食を壊したい!③ 中学理科をやり直したら?

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ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?」(堤未果)を読みました。

過去記事はタグを参照のこと。
『第2章 フードテックの新潮流』にツッコみます。

DDTは常温で気体だったんですね、知りませんでした。国際ジャーナリストは博識だな~

モンサント社の開発史を遡るとよくわかる。
同社の最初の成功は、自然分解せず生き物の体内で凝縮される殺虫剤「DDT」だ。
出版社も含め、言葉を知らないとは恥ずかしいですね。

Wikipediaによると「凝縮(ぎょうしゅく 英:Condensation)は、気体から液体への物質の状態変化であり、気化の逆にあたるもの。液化とも言う。」 。

国際ジャーナリスト様によると、常温で気体のDDTが、生物の中(おおむね気温より温度が高い)で液体になるそうです。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト:化学物質:1,1,1-トリクロロ-2,2-ビス(4-クロロフェニル)エタン」によると、
融点:108.5~109℃
沸点:260℃
とのこと。

常温で固体ですね。ぷぷっ。

「凝縮」ではなく「濃縮」をイメージしていたのでしょうが、ダメダメです。

食用作物とヒト胚の安全性を同列に語る愚

遺伝子組み換え技術と違い、ゲノム編集による遺伝子破壊は自然界で起きる変異と同等だというのが、開発者側が主張する、安全性の根拠になっている。
だが一方で、私たちは人類史上まだ誰も入ったことのない領域に足を踏み入れた。
ゲノム編集の主な手法である〈クリスパーキャス9〉を使って、ヒト胚を遺伝的に改変する実験では、狙った部位やその周辺に望ましくない大規模な変化が生じたり、染色体が損傷した事例などが報告され、安全性への懸念もまた、次々に明らかになってきている
(Nature (2020-06-25) CRISPR gene editing in human embryos wreaks chromosomal mayhem)。
ゲノム編集における安全性を、食用作物とヒト胚で同列に語るとは愚の骨頂ですね。

食用作物であれば、オフターゲットが発生したら戻し交配で取り除けばよいが(「オフターゲット変異が起きるから危険、なのですか?」参照)、ヒト胚の場合はどうするのでしょうか?
オフターゲットによってどんな形質が現れるかわからないが、その子供が大きくなって健常者と子供を作ってオフターゲットを除去するということになる。
ゲノム編集で生まれた一代目は我慢しろっていう話になる。二代目(孫)もオフターゲットが除去されるとは限らないが。

ヒト胚でゲノム編集は危険があるから、食用作物においても危険であるというアホな論理です。

責任なし?

ゲノム魚に懸念を抱いた、宮津市の市民団体<麦のね宙ふねっとワーク>が厚生労働省に問い合わせたところ、こんな回答が来た。
<当該生物について国が使用を許可するものではありません>
何かあっても国は関知しない、ふるさと納税に導入を決めた自己責任ですよ、ということだ。
・・・
先端テクノロジーが作り出した未知の魚は、それを食べる私たちに何かあった時の責任の所在も<未知>なのだ。
未知というか、著者が無知ですね。

■許可?
まず厚生労働省の「当該生物について国が使用を許可するものではありません」について見ていきましょう。
市民団体とやらがどういう問い合わせをしたかわからない。
だが、「許可」でないのは問い合わせするまでもく以下を見ればわかる。
ゲノム編集技術応用食品の基本的な取り扱い
※厚生労働省の「ゲノム編集技術応用食品を適切に理解するための6つのポイント」より引用

自然界または従来の育種技術を超える遺伝子変化がなければ「届出」なのですよね。

後の方で「メーカーが届け出さえすれば、安全審査も表示もなしでOK」などと書いているが、上記資料を見ればデタラメであることがわかるでしょう。

■責任の所在
「何かあった時の責任の所在も<未知>なのだ」も、ちゃんちゃらおかしい。

消費者及び食品安全担当大臣が国会で次のように答弁しています。
○若宮国務大臣 一般論といたしまして、我が国におけます食品の安全性、これにつきましては、まず事業者において責任を持って確保していただくこととともに、食品衛生法によって、人の健康を損なうおそれがある食品の販売というのは禁止をされているものであると思います。
当たり前ですが、ほかの食品と同様に事業者の責任だと言っていますね。
どこが、責任の所在が<未知>なんですかね?

