安保3文書の閣議決定に際する新聞各紙の社説での主張
安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画 ※リンク先は一次資料)が2022年12月16日に閣議決定されました。
その翌日の社説はこの話題で持ち切りでしたので、各紙の主張をまとめました。
各紙の社説リンクはこちら。

※共同通信の内容は佐賀新聞を参照のこと
ただし、次の京都新聞のような説明はOK。
反撃能力について、反対している新聞が書いている内容と実際の内容は乖離しています。
事実を正確に伝えた上で主張をしてもらいたいところです。国家安全保障戦略のP17,18から関係する箇所を引用します。
そして、「先制攻撃は許されない」とも言っていて、「先制攻撃で国際法違反になる」などと書いている社説は嘘つきということになります。

※世界銀行のデータより作図
2倍にしても中国の軍拡にはかないません。
中国との相対的な関係において、現状維持は大幅な軍縮、2倍でも軍縮です。
「国民的議論をしろ」=「ずっと反対だ」と認識した方が良いでしょう。

詳細はこちら。
その翌日の社説はこの話題で持ち切りでしたので、各紙の主張をまとめました。
各紙の社説リンクはこちら。

※共同通信の内容は佐賀新聞を参照のこと
敵基地攻撃能力と書いている時点で捏造新聞確定
上記に3文書へのリンクがあるので見てもらいたいのだが、「敵基地攻撃能力」とは1つも書かれておらず「反撃能力」とあります。ただし、次の京都新聞のような説明はOK。
改定の最大の問題は、相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有を明記したことだ。従来、政府は敵基地攻撃能力と呼び、憲法解釈で「自衛の範囲に含まれる」としつつも、「政策判断」で保有しなかった。
反撃能力について、反対している新聞が書いている内容と実際の内容は乖離しています。
事実を正確に伝えた上で主張をしてもらいたいところです。国家安全保障戦略のP17,18から関係する箇所を引用します。
我が国への侵攻を抑止する上で鍵となるのは、スタンド・オフ防衛能力等を活用した反撃能力である。近年、我が国周辺では、極超音速兵器等のミサイル関連技術と飽和攻撃など実戦的なミサイル運用能力が飛躍的に向上し、質・量ともにミサイル戦力が著しく増強される中、ミサイルの発射も繰り返されており、我が国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっている。こうした中、今後も、変則的な軌道で飛翔するミサイル等に対応し得る技術開発を行うなど、ミサイル防衛能力を質・量ともに不断に強化していく。「相手の領域において」と言っていて敵基地に限定していないのです。
しかしながら、弾道ミサイル防衛という手段だけに依拠し続けた場合、今後、この脅威に対し、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつある。
このため、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要がある。この反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力をいう。
こうした有効な反撃を加える能力を持つことにより、武力攻撃そのものを抑止する。その上で、万一、相手からミサイルが発射される際にも、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、反撃能力により相手からの更なる武力攻撃を防ぎ、国民の命と平和な暮らしを守っていく。
この反撃能力については、1956 年2月 29 日に政府見解として、憲法上、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」としたものの、これまで政策判断として保有することとしてこなかった能力に当たるものである。
この政府見解は、2015 年の平和安全法制に際して示された武力の行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるものであり、今般保有することとする能力は、この考え方の下で上記三要件を満たす場合に行使し得るものである。
この反撃能力は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないことはいうまでもない。
また、日米の基本的な役割分担は今後も変更はないが、我が国が反撃能力を保有することに伴い、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくこととする。
そして、「先制攻撃は許されない」とも言っていて、「先制攻撃で国際法違反になる」などと書いている社説は嘘つきということになります。
軍拡?
以下のグラフを見ていただきましょう。
※世界銀行のデータより作図
2倍にしても中国の軍拡にはかないません。
中国との相対的な関係において、現状維持は大幅な軍縮、2倍でも軍縮です。
国民的議論
国民的議論をしろというが、その実施方法・完了基準を述べた社説を見たことがありません。「国民的議論をしろ」=「ずっと反対だ」と認識した方が良いでしょう。

