作家の倫理メルトダウン

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福島原発メルトダウン」(広瀬隆)を読みました。

この本は、作家の広瀬隆氏によるものです。
では、デタラメっぷりを見ていきましょう。

序章から著者の悪意?を感じますね

福島第一原発の大事故は、天災でも宿命でもありません。この悲惨な出来事は、悪意によって引き起こされた人災です。
不作為による災害であったかもしれないが、悪意ではないでしょうに。
もし、あれを悪意というのならば、この本も悪意によって書かれていると言えますね。
「原発の安全性向上への支出を渋り利益を増やそうとすること」

「原発を煽ることで個人的利益を得ようとすること」
に何の違いがありますか?

逃げろ!?

福島原発周辺から東京あたりまでの人々・・・できる限り放射能から逃げる行動をとった方がよい。
デタラメを。
この本の出版は2011年5月30日で、4月27日に序章を書いているので4月の放射線量の情報は知り得たはずです。
以下は、茨城県、千葉県、東京都の最も放射線量の高い場所での平均値を1年換算した値です。

茨城県:3.5mSv/y
千葉県:1.6mSv/y
東京都:1.1mSv/y

通常時は 0.5~0.7mSv/y 程度なので、高いと言えば高いがずっと外にいるわけでもないし、20mSv/y 以下であるので、どうと言うことはない。
最初の水素爆発以降で爆発は発生していないので新たな供給源は無いので確実に1年間の線量は上記より減ることはこの時点で推察できるはずです。
参考までに2011年末時点のものを1年換算した値は以下です。

茨城県:2.2mSv/y
千葉県:1.1mSv/y
東京都:0.7mSv/y


序章の最後に「本書に嘘はありません。」とありました。ふ~ん、そうなんだ。

説明がおかしいですね

炉心のウラン燃料が、核分裂反応によって猛烈な熱を発生すると、それが熱源となって、燃料のまわりに流れている水が熱を奪って沸騰します。・・・水蒸気がタービンの羽根にぶつかると運動エネルギーが生まれ、その運動エネルギーが右側の発電機を回して電気エネルギーに生まれ変わり、そこから送電線に電気が送られるわけです。
核分裂反応自体で熱は発生しないでしょうに。
発生した放射線が近くの核燃料・水に吸収されることで熱が発生しますよね。

そして、水蒸気の熱エネルギーがタービンで運動エネルギーになるというのもおかしいですね。
水蒸気になった時点で高速に運動しているので、運動エネルギーに変換されている(もちろん水自体の分子振動の熱エネルギーもあるが)。

冷却水の影響

膨大な温排水によって海水の温度は上がり、沿岸の生物に甚大な影響を与えている
またデタラメを。
平成22年度国内外における発電所等からの温排水による環境影響に係る調査業務報告書」によると、大きな問題は出ていないとあります。
この資料にある内容をまとめると次の通り
・排出時の温度差は英仏米(7℃~15℃)よりも低い(7℃以下)
・火力発電所でも同様の仕組みをとっている
・生物の影響は、放水口近辺で冬に暖かいところを好む魚などが寄ってくるくらい

津波対策ゼロ?

地震や津波から原発を守る対策は国の耐震指針に基づいており、2006年に25年ぶりに改定された現在の指針で津波対策が初めて明記されました。しかしすべての原発で、津波対策はゼロの状態です
またデタラメを。
日本学術会議の「我が国の原子力発電所の津波対策」によると、福島第一原発は2009年に津波対策として「海水ポンプの嵩上げ等の対策実施」をしているのですよね。

- 2006年改訂 発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針
- 1978年 発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針

電源喪失していませんが、何を言っているのでしょうか?

 ほとんど知られていないのですが、実は福島第一原発が電源喪失し、危機に陥ったのはこれが初めてではありません。
去年のことです。2010年6月7日、福島第一原発二号機で電源喪失事故が起き、あわやメルトダウンに突入かという事態が発生していたのです。
またまたデタラメを。
全電源喪失したかのように書いていますが、全く違います。

1.機器交換中に電源切替え用補助リレーに接触して誤動作
2.内部電源瞬断
3.瞬断であったため外部電源に切り替わらず
4.発電機自動停止
5.原子炉自動停止
6.非常用ディーゼル発電設備が自動起動
7.原子炉隔離時冷却系手動起動
 原子炉隔離時冷却系・非常用炉心冷却系の自動起動前に運転員が手動で起動。

で別にどうという話ではないですね。詳細は以下参照。
- 福島第一原子力発電所2号機における原子炉自動停止について|TEPCOニュース|東京電力
- 東京電力福島第一原子力発電所2号機の原子炉自動停止について | 一般社団法人 日本原子力技術協会