そもそも、従来の品種改良されたものや、自然にいる魚なども安全性の確認はしていないのですよ。
あからさまに分かる毒性などが無いと思って食べているだけ。

何でこんなことも正しく書けない?

茨城県と岡山県では2021年11月に、ゲノム編集小麦の作付けが始まった。税金で作られ、民間企業がそれを売るのだ。
この文章からは「税金で開発したゲノム編集小麦の商用栽培が茨城県と岡山県で始まった」と読み取れますよね。

ですが、全く違います。
令和3年度 ゲノム編集技術により得られたアラニンアミノ酸転移酵素を改変した穂発芽耐性コムギの栽培実験について | 農研機構
に正しいことが書かれているので、要約します。

「岡山大学と農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の共同研究で作られたゲノム編集小麦の栽培実験が茨城県の農研機構の隔離ほ場で2021年11月に始まった。」

民間がどうのこうのはこの時点では全く関係無い。

種苗法改正・種子法廃止・農業競争力強化支援法で都道府県の開発した種が民間で使えなくなる」と寝ぼけたことを言っていたのは誰でしたっけ。
まるっきり逆の文句を言っていて笑えますわ。

今、農業の話をしているのだが

ちなみに、子どもたちや福祉施設に無料配布されようとしているゲノム編集トマトは、日本人(筑波大学教授)が開発した国産イメージが強いが、特許は別問題だ。ゲノム編集技術は米国の大学と研究所がおさえており、研究用には無料で使えるが、商業用で使う場合は100億円規模のライセンス料がかかる(「日本経済新聞」2020年11月19日)。
日本国内でみみっちく売り出すゲノム編集トマト・フグ・鯛などで100億円のコストをペイできるわけがないと常識的に考えますよね。

正しい情報を「シリーズ:いちから分かる!バイオと知財の話 【第2回】特許発明の実施権(ライセンス) | バイオステーション」から入手しましょう。
一方、CRISPR/Cas9の農業分野への応用に関しては、医薬品分野と異なり、必ずしも独占実施権が要望されるわけではありません。・・・実施料の基準などは非公開ですが、実際、筆者が所属するゲノム編集国家プロジェクトで生み出された作物も、CRISPR/Cas9を利用する場合には、この枠組みが活用されています。ゲノム編集技術の農業分野における応用では、有望標的への利用に関して次々と独占実施権が取得され、高額な実施料が必要となる医薬品分野と比較して、ビジネスのための知財基盤の整備がしやすい状況にあると言えます。
100億円と言っているのは医薬品向けの話で、農業の場合はそうではないとありますね。

一般常識に反することが書かれていたら、デマだと疑え!がデマ屋の本を読む時の鉄則です。

2048年に海から魚がいなくなる?

テクノロジーは、日々進化のスピードを速め、人間の想像を超えてゆく。
マイクロプラスチック問題に水銀汚染、混獲、乱獲、過剰利用、燃料利用による二酸化炭素排出など、私たち人間の身勝手な行動によって海洋資源は危機にさらされ、科学誌「サイエンス」の出した予測では、2048年までに、世界の海からは魚が消えてしまうという。
Science 自体がそんなことを言うのかね?と思って調べると、いつもの如くデタラメでした。

次のサイトにデタラメだと書かれているので、その内容を要約します。
Fact Check: Will The Oceans Be Empty of Fish by 2048, And Other Seaspiracy Concerns(ファクト・チェック:2048年までに海から魚がいなくなる?)」
Will the oceans be empty of fish by 2048?(2048年までに海から魚がいなくなる?)」

