郷地秀夫医師の福島の鼻血放射線原因説はデタラメ
美味しんぼの鼻血は、郷地秀夫医師の説を根拠にしています。
その他の福島第一原発事故由来の放射性物質が原因で健康被害が出たとデマをばら撒く人達の根拠にもなっています。
その説のデタラメっぷりを解説します。
原文は「第55回日本社会医学会総会2014」のP102-103を見て下さい。
これから一部引用し、指摘していきます。
タイトルは次のようになっています。
この発表(論文ではない)のポイントとなる部分を引用します。
これをまとめます。
・球形金属粒子の Cs が1粒鼻粘膜に丸一日付着した場合の被曝量は、135.4mSv/kg/日
・一日、数百を超えるこうした放射線微粒子を吸い込んでいた可能性がある
0.0000001159 kg × 500 × 135.4mSv/kg/日 = 0.00784643mSv/日 = 7.84643 μSv/日
135.4mSv/kg/日 と 0.00784643mSv/日 では受ける印象は全く違いますね。
マルっきりの騙しです。
「鼻腔の血管に 100mSv を超える被曝が起こる」と書くが、ちゃんと単位付けて 135.4mSv/kg/日 と表記するとまるっきりのデタラメだとわかるということです。
郷地氏も書いていますが、鼻血は主にキーゼルバッハ部位で発生します。
90%がキーゼルバッハ部位で発生していると言われています。
そのキーゼルバッハ部位は、小指の頭程度の広さしかないので、面積 1cm2、深さ 300μm にある皮膚はとてもではないが 1kg にならない。
全鼻の表面積も160cm2位(約12cm四方)のようだが、もちろんこれでも 1kg にはならない。
勝手に「kg 当たり」にするな!
例えると、髪の毛の細さの針で刺したのに、包丁で刺したら人が死ぬと言っているようなものです。
135.4mSv/日 の被曝をするのにどれだけの量が必要か計算してみましょう。
135.4mSv/日 ÷ 0.00784643mSv/日 = 17256
数百って言っているが、その17256倍(8,628,000個)近く Cs 粒子が存在しないと 135.4mSv/日 にはならない。
バカも休み休み言えって感じです。
これによると、2Gy(郷地氏の計算に合わせると 2Sv)で初期紅斑が起きるとある。
2Sv は 135.4mSv の 14.78倍の線量である。
血管までの距離は、皮膚より鼻の方が近いといっても無視できる程の差ですね。
そもそも紅斑なので、出血するわけではない。
「東京電力福島第一原子力発電所の事故当時に、放射性物質が鼻の粘膜に付着することで、鼻血がでることは考えられますか?」
という質問に答えています。
使った数字は少し違いますが、事故当時の 1000倍以上 でないと起きないという結論は一緒ですね。
急性放射線障害はガンマ線による体全体の外部被曝しか考えていないから、ベータ線による接触局所被曝は考えられていないと郷地氏は言う。
だが、量子科学技術研究開発機構の資料を見ると、ICRPではど素人で思いつくことはとっくに検討済みってことです。
・郷地氏の言う量の放射性 Cs が吸着しても、郷地氏の言う 100mSv には達しない(10000分の1)
・100mSv だったとしても、皮膚に吸着した放射性物質が影響を及ぼす量の10分の1でしかない
・郷地氏の言う量の放射性 Cs は、影響を及ぼす量の 100000分の1 でしかない
・郷地氏の言う量の放射性 Cs は、事故直後でも被曝していない
ということで、郷地氏の説は科学的根拠はまるっきり無し。
×放射線による鼻血はないとする事こそ風評
○放射線による鼻血はあるとする事こそ風評
■「保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイト ホット・パーティクル」
金属粒子や花粉 による放射性 Cs の影響について書かれている。
ベータ線の減衰率にもか書かれている。
■ICRU Report56 "放射線防護のための外部べ一タ線のドジメトリー" の解説
「12Gy以上の急性の被曝後に, 表皮の基底細胞の死と真皮上部内の血管の損傷により生じる。」
12Gy以上で血管に損傷が生じるらしいが、血が外部に出る(鼻血となる)とは限らない。
■「生体防御における鼻腔 ・副鼻腔の役割」
「鼻粘膜血管の構造と役割,その異常」
「光学および電子顕微鏡による鼻粘膜の形態」
「電子顕微鏡レベ ルでの鼻科学」
ベータ線の「飛程距離が 300μm」とあったので、その深さに毛細血管があるのか知りたかったのだが、構造は書かれていても各層の厚さは分からなかった。
■「花粉症環境保健マニュアル2022」
郷地氏はスギ花粉のことも触れていたので、最大でどれだけあって、鼻の中にどれくらい吸着するか調べようとした。
だが、金属粒子の放射性 Cs ですら全く問題ないことが分かったため、深掘りは止めた。
「花粉症 −その原因物質とメカニズム−」
鼻内花粉数と浮遊花粉数との比較がされている。
■「ICRP勧告 日本語版シリーズ(PDFダウンロード) | 公益社団法人日本アイソトープ協会|JRIA」
