ALPS水・海洋排水の12のウソのウソ④ 日本語もグラフも法律も読めない

ALPS水・海洋排水の12のウソ」(烏賀陽弘道)のツッコミ4回目です。

今回は3章「タンクの置き場はもうない」、4章「ALPS水排水は被災地の復興に必要だ」、5章「ALPS水の海洋排水は廃炉を進めるために必要だ」にツッコみます。

3 「タンクの置き場はもうない」

これを「中間貯蔵施設」と言いまして、除染で出た汚染土の埋立場になっています。ここは30年間、地主から借りる・あるいは買い上げるという約束が地権者との間で成立しています。この約束によって、ここに住こに住んでいた約4300人の人が、すべて立ち退かされました。
時系列にこれは成り立ちません。
事故後避難指示がでたので、すべて立ち退かされています。
2014年から契約がされ始めていますが、それは退去した後であるのは確実に知っているはずですので「虚偽」です。
契約により帰宅できなくなったのならば正しいが、立ち退きの話ですからね。

不思議に思って経済産業省の公開資料をよくよく見ますと「一度、汚染土の埋め立て地として契約した土地の用途を変えるのは難しい」とあるのを見つけ、腰が砕けた。「難しい」って、何ですか。
失礼ですが、笑っちゃった。「不可能だ」っていうんだったら、まあ、トム・クルーズみたいにミッション・インポシブルに挑戦せよとは申しません。でも「難しい」って何ですか。
この中間貯蔵施設の建設に福島県が同意したのは2014年9月です。それから、最初のフレコンバッグの搬入が始まったのが翌年3月です。4300人が住む渋谷区より広い土地を「30年間、汚染土の埋立地にする」というとんでもない契約を、わずか6か月で達成した。1743人の地権者の同意を取り、契約を交わした計算になります。1か月におよそ300人。ものすごいスピードです。環境省の職員たちは実に優秀かつ勤勉なのでしょう。
「経済産業省の公開資料」は見ても環境省の資料は見ないのですかね?
不都合な資料は知らなかったことにするのでしょうか?

中間貯蔵施設に係る用地取得の推移
※「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法の施行状況に関する取りまとめ」より引用

烏賀陽氏は2015年3月までの6か月で1743人と契約を交わしたと書いていますが、上記を見ればデタラメであることがわかります。
2015年3月までに契約できたのは1743人ではなく2人です。
1743人の契約ができたのは2020年1月末時点で、1か月におよそ30人で烏賀陽氏の言う1/10なので「誤り」です。

話は前後しますが、この章の最初に次のようにありました。
次のウソにいきましょう。私は「現場に行けばすぐわかるウソ」と私は呼んでいます。
「汚染水タンクを置く場所がなくなりました。なので海に捨てさせてください」
東京電力はそういう言い方をしています。政府もその前提で海洋排水を決めました。
しかし、これは真っ赤なウソです。
中間貯蔵施設の土地契約を変更すればタンクを置けるから、置く場所がないというのはウソだと言っています。
しかし、これは真っ赤なウソとは言えない(烏賀陽氏の不勉強により知らない可能性があるため)が、事実に反するので「誤り」です。
東電・政府は法律違反をしない限り実行はできないので、経産省が「難しい」と言ったのは正しいです。

その根拠を示しましょう。

中間貯蔵施設は「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法」を法的根拠としています。
中間貯蔵施設は、「事故由来放射性物質」を取り扱う施設で、法の第二条にその定義がされています。
(定義)
第二条 この法律において「事故由来放射性物質」とは、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)第一条に規定する事故由来放射性物質をいう。

次に特措法の第一条を見てみましょう。
(目的)
第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下本則において単に「事故」という。)により当該原子力発電所から放出された放射性物質(以下「事故由来放射性物質」という。)による環境の汚染が生じていることに鑑み、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、国、地方公共団体、原子力事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、国、地方公共団体、関係原子力事業者等が講ずべき措置について定めること等により、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的とする。
「当該原子力発電所」は言わずもがな福島第一原子力発電所です。
そこから放出された放射性物質が「事故由来放射性物質」です。

