このままではデマ屋が飢えない!

このままでは飢える! 食料危機への処方箋「野田モデル」が日本を救う』(鈴木宣弘)を読みました。

過去に散々、農業・食の安全についてデマをばらまいた東大鈴木宣弘教授ですが、本書はどうでしょうか、見ていきましょう。
※過去に出たデマについては触れません

はじめに

「お金を出せば食料はいつでも輸入できる」
かつてはまかり通ったこうした考えはいまや、まったく通用しなくなったことをご存じだろうか。
中国の「食料爆買い」、ウクライナ紛争、あるいは異常気象などにより、食料や生産資材が思うように調達できなくなった現実をわれわれは突きつけられている。
あっ、デマ本確定ですね。
これは「はじめに」の最初です。

デマ屋の特徴として、完全肯定・否定します。
世の中、それほど完全肯定・否定できるものはありません。
例えばテロリスト。テロ行為自体は完全否定すべきだが、テロリスト自体が完全に悪いわけではない。

「お金を出せば食料はいつでも輸入できる」ことが「まったく通用しなくなった」らしいのに、日本人は現在、普通に食べたいものを輸入できているのはなぜでしょうか?
また、「まったく通用しなくなった」のに、なぜ中国が「食料爆買い」できるのでしょうか?

デタラメですよね。
過去と比べて相対的に日本の購買力は下がりましたが、完全になくなったわけではない。
これで東大教授だというのだから笑ってしまう。

農家の置かれた厳しい状況を考えて、赤字を補填して農家の収入を増やそうという政策面における動きはまったく見られない。
これはP2の記述ですが、早速2回目の完全否定です。
鈴木教授のデタラメを否定してあげましょう(残念ながら完全否定はできない)。
配合飼料価格高騰緊急対策(令和4年度補正予算)
※「配合飼料価格高騰緊急対策(令和4年度補正予算)」より引用

上記はもろに農家赤字を補填しようとする政策ですね。
この教授の専門は農業経済なので、こういう内容を知らないはずがないと思うけど、モグリで「まったく見てない可能性はある」ので完全否定はできない。
どちらに転んでも、ダメダメな人であることはわかるでしょう。

この画期的なシステムを、私はまったく新しい流通の産みの親である野田忠氏(株式会社プラス」名誉会長)の名前にちなみ「野田モデル」と呼んでいる。
この「野田モデル」においては、出展生産者の販売高が最高で約1億円というケースも生まれ、それ以外にも1000万円を超える出展生産者が257人に増大している。
売り上げのある全生産者は4888人で産直部門の売り上げは約142億円。一人あたり売上高は291万円、これは周囲の非参加生産者の平均売上高よりかなり高いはずだ
そうかそうか。この画期的な野田モデルのおかげで「非参加生産者の平均売上高よりかなり高い」のですね。
では、以下で和歌山県全体のデータを見てみますか。

農業産出額(農業就業人口(販売農家)1人当たり)
※「令和2年度『100の指標からみた鳥取県』/統計課/とりネット/鳥取県公式サイト」より引用

あれ?和歌山県全体では305万4千円とあり、「野田モデル」で成功しているはずの人達の291万円より高いですね。
おかしいな~。
ということは、野田モデルが押し下げているということですね。

上記は売上なので、直販であれば利益率は高いかもしれないが、他の直販だって高いでしょう。
そもそも、売上の話をしているので、利益・所得は関係ない。
東大教授がデータを見ずに「これは周囲の非参加生産者の平均売上高よりかなり高いはずだ」とはお笑いですね。
この記述はP5なのだが、この時点でこの本がゴミだと決定してしまいました。

序章 日本から「食べ物」が消える!食料危機と飢えの予兆

2022年10月28日に国内感染が初確認され、その後、猛威を振るった高病原性鳥インフルエンザの影響で、卵(鶏卵)の供給不足が深刻な事態となった。2023年6月までに過去最多となる1771万羽もの鶏が殺処分され、需給バランスが一気に崩れた。その結果、感染がピークアウトしても、価格の高騰が続いている
赤字の前2つは、著者もさることながら編集者の無能っぷりを如実に表しています。
「2022年10月28日に国内感染が初確認」であるのならば「2023年6月までに過去最多」は文章としておかしいのです。
初めてなのだから、過去最多であるのは当たり前。鳥インフルエンザについて無知であっても気付ける話なのです。

