日本列島はすごい-水・森林・黄金を生んだ大地

日本列島はすごい-水・森林・黄金を生んだ大地」(伊藤孝)を読みました。

この本は「鏡の日本列島8:『最果てが見たい』——それぞれの富士 | 生環境構築史」この連載を一部取り込んだものだそうです。
※参考文献等を引用しています。こちら参照。

高校での地学履修率が1%であることを嘆きつつ本書では地学の教科書に書かれているようなことも紹介している。
私は大学の教養で地球科学を選択したので少しは知っているが、知らないことがたくさん載っています。

・2万年前~7千年前まで海水準は上昇していたが、ここ7千はほぼ一定
・東北地方には水深2000メートルほどの溝があった
・最上川は500万年前には現在とほぼ同じところを流れていた
・日本に火山がある理由を説明している。
 プレートに化学反応によって水が取り込まれる。
 沈み込み帯でその取り込まれた水が深いところに移動する。
 通常1500℃くらいないと岩石は溶けないが、水があると500℃でも溶ける。
 マグマになると比重が軽くなるので地上に出てきて火山になる。
 温泉の水には、このように取り込まれたものが湧き出しているものがある。有馬温泉はこの系統の水。
・600万年~530万年前に地中海は干上がっていた。それによって岩塩ができて、ヨーロッパでは岩塩が採れる。
 岩塩ができる条件は、①淡水の供給量が少ない②外洋との接続が限られる③乾燥している、のため日本では岩塩が採れない。
・江戸時代における塩の生産の9割は雨が少ない瀬戸内海周辺。
 塩を作るのに薪を使っていたが、安永・天明(1772年~89年)ごろから石炭が使われ、30年後くらいには石炭に切り替わった。
・空気の酸素濃度は21%だが、16%になると火が消えてしまう。
 過去6億年において16%を下回っていた時期がある。
・日本で鉄が採れないのは古い地層がないから。
 光合成ができるようになって海水中の鉄が酸化し積もった地層は24億年前のもので、日本の最古の地層は5億年。
 たたら製鉄に使っていたのは花崗岩が風化したマサ土(脆くて手で砕ける)。
 中国地方にはそのマサ土が多く、2018年の西日本豪雨災害等で土砂崩れが起きたのはこれが原因。
 マサ土の鉄の含有量は少ないが不純物が少ない。
・鹿児島県の菱刈金山は近年見つかって今でも採掘している。そして金の純度が高い。
・鹿沼土は赤城山の堆積物で鹿沼では1m以上、水戸でも30cm以上積もっている。
 偏西風があるため、その分布は赤城山の東側に集中している。
 富士山の場合、東京には数cmしか積もっていない。
 丹沢軽石の供給源は富士山ではなく、鹿児島県の姶良カルデラ。そんな遠いところからの軽石が10cm以上積もっている。
 雲仙普賢岳の火砕流は5kmだが、姶良カルデラは数十km。
 姶良カルデラレベルの噴火は過去12万年で3回。9万年前の阿蘇、2万9千年前の姶良、7千年前の喜界アカホヤ。これらは赤城の3桁規模が大きい。

終章で「すごい」という言葉の意味が書かれている。

1 ぞっとするほど恐ろしい。
2 びっくりするほど程度がはなはだしい
※「凄い(すごい)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書」より引用

この1の意味を紹介して終わっている。
7000年前以降、気温はほぼ一定でバカでかい噴火が起きていない事実を示した上で、人口一極集中などの問題提起をして終わっている。