郷地氏はICRP勧告をまるで読んでいないのだろうね。
■「鼻血は被曝影響だったのか――原発事故のデマや誤解を考える/菊池誠×小峰公子 - SYNODOS」
その他の福島第一原発事故由来の放射性物質が原因で健康被害が出たとデマをばら撒く人達の根拠にもなっています。
その説のデタラメっぷりを解説します。
原文は「第55回日本社会医学会総会2014」のP102-103を見て下さい。
これから一部引用し、指摘していきます。
タイトルは次のようになっています。
鼻血は福島原発事故の放射線によって起こり得る*その医学的機序の一考察
-放射線による鼻血はないとする事こそ風評-
○郷地秀夫(神戸健康共和会・東神戸診療所)
橘 真矢(東神戸病院・放射線科)
この発表(論文ではない)のポイントとなる部分を引用します。
計算すると鼻腔の血管に 100mSv を超える被曝が起こることになる。その機序と結果を説明する。
・・・
不溶性の球形の金属粒子で、最大のものは、2.6μm の大きさで、Cs134 と Cs137 を 3.31Bq, 3.27Bq 合計 6.58Bq 含むの(※原文のまま)粒子が認められている。
その粒子が鼻粘膜に丸一日付着した場合の、血管の被曝線量を計算した。γ線は透過性が高く被曝線量は無視できる。
主要なのはβ線で、1秒間のエネルギーは Cs134 が0.157MeV、Cs137 が 0.188MeV である。(MIRDより)
2つを合計した一日のエネルギーは 9.81E+10MeV となる。それをジュールJ単位に変換すると、1.57E-8J となる。
β線の飛程距離は平均 300~350μm と考えられ、それぞれを半径とする球の体積を求め、比重を 1.025 として重量を求めると、
飛程距離が 300μm では 1.159E-07Kg となり 350μm では、1.84E-7Kg となる。
1.57E-8J をそれぞれの重さで割り、kg 当たりの被曝線量 Sv 単位を求めると、300μm では 135.4mSv となり、350μm では 85.3mSv となる。
いずれも低線量とは言えない被曝線量である。
当時の福島県の高濃度汚染地域では、一日、数百を超えるこうした放射線微粒子を吸い込んでいた可能性がある。
さらに、事故当時の3月はスギ花粉の散逸する季節であった。
福島のスギ花粉・・・
【考察】政府は、鼻血放射線起因説を取り上げた雑誌の連載作品を風評として激しく批判し、出版社は連載を休止した。
放射線と鼻血の因果関係を証明することは困難であるが、関係ないことを立証することはもっと困難である。
科学的根拠もなく、政府が無関係論を強圧的に唱えることは言論統制にも繋がる大きな問題を含んでいると考える。
放射線障害に不安になっている被災者に、心を寄せた援助、対応こそが望まれる。それは、科学者にも求められる姿勢ではないかと考える。
【結論】福島原発事故による放射線は相当量の鼻粘膜の被曝を起こした可能性があり、鼻血の原因になっているかもしれない。
これをまとめます。
・球形金属粒子の Cs が1粒鼻粘膜に丸一日付着した場合の被曝量は、135.4mSv/kg/日
・一日、数百を超えるこうした放射線微粒子を吸い込んでいた可能性がある
実際の被曝量を計算してみる
郷地氏の書いている数字があっている前提で、実際の被曝量を計算してみます。飛程距離が 300 μm では 1.159E-07Kg・・・当時の福島県の高濃度汚染地域では、一日、数百を超えるこうした放射線微粒子を吸い込んでいた可能性がある。一般的に数百といったら、2・300 あたりを指すが、多めに見て 500 としてみましょう。
0.0000001159 kg × 500 × 135.4mSv/kg/日 = 0.00784643mSv/日 = 7.84643 μSv/日
135.4mSv/kg/日 と 0.00784643mSv/日 では受ける印象は全く違いますね。
マルっきりの騙しです。
「鼻腔の血管に 100mSv を超える被曝が起こる」と書くが、ちゃんと単位付けて 135.4mSv/kg/日 と表記するとまるっきりのデタラメだとわかるということです。
郷地氏も書いていますが、鼻血は主にキーゼルバッハ部位で発生します。
90%がキーゼルバッハ部位で発生していると言われています。
そのキーゼルバッハ部位は、小指の頭程度の広さしかないので、面積 1cm2、深さ 300μm にある皮膚はとてもではないが 1kg にならない。
全鼻の表面積も160cm2位(約12cm四方)のようだが、もちろんこれでも 1kg にはならない。
勝手に「kg 当たり」にするな!
例えると、髪の毛の細さの針で刺したのに、包丁で刺したら人が死ぬと言っているようなものです。
135.4mSv/日 の被曝をするのにどれだけの量が必要か計算してみましょう。
135.4mSv/日 ÷ 0.00784643mSv/日 = 17256
数百って言っているが、その17256倍(8,628,000個)近く Cs 粒子が存在しないと 135.4mSv/日 にはならない。
バカも休み休み言えって感じです。
どの位の吸着すると影響がでるのか?
