ALPS水・海洋排水の12のウソのウソ⓺ 永久機関爆誕!

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ALPS水・海洋排水の12のウソ」(烏賀陽弘道)のツッコミ6回目です。

今回は8章の「ALPS水に放射性物質はトリチウムしか残っていない」にツッコみます。

8 「ALPS水に放射性物質はトリチウムしか残っていない」

排水されるのは「トリチウム&そのほかの放射性物質が混じっている水」です。一方、「トリチウム水」はトリチウムだけでできている水(T2O)のことです。
無知・不勉強この上ないですね。
トリチウム水といえば「HTO」が普通です。「DTO」「T2O」の存在は稀です。誤りと言いたいくらいですが「不正確」が適切ですね。
どのようにできるかを学んでいないのでしょうね。

本来ならば、こうした官僚言語に習熟し、国民に「政府は字面ではこう言っていますが、真意はこういう意味ですよ」と「翻訳」してあげるのは新聞テレビの重要な仕事のはずで
原因ははっきりしています。経産省が「ALPS水には放射性物質はトリチウムしか残っていない」という誤謬あるいは誤導を公表し、新聞テレビがそれを検証もせずに拡散したからです。
その結果、マスコミには「ALPS水=トリチウム水」という誤謬が頻出します。
新聞・テレビ記事のデータベースである「Gサーチ」を「トリチウム水」で検索してみると、なんと392件もヒットします。その「間違えた数ランキング」を公表しましょう。
産経新聞:66
毎日新聞:49
・・・
こうなると、新聞テレビとも「総崩れ」と言わざるを得ません。残念ながら、わが国の主流マスコミには、政府のプロパガンダを見抜く能力や意思はなさそうです(あるいは積極的に協力しているのかもしれません)。
アホなのか知りませんが結果としては「ミスリード」ですね。

産経新聞・毎日新聞の社説で「トリチウム水」を含むものを引用しますか。
産経新聞:※「トリチウム水放出 中韓の非難は見当違いだ
福島第1原発からの放出は、汚染水を浄化設備を通してストロンチウムやセシウムをはじめとする放射性物質の大部分を除去した後に残るトリチウム水である。

毎日新聞:「IAEA処理水報告書 説明尽くす責任は政府に
処理水は、専用の設備で大半の放射性物質を取り除いたものだが、トリチウムだけは残る。このため、放出する際は海水で薄め、濃度を世界保健機関(WHO)が定める飲料水基準の7分の1に抑える計画だ。・・・諸外国も、原発の稼働で生じるトリチウム水を海に流している。

産経新聞に関しては正しいことをストレートに書いている。
烏賀陽氏のように日本語能力の低い人が毎日新聞を読むとトリチウム以外の放射性物質は存在しないと誤読する人もいるかもしれない(ストロンチウムやセシウムなどの大半は除去できるが、トリチウムは除去できずそのまま残るという意味で書いている)。

日経新聞・東京新聞・北海道新聞などは「水に似たトリチウム」と中学理科の知識があれば気付ける間違いを社説に載せている。
この低レベルさにより、誤ってトリチウム以外の放射性物質がないと書く恥ずかしいメディアはあるだろうが、プロパガンダがどうのという話ではないですわ。

ウラン238は核分裂してプルトニウム239になる。日本にある原発の仕組みを調べたことのある人間なら、常識に属する話です。
絶望的な知識の無さ・理解力の無さをさらけ出していますね。
U238の半減期は45億年で核分裂しにくく、核燃料として使うのはU235です。
U235は少ないので遠心分離機を使って濃縮します。原発で使うU235は濃度が低くほとんどはU238です。
U235を核分裂させると中性子が発生してそれをU238が吸収することでPu239ができます。

原子炉内での Pu の生成
※「プルトニウムの起源を推定する」より引用

ウランからプルトニウムが直接できると思っていたのだが、ネプツニウムを経由するのですね。
知らないことは世の中に沢山ありますね~。

U238が核分裂するということは、質量数が238未満の複数に分裂することを指し、238から増えることはありません。
烏賀陽氏が言っているのは、10→15 みたいなことであり、質量保存の法則に反します。
ということでこの件は「誤り」です。

東日本大震災が起こって原子炉内の核分裂反応を急停止させたのですから、分裂前のウラン238と、分裂後のプルトニウム239が原子炉内に大量に残っているはずです。
誤り」が2つありますね。
原子炉を緊急停止するということは、臨界状態でなくすることであって、核分裂反応を止めることではないし、止められるものでもない。
核分裂を止められるのならば、デブリに水をかけ続ける必要はない。

もう一つは、ウラン238・プルトニウム239が原子炉内に残っているのは、急停止したからではないということ。
緊急停止だろうが通常停止だろうがプルトニウム239は大量に残るし、ウラン238は臨界前~通常停止を含めずっと残るので「誤り」なのです。

先ほどの文に以下が続きます。
汚染水は、それが溶けたデブリをくぐって出てきます(以上はメルトダウンした3つの原子炉のうち1、2号機の話。3号機は、最初からウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を使っていました)。
これも「誤り」ですね。
まるっきり仕組みを理解していないのでデタラメな説明になります。
MOX燃料を使おうが、使わまいが、ウラン238が含まれれば、ウラン238・プルトニウム239は大量に残ります。
「1、2号機の話」とあるが3号機も同じなのです。

ここで発表資料に「ウラン」「プルトニウム」という言葉を出さない東京電力の情報公開に、私は疑問を感じます。ウランもプルトニウムも、人体に入ると(体内被曝)毒性が強く、半減期が長いことが知られています。
ミスリード」と「誤り」があります。
経口摂取(処理水経由で取り込むとしたらこれ)によるプルトニウムの吸収率は悪いので、毒性は低いです(詳細はこちら)。吸引摂取の場合、肺に溜まるので毒性は高いですが。
ウランについては知りません。

そして、半減期が長いことで毒性が高いようにミスリードしています。
例えばU238の半減期は45億年なので、摂取したとしても人が生きている間における被曝の可能性は限りなく小さいのです。
半減期が数年であり体内に蓄積する場合は毒性が高いと言えますが、経口摂取のプルトニウムは全くそれに当たらない。

この後、散々アホな意見が続きますが、それは「ファクト」とは関係ないのでスキップします。

ALPS水・海洋排水の12のウソ
烏賀陽弘道
三和書籍
2023/11/10

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