出典等

図版 データ出典


図序-2 吉田幸平 高木秀雄 (2020) 『地学雑誌』 129 (3)、337-354
図序4 巽好幸『地震と噴火は必ず起こる』 (新潮社、2012)
図1-1 行基図長久保赤水
図1-3 中西正男 沖野郷子 『海洋底地球科学』 (東京大学出版会、2016)
図1-4 増田富士雄 『地球を丸ごと考える 3 リズミカルな地球の変動』 (岩波書店、1993)
図1-5 山崎晴雄 『富士山はどうしてそこにあるのか地形から見る日本列島史』(NHK出版、2019)
図1-7 Marine isotope stages
図2-1 Tamaki, K. & Honza, E. (1991) Episodes, 14 (3)、 224-230
図2-2 磯崎行雄ほか (2011) 『地学雑誌』120 (1) 65-99
図2-3 米倉伸之ほか編 『日本の地形 1 総説』 (東京大学出版会、2001)、 Google My Map 「奥の細道
図2-6 北里洋 (1985) 『科学』 55 (9) 532-540
図2-7 https://twitter.com/VolcanoMagma/status/1281700326974689280
図2-8 米倉伸之ほか編『日本の地形1 総説』 (東京大学出版会、2001)
図2-12 守屋俊治ほか (2008) 『地質学雑誌』 114 (8) 389-404
図2-14 谷釜尋徳 (2021) 『体育学研究』 66、607-622
図2-15 貝塚爽平ほか 『日本の自然 <4> 日本の平野と海岸』(岩波書店、1985)
図3-1 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mt.Fuji_from_Mt.Yatsugatake_01.jpg
図3-2 Craig, H. (1961) Science, 133 (3465),酒井均・松久幸敬 『安定同位体地球化学』 (東京大学出版会、1996)が 図3-3 白水晴雄 『温泉のはなし』 (技報堂出版、1994)
図3-4 https://www.beppumuseum.jp/jiten/tensuinoanteidoitaihi.html
図3-5 風早康平ほか (2014) 『日本水文科学会誌』 44, 1-14
図3-6 Rüpke, L. et al. (2006) Earth's Deep Water Cycle, 168, 263-276
図3-7 Tatsumi, Y. (1989) J. Geophys. Res., 94, 4697-4707,佐野貴司ほか (2018) 『月刊地球』 40 (4) 199-209
図4-1 図4-2 古川武彦 大木勇人 『図解 気象学入門―原理からわかる雲雨 気温 風 天気図』 (講談社、2011)
図4-3 古川武彦 大木勇人 『図解 気象学入門―原理からわかる 雨 気温 風天気図』 (講談社, 2011)
図4-4 気圧の図は、国立天文台 『理科年表』 (丸善出版)
図4-5 Hall, R. (2009) Blumea-Biodiversity, Evolution and Biogeography of Plants, 54 (1-2), 148-161
図4 6 https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/climate/glb_warm/sst_annual.html
図4-7 https://earthobservatory.nasa.gov/images/7079/historic-tropical-cyclone-tracks
図4-8 『地学』 (数研出版、 2020)
図4-9 https://en.wikipedia.org/wiki/Ocean_current#/media/File:Corrientes-oceanicas.png
図4-10 安成哲三 『モンスーンの世界 日本、アジア、地球の風土の未来可能性』 (中央公論新社、2023)
図4-11 https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=74&block_no=47893&year=&month=&day=&view=plhttps://en.climate-data.org/north-america/united-states-of-america/california/huntington-beach-5669/
図5-1 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Blue_Marble_Eastern_Hemisphere.jpg
図5-3 アンドリュース、 J.E. ほか 『地球環境化学入門改訂版』(丸善出版, 2012)
図5-4 Tucker, M. E. “Sedimentary petrology an introduction" (Oxford:Blackwell Scientific, 1981)
図5-7 van Dijk, G. et al. (2023) Sedimentology, 70 (4) 1195-1223
図5-8 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pangaea_200Ma.jpg
図5-9, 図5-10 Kukla, P. A. et al. (2018) Gondwana Research, 53, 41-57
図6-3 田近英一 『46億年の地球史生命の進化、そして未来の地球』 (三笠書房、2019)
図6-4 田近英一 『46億年の地球史生命の進化、そして未来の地球』, Glasspool, I. J. & Scott, A. C. (2010) Nature Geoscience, 3 (9),627-630
図6-6 Larry Thomas “Coal Geology (Wiley-Blackwell, 2020)
図6-7 磯崎行雄ほか (2011) 『地学雑誌』 120 (1) 65-99
図6-8 早稲田周ほか (2020) 『石油技術協会誌』 85 (6) 299-308
図6-9 田口一雄 『石油はどうしてできたか (地球の歴史をさぐる 10 ) 』(青木書店, 1993)
図6-10 平井明夫ほか (1990) 『石油技術協会誌』 55 (1) 37-47
図7-1 松久幸敬・赤木右 『地球化学講座 地球化学概説』(培風館、2005)、https://ja.wikipedia.org/wiki/クラーク数に
図7-5,図7-6 Bekker et al. (2010) Economic Geology, 105(3),467-508
図7-7 Aは https://tetsunomichi.gr.jp/history-and-tradition/tatara-outline/part-2/
Bは Ishihara, S. & Sasaki, A. (1991) Episodes, 14 (3) 286-292
図7-10 Nadoll, P. et al. (2014) Ore Geology Reviews, 61, 1-32
図8-5 Frimmel, H. E. (2008) Earth and Planetary Science Letters, 267(1-2),45-55
図8-8 Hedenquist, J. W. et al. (2000) Reviews in Economic Geology, 13,245-277
図8-9 https://www.smm.co.jp/corp_info/location/domestic/hishikari/
図8-10 井澤英二 『よみがえる黄金のジパング (岩波科学ライブラリ-5)』 (岩波書店, 1993)
図終-2 西村太志 (2019) 『火山』 64 (2) 53-61
図終-3 山元孝広 (2016) 『地質学雑誌』 122 (3) 109-126
図終-4 宮地直道 ・ 小山真人 (2007) 『富士火山』 339-348
図終-6 奥野 (2019) 『地質学雑誌』 125 (1) 41-53
図終-8 巽好幸 『地震と噴火は必ず起こる』 (新潮社、2012)