国内初確認されたのはいつでしょうか?
高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム報告書
これによると、1925年が初確認で、その後は間が空いて「山口県阿武郡阿東町の採卵鶏農場(飼養羽数 34,640 羽)において、2003 年 12 月 28 日に死亡鶏を確認」となります。
1925年は家禽であるか野鳥であるか書かれていないが、2003年以前であるのは確実です。
では、「2022年10月28日」とはなんでしょうか。
(研究成果) 2022年シーズン高病原性鳥インフルエンザウイルスは遺伝的に多様である | プレスリリース・広報」によると、単に2022年シーズン(2022年秋~2023年春)の最初っていうだけです。
鈴木教授は6月までに1771万羽とあるが、この資料によると次のように期間が間違っていますね。
2022年10月28日から2023年4月7日までに、過去最多となる84事例の高病原性鳥インフルエンザが鶏やアヒルなどの家きん飼養施設で発生しました。まん延防止のために約1,771万羽の家きんが殺処分され、鶏卵の需給や価格高騰など国民の食生活にも影響を及ぼしました。
こんなデタラメな本ではなく「鳥インフルエンザに関する情報:農林水産省」を見ましょうね。

ところで、こんなところで騙す必要はないのだが、なぜこんな記述になっているのでしょうね?

「感染がピークアウトしても、価格の高騰が続いている」は嘘っぱちです。
JA全農たまご株式会社 グラフで見る
※「グラフで見る | 法人のお客さま | JA全農たまご株式会社」より引用

このデマ本が出たのは2023/10/30で9月頃までの情報は取り込めるはずです。
上記グラフはほぼリアルタイムに更新されているので、8・9月の傾向は見られるはず。
「価格の高騰が続いている」のは、2022/9~2023/4です。
2023/4~2023/6は高止まり、2023/7以降は下落傾向にあるので、高騰は続いていません。

もしや「高騰」という言葉をご存じない?
Weblio辞書」によると「商品やサービスの価格、株価、物価などが大幅に上昇する状況を表す」ことです。
高止まり、下落は高騰とは言いません。この人の専門は農業経済なはずなのだが・・・

たしかに鳥インフルエンザが予想以上に広がったことが原因で、尋常ならざる事態となった。だが、鶏の殺処分が峠を越しても値段は下がらなかった。
これは何を意味するのか?
「これは何を意味するのか?」
そりゃ、東大現役農学教授がデマを流しているっていう意味ですよね?
「値段は元に戻らなかった」ならば正しい可能性はあるが、「値段は下がらなかった」は嘘です。上記のグラフを見れば2023/7には下がっています。

今回の「エッグショック」の背景には、世界の食料を巡る安定供給の構造が崩壊したことがある。前述した農水大臣の言葉のように「鳥インフルで鶏が減ったので、ヒナを買ってきました」で解決するような問題ではないし、危機的な状況は今後、鶏卵以外にも広がる可能性はきわめて高いと考えられる。
農学教授のくせに根本的に農業のことをわかっていません(そういう私は農業とは全く関係ないけど、調べればわかることは沢山ある)。
鈴木教授は海外からヒナを買ってくるようなニュアンスで書いているが、養鶏場で飼っているヒナは日本国内から買います。
その親を海外から買ってくることが多いだけで、国内にも親はいるので、困ったらそっちに切り替えられる。
詳細は「鶏卵の国内自給率は96%だが、それを0%という大学教授」参照。
為替相場で続く円安が日本の競争力低下による構造的なものだとすると、日本が世界の食料市場で「買い負け」る状況は変わりそうにない。
恥ずかしいですね。
もちろん、相対的な競争力低下の要因ではありますが、主な要因は金融緩和ですよ。
このデマ屋さんは、一応「農業経済」と「経済」が名の付くものを専門としているのですよね。

