自称国際ジャーナリストはもう嘘しかつけない④ 金の流れ編

政府はもう嘘をつけない」を読みました。

第4回は、53ページある『違和感だらけの海外ニュースも「金の流れ」で腑に落ちる』がツッコミ対象となります。

数字もグラフも読めない人だからな・・

2015年11月13日。
フランス・パリの7箇所で起きた同時多発テロは、130人の死者と350人以上の重軽傷者をだした。・・・
月曜の朝、株式市場が開くと、市場全体が横ばいで動かない中で垂直に跳ね上がり、1日で最大6%も上昇した株を、彼らは狂ったように買いあさったのです。」
急騰したのは、主要な軍需産業関連株だ。
ボーイング社、レイセオン社、ジェネラル・ダイナミクス社など、自国政府に大きな影響力を持つ巨大企業がずらり。
もちろん、平素からオランド大統領と親交を温め、フランス政府が27%の株を所有する仏系のタレス・グループ株も垂直爆上げしたことは言うまでもない。
では、タレスの株価を見てみましょう。
11月13日の終値が65.54€、週明けの11月16日の終値が67.70€。
終値がその日の高値で、3.3%の値上がりで「垂直爆上げ」ね~。

ギリシャ危機

財政赤字が膨れ上がった原因は、高すぎる年金、公務員優遇などと報道されているが、なぜか触れられないもう一つの重要要素についてはあまり知らされていない。債務の半分以上を占めると言われる、防衛予算だ。
NATO同盟国28ヶ国の中で、ギリシャの軍事支出はトップのアメリカに次いで2位と突出している。金融危機から5年たち、まだGDPの175%という巨額の財政赤字を抱えているにもかかわらず、ギリシャは軍事費を前年よりも1%増やし、GDP比2.4%というEU最大規模を維持しているのだ。
奇妙なことに、ギリシャが危機に陥ってからずっと、「国内の支出をギリギリまでに切り詰めてさっさと借金を返せ」と迫っているIMFやEU、EBC(欧州中央銀行)、債権国のフランス、ドイツは何故か〈軍事費削減〉だけは口にしない
また口から出まかせを。
EUの「2015年8月19日の ギリシャのマクロ経済調整プログラムの承認」には次のようにあります。
2016年10月にさらなる構造的措置を講じることを約束します。それらには、国防費の抑制、計画された個人所得税改革、法定支出の凍結が含まれます。


しかも「ギリシャは軍事費を前年よりも1%増やし」はインチキですね。
ギリシャの軍事費
※世界銀行の「Military expenditure (current USD) - Greece」「Military expenditure (% of GDP) - Greece」「GDP (current US$) - Greece」より
2015年の話ですが、GDPが大幅に下がったので相対的に比率が高くなっただけです。
軍事費は13%減っているのです。

GDP:2352億ドル⇒1953億ドル(17%減)
軍事費GDP比:2.35%⇒2.47%(5%増)
軍事費:55.3億ドル⇒48.2億ドル(13%減)

そもそも、2010年比で約半分に減っていることをど無視している。


ISDS条項

オーソドックスなのは〈法人税増税〉ですね。これは一発でISDS裁判の対象になります。ハンガリー政府が法人税増税を発表した時、国内に投資しているグローバル企業群に、ヨーロッパの弁護士事務所から矢のように営業電話が殺到しました。
これは、ウォール街の大手弁護事務所に所属するロバート・ヘイズ弁護士の発言を引用したところらしいが、堤氏が正しく引用しているか甚だ疑わしい。

法人税増税するだけでISDS条項に引っかかるはずがない。
法人税増税しない協定をしていたのに、法人税増税すると言ったら引っかかるでしょう。
ヘイズ弁護士はそういう話をしたが、堤氏が意図的にそこを端折ったのでは?
日本語読めない日本人の弁護士もいるから、もちろん断言はできないが。

日本語を読めない/書けない人

英国からの返還後、中国共産党と多国籍企業群のコンビネーションが加速させた新自由主義は、香港内の経済格差を拡大させていった。
本土に移転された製造業雇用の8割は失われ高い家賃と低賃金に苦しむ人々の5人に1人が貧困ライン以下の生活をしている
何だこの文章は?

製造業が本土に移されたら、その分の雇用は100%失われる。何を言っているのだ?
製造業が本土に移転したことで、製造業雇用が以前の2割になったと言いたいのかな?
香港返還は1997年7月1日なので、1998年と2015年(この本の出版前年)の第二次産業全体の雇用に対する割合を調べてみましょう。
1998年:22.55%
2015年:11.90%
世界銀行より

期間が少し狭いが製造業だけのを見てみましょう。
2000年3月:215,560
2015年3月:100,300
香港の国勢調査統計局より

どちらも約半減で8割ではないですが、元の日本語が意味不明なので何ともいないのが苦しいところ。

「高い家賃と低賃金に苦しむ人々の5人に1人が貧困ライン以下の生活をしている」も意味不明。

堤氏の文章を素直に読むと、
「全体」⊃「高い家賃と低賃金に苦しむ人々」「5人に1人が貧困ライン以下の生活をしている人」
であると理解できる。
だが、「高い家賃と低賃金に苦しむ人々」の基準がわからないので、その中の1/5が貧困ライン以下と言われてもどれくらいの割合なのかさっぱりわからない。

大人の理解をしてあげて、
「全体」⊃「高い家賃と低賃金に苦しむ人々」「5人に1人が貧困ライン以下の生活をしている人」
ってことにしましょうか。

このようにクソ文章ですが、一応「全体の1/5が貧困ライン以下」だと推察して調べてみましょう。
香港政府のサイトを見ると2019年のデータですが1/5が貧困層のようです。
数字はあっているっぽいが日本語だめですから、意図したものであるかは不明。

貿易協定

この2つ(※TPP・TTIPのこと)が発効すれば、ワシントンは世界の貿易の7割以上をコントロールすることができるようになる。・・この3つの協定(TPP・TTIP・TISA)が、実はセットになっていることはあまり知られていない。これらはアメリカの貿易戦略を記す『通商政策アジェンダ』(2014年版)の中に、米国にとって非常に重要な3つの貿易協定として書かれている。
TPPもTTIPもお釈迦になりましたね。アメリカが世界を牛耳るのに必要なはずなんですが、おかしいですね。
それに、TISAも一向に進んでませんね。

ある意味、TPP以上に私たちの社会を大きく変えてしまう「TISA」。
この交渉を進めていることについて、今まで日本政府から国会議員や国民に一度でも説明があったのだろうか?
報道発表 新たなサービス貿易協定(TiSA)交渉の進展(参加国・地域による共同発表) 平成25年6月28日
これは「TISA」ググってトップに出た外務省のページです。平成25年なので2013年でこの本の出版の十分前ですね。
バカな新人に使う一言「ググれ」

政府はもう嘘をつけない
堤 未果
角川書店
2016/7/10

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