フェイクを見抜く 「危険」情報の読み解き方

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フェイクを見抜く 「危険」情報の読み解き方』(唐木英明、小島正美)を読みました。

はじめに

強固な考えをもった人に対して、「科学的にはこうです」と言っても、説得することは不可能だろう。しかし、世の中の6割前後は「どちらが正しいか迷っている」と思われる人たちだ。本書はそのような迷いをもつ6割の人たちに対して、役に立つ参考書を目指した。
陰謀論などにどっぷりつかってしまっている人は宗教と同じで救えないです。

・6割かどうか知らないですが「迷っている」「どうなのかわからない」と思っている人達
・陰謀論にはまっていたがこれは違うのでは?と疑問を持ちはじめた人達

これらの人達のために私はブログを書いています(嘘つきがムカつくというのもあるけど)。
そのため、上記には大いに共感できます。

第1章 フェイクニュースを作り出す手法

総務省は「プラットフォームサービスに関する研究会」を設置し、「インターネット上のフェイクニュースや偽情報への対応」を含む報告書を2022年に発表した。そこに記載されている調査結果によると、直近1ヵ月での偽情報への接触率は15%であり、3割程度の人は、偽情報に週1回以上接触していると述べている。フェイクニュースがいかに多いのかがよく分かる。
こんな報告書があったのですね。知りませんでした。
私は週に1回以上の3割に含まれますね。
新聞の社説だって真面目に読めばフェイクニュースの塊ですからね。特にイデオロギーに関係しそうな話題だとそれが顕著です。

宍道湖でワカサギの数が激減した時期と、ネオニコチノイド系農薬を使いだした時期が一致するので、農薬がワカサギを減らしたのだなどのフェイクもある(第5章で詳述)。
相関関係があるからと言って因果関係があるとは限らず、科学的な根拠が必要であることを無視したフェイクニュースは少なくない。
一応、私は本件を超胡散臭いと書いていましたが、火の玉ストレートですね。
詳細は「宍道湖 ワカサギ」参照。

フェイクニュースを拡散する最も確実な方法は危険情報を重視する本能を利用することだ。だからフェイクニュースはほぼ100%が「危険」というもので、「安全」というフェイクニュースほとんどない。数少ない例が、政府と電力会社が長い年月をかけて作り上げた原発の「安全神話」だったが、これは福島第一原発事故で崩れた。
確かに、デマ本も危険を煽るのばかりですね。
危険・安全ではないが、その効果がないのにあるという健康食品など胡散臭いものは多い。だが、それは毛並みが違いますね。
科学リテラシーがなく騙されるというのは同じなのでしょうけどね。

危険重視の本能の延長に、リスクはゼロにすべきという「ゼロリスク信仰」がある。しかその実現は極めて難しい。例えば交通事故を無くすためには自動車を禁止すればいいのだが、すると社会経済活動に対する大きなリスクが生じる。
自動車を禁止しても交通事故は無くならないよね?自転車でも起きる。
と思ったが、後の方で「自動車事故を無くすためには自動車を禁止」のような感じのことを書いていたので、書き間違い(チェック漏れ)なのでしょう。
リスクを減らすには、効果の高い物から対処していって、後の方になると対処するためのコストが増えていって無限大になります(=リスクゼロにはできない)。
便益とリスクとの兼ね合いでしかないことを、どれだけの人が理解できているのだろうか?

第2章 食のリスクをめぐるフェイクニュース 無農薬、無添加、オーガニック

このアスパルテームに関して正しく知りたい場合、不安を煽るだけの記事を載せている週刊誌は全く役に立たない。やはり深い知識と見識をもつ本当の専門家に聞くのが一番良い。例えば、国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子・安全情報部長(薬学博士)がその1人である。残念ながら、科学的な事実を正確に話す畝山さんのような専門家は週刊誌からお呼びがかからない。「危ない」と言ってくれないからだ。
これは笑えますが、そうなんでしょうね。
畝山智香子さんの本・ブログ等は良いので超おススメです。
↓はジョークですが、食の安全を理解するのには良い例でしょう。

1日摂取許容量は「生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への悪影響がない量」である。
これは化学物質が細胞に作用することができる限界値である「いき値」とも考えられている。
ADIのことを説明しています。
いき値?しきい値じゃないの?と調べると、閾値は、どちらの読みもあるそうです。
生物系では「いき値」を使うことが多いそうです。知らなかったですわ。

