スフィア基準の禁を余裕で犯す朝日新聞

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令和6年能登半島地震に関するおかしな社説をまとめようと見ていたら、朝日新聞の「能登地震1週間 長期化も見据え対策を」を見つけてしまった。
その中で次のように書かれていました。
 災害や紛争での人道支援のため国際赤十字などが策定した「スフィア基準」という指標がある。居住空間は1人最低3・5平方メートル▽トイレは20人に1基――などだ。日本の避難所は多くの点で基準を下回り、特に女性の視点が欠けているとの指摘は根強い。
「スフィア基準」って初見でしたが、100点でなければ0点とする朝日新聞の素晴らしいポリシーのもと持ち出された基準なのでは?と思い調べました。

■参考文献
・スフィア基準の概要:「第55回 人道憲章と人道対応に関する最低基準(スフィア基準) : 内閣府国際平和協力本部事務局(PKO) - 内閣府
・Sphere Handbookの公式日本語訳の「避難所および避難先の居住地」の章
・「スフィアハンドブック 人道憲章と人道支援における最低基準」の日本語訳PDF

朝日新聞の記述は正しいか?

では、スフィア基準の中身を見ていきましょう。

■居住スペース
避難所および避難先の居住地基準の基本指標として以下が記されています。
1 人あたり最低3.5m2 の居住スペース(調理スペース、入浴区域、衛生設備を除く)
・寒冷気候または都市部において、調理スペースと入浴および/または衛生設備が居住スペース内に設置される場合、1 人あたり、最低4.5 ~ 5.5m2
・内部天井高の最高点が、少なくとも2m(高温気候の場合、2.6m)
朝日新聞の「居住空間は1人最低3・5平方メートル」の記載は正しいですね。

■トイレの数
お次はトイレを見てみましょう。
先ほどの「避難所および避難先の居住地」には、何人当たり何基という基準は書かれていない。
あれ?おかしいですね。
調べると、避難所とは直接関係ない「給水、衛生および衛生促進」の「コミュニティ、公共の場や施設における最低必要なトイレの数」にその数字がありました。
場所短期中長期
地域社会50 人につき、1 基(共同)20 人につき、1 基(家族で共有)
5 人につき、1 基または1 家族につき、1 基
市場50 店舗につき、1 基20 店舗につき、1 基
病院/医療センター20 床または外来患者50 人につき、1 基10 床または外来患者20 人につき、1 基
給食センター成人50 人につき、1 基
子ども20 人につき、1 基
成人20 人につき、1 基
子ども10 人につき、1 基
受入/一時滞在センター50 人につき、1 基
女性用と男性用の割合は、3:1
 
学校少女30 人につき、1 基
少年60 人につき、1 基
少女30 人につき、1 基
少年60 人につき、1 基
事務所 職員20 人につき、1 基

もちろんのこと避難所に関する記述はないので、「地域社会」の「短期」の50人に1基が今回言及するに適切な数字でしょう(中長期的にはホテル・旅館・公営住宅・仮設住宅などに移動するし、年齢は雑多であるため)。

朝日新聞の「トイレは20人に1基」の記載は正しくありませんね
そもそも、避難所におけるトイレの数字基準は定められていない。

朝日新聞は何の禁を犯しているか?

避難所および避難先の居住地に関する基本的概念」に次のように書かれています。
これらの最低基準は単体で適用されるべきではない
スフィア最低基準の一分野における進展は、他の領域の進展にも影響を与える。効果的な支援には、他の支援分野との密接な連携や協力が求められる。
特定の最低基準だけを持ち出して騒ぐと、トータルとしての健全性の向上を害すると言っていますね。

朝日新聞さん、反省したらどうですか?
「初動に人災」「阪神の教訓ゼロ」 能登入りした防災学者の告白 [能登半島地震]:朝日新聞デジタル』なんてアホな記事を出している場合ではありませんよ。

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