日本の品種はすごい!世界初のF1品種は日本

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日本の品種はすごい」(竹下大学)を読みました。

竹下大学氏の本は「野菜と果物 すごい品種図鑑」に続き2冊目です。
「野菜と果物 すごい品種図鑑」は入門編です。
「日本の品種はすごい」は7つの種に絞っていて、副題に「うまい植物をめぐる物語」とある通り、その品種改良に関する物語となります。

7つの種で目にとまった部分を以下にまとめました。

ジャガイモ

栄養繁殖性とはクローン増殖と同義であり、種子で増やす種子繁殖性ではなく、植物体を切り分けて増やす品物のことをいう。一番の弱みは、クローンなだけに、すべての個体の遺伝的特性がまったく同じ性質を持っていることから、各種の病害がひとたびまん延すれば全滅するリスクが高いことなのだ。・・・加えて種子繁殖性の作物と異なり、ジャガイモの増殖効率は低い。1株から約2000粒のタネがとれるイネに対し、ジャガイモ1株から採れるイモは10個程度である。
その程度なのですね。

現在、最も生産量の多いジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種は、コロッケの戦いで登場した「キタアカリ」である。
・・・
ところがシストセンチュウ側が、思わぬ形で反撃に出た。
2015年に網走市でジャガイモシロシストセンチュウというあらたなシストセンチュウの発生が確認されたのである。
ジャガイモシロシストセンチュウは、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種にも寄生できてしまう。すなわち日本国内の主要品種には、一つも抵抗性品種が存在しないという現実が突きつけられてしまったわけである。
ジャガイモシストセンチュウは、東大農学部のデマ教授がコラムに書いていたので知っていましたが、ジャガイモシロシストセンチュウは初見です。

農林水産省のページによると分布は、インド、ヨーロッパ、ロシア、米国、カナダ、コロンビア、ペルー、ニュージーランド等とのこと。
でん粉用の品種「フリア」はあるようだが、一般食用のはなさそうですね。

見た目のインパクトの強さでいえば「デストロイヤー」が一番だろう。・・・長崎市雲仙氏で俵農場を営む俵正彦が育成した品種であり、2000年に俵が品種登録した「グラウンドペチカ」と全く同じものである。
俵は交雑育種を行わずに、自然突然変異によるジャガイモの品種改良の可能性を探索続けた個人育種家だ。
ほう、雲仙市にそんな人がいたのですね。
長崎県は北海道に次ぐ、日本第二位のジャガイモ生産県である。・・・二期作が可能な地域だからである。・・・二期作を可能にするのは環境要因だけではない。・・・春作で四月から六月にかけて収穫したイモが、秋作の植え付け時期である八月下旬から九月にすぐ眼を出すという、休眠期間の適度な短さである。さらに秋から冬に向かう時期、すなわち高温から低温かつひるが夜より長い長日から夜より短い短日に変化する、ジャガイモが本来育つのとは逆の異常な条件下でも、十分な収量を維持する優れた環境適応性だ。
これは「ニシユタカ」の話なのだが、色々意外でしたね。
2種類を栽培しているのではなく、1種類で二期作を実現しているとは。


ジャガイモに関しては、フライドポテト用の品種のことが書かれていました。
マクドナルドのフライドポテト用ジャガイモが足りないということで、空輸したのがニュースになった。
フライドポテト・ポテトチップス・ポテトサラダ・煮物・飼料・デンプン用でそれぞれ品種が違い、フライドポテトはアメリカの「ラセットバーバンク」という品種。
これは、長さ20cmをこえる大きさで、皮が赤茶色で厚い。皮が厚いので輸送しやすい。
糖度が低いので上げた時に茶色く変色しにくい。
生のジャガイモは先のジャガイモシストセンチュウを防ぐ目的で輸入禁止であることから国内市場は守られているが、冷凍のフライドポテト用は太刀打ちできないのでアメリカ産のラセットバーバンクを輸入しているということが書かれていた。

ナシ

私の好きな「長十郎」は川崎大師のすぐ近くで見つかった品種なんだそうです。そして、大正中期くらいまでは多摩川河口付近の両岸がナシの一大産地だったとのこと。
近くに住んでいるのに知りませんでした。
しかし「長十郎」を幻の品種と呼ぶのはまだ早い。もしあの昔懐かしい触感と甘味を味わってみたければ、梨狩りに行けばよい。市場出荷はしていないが、貴重な受粉樹として梨園には「長十郎」が残されている場合もある。
ナシは基本的に、同じ品種の花粉がめしべに受粉しても実をつけない自家不和合性と呼ばれる性質を有する。・・・「長十郎」は花粉の量が多いうえに、「幸水」や「二十世紀」ととても相性がよいため、人知れず今も活躍し続けているのである。
ほう面白い性質ですね。
自家不和合性で調べると栗も同じなんですって。
野生の栗を子供の頃よく拾いに行ったが、周りに別の栗が無いと実をつけないのですね。


ゴールド二十世紀という品種は2019年に運用停止となった常陸大宮市の国内唯一のガンマフィールドで作られたものだそうです。
ガンマフィールドの写真が載っているが、まさにフィールドで真ん中にガンマ線源を置きその周りで作物を育てる。
ゴールド二十世紀は線源に一番近い場所に植えられていたもの。

2012年に特許をとった樹体ジョイント仕立て法というのが紹介されていた。
隣の樹の主枝を繋ぐ接ぎ木する方法なんだそうです。これは、苗木が十分な収量をとれるまで10年かかっていたのを5年に短縮される。
そして、剪定・受粉・袋かけ・収穫の作業が1/2から3/4になる画期的な方法なんですって。
これを考えた人は、柔軟な頭の持主なんでしょうね。

カブ

キタイ種苗の「早生大蕪」のところでF1(一代雑種)の話が出てきた。そこで、種苗家(ブリーダー)らしい記述がありました。
古い在来種が消滅していくのはF1品種のせい、F1品種を商品化する育種会社のせいだという人がいる。こう指摘したくなる気持ちもわかるが、筋違いな話である。そもそも在来種の価値と重要性を一番理解しているのは、育種会社のブリーダーたちだからだ。
そうでしょうね。
そもそも、どんな品種を育てるかは、農家・流通・小売・消費者・政府などの都合で決まる。
F1であるか、固定種であるかは関係無い。それぞれのステークホルダーが望むものが多く栽培され、望まれないものが減る・消えるだけ。
ブリーダーは世の中に存在する品種が多いことを望むのがあたりまえ。交配する相手の種類が多い方が望む形質をもつ品種を生み出せる可能性が高まるのだから。
それを、ローカルフード法などという上記をまるで理解していない法律を作ろうとしている人達にはドン引きですわ。

F1繋がりで次のことが書かれている。
世界初のF1品種が日本で実用化されたことにすっかり忘れてしまっている場合がある。
この記念すべき品種を育成した人物は、東京帝国大学農科大学(現東京大学農学部)助教授の外山亀太郎であり、品目はカイコであった。時は第一次世界大戦が始まった1914年。じつにアメリカのトウモロコシよりも7年早い。
・・・
外山亀太郎が開発したF1品種は、卵からかえる率が高く、幼虫は丈夫で育成は揃って旺盛、さらに繭が大きくなったため、単位面積当たりの収繭量は約2倍の重さまでに増加した。
トウモロコシの話は知っていたが、カイコのことは知りませんでした。すげーじゃねーか。

現東京大学農学部・・・
外山亀太郎氏は、デマ屋が教授をしているのを草葉の陰で泣いているだろうね。



日本の品種はすごい-うまい植物をめぐる物語
竹下大学
中央公論新社
2019/12/17


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