上記の後に、著者は次のように続けています。
おそろしことに、その発端となった原因さえ東京電力は特定できていません。
その4日前の6月13日に、福島県沖を震源とするかなり強い地震が原発一帯を襲っており、それが遠因になったのでしょうか。いずれにしろ、東京電力はこのような重大事故を経験しておきながら、その対策を全くとらずに、・・・
デタラメの上に妄想をかぶせていますね。
かなり強い地震とは、浜通り震度5弱のやつで、特段の影響は出ていません

しかし、すげーな。こいつは。
事故報告も読まず、地震が原因でその対策も取っていないと言うとは。
上記のプレスによると対策は打っているのですよね。地震が原因ではないので、その対策はとっていませんが。

MOX燃料

プルサーマルは、このプルトニウムとウランの混合酸化物を燃料に加工して使います。二つの混合酸化物は「MOX燃料」と呼ばれ・・・「核燃料サイクルができて効率的だ」などと大げさに宣伝する「専門家」もいます。実際には、ほとんどサイクルしません
・・・
使用済み核燃料から取り出したプルトニウムは自然界には存在せず、人間が生み出した元素です。
プルサーマルがほとんどサイクルしませんとはどういうことでしょうね。
その理由が書かれていないので、寝言でしょうか。

プルトニウムが自然界に存在しないというは大間違いです。
ウラン鉱石の中でもごく少量ですが存在します。
こんな素人でも知っているようなことを知らないのか、嘘ついているのか知りませんが、驚きですね。

再処理して使わない場合、プルトニウムはどうするのでしょうかね?
半減期が2万年のプルトニウムは減らないし、高濃度放射性廃棄物は減容化しないし。

プルトニウムを混合させたMOX燃料は、従来のウラン燃料よりも大量の放射能を出します。
放射能ね。放射線だよね。
MOX燃料にしようが、しまいが、プルトニウムの量は変わらない。
プルサーマルをすることで、プルトニウム全量を減らすのだけど、そのことには全く触れませんね。
MOX燃料については「MOX燃料について | ウラン燃料とMOX燃料の比較」がわかりやすいです。

マグニチュードで情報操作?

私が知っている地震・地質学者の島村英紀さん(元・国立極地研究所所長)は次のような趣旨の指摘をしています。
「今回の地震マグニチュード9.0というのは、気象庁がそもそも『マグニチュードの物差し』を勝手に変えてしまったから、こんな前代未聞な数字になったのだ」
実は、マグニチュードの計算法には、いろいろな物差し(種類)があります。これまでの地震ではすべて、日本では「気象庁マグニチュード」を採用しており、その計算式に東北地方三陸沖地震のデータを入れると、「いくら大きくてもマグニチュード8.3か、8.4どまり」と島村さんは指摘するのです。それが、9.0までに上昇した理由は、「日本では学者ぐらいしか使っていない『モーメントマグニチュード』で気象庁が計算しなおしたからだ」と。
・・・
前代未聞の数字を発表することで「想定外」、「1000年に一度の地震」のほうへ情報操作、世論誘導して、責任逃れを図っているわけです。

強震観測記録を利用したモーメントマグニチュードの即時推定」によると、「マグニチュード 8 程度以上の巨大地震になると,対象としている周期帯域の地震動の強さがマグニチュードによりさほど変わらなくなるため,気象庁マグニチュードは飽和することになる.」とのこと。

気象庁の「東北地方太平洋沖地震による津波被害を踏まえた 津波警報の改善の方向性について」によると、気象庁マグニチュードで見積もった福島県の津波は3m。
実際には9m。それだけの乖離がでたと。

過小評価の可能性を速やかに認識する手法の例(長周期の変位波形の監視)
気象庁マグニチュードは短周期だけだが、モーメントマグニチュードは長周期も考慮に入れるとのこと。
グラフを見ると、短周期の振れ幅は小さいが揺れている時間が長い。
長周期は比べ物になりませんね。

これらを著者および島村氏は全く触れていませんね。
都合が悪いことには言及しない?