汚染水・ALPS処理途上水・ALPS処理水は福島第一原子力発電所から放出されていないので、「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法」の取り扱い対象外となるので、中間貯蔵施設では管理できません。

「東電・政府は法律違反をしない限り実行はできない」と言ったのはこういうことです。
国会(≠政府)が法律改正しないと、経済産業省も環境省も適法に実行するはできない。
原子力サイトで置く場所がないというのは、ウソではなく事実ということです。

このことから、この章タイトルの「タンクの置き場はもうない」がウソというのは「誤り」です。

なお、中間貯蔵施設がある双葉町・大熊町の町長は次のように、ALPS処理水をさっさと処分せよと言っています。
所在町および中間貯蔵施設を抱える両町の立場から、以下の通り強く要望いたします。
国においては、この問題が帰還の妨げになっていることを十分に認識し、根本的な問題解決を先送りすることなく、国として責任をもって対応策を早急に決定していただきたい。
※「大熊町・双葉町の復興や地方創生に向けた重点要望について(要 望 書)」より引用

中間貯蔵施設に係るこれまでの経緯|中間貯蔵施設情報サイト:環境省」をちゃんと見れば、そんな簡単に行く話ではないことがわかると思うがなね。

章の最後に『本当は・・・第一原発の周辺には広大な「中間貯蔵施設」がある』とあるが、だからどうした?っていう話です。

4 「ALPS水排水は被災地の復興に必要だ」

このツイートの「福島第一原発の廃炉に向けて歩まなければならない道」と「福島を始めとした被災地復興の新たな一歩」がウソだそうです。

まず1点目。「ALPS水の海洋排水は、福島を始めとした被災地復興の新たな一歩です」だと岸田総理は言う
ALPS排水は福島第一原発の外側に広がる被害地の復興とは、一切何の関係もありません。
岸田総理は「ALPS水」などと言っていないので「誤り」です。
引用は正しくしましょう。

おわかりでしょうか。いくら排水を続けても、福島第一原発の敷地、3・5平方キロメートルの中にあるタンクが減り、空き地が増えるだけなのです。
9月25日付けの「福島民報」はタンクそのものが高線量を帯びていること、底に高線量のヘドロが残ることから、排水してもタンクを移す場所がないことを指摘しています。空地すらできないかもしれません。
・・・
バカバカしいほど当たり前のことではありませんか。ALPS水をいくらジャブジャブ排水しても、原発構内外側に広がる被害地の復興には一切関係がないのです。福島県全県に拡大しても、1ミリも関係ありません。
ひとつ前の章で書いたことをこの人は忘れたのですかね?
中間貯蔵施設にタンクを置けと言っていました。放射性廃棄物を増やせと言っているのです。
サイト外に置くために法律改正して、福島県・大熊町・双葉町と調整して、土地の権利者と調整して・・・などと要らぬ作業(=人員・労力・金)がかかります。
そのせいで復興のための人員・労力・金が削られるのですよ。

このどこが「復興には一切関係がない」のでしょうか?
バカバカしいというか、バカなのは貴方ですよ。
サイト外の復興にもろ関係アリなので「誤り」です。

5 「ALPS水の海洋排水は廃炉を進めるために必要だ」

そして岸田声明のもうひとつのウソ。「福島第一原発の廃炉に向けて歩まなければない道」と、岸田総理は言います。これもウソです。
・・・
では、その溶け落ちた燃料棒にかけて出たALPS水を海に排水したとしますね。海に排水したら、溶け落ちた核燃料デブリは何か変化するんですか?
微動だにしません。1ミリも変わりません。
中学レベル?の日本語読解能力がないとは笑えますね。
「福島第一原発の廃炉に向けて歩まなければない道」のどこにALPS処理水を海洋放出したら核燃料が回収されるって書いてありますか?
廃炉をするためのステップの一つだと言っているだけです。そのためこれは「誤り」です。

ALPS水・海洋排水の12のウソ
烏賀陽弘道
三和書籍
2023/11/10

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