第1章 自給率30%は幻の数値にすぎない

鶏のヒナがほぼ全量輸入に頼っている
劣化していますね。2021年のコラムでは「鶏のヒナはほぼ100%海外依存」としていました。
「ほぼ全量輸入」と「ほぼ100%海外依存」は似て非なるものです。
前者は、そのまんまの意味で「ヒナのほぼ100%を海外輸入」ですが、後者は依存の内容に依ります。
どんな依存かというと、ヒナの親が輸入なのです。実際のところは「ヒナはほぼ全量国内生産」なんですよね。
ゴミのような本を出しまくったからか、内容は劣化するばかりですね。

現代の農業生産に化学肥料は欠かせない。「窒素、リン酸、カリ」が肥料の三要素といわれ、窒素の原料には尿素が、リン酸の原料にはリン酸アンモニウム、カリの原料には塩化カリウムが必要となる。
ところが、それらの資源は世界で偏在しており、日本は自給できていない。
そうかそうか。空気は地球上で偏在しているのか。空気を輸入しないとね。
そんなわけあるか!

この農学教授は、尿素の元であるアンモニアがどうやって作られるか知らないようだ。
以下の図を引用するのも馬鹿らしいが、引用元の資料がしっかりしているので読んでみるとよいと思いますよ。
原料別アンモニア製造プロセスのブロックダイアグラム
※『技術の系統化調査報告「肥料製造技術の系統化」』より引用


さらに塩化カリウムはロシアが主要な輸入相手国として名を連ねている。
・・・
ベラルーシのルカシェンコ大統領はロシアのプーチン大統領の盟友であり、欧米諸国はロシアとともにこのベラルーシを制裁の対象とした。こちらも調達先の代替に追われることとなった。
ウクライナ侵攻が長期化し国内の在庫がどんどん減っていく中で、政府もようやく事態の深刻さに気づきはじめる。
ロシアのウクライナ侵攻によって相場自体の高騰が続いたからだ。
尻に火がつきはじめた政府は、2023年1月に野村哲郎農林水産大臣(当時)が来日したカナダのウィルキンソン天然資源相と会談し、肥料の原料となる塩化カリウムの安定供給に向けて協力を求めた。
カナダは世界の塩化カリウムの埋蔵量のうち、約4割を占める主要な産出国。日本は現在、大半をカナダから輸入しており、ロシアやベラルーシからの輸入が止まった分を穴埋めする腹づもりだが、対応が遅れたことは間違いない。
面白いことを仰りますね。

肥料の月末在庫数量(トン)推移
※「統計表一覧(経済産業省生産動態統計)|経済産業省生産動態統計(METI/経済産業省)」のデータより作成

「国内の在庫がどんどん減っていく」と言うが、このグラフを見てそう判断する人はどれくらい存在するでしょうか?
微妙に減った感じはあるが、「どんどん減っていく」とは言えないですよね。

2023年1月に農林水産大臣がカナダ政府と話をしたのは「対応が遅れたことは間違いない」とのことですが、以下を見てみましょう。

化学肥料原料の輸入量の長期推移
※「第23号特別分析トピック:我が国と世界の肥料をめぐる動向(更新)」より引用

2023年1月で「対応が遅れた」と言うのに、なぜ2022年のカナダからの輸入が増えてロシア・ベラルーシ分をカバーできているのでしょうか?
ちゃんちゃらおかしいですね。
ちなみに、「肥料原料の安定供給に向けた外交対応:農林水産省」を見ると、大臣が2021年6月21日にカナダに行って同様なことをしています。

鉱物資源マテリアルフロー2021カリウム(K)」この資料も参考になります。

2007年にトウモロコシの世界的な不作が発生すると、大ごとになった。
ほう、そうなんですね。
世界のトウモロコシ生産量の推移
※米国農務省の「PSD Online」のデータより作図

寝言は寝てから言え!