「部分被曝(皮膚被曝時)のバイオドシメトリ」に皮膚(鼻粘膜ではない)におけるベータ線外部被曝の話が書かれている。これによると、2Gy(郷地氏の計算に合わせると 2Sv)で初期紅斑が起きるとある。
2Sv は 135.4mSv の 14.78倍の線量である。
血管までの距離は、皮膚より鼻の方が近いといっても無視できる程の差ですね。
そもそも紅斑なので、出血するわけではない。
量子科学技術研究開発機構の見解
「放射線被ばくに関するQ&A - 量子科学技術研究開発機構」で「東京電力福島第一原子力発電所の事故当時に、放射性物質が鼻の粘膜に付着することで、鼻血がでることは考えられますか?」
という質問に答えています。
放射性物質の付着により鼻血が出ることは考えにくいといえます。
放射線に被ばくすることで、皮膚や粘膜が障害を受けることがあります。
国際放射線防護委員会(ICRP)は、刊行物No.103において、過去の被ばく事故から得られた科学的知見に基づき、放射線被ばくによる人体への確定的影響1が現れる線量(閾値)について、1%の方に皮膚障害の軽い症状である発赤が現れる線量は3-6グレイですが、出血が起きる可能性がある放射線熱傷と呼ばれるやけどのような症状は、5-10グレイとしています。
・・・
そのため(※発赤が現れることを指す)には、137Csが1cm2あたり、3.3×105Bqの量、付着している必要があります。このような付着を起こすためには、成人の場合で、4.4×107Bq(44MBq、メガベクレル)、5歳児の場合2.1×107Bq(21MBq)、吸入により摂取する必要があります(ICRP66)。
しかし、吸入により44MBqもの摂取があるとは考えられません。
・・・
また、福島県内の航空機モニタリングマップ等にあるセシウムの地表面濃度で比較的高い地域で1MBq/m2~ですので、仮に1m2の土にあるセシウムを全て取込んでも1MBqです。福島第一原子力発電所に入域して影響がでたのであれば,退域時の身体サーベイで確実に汚染が発見できます。また敷地内の137Csの大気中最大濃度は270Bq/m3であり、1日の最大吸入摂取量は成人で6.0kBq、5歳児で2.4kBqであり(ICRP 71)、この1000倍以上も吸入摂取することは考えられません。
使った数字は少し違いますが、事故当時の 1000倍以上 でないと起きないという結論は一緒ですね。
急性放射線障害はガンマ線による体全体の外部被曝しか考えていないから、ベータ線による接触局所被曝は考えられていないと郷地氏は言う。
だが、量子科学技術研究開発機構の資料を見ると、ICRPではど素人で思いつくことはとっくに検討済みってことです。
まとめ
・政府/ICRPなどが放射性物質吸着による影響を考慮していないという郷地氏の主張は大間違い・郷地氏の言う量の放射性 Cs が吸着しても、郷地氏の言う 100mSv には達しない(10000分の1)
・100mSv だったとしても、皮膚に吸着した放射性物質が影響を及ぼす量の10分の1でしかない
・郷地氏の言う量の放射性 Cs は、影響を及ぼす量の 100000分の1 でしかない
・郷地氏の言う量の放射性 Cs は、事故直後でも被曝していない
ということで、郷地氏の説は科学的根拠はまるっきり無し。
×放射線による鼻血はないとする事こそ風評
○放射線による鼻血はあるとする事こそ風評
その他参考資料
■「保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイト ホット・パーティクル」
金属粒子や花粉 による放射性 Cs の影響について書かれている。
ベータ線の減衰率にもか書かれている。
■ICRU Report56 "放射線防護のための外部べ一タ線のドジメトリー" の解説
「12Gy以上の急性の被曝後に, 表皮の基底細胞の死と真皮上部内の血管の損傷により生じる。」
12Gy以上で血管に損傷が生じるらしいが、血が外部に出る(鼻血となる)とは限らない。
■「生体防御における鼻腔 ・副鼻腔の役割」
「鼻粘膜血管の構造と役割,その異常」
「光学および電子顕微鏡による鼻粘膜の形態」
「電子顕微鏡レベ ルでの鼻科学」
ベータ線の「飛程距離が 300μm」とあったので、その深さに毛細血管があるのか知りたかったのだが、構造は書かれていても各層の厚さは分からなかった。
■「花粉症環境保健マニュアル2022」
郷地氏はスギ花粉のことも触れていたので、最大でどれだけあって、鼻の中にどれくらい吸着するか調べようとした。
だが、金属粒子の放射性 Cs ですら全く問題ないことが分かったため、深掘りは止めた。
「花粉症 −その原因物質とメカニズム−」
鼻内花粉数と浮遊花粉数との比較がされている。
■「ICRP勧告 日本語版シリーズ(PDFダウンロード) | 公益社団法人日本アイソトープ協会|JRIA」
郷地氏はICRP勧告をまるで読んでいないのだろうね。
■「鼻血は被曝影響だったのか――原発事故のデマや誤解を考える/菊池誠×小峰公子 - SYNODOS」
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