報道の責任からの「自由」(自由報道協会)①上杉隆編

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自由報道協会が追った3.11」を読みました。

著者陣が凄い(どういう意味で凄いかは書きません)。

上杉隆/神保哲生/岩上安身/津田大介/七尾功/日隅一雄/木野龍逸/田中龍作/畠山理仁/渡部真/渋井哲也/小川裕夫/烏賀陽弘道/西岡千史/上垣喜寛/中澤大樹/島田健弘/村上隆保/渋井哲也/渡部真/寺家将太/おしどりマコ/伊田浩之/白石草/重信メイ/上出義樹/江川紹子

1つの記事で終わらせようと思ったのですが、かなり酷い内容なので分割して紹介します。
1回目は「上杉隆:3・11で見えた記者クラブの終焉と自由報道協会の使命」です。

目と耳、および頭は付いていますか?

多くの日本人はいまだに信じられないだろう。先進国であるはずの日本の報道機関が、四半世紀前の共産国家時代のソビエト政府と同等か、もしくはそれ以下のレベルであるなどということを。
プロパガンダを流すソ連政府が、噓も含め好き放題政府批判をする日本のメディアと同等だって。
この本の著者陣も含めマスゴミはレベルの低い人が多いのは確かだが、プロパガンダを流すか、流さないかの自由はあります。

しかし、今回の震災報道を見ると、日本の大手メディアは権力に「情報を出せ」と迫ることすらしなかった。
息をするように嘘をつきますね。

asahi.com(朝日新聞社):東日本大震災 - 枝野官房長官の会見全文記事一覧 - ニュース特集」で官房長官記者会見の全文を読めるが、「2011年3月13日」のを見ると、数値を教えろ、東電社員の健康状態を教えろ、被曝した人の性別・子供がいるか教えろetc、「情報を出せ」という言葉はないが、情報を出させている。

記者会見の捏造

震災後、フリーランスの記者が初めて官房長官会見に出席できたのは、震災から1週間が過ぎた3月18日金曜日の午後のことだった。その時、私は福島第一原発を中心とする20圏内の避難の是非について質問をした。なぜなら海外の大使館は日本在住の自国民に対し、早々に福島第一原発から80km圏外に避難するよう勧告を出していたからだ。
しかし、日本政府だけが、逆に「安全だ」「ただちに人体に影響をあたえるものではない」と言い続け、避難地域を広げようとはしなかった。
・・・
だからこそ私は、「海外の判断が間違っているのであれば、外国の政府に抗議してください」と枝野官房長官にその記者会見の場で迫ったのだ。しかし、政府は世界の方針は無視したまま、「安全だ」「安心だ」と言い続けた。その結果、被曝しなくてもいい人たちまでが被曝し、作業員らの救える命も救えなかった可能性があるのだ

ジャーナリスト様がちゃんと引用できないので、「官房長官の記者会見テキスト(2011年3月18日16時18分から45分間) – FUKUSHIMA STUDY」より該当部分を引用します。
※「asahi.com(朝日新聞社):枝野官房長官の会見全文〈18日午後4時48分〉 - 東日本大震災」にもあるが、記者の質問の全文がないので使わない
記者:不眠不休の枝野長官に申し上げにくいんですが、官邸に情報がきちんと上がっていない、そして、誤情報を掴まされているんじゃないかという危惧があります。国民の不安にも繋がっています。また、海外メディア、そして海外の政府、いろんな形で情報を出していますが、それはどうも齟齬がある。一つ具体的にお伺いしたいのが、アメリカ始めイギリス、フランスが現在、福島原発の80キロ圏外への避難を言っています。日本政府は30km、この間の50kmというのはどうやって捉えればいいのかということを地域の住民が非常に心配しております。海外の政府が正しければ、それは正しいと言って日本政府が変更するか、日本政府が正しいんだったら、海外の政府に対してそういうデマを流すなと言って抗議されるか、どちらなんでしょうか