詳細はこちら。
社説一覧
新聞 | 社説 |
---|---|
要約 | |
朝日新聞 | 安保政策の大転換 「平和構築」欠く力への傾斜 |
日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているのは事実で、着実な防衛力の整備が必要なことは理解できる。 ならば、来年の通常国会を始めとする開かれた場で、自分の言葉で説明を尽くし、必要な見直しを躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。 | |
毎日新聞 | 安保戦略の閣議決定 国民的議論なき大転換だ |
専守防衛の原則に基づく、戦後日本の安全保障政策の大転換である。本来、国会で熟議を重ねて、国民に説明を尽くさなければならない。 平和国家としてのあり方をなし崩しに変え、負担を強いる。それでは、新たな安保戦略に対する国民の理解は得られまい。 | |
東京新聞 | 安保3文書を決定 平和国家と言えるのか |
岸田文雄首相は、安全保障政策を大転換しても「日本は平和国家だ」と胸を張れるのか。 衆院解散・総選挙で軍拡や増税の是非を国民に問う。それが議会制民主主義の筋道である。 | |
読売新聞 | 安保3文書改定 国力を結集し防衛体制強めよ |
これまでの安全保障政策と、防衛費の水準を大きく見直す歴史的な改定だ。政府は、脅威を見据え、新たな計画を着実に実行する必要がある。 安全保障や防衛予算が、これほど注目されたことはないだろう。政府は、防衛の大切さを国民に理解してもらうため、丁寧な説明に努めてほしい。 | |
産経新聞 | 安保3文書の決定 平和守る歴史的大転換だ 安定財源確保し抑止力高めよ |
岸田文雄政権が、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保3文書を閣議決定した。 令和10年度以降も相当額の防衛費が必要で安定財源の手当ては重要だ。自民党議員は大局観を持つべきで、抑止力を高める防衛費を確保する責任を忘れてはならない。 | |
日本経済新聞 | 防衛力強化の効率的実行と説明を |
世界は変わった。ロシアがウクライナを侵攻し、台湾統一に武力行使を辞さない構えの中国は日本近海にミサイルを撃ち込む。 歴史的な安保政策の転換だけに政府は今後の国会審議などで野党の意見に真摯に耳を傾け、建設的な議論をすることで国民の幅広い支持を得る努力をすべきだ。 | |
東亜日報 | 「専守防衛」破棄の日本と北朝鮮の核を頭上に、軍事大国に囲まれる韓国 |
日本政府が16日、敵の基地を攻撃する「反撃能力」の保有と防衛費2倍の増額を明記した安保3文書(国家安全保障戦略、防衛計画大綱、中期防衛力整備計画)を閣議決定した。 米国に代わって日本が主導する地域同盟の下位パートナーに満足しないのであれば、いつにも増して自強の努力が切実だ。 | |
ハンギョレ新聞 | 「戦争のできる国」へと向かう日本、歴史の教訓を忘れてはならない |
日本政府は北朝鮮や中国などのミサイル基地を直に攻撃する「敵基地攻撃能力(反撃能力)」を保有することを16日に決定し、事実上「戦争のできる国」へと変貌した。 この日、日本が国家安保戦略でまたしても「独島(ドクト)領有権」を主張したことは実に嘆かわしい。 | |
琉球新報 | 安保関連3文書決定 「戦争する国」を拒否する |
政府は外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など新たな安保関連3文書を閣議決定した。 米中対立で偶発的な衝突が起きれば、沖縄が再び戦場になりかねない。繰り返し主張してきたように、武力に頼らず外交努力で緊張を緩和すべきだ。 | |
沖縄タイムス | [安保大変容:3文書閣議決定]選挙で信を問うべきだ |
結論ありき総額ありき、国会論議は深まらず国民に知らせる努力もせず、多くの懸念を残したまま文字通りあたふたと、安全保障に関わる重大な政策転換が承認された。 米軍専用施設の7割が沖縄に集中している現実は、政治の怠慢というほかない。防衛費に充てる増税も決めており、総選挙で信を問うべきだ。 | |
しんぶん赤旗 | 安保3文書決定/戦後日本のあり方覆す暴挙だ |
岸田文雄政権が、新たな「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保3文書を閣議決定しました。 主な財源は、所得税を含む増税です。憲法と平和と暮らしを破壊する岸田政権の打倒に向けた歴史的なたたかいを大きくする時です。 | |