煽るね~

テレビの「専門家」たちは、たとえば「ヨウ素131の半減期は8日ほどだから、時間の経過とともに被曝の危険性は低下していきます」などと言いますが、最も大事なことを省いています。「一度放出されたヨウ素131は永遠に消えない」のです。
永遠に消えないとは嘘八百。
いつかは消えるし、ある程度まで減れば影響は無い。

人体には通常時でもカリウム・炭素・水素などの放射性同位体が含まれます。もちろんヨウ素131も。
この説明はもちろんない。煽りたいだけですね。

体内で放射線を出している間に染色体DNAの鎖を切断すると遺伝子が損傷してしまいます。そして細胞が一つでも癌化すると、増殖していきます
これも煽りですね。遺伝子の修復機構について全く説明していない。
1日1ゲノムあたり数万回損傷を受けるが修復するのですよね。
そして、「細胞が一つでも癌化すると、増殖していきます」もなめていますね。
そんな簡単に増殖したら遺伝子を持つ生命は誕生していません。

過剰診断

図9を見て下さい。これはチェルノブイリ原発事故後の甲状腺癌の発生数の推移を表したグラフですが、被曝の影響が「ただちに」出なくても、ゆっくり、長く出続けていることが分かります。
チェルノブイリ原発事故後の甲状腺癌の発生数
甲状腺癌が発生したのではないのです。甲状腺癌を発見したのです。
見つける必要のない癌を見つけただけなのです。

国際がん研究機関(IARC)の「原子力事故後の甲状腺モニタリングに関する提言(日本語訳)」から引用します。
放射線誘発性の甲状腺がんは、チェルノブイリ原子力発電所事故のデータが示すとおり、散発性甲状腺がんと同様に予後が良好である。このため、リスクのレベル(つまり甲状腺線量)と無関係な小児期と思春期の子どもたちの集団スクリーニングも、明白な公衆衛生上の利益がないまま、過剰診断に関わる問題を引き起こすことが予想される。
「予後が良好である」とは甲状腺癌が悪くならないという意味で、問題のない癌を見つけているだけ。
過剰診断なのでやるなと言っています。

放射性ヨウ素の食品安全基準

この野菜類の放射性ヨウ素131の摂取制限量は、1キログラム当たり2000ベクレルとなっているので、さらに驚きました。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)によって設置されたCODEX(コーデックス)委員会のガイドラインでは、100ベクレルです。日本のヨウ素の許容量は国際基準より20倍も高い数値に引き上げてしまったのです。
赤字のところは誤りで、それ以外の部分は煽りです。

「引き上げられた」とあるが、もともと基準はなかったので、引き上げるもクソもない。大間違いです。

それ以外の煽り部分の解説をします。
放射性核種に係る日本、各国及びコーデックスの指標・規制値
※厚生労働省の「放射性核種に係る日本、各国及びコーデックスの指標・規制値」より引用

CODEXの基準は、核燃料に使うU235などを合算した値で比較できない。
ヨウ素131は半減期が短く通常時は検出されないから、それベースで基準値が設けられていると思う。
EUの基準は日本と同じなのですよね。

緊急時の基準は以下なので、特段おかしな話ではない。
緊急時に食品の規制を行う際の目安
※食品安全委員会の「放射性物質を含む食品による健康影響に関するQ&A」より引用

ということで、これに関しても広瀬氏の言っていることはデタラメだということです。

浜岡原発が緊急事態?

2009年の駿河湾地震で、静岡県の浜岡原発が緊急事態に陥りました。
中部電力の「駿河湾の地震における浜岡原子力発電所の状況について」によると、以下のように普通に自動停止し、4・5号機の詳細を見ても大したことは起きていない。
2009年8月11日に発生した駿河湾の地震により、運転中の4号機および5号機が自動停止しました。3号機は定期検査のため停止中、1・2号は廃止措置準備中です。全ての原子炉は安全に停止しており、発電所の安全に影響のある被害はありませんでした。


東海地震に襲われると、福島第一原発とは異質の大惨事を引き起こす可能性があるのです。緊急停止できず、ウランの核分裂を止められないということです。それは「臨界事故」に至るということです。臨界とは、核分裂の連鎖反応が継続しているということです。その状態で核暴走して爆発すると、「原子炉が原爆化」することになります。
またデタラメを。
ウラン・プルトニウムの濃度が桁違いに違うので水素爆発・メルトダウンを起こしても、原爆化はしません(以下参照)。
原子力発電と原子爆弾の違い
※「第5章 原子力発電の安全性 | エネ百科|きみと未来と。」より引用

志賀原発の制御棒落下?

1999年6月18日、運転停止時に制御棒が三本落下して、やはり臨界事故が発生しています。あまりにも危険な事故であったため、電力会社と原子力産業がひたすら国民に対して隠してきたのです。

北陸電力の「志賀原子力発電所1号機の臨界事故についての報告書の提出について」によると赤字の部分が事実と異なりますね。

・「運転停止に」ではなく、「運転停止に」です。
 運転停止をしようとした時ではなく、定期検査中の「原子炉停止機能強化工事機能確認試験」をしている時に起きたものです。
・制御棒は落下したのではなく、誤って引き抜いてしまった。
 資料に原子炉の図があるが、上から差し込むタイプではなく、下から上に差し込むタイプなので、落下はまず起きないでしょうに。
・「電力会社と原子力産業がひたすら国民に対して隠してきた」とあるが、志賀原発の所長から北陸電力本店へはノイズであると報告して、本店は知らなかったので、業界全体で隠していたという表現は不適切。

あまりにも危険な事故というが、制御棒が抜かれたのは三本で、かつ15分間。それがどれほど重大な事故なのでしょうね?
隠蔽したのはダメですけどね。

福島第二原発の大破壊事故?