官房長官:あのー原子力発電所からの退避指示の内容については、いくつかの国が、日本におられる自国民に対する指示等の内容と政府が発表している内容が確かに異なっております。しかしながらこれは、これまでも実は何度も申し上げてきておりますが、海外におられる自国民保護という観点からは、一般的に求められている水準よりも、より保守的な水準で様々なことを指示をするというのが、私はそれぞれの政府の当然の対応だと思っております。わたくしが同じ立場でも、つまり、日本の国外で同種の事態が生じて、日本国民の退避について様々な判断をするにあたっては、科学的客観的に適切だと思われる数値を超えてですね、様々な指示をすることは当然自国の政府の責任としてありうるというふうに思っております。そうしたことの中で、日本政府としては、今様々お話ありましたが、今私どもが把握をしている専門家の意見も含めたデータの中で適切と思われる退避に対する指示等を出させて頂いております。そしてその数字の違いについては、アメリカ政府の方の中からも日本政府の判断は適切であるという趣旨のご発言も出ているというふうにも承っております。

「外国政府に抗議してください」と記者会見で言ったと本人は書いているが。何様だと思っているのでしょう。
記者には記者会見で自分の主張を政府幹部に意見する権限はない。
東京新聞の望月衣塑子記者と同様に大きな勘違いをしていますね。

引用した通り「外国政府に抗議してください」とは言っておらず、抗議するのか/日本が変更するのか、どちらかを聞いているだけ。
「世界の方針は無視したまま」と言うが、アメリカ政府内にも日本の判断は適切という発言も出ているそうですが、それはど無視ですか?

『「安全だ」「安心だ」と言い続けた』と書いているが、少なくとも記者会見では「安心」という言葉は使っていない。

下線のところも嘘ばっか。
「作業員らの救える命も救えなかった」と過去形で言っているが、この時点から現在まで放射線が原因で亡くなった人はいません。

記者会見の動画を見てみたが、この時の枝野君はまともでしたね。
責任が必要でない立場になるとあれほどに劣化するというのは面白いですね。

動画は「平成23年3月18日(金)午後(16:48~)-内閣官房長官者会見 | 政府広報オンライン」こちらをどうぞ。

放射性物質に関する扇動

また、私は今まで「プルトニウムは危険だ」という情報を信じていたが、驚くべきことに日本だけは違うことを知った。
「プルトニウムが出すアルファ線は紙が一枚あれば防げる」という話も流布された。
それならばなぜ福島原発の周りに紙を貼らないのか、私には不思議で仕方がなかった。
福島県放射線健康リスク管理アドバイザを務める山下俊一教授や東電の方々からは「プルトニウムは飲める」ということも教わった。
無知なのかどうかは知らないがヒドイですね。

プルトニウムは肺に蓄積されるので吸引は危険です。
経口摂取ではほとんど吸収されないので、超高濃度でなければ大したことはありません。
※詳細は「プルトニウムの毒性と取扱い (09-03-01-05) - ATOMICA -」参照

情報をつまみ食いして扇動しているだけですね。

この本が出された時点でどの程度の情報が得られていたかは知らないが、プルトニウムの量はチェルノブイリに比べてカスなのです。

チェルノブイリと福島第一の放射性核種の推定放出量の比較
※「環境省_チェルノブイリと福島第一の放射性核種の推定放出量の比較」より引用

それだけではない。放射性物質であるセシウム137が、日本では稲わら“だけ”に付着することも私は初めて知った。セシウムに汚染されるのは肉牛“だけ”ということも初耳だった。
いや~。
この人がデマ屋だという話は聞いていたが、その文章を読むのは初めてですが、噓ばっかですね。

記者クラブ所属の朝日新聞の「asahi.com(朝日新聞社):東日本大震災 - 原発関連記事一覧1 - ニュース特集」から当時の記事をいくつかピックアップします。

asahi.com(朝日新聞社):新たにホウレンソウ・牛乳から放射性物質 枝野長官発表 - 東日本大震災
asahi.com(朝日新聞社):福島沖コウナゴ、基準大幅に上回る放射性物質 - 東日本大震災
asahi.com(朝日新聞社):コウナゴのセシウム、再び基準値超える 北茨城市沖 - 東日本大震災
asahi.com(朝日新聞社):福島県産のタケノコと山菜、基準超える放射性物質 - 東日本大震災
asahi.com(朝日新聞社):いわき沖のアイナメからセシウム検出 - 東日本大震災