安全性の問題で見直しになった例が万葉集にも登場する植物のアカネから作ったアカネ色素である。何百年もの間、食品や衣類の染色に使われていたのだが、新たな試験で発がん性の可能性が判明して添加物から削除された。長い食経験からリスクは小さいと考えられるものも安全性を確認して、少しでも疑問があるものは削除しているのだ。
アカネの件は知りませんでした。
昔から使われているものは、安全性試験をして安全を確認しているのではなく、単に昔から使っているから大丈夫だろうっていうだけなのですよね。
そのため、遺伝子組み換え・グリホサート・ネオニコチノイド系農薬など腐るほど調べても明確な人への害が見つかっていないので、よっぽど安全ってことなんですよね。

しかし、話は簡単ではない。農薬に対する不安を聞かれると、半分以上の消費者が「不安」答える。もし本当に不安であれば農産物の半分は無農薬になるはずだが、日本には無農薬の農産物がほとんどない。無農薬のものを探して買おうとする人は少ないし、「野菜は全て無農薬にすべき」などという消費者運動もない。
アンケート調査と消費行動のこのような大きなギャップを筆者(唐木)は「聞かれて出てくる不安」と考えている。
これはいい。
そんなに不安なのに、なぜ円形脱毛症/不眠症/発狂などならないのさ?って常々思っていました。
「聞かれて出てくる不安」であって「聞かれないと出てこない不安」ってことですね。しっくりしました。

第3章 一つの論文が世界に与えた衝撃

要するに「組み換えではない」と表示できる条件がより厳格になったわけだ。
これまでGM作物に反対する人たちは「組み換えではない」と表示されているのに、組み換え原料が5%も混じっているのは問題だ」と表示の厳格化を求めてきた。
・・・
この消費者庁の英断によって、筆者(小島)はてっきり、「組み換え食品は絶対に食べたくない」と反対してきた一部生協(生活クラブ生協やパルシステム生協など)の人たちは「これでやっと組み換え原料が含まれていない食品を買うことができます。消費者庁の皆さん、ありがとう」と大歓迎するかと思っていた。ところが、予想に反して、今度のルール改正は「改悪だ」と猛反対したのである。
なぜ反対なのか。その理由を知って愕然とした。
あまりにもルールが厳しくて、「組み換えではない」と表示できなくなるからだというのである。開いた口がふさがらないとはこのことである。・・・言い換えると「組み換え食品は絶対に嫌です」と言っている人たちが実は、「少しくらいなら混じっていてもよいし、少しくらいなら食べても問題ありません」と自ら安全性を宣言しているようなものだ。
彼らの論理は滅茶苦茶なのですよね。
ごく少量でも危険だと騒ぐかと思ったら、この件のようなことを言ったり、主張に論理的一貫性がまるでない。
一貫性があるとしたら、不安を煽って自身の利益につなげようというクソみたいな性根です。
まあ、論理性を求める人ならば、矛盾だらけの言動にそっぽを向けると思うけどね。

第4章 フェイクニュース・ビジネスで大儲け除草剤グリホサート

この章は政治的な話、民事裁判の話でスキップです。科学の話ではないので。

第5章 メディアが好む危ない情報にどう対処するか ネオニコチノイド系殺虫剤

「ジャンク情報に対するカウンター情報」ということで次のことが書かれている。
そこでファクトチェックのあり方のモデルを示してみたい。TBSの「報道特集」の根拠になっているのが、山室真澄東京大学教授が2019年11月に「Science」誌に発表した「ネオニコチノイド系殺虫剤は水生食物連鎖を破壊して漁獲量を減らす」と題する論文だ。
・・・
TBSの「報道特集」が報じた内容は、唐木氏が常々強調しているように、まだ学会で十分な検証を受けていない検証不十分な段階でのいわば仮説である。一つや二つの論文で国や学会の科学の基本が変わるわけではない。TBSはメディアの矜持をもって問題提起として報じたのだろうが、その内容はあまりにも一面的過ぎたといえる。
山室教授、論文批判ではなくファクトチェックされちゃいましたね。
唐木氏の記事は「ネオニコチノイド農薬がワカサギを減らしたのか?  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)」で見られるのだが、そこに書かれていないことを紹介しましょう。

宍道湖湖心におけるキスイヒゲナガミジンコの現存量(山室教授の資料と国土交通省の資料合体)
※詳細はこちら参照

山室教授は、下のグラフを付けて、ネオニコが原因でワカサギの餌が減ったと言っている。
だが、上のグラフでは減った後に回復している。同じデータを使っているはずなのだが、回復したことを無視している。
加えて言うと、減っているように見える期間も島根県のデータでは減っていない。
山室教授は下のグラフで最後にピコンと出ている箇所を指摘された時に、耐性をつけたのかもしれないと言っているが、もしそうならば回復してしかるべき。
回復しないということは、ネオニコが主原因ではないってことです。
こんな論文を元にTBSが番組を作ったっていうことですわ。

