週刊金曜日の農薬再評価の記事、最初からやり直せ
週刊金曜日の「11月15日(1497)号」の「農薬再評価、最初からやり直せ 明日のために求められる予防原則 原 英二」というのを読みました。
なぜ読んだかというと、以下のように東大山室真澄教授がツイートしていたためです。
農薬(pesticide)には、殺菌剤(fungicide)・殺虫剤(insecticide)・除草剤(herbicide)などの種類がありますが、殺生物剤(biocide)とは別のものです。
日本・EUともに農薬とは別の扱いで、法的にも別物として扱われます。
日本でバイオサイドを農薬として使ったら農薬取締法違反となります。
参考情報
・EU 殺生物性製品規則の概要(日本貿易振興機構 ジェトロ)
・EU 殺生物性製品規則(BPR) | 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター【JETOC】
・農薬環境懇談会報告書(環境省)
そこから引用します。
農薬取締法第八条で規定されています。
その一環で、研究論文の文献調査をします。
文献調査について原氏は次のように書いています。
これらの名前が出てきたら猫またぎするリテラシーが必要です。
次を見てもらえばわかりますが、木村-黒田氏が主張している15個の疑義のうち13個は誤った指摘であることを確認しています(残り2個は情報不足等で判定不能)。
「農薬再評価の文献調査に対する不当なクレーム」
簡単な指摘誤りを説明しましょう。
文献調査のガイドラインで過去最低15年を対象にすることが定められています。
調査日よりも未来のものは見つけようがないので調査日~過去15年が文献調査の範囲ですが、それから外れたものが15個中7個ありました。
利益相反だ!とぬかす前にちゃんと制度を理解した上で調べましょうねって感じです。
EUでは初回の再評価は完了していて、更新の際に文献調査をするプロセスを回しています。
農薬更新に関する決まりは (EU) 2020/1740 でされています。
(EU) 2020/1740 の6条に「更新申請の内容(Content of the application for renewal)」ということで次のように文献調査のことが書かれています。
原氏は、EUでは申請者は利益相反があるので文献調査において収集しかさせていないと言っていますが、上記では「選択と評価」をしていないか判断はできません。
文献調査の方法は次のものに定められています。
「規則(EC) No 1107/2009に基づく農薬活性物質の承認のための科学的査読付き公開文献の提出(Submission of scientific peer-reviewed open literature for the approval of pesticide active substances under Regulation (EC) No 1107/2009)」
この文書の Abstract(要旨)から一部引用しましょう。
一応このEFSAガイダンスで示された文献調査のステップを説明します。
①複数の文献データベースから文献のサマリ情報を検索する。全文も検索するケースもあり。
使用したデータベース、検索条件、検索条件ごとの件数を記載する。
②重複したものを排除
③要約記録の迅速な評価をして、明らかに無関係なものを除外する
ここで除外したものは件数のみ記載する。
④全文を見て、関連性の基準を満たさない研究を除外する(Table 6)
論文のタイトル等、除外した理由を記載する。
⑤詳細の評価をしてまとめる(Table 4,5)
論文のタイトル等を記載する。
日本のがどうかというと、文献調査のガイドラインやこちら(ガイドラインを要約しています)を見ればわかりますが、同等以上のものになっています。
日本のガイドラインはEUなどをベースにしているので当たり前ですね。
ガイドラインのなかでもEFSAガイダンスのことに触れています。
日本の制度に文句をつける=EUについて文句をつけていることになります。
上記から、この件についても原氏の記述はデタラメだとわかりました。
農薬再評価関係の資料(古いものもあるので最新の情報ではない)
・再評価制度について(農林水産省)
・農薬登録に関する欧州連合の法制度
・ヨーロッパ(欧州委員会 EU)の農薬登録制度
・農薬の再評価について
減ったかと聞かれれば、相当に増えていない限り減ったと言うでしょう。
その報告というのは山室真澄教授の胡散臭い研究ですかね?
