「世界で最初に飢えるのは日本」を読むとバカになる

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東大鈴木宣弘特任教授の「世界で最初に飢えるのは日本」で「米を食うとバカになる」という話があったが、出典の本が古くて確認できずツッコミができませんでした。

しかし、めでたいことに「頭脳 : 才能をひきだす処方箋 - 国立国会図書館デジタルコレクション」で中身を確認できたので、彼の主張を否定してあげましょう。

鈴木教授の主張

鈴木教授のデタラメな内容は以下からも確認できるので、該当部分を引用します。
「米を食うとバカになる」と洗脳された…日本人の食生活を激変させた洋食推進運動の恐ろしすぎる内容 こうして日本の食はアメリカに握られた | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
日本人にアメリカ産の小麦を売るために、「米を食うとバカになる」という主張が載った本を、「回し者」に書かせるということすらやった。
『頭脳 才能をひきだす処方箋』(林髞著、光文社)という本がそれである。
食料難の戦後がようやく終わったころの1958年に出版されたこの本は、その後の日本の農業に、大きなダメージを与えることになった。
いまでこそ、同書の存在はほとんど忘れ去られているが、当時は発売3年で50刷を超える大ベストセラーであり、日本社会に与えた影響は非常に大きかったのである。
この『頭脳』という本には、「コメ食低能論」がまことしやかに書かれている。
著者の林氏によると、日本人が欧米人に劣っているのは、主食のコメが原因なのだそうだ。
「これはせめて子供の主食だけはパンにした方がよいということである。(中略)大人はもう、そういうことで育てられてしまったのであるから、あきらめよう。悪条件がかさなっているのだから、運命とあきらめよう。しかし、せめて子供たちの将来だけは、私どもとちがって、頭脳のよく働く、アメリカ人やソ連人と対等に話のできる子供に育ててやるのがほんとうである」(『頭脳』161~162ページ)
この記述は、当然ながら、科学的根拠がまったくない「暴論」と言わざるを得ない。


事実は?

端的にいうと、デマ屋がよくやる「切り取り」です。
都合のよい箇所だけ引用して、本来の意図とは全く違うイメージを仕立てます。

林氏が言いたかったことは次の通りです。

1.主食を米からパンに変えた方がよい
2.なぜなら、米主体の食事だとビタミンB不足になる可能性があるため
3.主食を変えるのが嫌ならば、ビタミンBの多い物を摂取すべき

一言でまとめると「ビタミンB不足にならない食事をしよう」です。
間違っても「米を食べるとバカになる」という話ではない。

鈴木教授が引用した箇所より後に出てくる関係箇所を引用しましょう。
それでもパンはいやだ、先祖のために白米を食わなければあいすまぬと考える人びとは、改善の策としてつぎのようにしたらどうであろうか。
それは、白米を主食として、毎日ビタミンB類を補給することである。
・・・
私どもの子供の将来のためである。そこで、かならずビタミンB類を、毎日とることを心がけるとして、頭の働きにぜひとも必要であるということがわかっているビタミンを、あらためてここに一括しよう。
1、B1(小糖、大豆とその加工品など)
2、B6(酵母、肝臓、落花生、牛乳、卵の黄身など)
3、B12(魚の血あい、肝臓、貝類、のりなど)
4、パンテト酸(酵母、肝臓、卵、牛乳、豆類など)

鈴木教授は、「著者の林氏によると、日本人が欧米人に劣っているのは、主食のコメが原因なのだそうだ」などと言っているが、林氏はコメが原因ではなくビタミンB不足だと言っています。
現代ではバランスよく摂ることができるので、白米だろうが気にすることではありません。

また鈴木教授は『この記述は、当然ながら、科学的根拠がまったくない「暴論」と言わざるを得ない』などと言うが、ビタミンB不足で脳機能に影響が出ることの科学的根拠はあります(どの程度でヒトで発生するかは定かではない。また、林氏の時代にどこまでわかっていたかも不明。)。
記憶能力に対する必須栄養素の役割とその作用メカニズム」によると、マウスによる実験では空間学習障害・社会的認知記憶障害となるそうです。

林氏は脳神経生理学を専門にしていたそうで、鈴木教授の農業経済よりよっぽど科学的ですな。

世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか
鈴木宣弘
講談社
2022/11/18


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