・予測しているのは Science ではなく、Netflix のドキュメンタリーである Seaspiracy
・Seaspiracy は、Science 論文(以降、「論文①」と呼ぶ)の結論にある次の一文を根拠にしている
 「現在の傾向は、21世紀半ばまでに現在漁獲されているすべての分類群が地球規模で崩壊することが予測されるため、深刻な懸念材料である」
・論文①の3年後の Scienceの別論文によると、論文①の前提が変わっているので(良い方向に)、2048年に魚がいなくなるというのは否定されるべきなのだが、それが定着してしまっている。
・論文①では《非漁獲レベルからの相対量の50%の減少を「枯渇」と定義》しているが、40%のときに最も生産的なので、「枯渇」の定義がそもそも間違っている。
 そのため「崩壊」の状態もおかしく、魚がいなくなった状態ではない。

ということです。
よく査読が通って Science に載ったなという感想です。宍道湖のワカサギ激減は農薬が原因だという論文と同じ匂いがします。

こいつは何を言っているのだ?

DNAごとハイジャックせよ ──<合成生物>
「遺伝子工学」という神のテクノロジーを手にした人間は、とどまるところを知らないようだ。
粉ミルクの品不足で困る母親たちに「培養母乳」が宣伝される一方で、野菜や家畜の遺伝子操作よりも、さらに先へと進んだフードテックが勢いを増している。
生物のDNAごとハイジャックし再設計したものを3Dプリンターで作成する<合成生物>だ。
「精密発酵」「細胞農業」などと呼ばれ
、藻や酵母などを人工的に作ったり、遺伝子コードを編集し、DNAに組み込んだ人工微生物から、魔法のようにタンパク質を作り出す。
何を言っているかさっぱりわからない。

《<合成生物>だ。「精密発酵」「細胞農業」などと呼ばれ》を予断なく読むと、「合成生物」を作り出す技術と「精密発酵」「細胞農業」が同義と理解できる。
その技術は《生物のDNAごとハイジャックし再設計したものを3Dプリンターで作成する》とあるが、何を3Dプリンタのノズルから飛ばすつもりなのでしょうか?
次のことが実現できないと3Dプリンタで生物を作ることはできないだろう。

・細胞を構成するすべての分子を解析、生成(または単離)
・そのパターン分の3Dプリンタのノズルを用意
・分子レベルで正確な位置を認識しながら、必要な場所に打ち込む
・構築最中に細胞が崩れないようにする

単に染色体を差し替えるだけならば普通の研究室レベルでできるだろうが、それは3Dプリンティングではない。
全くもって理解不能。

そもそも、「精密発酵」「細胞農業」とはそんなわけの分からない技術ではない。
日本細胞農業協会 CAIC | 細胞農業を学びたいあなたへ」では「精密醗酵」を次のように説明している。
微生物を宿主とした精密発酵により、動物由来の油脂やタンパク質を動物を使わずに生産することができます。
「微生物を使って動物由来の油脂やタンパク質を動物を使わずに生産する」ことを「精密醗酵」と言うらしい。
そのため、堤氏はまるでトンチンカンなことを書いていることになる。

「DNAに組み込んだ人工微生物」は爆笑物のですね。
DNAと微生物とどちらが大きいと思っているのしょうね?
ウイルス(微生物よりもっと小さい)ですら、DNA(またはRNA)とそれを包み込むエンベロープで構成されているのだ(詳細はこちら参照)。

株を持たない主要株主

世界トップレベルの投資家であるゲイツ氏は、まるで先を見通しているかのようだ。
2019年10月。
ニューヨークでコロナウィルスのパンデミックを想定して演習を行う国際会議「イベント201」が開催された。主催したのはジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、世界経済フォーラム、そしてゲイツ氏のビル&メリンダ・ゲイツ財団だ。
このイベントから2ヶ月後の12月に、中国の武漢で新型コロナウィルスが発生、シミュレーション通り世界に拡散し、折しもゲイツ財団が主要株主であるモデルナ社やファイザー社、ビオンテック社は、新型コロナウィルスのワクチンで空前の利益をあげることになる。
まず日本語のお話です。
「主催」なのに何故複数の団体が登場するのでしょうか?
「主(おも)に催(もよお)す」なので、1つですよ。複数同列であれば「共催」です。
さすが校正すらしていない本ですね。