科学的根拠がまったくないにもかかわらず、「慶應義塾大学医学部名誉教授」という肩書きが目くらましになり、当時は正しい学説としてまかり通ったのである。
頭脳 : 才能をひきだす処方箋」という本を出した人のことについて書いています。
「慶應義塾大学医学部名誉教授」を「東京大学大学院農学生命科学研究科教授」に置き換えるとしっくりきますね。

科学的根拠がまったくないにもかかわらず、「遺伝子組み換え成長ホルモンで乳がん」になる!と、どこかの農学教授が言っていたな(遠い目)。

第2章 「飢え」対策がチグハグな日本の農政

日本では、消費者などから健康への影響を懸念する声が強く、GMO種子による農作物を使った食品を販売する場合は、きちんと選べるよう表示義務を課していた。
ところが2023年4月から事実上、表示義務を骨抜きにする改正がなされた。これまでは「分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている」のであれば、「遺伝子組み換えでない」と表示できた。
『「遺伝子組み換えでない」と表示できたは表示の義務の話ではない。
だが「表示義務を骨抜きにする改正がなされた」と表示義務の話をしている。
はぁ?

義務表示(「遺伝子組み換えである」という表示)は何も変えず、任意表示(「遺伝子組み換えでない」という表示に関しての話です。
このように表示したい人はしてもOKよって話です。)の基準を変えただけなのです。
こんな言説に騙されてはいけませんよ。

第3章 和歌山にあった農業の未来と希望

『「野田モデル」が日本を救う』は、この本のサブタイトルですが、その一号店に「お客様への6つのお約束」というのが貼ってあるそうだ。
その筆頭が「1,地産地消だから新鮮」とのこと。
地方には人口がいないので、地産地消では日本の人口の多くを抱える都市部は救ってくれませんね。
北海道の生乳を地産地消でさばけますか?
極々一部の成功をもって全体に適用できると思っているようです。恥ずかしいですね。

第4章 「野田モデル」がつくる日本の「シン・農業」

田辺市の山本農園というのが紹介されている。
現在の販売は、「よってって」経由とJA経由が全体の約4割ずつ、ほかは卸売市場経由と一部の直売所だという。
出荷先の4割が「野田モデル」を体現する「よってって」なのだが、4割がJAである意味を考えるとよいでしょう。
「野田モデル」を否定するわけでもなく、それで成功できるところはどんどんやったらよいと思うが、これが現実なのです。
「野田モデル」が成功している場所でも地産地消ではさばけず4割はJAに出している。

『「野田モデル」が日本を救う』なんて、ちゃんちゃらおかしい。

第5章 野田忠はなぜ革命を起こせたのか

生産者と密接な関係を築くことで安定的な事業を営んでいく。発祥の地、和歌山県の人口密度は都道府県のうち30位くらい。ということは、このビジネスモデルは全国で通用する証しといってもいいだろう。地域農業の再生はもちろん、衰退が続く地方の活性化にも役立つはずだ。
ため息が出ますね。
これで農業経済が専門だと言うのだからね。
人口密度の要素はもちろんあるが、近くに大消費地たる大阪があるからですよ。
四国・北陸・東北・南九州・山陰・北海道で成り立ちますか?

第6章 「野田モデル」で日本の農業はよみがえる

「生産者」「消費者」「地域」「従業員」の「四方良し」を目指す「野田モデル」が日本全国で展開されることになれば、消費者も安心・安全な農産物を安定的に購入することができる。
何をもって「野田モデル」が安全と言えるのでしょうか?

JAには、病虫害がない、清浄である、腐敗変質していない、裂果していない、など安全性に関する規格があります。
※「出荷規格表|JA全農 広島県本部」参照

規格外でも出荷するという「野田モデル」は、何をもって安全を担保しているのですか?
「安心」は好き勝手になればよいですが、安全は全く違うものです。

一部の国では、どこからか日本の苗を"密輸"し、勝手に現地で生産するという犯罪的行為が起きた。これは別の安全保障の問題だが、とにかく日本の農産物の品質が世界のトップクラスであることは間違いない。
その犯罪行為を防ごうとするための種苗法改正に反対していたのが、「あ・な・た」ですよ。