2011年3月~6月の記事で、このデマ本出版には十分間に合っていますが、稲わら・牛肉以外のものが報道されています。
書いていてムカついてきたな。

3月の福島原発事故発生以来、私にはこうした驚きの新事実ばかりがもたらされた。さらに日本の放射性物質が飛び散る範囲は福島県内だけで、県境を越えないという器用な飛び方をすることも学んだ。
これもふざけていますね。
これも朝日新聞の記事のリンクを貼りますが、小田原市は福島県でしたっけ?無知な素人である私は神奈川県だと思うのだけれども。

asahi.com(朝日新聞社):小田原産などの茶葉からも基準超す放射性セシウム - 東日本大震災

海産物の放射線調査についても新たな知見が示された。日本の水産庁、文部科学省の調査によると、ストロンチウム88、90は、日本近海の魚の頭と内臓と骨を汚染しないということが明らかになったのだ。
世界中では、ストロンチウムは比較的骨などに溜まりやすいと言われている。しかし、なぜか日本では検査の時に頭と内臓と骨を取って検査をする。つまり日本ではその部位だけは汚染されないという前提なのだ。
これもデタラメですね。
朝日新聞の2011年6月1日の記事「asahi.com(朝日新聞社):魚類のストロンチウム検査開始 水産庁、海藻検査も強化 - 東日本大震災」から引用します。
ストロンチウムは水に溶けやすく、半減期が29年と長い。性質がカルシウムに似て魚類の骨にたまりやすく、人間が食べると同様に骨にたまって白血病の原因にもなるとされる。
今回、ストロンチウムを検査しているのは原発の沖合で捕獲されたカタクチイワシやコウナゴ(イカナゴの稚魚)。小型の魚で、骨も含めて全体が食用となっている。
水産庁と各県はこれまで、魚類についてセシウムがたまる筋肉の部分だけを分析してきた。だが、ストロンチウムが海水から検出されるようになり、「骨も含めた検査が必要」との指摘が出ていた。検査結果が出るまでには1~2カ月かかるという。
上杉氏の言うのがデタラメであることが分かりましたね。

工程表

たとえば東京電力が発表した原発事故収束に向けた工程表。この工程表が出てきたのも、そもそもは東京電力の記者会見で、NPJの日隅一雄氏、フリーライターの木野龍逸氏(ともに自由報道協会所属)、ニコニコ動画七尾功氏など、記者クラブに所属しない記者たちが何度も「出せ」と追及した結果出てきたものだ。
しかし、ようやく公表された工程表は「七夕の短冊」のように実現する根拠のない願望で埋め尽くされたものだった。私たちは東電側の情報操作に「またか」と徒労感でいっぱいになった。
・・・
ところが、公表された瞬間に翌日の新聞は全紙が一面トップで「6か月から9か月の工程表を公表」と書く。そこには具体的な数値の裏付けも何もないにもかかわらずだ。本当のジャーナリズムであれば、「数字も根拠も出さないこの工程表はデタラメだ」と書いてもいいはずだ。
工程表(ロードマップ)が何なのかを知らないで文句をつけているようですね。
工程表は、大きな目標・優先順位・大きなタスクとその前後関係・マイルストーンを定めるものです。

工程表を作る上で厳禁なのは、過剰に詳細な計画を立てることです。
工程表を作るのに時間がかかってスピード感はでないし、柔軟性も失われてしまいます。

その厳禁なものを上杉氏は求めています。ダメだこりゃっていう感じです。
「プロジェクト」に関わったことがないのでしょうね。

その工程表は「東京電力の「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」について」から見られます。
「瓦礫の撤去を継続」など書かれているが、こんなのにいちいち根拠が必要ですか?

優先順序がおかしくないか、大事なものが抜けていないか、見落とされている大きなリスクがないかなど、工程表はこういう観点で見るのですよ。
間違っても、細かい数字・根拠がどうのとツッコむものではない。

例えば日経新聞は次のように報じています。
福島原発、6~9カ月で冷温停止 2号機は密閉 東電が事故収束工程表 - 日本経済新聞

私は断言する。もしフリーランスの記者たちが記者会見で追及していなければ、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどの放射性物質が放出されていたことすら報じられていなかったはずだ。
存在していない世界の話を断言できるとは凄いですね。
そのくせ「はずだ。」と言っていますね。
断言するのならば、「絶対に報じられていなかった。」や「間違いなく報じられていなかった。」となるでしょうに。
科学も日本語も苦手ですか?