山室真澄教授が騒いだ件ですね。
環境省はネオニコチノイド系農薬が原因だとしていないが、共同通信が勝手にネオニコと関連付けた報道をした上に該当箇所をサイレント削除しています。
なお、スズメは減っているが「絶滅危惧種の一歩手前」という状況ではない。
「疑わしいものは止めろ」というのがこの人の「予防原則」のようだが、それは予防原則とは言わない。
詳細は以下を読みましょう。
『多くの人が間違って使っている言葉「予防原則」について改めて解説します | リスクと共により良く生きるための基礎知識』
「予防原則」だけで判断すると、それよりもリスクの大きいものに代用してしまうことで環境悪化を招くこともあるのです。
どんなものにもリスクはあるので、総合的に判断する必要があります。
間違っても週刊金曜日に書かれているデタラメをもとに判断することはご法度です。
なぜ読んだかというと、以下のように東大山室真澄教授がツイートしていたためです。
週刊金曜日の11月15日号に、農薬再評価制度の問題点を指摘した記事が掲載されています。#ネオニコチノイド が審議中ですが、農薬メーカーが提出する文献で評価されています。https://t.co/l8JBT5mnBb
— 山室真澄 (@YamamuroMasumi) November 16, 2024
バイオサイド
本題に入る前に変なことが書かれていたのでツッコミます。農薬は昆虫、植物、微生物といった生物を殺すための薬剤であり、海外ではバイオサイド、すなわち殺生物剤と呼ばれている。いや~。惚れ惚れするほどのデタラメですね。
農薬(pesticide)には、殺菌剤(fungicide)・殺虫剤(insecticide)・除草剤(herbicide)などの種類がありますが、殺生物剤(biocide)とは別のものです。
日本・EUともに農薬とは別の扱いで、法的にも別物として扱われます。
日本でバイオサイドを農薬として使ったら農薬取締法違反となります。
参考情報
・EU 殺生物性製品規則の概要(日本貿易振興機構 ジェトロ)
・EU 殺生物性製品規則(BPR) | 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター【JETOC】
・農薬環境懇談会報告書(環境省)
農薬再評価とは何か?
農薬再評価のことは農林水産省の「農薬の再評価:農林水産省」に説明があります。そこから引用します。
改正農薬取締法(2018年12月1日施行)において、全ての農薬について、定期的に、最新の科学的知見に基づき安全性等の再評価を行う仕組みを導入しています。
農薬取締法第八条で規定されています。
文献調査:活動家による低質なクレーム
再評価の際には最新の知見をもって評価します。その一環で、研究論文の文献調査をします。
文献調査について原氏は次のように書いています。
利益相反のある農薬企業による公表文献の選別・評価は、きわめて恣意的で不適切なものがあるのに、農水省は適切であると評価して、2022年末に以下のような報告書を公開したと、木村-黒田氏は言う。たとえばクロチアニジンの公表文献報告書では、神戸大学・星信彦教授らの文献が検索対象の2006~2021年度に10件あるが、6件の論文は第1段階のふるい分けで落とされ、報告書に記載されていなかった。木村-黒田氏・星信彦教授が登場しましたね。
これらの名前が出てきたら猫またぎするリテラシーが必要です。
次を見てもらえばわかりますが、木村-黒田氏が主張している15個の疑義のうち13個は誤った指摘であることを確認しています(残り2個は情報不足等で判定不能)。
「農薬再評価の文献調査に対する不当なクレーム」
簡単な指摘誤りを説明しましょう。
文献調査のガイドラインで過去最低15年を対象にすることが定められています。
調査日よりも未来のものは見つけようがないので調査日~過去15年が文献調査の範囲ですが、それから外れたものが15個中7個ありました。
利益相反だ!とぬかす前にちゃんと制度を理解した上で調べましょうねって感じです。
文献調査:EUと日本の比較
基本的に利益相反のある農薬企業が公表文献の報告書を作成するシステムに変更はない。利益相反のない第三者の専門家が、公表文献の選別や評価を実施する体制が必要だ。米国では政府機関の環境保護庁が公表文献の収集、選択、評価を実施している。EU(欧州連合)では文献収集は農薬企業が実施するものの、選択と評価は欧州食品安全機関が最終責任を担っている。ではEUと日本の文献調査を比較してみましょう。
EUでは初回の再評価は完了していて、更新の際に文献調査をするプロセスを回しています。
農薬更新に関する決まりは (EU) 2020/1740 でされています。
(EU) 2020/1740 の6条に「更新申請の内容(Content of the application for renewal)」ということで次のように文献調査のことが書かれています。
規則(EC)1107/2009の第8条(5)で言及されている、科学的査読のある公開文献の要約および結果(EC)1107/2009の第8条(5)を見よとありますので、該当箇所を引用します。
the summaries and results of scientific peer-reviewed open literature, as referred in Article 8(5) of Regulation (EC) No 1107/2009
5. 申請者は、健康、環境及び非標的種に対する副作用を扱った活性物質及びその代謝物に関する、申請書提出日前の過去 10 年以内に発行された科学的な査読のある公開文献(当局が定めるもの)を、申請書に追加するものとする。申請者が文献調査をして出せとあります。
5. Scientific peer-reviewed open literature, as determined by the Authority, on the active substance and its relevant metabolites dealing with side-effects on health, the environment and non-target species and published within the last 10 years before the date of submission of the dossier shall be added by the applicant to the dossier.