ハーバード大学准教授で小児精神科医師・脳科学者の内田舞氏(米国在住)が著した
ソーシャルジャスティス小児精神科医、社会を診る」(文春新書)には、自閉症に関して、次のような記述があった。
「自閉症スペクトラム障害に関しては、ほぼ100%生物学的な要因であって、環境は関係ないことが研究結果で証明されています」
そうか、今度読んでみますかね。
そうだと思うが、そこまで言い切ったのはあまり見たことはないので。

実は、ファクトチェックでもう一つ重要なことがある。政府や自治体がもっとファクトチェック活動に参戦する必要があるということだ。
この後、神戸大学の星信彦教授と農薬工業会がやりあったことに関して、日刊ゲンダイが”場外乱闘”が起きていると報じたことについて、的外れな見解だと言っている。
やりあうのは、星教授と農薬を認可した国であるべきという。
ファクトチェックもそうなのだが、国・自治体はデマ屋を訴えるべきだと思うね。
デマによってデマ屋は儲けているが、その金額とは比べものにならないほどの損害がデマ屋以外に出ている。

第6章 記者のバイアスがニュースのバイアスを作る──BSE、中国産食品、新型コロナ、子宮頸がんワクチン

毎日新聞社内でも、全頭検査に関する理解はちぐはぐだった。「全頭検査をすれば、感染牛を全て発見できる」という科学部の記者がいたり、専門的知識が豊富なはずの論説委員が社説で「全頭検査は必要」と強調するなど、記者の間でも理解の程度に落差があった。
当時、「全頭検査をやっても感染牛の一部しか発見できない」と書いていた記者は主要新聞社の中でもほとんどいなかったように記憶している。
赤字の部分はどういう意図で書いているのだろうか?
嫌味かな?私だったら猛烈な皮肉ですね。

スーパーコンピュータ「富岳」がシミュレーションした「飛沫・エアロゾルの拡散映像」である。この映像がテレビで繰り返し報道されるのを何度も見た。飛沫がわぁーと部屋中に拡散する映像を見れば、誰だって恐怖心からマスクをはずせなくなる。しかし、マスクはエアロゾルには効果がない。
「エアロゾル」の大きさには幅があって、定義によっても幅が違う。
大きいエアロゾルには普通のマスクでも効果はあるし、N95であればエアロゾルに効果はある。
これは、どういう「エアロゾル」「マスク」のことを指しているのでしょうね?

第7章 進むメディアの分析、記者はどこまで自由か─ゲノム編集食品、原発処理水

東京都の太陽光パネルの設置に関しては、遺伝子組み換え作物などに批判的なジャーナリストの堤未果氏でさえも、自著『堤未果のショック・ドクトリン』(幻冬舎新書)でパネルの8割を中国に依存する問題や太陽光を普及させるためにつくられた巨額の国民負担金(固定価格買取制度)の問題を指摘、さらに次のように東京都のパネル設置義務を批判している。
・・・
堤氏と筆者(小島)では意見の相違は多いが、太陽光の問題では珍しく一致し、右記の本は読んでいて痛快である。
嫌味でデマ屋を取り上げているのかな?
太陽光パネルの話であれば『亡国のエコ』に同じようなことが書かれているように思える。
「意見の相違は多い」と書いてあるが、意見の前に「事実」に反するデマをばらまく人なので、意見云々というレベルではないと思う。
デマ屋の本を宣伝してあげる必要はない。
どうせだったら↓のような感じで書けばよかったと思う。

朝日新聞の『「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ・老化防止のポイントとは』という記事で、老いる原因として「化学物質」と書かれていたことに関して訂正要望を出したそうです。その結果は次の通り。
するとなんと、朝日の編集者か「記事に間違いはありません」とのひと言だけが戻ってきた。こういう誠実さに欠ける対応では、読者が減っていくのも無理はないとつくづく悟った。
さすが朝日新聞。
だが、『朝日新聞Reライフ.net《「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ 老化防止のポイントとは》』を見ると、回答が違いますね。
正しくは「訂正の必要はないと判断いたしました」ですね。
「記事に間違いはありません」と「訂正の必要はない」は似て非なるものだと思います。
前者は、そのまんまだが、間違いはないと思っている。
しかし、後者は、間違っていると思っているか否かは判断できない。
間違っているけど直さない、間違っていないので直さない、よくわからないが面倒なので直さない、などわからない。

