林経営管理法」が日本の山と林業を殺す=田中優』に、この本と同じ記述が沢山ありました。
そして、その記事の中で鈴木宣弘教授の記事にリンクしていました(教授の森林経営管理法に関するコラムには、こちらでツッコんでいます)。
デマ屋、イモヅルですな。
田中優 氏を他で引用しているし、山田正彦 氏、安田節子 氏、鈴木宣弘教授 と、そうそうたるメンツです。
現場の森林関係者からは、怒りの声が上がっていた。ひ~、苦しい。
この法案について林野庁が出した資料に、「8割の森林所有者は経営意識が低い」と書かれていたのだ。アンケートには「経営意識に関する」項目は無く、この調査結果を出すために、林野庁の豊かな想像力がフル回転で使われたことは明らかだ。
「林野庁が出した資料」とやらは見つけられなかったが、アンケート結果は簡単に見つけられました。
「平成21年度食料・農林水産業・農山漁村に関する意向調査林業経営に関する意向調査結果」
この結果より以下引用します。
「8割の森林所有者は経営意識が低い」は正確でなく「1ha以上20ha未満の森林所有者の約8割の経営意識が低い」が良いですな。
どちらにしても、堤氏は調査もせず、想像力をフル回転(または、伝聞を鵜呑みに)して本を書いていることが良くわかりました。
その他、数々の間違い
■F1(交配雑種)遺伝子工学で1年しか発芽しない種子(F1種子)を作りうわ~、こりゃヒドイ。
中学の理科で「メンデルの法則」を勉強しなおした方が良いのでは?
F1種子は遺伝子工学全く関係ないし、1年しか発芽しないわけでもない。
■在来品種の品種登録
「登録されていない在来品種の自家採種は引き続きOK」というが、品種登録は早い者勝ちだ。種子企業が先に品種登録したものを知らずに増殖すれば、特許侵害となり損害賠償を請求されてしまう。それは、詐欺罪です。
■グリホサートの効果
グリホサートは1974年に農薬企業の再大手モンサント社が開発して特許を取り、「ラウンドアップ」という商品名で売り出した、世界最大の売り上げを誇る化学除草剤だ。・・・雑草も虫も全滅させるグリホサートの威力は凄まじく、使い始めて数年は農薬の使用量が少なくて済むが、ここに大きな問題があった。ほう、除草剤(グリホサート)が虫を全滅させるのですな。
そんな話、はじめて聞きましたが。
■遺伝子組み換え・ゲノム編集
一つの作物に別の遺伝子を組み込む遺伝子組み換えと違い、ゲノム編集は遺伝子そのものに手を入れる。組み替えるのではなくデザインするという全く新しい手法は、人体や環境への影響もまだ100%未知数だ。日本語がおかしいですな。
「まだ(未だ)」とは「その時点までに実現していないさま」で、「未」も同じ意味のため、二重否定で結局は肯定されます。
素直に「まだ100%未知数だ」を読むと「100%解明されている」ですが、文脈的には「100%未知数だ」と理解すべきでしょう。
(ちなみに、著者の堤 未果 氏の名前にも「未」が使われています。素直に「未果」の字だけの意味を考えると「未だ果たさず(いまだはたさず)」で不吉だ。字の持つ意味ではなく、読みだけで命名したのでしょうね。)
その上で、読むと噴飯物もよいところだ。
ゲノム編集が「100%未知数だ」ならば、ランダム遺伝子改変である自然で起きる突然変異や従来の品種改良も「100%未知数だ」となりますわ。
そもそも、遺伝子組み換えが「遺伝子そのものに手を入れない」と言っていることからして、お話にならない。
以上、デマ本の紹介でした。
しかし、Amazonでの評価が☆4.3っていうのは驚きです。
日本が売られる
堤未果
幻冬舎
2018/10/4
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