原氏は、EUでは申請者は利益相反があるので文献調査において収集しかさせていないと言っていますが、上記では「選択と評価」をしていないか判断はできません。
文献調査の方法は次のものに定められています。
「規則(EC) No 1107/2009に基づく農薬活性物質の承認のための科学的査読付き公開文献の提出(Submission of scientific peer-reviewed open literature for the approval of pesticide active substances under Regulation (EC) No 1107/2009)」
この文書の Abstract(要旨)から一部引用しましょう。
このEFSAガイダンスは、科学的査読のある公開文献の定義と、システマティックレビューの原則(すなわち、方法論の厳密性、透明性、再現性)に従って、査読のある公開文献を特定、選択し、添付文書に含める際のバイアスを最小化する方法に関する指示を提供する。Abstractを見ただけで、原氏の言っていることがデタラメだとわかりますね。
This EFSA Guidance provides a definition of scientific peer-reviewed open literature and instructions on how to minimise bias in the identification, selection and inclusion of peer-reviewed open literature in dossiers, according to the principles of systematic review (i.e. methodological rigour, transparency, reproducibility).
一応このEFSAガイダンスで示された文献調査のステップを説明します。
①複数の文献データベースから文献のサマリ情報を検索する。全文も検索するケースもあり。
使用したデータベース、検索条件、検索条件ごとの件数を記載する。
②重複したものを排除
③要約記録の迅速な評価をして、明らかに無関係なものを除外する
ここで除外したものは件数のみ記載する。
④全文を見て、関連性の基準を満たさない研究を除外する(Table 6)
論文のタイトル等、除外した理由を記載する。
⑤詳細の評価をしてまとめる(Table 4,5)
論文のタイトル等を記載する。
日本のがどうかというと、文献調査のガイドラインやこちら(ガイドラインを要約しています)を見ればわかりますが、同等以上のものになっています。
日本のガイドラインはEUなどをベースにしているので当たり前ですね。
ガイドラインのなかでもEFSAガイダンスのことに触れています。
日本の制度に文句をつける=EUについて文句をつけていることになります。
上記から、この件についても原氏の記述はデタラメだとわかりました。
評価を受ける側が選別をして、都合の悪い文献を抜いたら、公平な評価結果が出るはずがない。ちゃんちゃらおかしいわ。先ほどの主張がデタラメなので、それに基づくこの主張もゴミだと言えるでしょう。
・・・
このように農薬企業のお手盛りの評価では公正な評価は期待できない。「仏作って魂入れず」という期待はずれの行政機関や制度がいくつも作られたが、農薬再評価もそうなりつつある。
農薬再評価関係の資料(古いものもあるので最新の情報ではない)
・再評価制度について(農林水産省)
・農薬登録に関する欧州連合の法制度
・ヨーロッパ(欧州委員会 EU)の農薬登録制度
・農薬の再評価について
その他
日本釣振興会の柏瀬巌氏から、ここ5~30年ほどの淡水魚の変化について全国の釣り人に聞いた調査結果が報告された。結果はなんと6割が「とても減った」、3割が「減った」と答えたという。ネオニコが昆虫などの水生生物に影響を与えることが報告されているが、それをエサにする魚も如実に減っているのだ。ぷぷっ。科学的調査ではなくヒアリングですって。
減ったかと聞かれれば、相当に増えていない限り減ったと言うでしょう。
その報告というのは山室真澄教授の胡散臭い研究ですかね?
最近、スズメやチョウが絶滅危惧種の一歩手前というショッキングなニュースもあった。ネオニコの影響が懸念されている。ぷぷっ。
山室真澄教授が騒いだ件ですね。
環境省はネオニコチノイド系農薬が原因だとしていないが、共同通信が勝手にネオニコと関連付けた報道をした上に該当箇所をサイレント削除しています。
なお、スズメは減っているが「絶滅危惧種の一歩手前」という状況ではない。
現在起きている異変と関係の疑わしい情報があれば、それを究明するとともに、予防原則で対応すべきだ。すでにEUはネオニコの多くを規制している。よくある予防原則の誤用ですな。
「疑わしいものは止めろ」というのがこの人の「予防原則」のようだが、それは予防原則とは言わない。
詳細は以下を読みましょう。
『多くの人が間違って使っている言葉「予防原則」について改めて解説します | リスクと共により良く生きるための基礎知識』
「予防原則」だけで判断すると、それよりもリスクの大きいものに代用してしまうことで環境悪化を招くこともあるのです。
どんなものにもリスクはあるので、総合的に判断する必要があります。
間違っても週刊金曜日に書かれているデタラメをもとに判断することはご法度です。
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