孤塁だったことにしたい双葉郡消防士たちの3.11

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孤塁 双葉郡消防士たちの3.11」(吉田千亜)を読みました。

以下のような主張をしている人なので、どんな本を書いているか気になったので読んでみた次第です。


読んだ結果は、双葉消防本部の隊員たちからヒアリングした内容を時系列に並べて書いているので、あまり吉田氏の主張らしきものが出てきていないものだった。
そのため、あまり参考にならなかった。

ぱっと見で本当かいな?って思ったのが次の記述。
東京消防庁のハイパーレスキュー隊や自衛隊の活動は大々的に報道されていたが、双葉消防本部が事故発生以来続けてきた数々の活動についてはまったく報道がなく、誰にも知られていなかった
「まったく」などという言葉を簡単に使う人達には信憑性がないのですよね。

福島原子力発電所に関連する消防の対応について: 2011年 総務省消防庁」にある「福島原子力発電所に関連する消防の対応について(第1報) 平成23年3月19日(土)17時30分 消防庁災害対策本部」には次のように書かれている。
・福島第一原発から4号機において火災が発生した旨の通報があり、双葉地方広域市町村圏組合消防本部(※双葉消防本部のこと)から6隊21人が消火のため順次出動→自然鎮火した模様(16 日)
ハイパーレスキュー隊が福島に入った翌日の3月19日の発表なのですよね。
「誰にも知られていなかった」のですね~

この本のよろしくない点

①人をやたら登場させすぎで、何が何だかわからない
消防団員の手記をまとめたいのならば、「消防団の闘い―3.11東日本大震災 日本消防協会」のように個人ごとにまとめた方が良いだろう。
吉田氏の主張と消防団員の言った内容の区別が無いので、誇張した表現になっていても読者は判断がつかない。

②どこが参考文献から持ってきているか不明

巻末に次の参考文献が記されている。
参考文献
「政府事故調 中間報告書』 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会、二〇一二年
『政府事故調 最終報告書』東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会、二〇一二年
『国会事故調報告書』 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、二〇一二年
『ドキュメント テレビは原発事故をどう伝えたのか』 伊藤守、平凡社新書、二〇一二年
『福島原発事故 東電テレビ会議 4時間の記録』福島原発事故記録チーム編、宮崎知巳・木村英昭解説、岩波書 店、二〇一三年
『浪江町 震災記録誌 あの日からの記憶』 浪江町役場、二〇一三年
プロメテウスの罠』朝日新聞特別報道部著、学研パブリッシング、二〇一二~一五年
『福島第一原発事故 7つの謎』NHKスペシャル『メルトダウン』取材班、講談社現代新書、二〇一五年
『葛尾村 東日本大震災 記録誌 原子力発電所事故による全村避難の記録』 葛尾村役場 二〇一五年
『消防活動記録誌 双葉消防の戦い』 福島県双葉地方広域市町村圏組合消防本部、二〇一六年
『福島インサイドストーリー 役場職員が見た原発避難と震災復興」今井照・自治体政策研究会編著、公人の友社、 二〇一六年
「原発災害地域における『安全神話』の構築と持続 当事者からの社会学の視点で」 市村高志、二〇一九年 Level 7 online データベース 原発報道検証室(https://level7online.jp)
「プロメテウスの罠」が参考文献になっている時点で怪しさ百倍ですが、まあそれは横に置いておきましょう。

引用するときに「○○によると△△」などの表記をするのが一般的だと思うのだが、参考文献を見てはじめて、そんなものを参考にしていたの?ってわかるものばかり。

吉田氏の主張・消防隊員の発言・参考文献がごちゃ混ぜになっていると思ってよいだろう。
これは、資料の価値はありますかね?

そもそも、先ほど触れた消防庁の発表消防団員の手記、消防庁の「東日本大震災記録集」が参考文献になっていないというのはどういうことでしょうか?

あとがきに、2018年10月から話を聞き始めたとある。
時間が経っているので記憶違いもあるだろうから、事実確認するのは必須だと思うのだが、消防庁の発表を参考としていないのはあり得ない。

孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
岩波書店
2020/1/31

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