世界で最初に飢えるのは日本 主要参考文献

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鈴木宣弘東京大学教授の本「世界で最初に飢えるのは日本」が8刷になり、主要参考文献が増えているという情報を鈴木教授のツイートから知りその内容を確認してみました。

2個(第1刷)から24個(第8刷)に増えています。

★が付いているのは、デマ屋さんの参考文献です。

世界で最初に飢えるのは日本ではない

■Lili Xia et al., Global food insecurity and famine from reduced crop, marine fishery and livestock production due to climate disruption from nuclear war soot injection, Nature Food, Vol 3,No 586, pp. 586-586, August 2022.

この論文を元に「世界で最初に飢えるのは日本」という書名にしたと思うが、実は日本ではないということが書かれています。
詳細はこちら参照のこと。

遺伝子組み換え成長ホルモンは乳がんの原因?

■Susan E. Hankinson et al., Circulating concentrations of insulin-like growth factor-I and risk of breast cancer LANCET Vol. 351, No. 8113, pp. 1383-1386, May 8, 1888.

IGF-1の血漿濃度が高いと閉経前の女性で乳がんリスクが高くなるという論文です(閉経後の女性の場合は相関なし)。

乳牛への遺伝子組み換え成長ホルモン(rbST)使用

牛乳中のIGF-1が多くなる

その牛乳を飲むと乳がんになる

というのが鈴木教授の論理です。
この論文では、血漿濃度の話をしていて牛乳については言及していない。
ましてや成長ホルモンは全く触れていない。

フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、がんの増殖リスクに影響を及ぼす乳及び乳製品の成長因子に関する報告書を発表(食品安全委員会)」には次のように書かれている。
 乳から製品を製造する過程で、生乳は多くの工業技術的加工を施され、その作用で成長因子含有量は減少する(現在入手できうるデータからは、高温処理後にはIGF-1は検出されず、フランスで販売される乳のほとんどはこのケースである)。他方、成長因子は生体に消化吸収される各段階で分解し、時間経過とともに徐々に減少する。したがって、IGF-1が血流に入ったとしても、その量は、体内で生合成されて循環しているIGF-1の量に比べて少ない
 これに基づくと、乳由来のIGF-1のがん増殖リスクへの寄与度は、それが存在しても、低いと考えられる。
牛乳にIGF-1があっても吸収する際に分解される。
そして、吸収される量よりも多い量が体内で生成されるということ。

そもそも、アメリカで流通している牛乳のIGF-1の濃度は、遺伝子組み換え成長ホルモンの使用有無で大きくは変わらないのですよ。

■June M. Chan et al., "Plasma insulin-like growth factor-I and prostate cancer risk: a prospective study" SCIENCE Vol. 278, pp. 563-566, January 23, 1888.
この論文は、IGF-1で男性の前立腺がんのリスクが高まるというもの。
結局のところ、IGF-1は吸収時に分解されるので、遺伝子組み換え成長ホルモンは関係ないってことです。

グリホサート

■Lyydia Leino et al., Classification of the glyphosate target enzyme (5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate synthase) for assessing sensitivity of organisms to the herbicide Journal of Hazardous Materials, Vol.408, 15 April 2021,124556

腸内細菌の内、グリホサートに感受性の高い種が54%あるという論文です。
実際に実験したものではなく、たんぱく質の構造から感受性が高いだろうとしたもので、エビデンスレベルとしてはかなり低いですね。
グリホサートではない食品添加物の話だが、影響を受けてもすぐに元に戻るという論文もあり、実際のところは全くわかりません。

本当に腸内で感受性が高いのならば、あからさまな影響が出ていると思いますが・・・

お仲間ですね

★印鑰 智哉『アグロエコロジーと生産者組織』(東京大学講義資料、2022年)

「東京大学講義資料」って非公開資料を引用文献にされてもねぇ。
同じ趣旨と思われる動画「アグロエコロジーと生産者組織」があったので飛ばし飛ばし見ました。

過去に誤りを指摘した件を堂々と言っていました。
「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言」についての誤った解説
核戦争があると日本が最初に飢えるという話
土がなくなるという件

それとは別で、面白いことを言っていました。
4分頃:光合成は究極の再生可能エネルギー
アホや。

その他

★鈴木宣弘『食料の海外依存と環境負荷と循環農業』(筑波書房、2005年)
★鈴木宣弘『協同組合と農業経済~共生システムの経済理論』(東京大学出版会、2022年)
NHKスペシャル取材班『2030 未来への分岐点 I:持続可能な世界は築けるのか』(NHK出版、2021年)
環境省編「循環型社会の歴史」 『平成20年版 環境・循環型社会白書』
林 髞『頭脳~才能をひきだす処方箋』(光文社、1958年)
独立行政法人農環境技術研究所 『農業と環境』 No.106 (2009年2月1日)
西原誠司「穀物メジャーの蓄積戦略と米国の食糧戦略」 https://core.ac.uk/download/pdf/235017019.pdf
農林水産省 『我が国の食料自給率(平成18年度食料自給率レポート)』
★Kinoshita J., N. Suzuki, and H.M. Kaiser, “An Economic Evaluation of Recombinant Bovine Somatotropin Approval in Japan,” Journal of Dairy Science, Vol. 87, No.5, pp.1565-1577, May 2004
中村祐介 「デジタル革命 (DX)が農業のビジネスモデルさえ変えていく」 2020.2.20
薄井寛 『歴史教科書の日米欧比較』(筑波書房、2017年)
西尾道徳 『農業と環境汚染』(農山漁村文化協会、2005年)
田中淳子ほか「井戸水が原因で高度のメトヘモグロビン血症を呈した1新生児例」(『小児科臨床』4、1996年)
★堤未果 『株式会社アメリカの日本解体計画』(経営科学科学出版、2021年)
★山田正彦 『タネはどうなる!?』(サイゾー、2021年)
斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社、2020年)
小田切徳美 『農村政策の変貌~その軌跡と新たな構想』(農文協、2021年)
吉田太郎 『土が変わるとお腹も変わる~土壌微生物と有機農業』(築地書館、2022年)

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