ゲイツ財団がファイザー・モデルナ・ビオンテックの主要株主だってさ。
馬鹿も休み休み言えって感じです。
Bill Gates Portfolio (2022 Q3) - Bill & Melinda Gates Foundation Trust Holdings 13F
を見ればわかりますが、その3社の株は持っていません。
超低レベルの陰謀論ですな。

名誉棄損

途上国を中心に全ての子どもたちにワクチンを普及させることを生涯の目標とするゲイツ氏は、この20年間ワクチン開発と普及のために100億ドルを超える資材を惜しみなく投じてきた。2019年のダボス会議の際、CNBCテレビにこの投資について聞かれた彼は、こんなふうに答えている。
「過去20年に100億ドル(約1兆5000円)投資して、リターンは2000億ドル
(約3兆円)、20対1って、ちょっと他にはない利回りでしょう?」
・・・
新型コロナパンデミック以降、次々に変異するウィルスによってワクチン需要は右肩上がりだ。投資家たちにとっても、コロナワクチンの20倍、もしかしたらそれ以上のリターンが見込めるだろう。
これを素直に読むと「ビルゲイツはワクチン普及を隠れ蓑にボロ儲けをしている」ってなりますよね。

Bill Gates turns $10 billion into $200 billion worth of economic benefit
を見れば、まるっきりのデタラメであることが分かります。
記事を和訳し引用します。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団は過去20年間、主に3つの団体(ワクチンと予防接種のためのグローバル・アライアンス、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、世界ポリオ撲滅推進計画)に「100億ドルを少し超える」寄付をしてきました。

ゲイツ氏は、スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラムから、CNBCのベッキー・クイック氏の番組「Squawk Box」で、「20倍以上のリターンがあったと感じています」と語り、この20年余りで2千億ドル(約22兆円)を稼ぎ出すことができたと述べました。「幼い子どもたちが生活し、適切な栄養を摂取し、国に貢献できるようにすることは、一般的な金銭的リターンを超える見返りがあるのです」。
20倍のリターンというのは、実際にその金が返ってきたわけではなく、それだけの価値がある寄付をしたという比喩的表現だ。
このデマ屋は名誉棄損で訴えられて破産しないかな~。

それは、すぐ分解されるだけだよね?

子どもたちが、注射を嫌がるのだ。
そこで、こんな新企画が浮上してくる。
〈新型コロナワクチンに使ったmRNA溶液を、野菜に移植したらどうだろう?〉
かくしてカーネギーメロン大学とカリフォルニア大学が〈食べるワクチン〉の研究を開始、全米科学財団が開発に50万ドルを投じた。開発に関わる植物学者のフアン・パブロ・ジラルド准教授(カルフォルニア大学)によると、例えばレタス1個を食べれば、mRNAワクチン1本分の抗体が体内にできる計算だ。
赤字の部分の疑問にお答えしましょう。
「mRNAはすぐ分解される」が答えです。
このデマ屋さんは、ファイザー・モデルナの mRNAワクチン が分解されないように約マイナス20℃で保管されていることを知らないようです。
このデマ本を喜んで読むのは、反ワクチンでそのへんのリテラシーが無い人達だろうか?

では、レタスに何を移植するのでしょうか?
Grow and eat your own vaccines? | University of California
から訳して引用します。
このプロジェクトの目標は、全米科学財団から50万ドルの助成金を得て実現したもので、mRNAワクチンを含むDNAを植物細胞の複製する部分にうまく送り込めることを示すこと、植物が従来の注射に匹敵するほどのmRNAを生成できることを示すこと、そして最後に正しい投与量を決定することの3点である。
移植するのは、mRNA ではなく DNA ですね。
そりゃそうですね。

ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?
堤未果
文藝春秋
2022/12/16

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