信濃毎日新聞 | 安保3文書決定 先の見えぬ軍拡が始まる |
岸田文雄政権が、外交と安全保障政策の指針となる国家安全保障戦略と、これを反映した国家防衛戦略、防衛力整備計画の新3文書を閣議決定した。 政府方針を大筋で認めている野党には再考を求める。軍拡の流れを変え得るかは、国民一人一人の意識に懸かっている。 | |
京都新聞 | 防衛政策の転換 日本を危険にさらす軍拡路線 |
日本の安全をどう守るのか。そのため必要な防衛力を機能させるには、どんな整備が必要か。 防衛増税の是非も含め、選挙で国民の信を問うべきである。 | |
新潟日報 | 安保3文書改定 平和主義の行方を危ぶむ |
専守防衛の枠を逸脱し、近隣諸国との間にさらなる緊張や摩擦を生じさせるのではないかと懸念が募る。戦後、現行憲法の下で日本が堅持してきた平和主義の行方が危ぶまれる。 だが議論の場となった有識者会合や与党の実務者協議は非公開で、国会の議論は不十分だ。国の行方を左右する大問題を、政府が一方的に決めるような手法はやはり、納得できない。 | |
西日本新聞 | 安保3文書決定 「専守防衛」を踏み外すな |
防衛力を高める上での大前提は国是の「専守防衛」である。一片の疑問も残してはならない。 国民の幅広い意見を取り入れ、国是に沿った防衛力の内容、予算規模、財源の一つ一つを丁寧に検討してもらいたい。 | |
北海道新聞 | 安保3文書閣議決定 戦後平和主義覆す暴挙だ |
戦後の平和主義が、重大な岐路に立たされている。政府は外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定した。 来年の通常国会では徹底的な議論が必要だ。首相は国民の理解を得ずしてこれらの政策を進めてはならない。 | |
河北新報 | 防衛増税決着先送り 熟慮不足、振り出しに戻せ |
今後5年間の防衛費を計43兆円に増やすため、「数合わせ」で決着を急いだ拙速な対応が墓穴を掘った。熟慮不足が招いた当然の結果だ。 議論の先送りはしこりを残し、首相の求心力低下を加速させる危険の芽をはらむ。 | |
河北新報 | 安保政策の転換 専守防衛逸脱してはならぬ |
戦後の日本に貫かれてきた平和主義を自ら揺るがしてはならない。専守防衛の原則を国民的な議論もなく、転換させるのか。 大戦当事国として軍備拡大に歯止めをかける抑止力は十分か。平和国家の本質が問われる重大な局面である。 | |
静岡新聞 | 安保戦略閣議決定 国是の専守防衛堅持を |
岸田文雄政権は外交・安全保障政策の指針となる「国家安全保障戦略」など安保関連3文書改定を閣議決定した。 これから日本はどこへ向かうつもりなのか。首相は国民の不安に真摯[しんし]に答える必要がある。 | |
神戸新聞 | 安保政策の転換/「軍事大国」への歯止めはどこに |
戦後日本の安全保障政策の根本的転換である。 取り巻く環境が厳しいほど、互いの考えを知る必要がある。戦争を防ぐ外交戦略の議論を深めるべきだ。 | |
中国新聞 | 安保政策の転換 平和憲法をゆがめるな |
日本が戦後貫いてきた専守防衛を国民的な議論もなく、大きく変質させるのか。 平和国家の岐路である。まずは国会で徹底的に議論するべきだ。 | |
山陽新聞 | 防衛増税の議論 拙速な手順に懸念拭えぬ |
防衛費の規模や財源の唐突さが否めない。安定財源の確保には精緻な議論が必要だ。 防衛力の中身を含め、防衛費を巡る議論では必要性の精査を尽くし、場合によっては内容や規模も見直すべきである。丁寧に合意形成を図る努力が欠かせない。 | |
高知新聞 | 【安保関連3文書】立ち止まり議論やり直せ |
政府が安全保障関連3文書の改定を閣議決定し、「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費の大幅増などが正式な方針になった。 本来、国政選挙で信を問いながら慎重に進めるべきテーマであろう。いまのやり方は、国民不在で決めようとしていると疑われても仕方がない。 | |
佐賀新聞 | 安保戦略の転換 信問うべき平和国家の針路 |
岸田政権は外交・安全保障政策の基本指針となる「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定を閣議決定した。 冷静な情勢分析に基づき、地域の緊張緩和に粘り強く取り組む。それ以外に日本が進む道はないことを再確認すべきだ。 |
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