1989年1月6日には、福島第二原発の三号機で、原子炉の直結する再循環ポンプで大破壊事故が起こり、危うく原子炉メルトダウンの危機一髪ということを体験しているのです。
マジでこいつはデタラメしか言えないのか?

原子炉再循環ポンプ(B)の損傷について(最終報告)」にこのことが書かれています。
まず、日が違います。1月23日です。
事故の内容としては「水中軸受リングが脱落,破損」したとのと。
ただ、ポンプの振動が大きくなったので原子炉を停止して確認したそうです。
「原子炉再循環ポンプ(B)」ということは「原子炉再循環ポンプ(A)」もあるということですよね。
安全停止して(A)もあるだろうに、どこがメルトダウン危機一髪だ。ふざけんな!

玄海一号機の脆性遷移温度

玄海一号機では、2009年の定期検査で原子炉から取り出した監視試験片で脆性遷移温度が98度に達していたことが明らかにされたのです。このむずかしい言葉は、原子炉の分厚い鋼鉄が毎日中性子を浴びて脆くなり、ある温度以下で破壊される現象を意味します。それは、大事故が発生した時に、原子炉に冷たい水をどっと流し込むと、ガラスのコップに熱湯をそそだときに割れるようになることです。脆くなっている鋼鉄の原子炉が、一気にバリンと割れて破壊されてしまうという、これまで地球で起こしたことのない恐怖の原発事故を意味します。
脆性遷移温度のことは良くわかりませんが、以下の説明を見る限り問題なさそうですが。
玄海1号機原子炉容器の健全性評価
※「玄海原子力発電所 1 号機原子炉容器の照射脆化に対する健全性について」より引用

こういう説明をわざわざしているということは、広瀬氏のように科学的な正しさを根拠にせずに騒ぐ人間がいるからでしょうね。

しかし、「これまで地球で起こしたことのない恐怖の原発事故」ねぇ。
福島第一原発の一号機は全部核燃料がメルトスルーして原子炉格納容器から落ちているらしいので、それとなにか違うのですかね?

六ヶ所村中間貯蔵施設

青森県六ヶ所村にある核燃料サイクル施設「六ヶ所村再処理工場」。
・・・
全国の原発54基から出た使用済み核燃料が運び込まれ、すでに2827トン(ウラン換算重量)というとてつもない量になっているのです。もしこの工場が、福島第一原発と同じように電源喪失したり、核燃料プールを破損させたり、工場そのものを爆発させたりしていたら・・・原子炉を100基まとめてドーンと爆発させたような想像を絶する大惨事になっていたでしょう。
・・・
貯蔵プールの容量は3000トンありますが、もうすでに2827トン入っているわけですから、残り173トンしか余裕がありません。
煽ることしか考えていないようですね。
乾式貯蔵という電気が不要な「乾式貯蔵」の話はまるでしませんね。
上記の後に核原発にある貯蔵プールの保管可能年数グラフをつくて煽っているが、原発でも乾式貯蔵を始めているので、これも煽りでしかない。

最後もデタラメで終わっている

原発が出す使用済み核燃料は、半減期が2万4000年というとてつもなく長いプルトニウムなどを大量に含み、10万年、100万年単位で人間の生活環境から隔離しなければなりません。
・・・
絶望的になってはいけません。原発を全廃すれば、私たちに、初めて新しい未来の日が輝き始めます。
まず、100万年単位というのは間違いです。10万年で天然ウラン鉱石程度に減ります。

この文章を読んでおかしいと思わない人は、文章の前後関係を理解できないのでしょうね。
今原発を止めても、10万年後にならないと「新しい未来の日が輝き始め」ませんよね。

核燃料サイクル
※資源エネルギー庁の「使用済燃料」のいま~核燃料サイクルの推進に向けてから引用

MOX燃料によるプルサーマルで10万年が8000年に、高速増殖炉で300年に減るのです。
高速増殖炉は怪しい感じになっているが、原子力技術が衰退したら10万年のまま変わらず、放射性廃棄物量も減容化されない。


最初から最後まで騙し・煽りばかりで役に立つ情報はありませんでしたね。
最後のところなんて特にそうだが、現状から目を背けても何の解決にはなりません。

福島原発メルトダウン
広瀬 隆
朝日新聞出版
2011/5/13

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