主要参考文献

全体に関わるもの
磯崎行雄 川勝均・佐藤薫 (編) 『高等学校 地学』 啓林館、 2023年
浜島書店 『ニューステージ地学図表 地学基礎+地学 対応』 浜島書店、2023年
数研出版編集部 (編) 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス地学図録』 数研出版、2023年
杵島正洋 松本直記 左巻健男 『新しい高校地学の教科書 現代人のための高校理科』 講談社、2006年
数研出版編集部 (編) 『もういちど読む数研の高校地学』 数研出版、2014年
山崎晴雄 『富士山はどうしてそこにあるのか地形から見る日本列島史』 NHK出版、2019年
川幡穂高 『地球表層環境の進化先カンブリア時代から近未来まで』 東京大学出版会、2011年
田近英一 『46億年の地球史生命の進化、 そして未来の地球』 三笠書房、2019年
田近英一 『地球環境46億年の大変動史』 化学同人、2021年
清川昌一 伊藤 孝・池原 実・尾上哲治 『地球全史スーパー年表』 岩波書店、 2014年
尾池和夫 『四季の地球科学日本列島の時空を歩く』 岩波書店、2012年
蟹沢聰史 『石と人間の歴史 地の恵みと文化』 中央公論新社、2010年

序章
太田陽子・小池一之・鎮西清高・野上道男・町田 洋・松田時彦『日本列島の地形学』 東京大学出版会、2010年

第1章
平朝彦『日本列島の誕生』 岩波書店、1990年
平朝彦・国立研究開発法人 海洋研究開発機構 『カラー図解 地球科学入門 地球の観察―地質・地形・地球史を読み解く』 講談社、2020年
高木秀雄 (監修) 『CG細密イラスト版地形・地質で読み解く 日本列島5億年史』 宝島社、2020年
堤之恭 『新版絵でわかる日本列島の誕生 (KS絵でわかるシリーズ)』 講談社、2021年
鈴木毅彦 『日本列島の 「でこぼこ」 風景を読む』 ベレ出版、 2021年 大河内直彦 『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』 岩波書店、2015年

第2章
藤岡換太郎 『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』講談社、2018年
嵐山光三郎 『芭蕉紀行』 新潮社、2004年
蟹澤澤史 『「おくのほそ道」を科学する 芭蕉の足跡を辿る』 22世紀アート、2019年

第3章
中島淳一 『日本列島の下では何が起きているのか列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで』 講談社、2018年
萬年一剛 『最新科学が映し出す火山―その成り立ちから火山災害の防災、富士山大噴火』 ベストブック、 2020年
藤井敏嗣 『火山地球の脈動と人との関わり』 丸善出版、 2023年

第4章
古川武彦 大木勇人 『図解・ 気象学入門改訂版—原理からわかる雲・雨 気温 風 天気図』 講談社、2023年
安成哲三 『モンスーンの世界 日本、アジア、地球の風土の未来可能性』 中央公論新社、2023年

第5章
J.E. アンドリュースP. ブリンブルコム・T.D. ジッケルズP.S.リス BJ. リード (著), 渡辺正 (訳) 『地球環境化学入門改訂版』 丸善出版、2012年
KJ. シュー (著)、 岡田博有 (訳) 『地中海は沙漠だったグロマー・チャレンジャー号の航海』 古今書院、2003年

第6章
藤井一至『大地の五億年―せめぎあう土と生き物たち』 山と渓谷社、2022年
佐野貴司・矢部 淳・齋藤めぐみ 『日本の気候変動 5000万年史 四季のある気候はいかにして誕生したのか』 講談社、 2022年
古舘恒介『エネルギーをめぐる旅文明の歴史と私たちの未来』英治出版 2021 年
相原安津夫 『石炭ものがたり (地球の歴史をさぐる 3)』 青木書店、1987年
田口一雄 『石油の成因: 起源 移動 集積(地学ワンポイント 6)』 共立出版 1998年
田口一雄 『石油はどうしてできたか (地球の歴史をさぐる 10)』 青木書店、1993年

第7章
菅沼悠介 『地磁気逆転と 「チバニアン」』 講談社、2020年 月村勝宏 『地球46億年物質大循環 地球は巨大な熱機関である』 講談社、2024年
宮本英昭 橘省吾 横山広美 『鉄学 137億年の宇宙誌』 岩波書店、2009年
高橋正樹 『花崗岩が語る地球の進化 (自然史の窓7)』 岩波書店、1999年

第8章
浦島幸世 『金山 鹿児島は日本一』 春苑堂出版、1993年
井澤英二 『よみがえる黄金のジパング (岩波科学ライブラリー 5)』、 岩波書店、1993年
宮崎正勝 『黄金の島 ジパング伝説』 吉川弘文館、2007年
村上隆 『金・銀・銅の日本史』 岩波書店、2007年
高木久史 『通貨の日本史無文銀銭、 富本銭から電子マネーまで』中央公論新社、2016年

終章
巽好幸 『地震と噴火は必ず起こる大変動列島に住むということ』 新潮社、2012年
萬年一剛『富士山はいつ噴火するのか? 火山のしくみとその不思議』筑摩書房、 2022年
高橋正樹『破局噴火——秒読みに入った人類壊滅の日』 祥伝社、2008年 中谷礼仁 『動く大地、住まいのかたちブレート境界を旅する』 岩波書店、 2017年

日本列島はすごい-水・森林・黄金を生んだ大地
伊藤孝
中央公論新社
2024/4/22

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