農業において良い土とは、土壌に多数の微生物が含まれていることであり、その微生物の働きによって微量栄養素が生成される。
微量栄養素とは、ミネラル(鉄・亜鉛など)・ビタミンのことを指すと思います。
まさか、ミネラルが生成されるとは言わないですよね?
ミネラルを生成するには、核反応が必要です。もし、その現象を見つけたのなら世紀の大発見ですよ。

世界で最も肥沃とされている土は、大穀倉地帯でありながら戦地になってしまったウクライナの「チェルノーゼム」である。
その次に良いのが「黒ボク土」と呼ばれる土で、その「黒ボク土」の農地に占める割合が、世界で最も高いのが日本なのである。

国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」(通称・農研機構)によると、黒ボク土とは次のようなものである。

〈主として母材が火山灰に由来し、リン酸吸収係数が高く、容積重が小さく、軽しょうな土壌である。有機物が集積して黒い色をしていることが多く、黒くてホクホクしていることから黒ボク土と呼ばれる。〉

特徴は世界一肥えた土壌であるチェルノーゼムに匹敵するほど品質の高い腐植物質を豊富に含んでいることだ。つまり、日本の農地は、もともと肥料を必要としないほど、農業にとっては恵まれた条件を備えているのだ。
土の専門家である藤井一至さんが読んだら卒倒してしまうのでは?

「リン酸吸収係数が高い」ということは、吸収して離さないってことです。
「有機物が集積」というが難分解性のリグニンなどが吸着しているだけです。

前作の「世界で最初に飢えるのは日本」でも藤井さんにツッコまれていたが、農研機構の情報を持ち出してこのレベルとは。

特に今後世界的にも伸びていく有機農業の分野が重要だが、政府の対応は質においても量においても後手に回っている。少し前まで肥料・農薬の使い過ぎを指摘されていた中国ですら、国策として有機農業を大々的に推進しているくらいなのだ。
中国は、EU向けの有機農産物の輸出量ですでに世界1位となった。有機農産物の生産量で世界3位というデータもある。
前作の「世界で最初に飢えるのは日本」でもEUへの輸出が1位だと書いていたが、実際は3位でした。

調べるのもアホらしいですが、このデマ本出版時点における最新情報を確認しますか。
The World of Organic Agriculture Statistics and Emerging Trends 2023
これは、2023年2月14日に公開されているので、10月30日の出版には間に合ったはずです。
結果は以下のとおり。

1位:エクアドル、2位:ドミニカ、3位:インド、4位:ペルー、5位:ウクライナ、6位:トルコ、7位:中国

「デマ屋は情報を更新しない法則」発動ですね(私の勝手法則)。

「中国ですら、国策として有機農業を大々的に推進している」はもっと笑えますよ。
上記の資料と鈴木教授が触れているもの(2020年公開)を比較します。

3,135,000 ha(2020年の資料) ⇒ 2,753,700 ha(2023年の資料)

国策で推進しているはずなのに農地面積が減っているのですよ。はい、笑うところですよ~。

農業に関する報道や専門家と称する人物の発言には、まったく事実に基づかないものが少なくない。事実ではない言説によって、日本の農政はねじ曲げられ、生産者はさらに力を失ってきた。そのことによって、われわれの食料危機の深刻さは増すばかりだ。まったく馬鹿げているとしかいいようがない。
たとえば、「日本の農業は高い関税で保護されている」「多額の補助金が支出されて「いる」といったものがその典型だろう。
この本はやけにブーメランが多いですね。
赤字の部分なんかは正に「それはお前だ!」って感じですね。

関税の件もお話になりませんわ。
日本の農業生産と競合を起こさないものは関税が低いのです(日本で生産に適さないコーヒー、季節が真逆で輸入されるニュージーランドのキウイフルーツ、鮮度劣化が早いナシとか)。

また、見かけの関税で騙しています。
米は無税の枠があり、それを超えると数百パーセントの関税がかかります。高い方の関税では輸入されないので、見かけ上は低く見える。
関税で実質的に保護されている国内農業生産額を見ないとデマ屋に騙されますよ。
騙されたくない人はこちら参照のこと。