P268に私のことが書かれていました。
明示的に引用しているわけではないが「福島第一原発の処理水海洋放出に対する社説における意見」について触れていると思われる。

終章 フェイクを見抜くために

人間にはとてもできない仕事をするのがAIであり、早速出てきたのがAIを使ってフェイクニュースを見分ける技術である。
・・・
これをビジネスにしたのが米国の「ザ・ファクチュアル(https://www.thefactual.com/news)」だ。2019年に始まり、毎日1万本以上の記事を評価している。評価基準は「情報源」「書き方」「専門性」「評判」の4項目・・・
ほう、こんなのがあるのですね。
ちょっと見てみました。
例えば「オーツ麦に含まれるグリホサートは安全か?」はグレード72とのこと。
その記事では量について書かずに「しかし、グリホサートを大量に摂取した場合、吐き気や嘔吐を催すことがある。」と書いている。
大量であるが有害ではないものを見てみたいわ!という感じで、とてもレベルが高い記事であるとは思えませんね。
AIも少しずつ進歩するってことですかね。



本に出てくる人など

本に登場する人などと登場するページです。
全てではなく、見知った名前と、もろヤバそうなのだけピックアップしています。

■デマ屋・胡散臭い人
ロバート・F・ケネディ・ジュニア:24
渡辺雄二:50
セラリーニ:57、90、126
猪瀬聖:61
鈴木宣弘:67、69、115
堤未果:67
吉野敏明:67
山田正彦:69
内海聡:123
星信彦:159、182
木村-黒田純子:160
山室真澄:165
矢ヶ崎克馬:264

■知らないが、かなりヤバそうな人
垣田達哉、大西睦子:53
ラマティーニ研究所:57

■しっかりした人
畝山智香子:55

参考文献

・稲垣栄洋 『たたかう植物』(ちくま新書)
・井上正康・松田学 『マスクを捨てよ町へ出よう』 (方丈社)
・岩田健太郎 『食べ物のことはからだに訊け! 健康情報にだまされるな』(ちくま新書)
・内田舞『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(文春新書)
・大脇幸志郎 『「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信』(生活の医療)
・岡田尊司『自閉スペクトラム症』(幻冬舎新書)
・唐木英明 『不安の構造 リスクを管理する方法』 (エネルギーフォーラム新書)
・唐木英明『牛肉安全宣言 BSE問題は終わった』(PHP研究所)
・唐木英明『証言BSE問題の真実 全頭検査は偽りの安全対策だった!』(さきたま出版会)
・唐木英明『健康食品入門』(日本食糧新聞社)
・吉川肇子『リスクを考える』(ちくま新書)
・桐村里紗『腸と森の「土」を育てる』(光文社新書)
・小島正美編『誤解だらけの遺伝子組み換え作物』(エネルギーフォーラム)
・小島正美編著『みんなで考えるトリチウム水問題 風評と誤解への解決策』 (エネルギーフォーラム)
・小島正美『正しいリスクの伝え方 放射能、風評被害、水、魚、お茶から牛肉まで』 (エネルギーフォーラム)
・小島正美『メディア・バイアスの正体を明かす』 (エネルギーフォーラム新書)
・小島正美 『メディアを読み解く力』 (エネルギーフォーラム新書)
・小島正美『誤解だらけの放射能ニュース』(エネルギーフォーラム新書)
・小坂井敏晶『格差という虚構』(ちくま新書)
・小林哲夫 『シニア左翼とは何か』(朝日新書)
・榊原洋一『子どもの発達障害 誤診の危機』(ポプラ新書)
・佐々木敏『行動栄養学とはなにか?』(女子栄養大学出版部)
・杉山大志 『亡国のエコ』(ワニブックス)
・鈴木正彦・末光隆志 『「利他」の生物学』 (中公新書)
・スティーブン・ピンカー『21世紀の啓蒙 上・下』(草思社文庫)
・ターリ・シャーロット 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学』(白揚社)
・堤未果『堤未果のショック・ドクトリン』(幻冬舎新書)
 少なくとも↑はデマ本なので注意!意図的に載せているのだと思うが。
・トム&デイヴィッド・チヴァース 『ニュースの数字をどう読むか』(ちくま新書)
・成田奈緒子 『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春新書)
・畑中三子『熱狂と欲望のヘルシーフード 「体にいいもの』にハマる日本人』 (ウェッジ)
・林智裕『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』(徳間書店)

フェイクを見抜く 「危険」情報の読み解き方
唐木英明、小島正美
ウェッジ
2024/1/19

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