もはや既存メディアがこれまでのように無視したり「デマ野郎」「インチキ」「三流」というレッテルを貼ろうとしたりしても、それは無理な時代になったのだ。
少なくとも上杉氏に関しては赤字の部分はレッテルではなく事実であることは今までの指摘からわかります。
既存メディアもフリーもデマ野郎はデマ野郎であり、まともな記者はまともなのですよ。

メルトダウン

たとえば燃料棒のメルトダウンについては、3月半ばには海外メディア、フリーランスの記者たちのほとんどが指摘していたことだ。
しかし、当初、東電も政府も「メルトダウン」の事実を一切認めていなかった。既存メディアが「3月の事故発生直後にメルトダウンが起きていた」事実を報じたのは、政府が認めた5月になってからである。
「メルトダウン」という言葉がきっちり定義されていたわけではなかったので、そういう表現をしてこなかっただけで、「メルトダウン」に相当するようなことは認めています。
正式に公表したのが5月になったというだけの話ですが酷いものです。

ここでも朝日新聞に登場していただきますか。
asahi.com(朝日新聞社):福島第一原発1号機、炉心溶融の可能性 安全・保安院 - 東日本大震災 2011年3月12日14時17分
asahi.com(朝日新聞社):炉心溶融の可能性、東電も認める 福島第一原発1号機 - 東日本大震災 2011年3月12日20時26分

記事に時間も書いてあったので書きましたが、事故当日に認めていますね。
安全・保安院は言うまでもなく、行政府の一組織です。

経緯については「事故当初における当社の公表/通報内容、および官邸・政府の公表内容<時系列>」を見ると良いでしょう。

2022年の日経の記事ですが、福島第一原発事故は「典型的メルトダウンではなかった」そうですよ。
福島原発事故、典型的メルトダウンではなかった 科学記者の目 編集委員 滝順一 - 日本経済新聞

言葉の定義もブレていて、典型的でなければ、正式な発表が遅くなるのもわからんではないですね。

犯罪国家?

また、4月4日に放射能汚染水1万1500tを事前通告なしに海洋に垂れ流すことを許したのもメディアの大きな罪である。これは国連海洋法、ロンドン条約にも触れる行為だ。日本は世界の共通財産である公海を汚した犯罪国家になってしまった。
枝野官房長官は翌5日に「条約に基づいての通報はしている」と言っている。
事前か事後かはこの発言からは確認できないが、国会議事録を見る限りは事後報告のようだ。
では条約違反であり、犯罪であるかが主題となる。

国連海洋法には「第五十六条 排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権及び義務」で「海洋環境の保護及び保全」について「他の国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この条約と両立するように行動する」という努力義務が示されているだけで国際法違反とはならない。

ロンドン条約(廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約)の第八条に例外事項があって「投棄又は海洋における焼却がその脅威を避けるための唯一の方法」である場合は海洋投棄が認められています。
そして「当該投棄又は海洋における焼却については 直ちに機関に報告するものとする」とあるので、事後で問題ありません。

ということで、日本は犯罪国家ではありません。
何でこういう輩は、日本下げをしたがるのでしょうね。

そもそも、20万倍濃い放射能汚染水のを環境に出さないための措置なのですが、それを垂れ流した方が良かったのか?っていう話ですわ。

参考情報
福島第一原子力発電所からの低レベル廃液の海洋放出について(METI/経済産業省)
・「asahi.com(朝日新聞社):東電、汚染度低い水を海へ放出 数日かけ計1.1万トン - 東日本大震災
asahi.com(朝日新聞社):枝野官房長官の会見全文〈6日午前〉 - 東日本大震災
ロンドン条約原文

ということで、言っていることがデタラメなので、この人に自由報道やジャーナリズムを語る資格はありません。

自由報道協会が追った3.11
扶桑社
2011/10/4

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