何度もいうが、日本の38%である。本当に高い関税をかけて自国の農産物を守ってきたのであれば、完全自給していた島国の農業がここまで衰退するはずがない。
江戸時代に完全自給していたのは、食うものがなかったら餓死することで実現されていたのですよ。
以下の2つのグラフを見れば、鈴木教授のデタラメっぷりがよくわかると思います。

日本の人口の推移
国土交通白書より引用。詳細はこちら

穀物自給率と一人当たりの耕地面積の関係
※FAOの2018年データより作図

鎖国していた時の人口に減らすと食料自給率は100%を超えます。
人口増加と食生活が変わったのが主な原因です。

「野田モデル」によって生産者のモチベーションアップを図れば、消費者に不利益を与えることなく自給率の向上が図れるはずだ。適正な競争条件さえ整備すれば、間違いなく生産力を回復できるはずなのである。
溜息しか出ませんね。
精神論では物理的な障壁は越えられません。「欲しがりません勝つまでは」ですかね?バカバカしい。

なぜなら日本は山間部が多いこともあり、農地がどうしても細分化されてしまう。・・・耕作放棄地をまとめたところで、たくさんの場所に点在してしまうだけなのだ。
そのような状態で、農業を効率化するのはまず不可能といっていい。これは日本の土地条件の制約によるもので、企業が参入したところで簡単には変えられない。
東大農学部の教授なのに耕作放棄地がどんなところにできるか知らないのかね?
山間部などの農業に不利な場所から耕作放棄地になるのですよ。
そんなところに企業は進出しないので、「企業が参入したところで簡単には変えられない」は無駄な議論です。

補助金でよみがえる日本の農業
・・・
ここであらためて確認しておきたいことは、「野田モデル」は補助金などは一切使わず、野田氏自身の私財だけで展開されているということだ。
鈴木教授は意識せず書いていると思うのだが、「野田モデル」が上手くいっている(らしい)のは補助金を一切使っていないから。
補助金を前提にしたものには持続性がないのだが、「補助金でよみがえる日本の農業」なんて書いていて呆れますわ。

この前読んだ「日本一の農業県はどこか:農業の通信簿」と正反対のことを書いています。
デマ屋の言う話とそうでない人の話とどちらを信じるべきでしょうかね?答えは出ていますよね。
上に書いた通り、鈴木教授自身も意図に反して答えを出しているのだから、なおさらです。

ウォルマートやダノン、スターバックスといった企業がrBGHを使用した乳製品を排除すると表明することになった。また、こうした動きによって利益が減少してきた製造元のモンサント社はホルモン剤の権利を売却するに至った。
利益が減少しているものを簡単には買ってくれないとおもうけどね。
調べると、さすがデマ教授ですね。
2008年8月20日にElancoが買収することを発表しています。
Elancoは、Posilac(rBGHの製品名)を米国以外で10年間独占販売してきたそうで、利益が出ているかどうかは知っていたはずですね。

Posilac(rBGHの製品名)の売り上げ
※「Posilac®: Into the 21st Century (C)」より引用

このグラフで「利益が減少してきた」と言える人がいるなら見てみたい。
ちなみに、ロイターの報道によると、種子事業に専念するために売却するってありますね。

私が「野田モデル」に共感するのは、農家が力を取り戻せることだけが理由ではない。食料自給率の回復につながると考えたことだけでもない。
地域経済の復活によって、日本が力を取り戻すきっかけになると信じているのだ。
散々デマを書いた後に、最後を上記で終えていました。
「野田モデル」って結局のところ中抜きであり、日本の購買力を上げているわけではない。
単に国内の利益を付け替えただけ。それでは「日本が力を取り戻す」ことはできませんね。
農業以外の購買力を上げないとダメなのですが、もちろんそんな話を鈴木教授はしません。

読むだけ無駄なデマ本であるというのが結論です。

このままでは飢える! 食料危機への処方箋「野田モデル」が日本を救う
鈴木宣弘
日刊現代
2023/10/30

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