もう原発デマにはだまされない

人気ブログランキング

もう原発にはだまされない」(藤田祐幸)を読みました。
なぜ読んだかというと、樋口英明という元裁判官による本「保守のための原発入門」(樋口英明)に書かれているデタラメのネタ元であったからです。

藤田氏は慶応大学で物理学の教員をやっていたとかいてありましたが、どのようなデマが書かれているのでしょうか?

臨界事故

臨界事故とは、核分裂が連鎖的に続き、大量の熱や放射線が出ている状態(臨界)を制御できなくなる事態を指します。
説明が間違っていますね。
制御できなくなることではなく、意図せず臨界状態にしてしまうことを臨界事故と言います。

例えば「志賀原子力発電所1号機の臨界事故についての報告書の提出について(北陸電力)」これは、誤って制御棒を抜いてしまったことによる臨界事故ですが、15分後には挿入し復旧しています。
この臨界事故は最初から最後まで制御できています。誤制御があっただけ。

この程度の説明もできないのに専門家ぶっているのは驚きですね。

まともな臨界事故の説明を「世界の原子力施設における臨界事故 (04-10-03-05) - ATOMICA -」から引用します。
 U—235などの核分裂性物質を含む体系に、誤操作などによる新たな核分裂性物質の追加、または不用意な作業員の接近など水分を含む物体による中性子減速(反射体)効果の増加などがあった場合、体系の反応度が高まることが考えられる。このとき、引き続く世代の中性子の割合が1、すなわち核分裂による中性子の誕生数が吸収または漏れによる中性子の死亡数に等しい、あるいはこの割合が1より大きくなると、系は臨界、あるいは臨界超過となり、中性子数が時間とともに増加することとなり、これを抑止する機構が働かない場合には放射線及び熱の急激な放出による機器や人体の損傷などをもたらす事故となる。これを臨界事故という。

原子力発電所で核爆発!

チェルノブイリでは激しい核爆発が起こった
うわ~。原発ど素人の樋口氏と同じデマを流しているよ。
チェルノブイリ原子力発電所事故の概要 (02-07-04-11) - ATOMICA -」によると、チェルノブイリの爆発は水蒸気爆発と水素爆発です。
こんなのは超初歩なのに、こんなことも知らず本を書くとは恐ろしいですね。
樋口氏のツッコミをした時に使った資料をつけましょう。なお、チェルノブイリでは安全装置を解除して試験をしていたために事故が発生しています。

原子力発電と原子爆弾の違い
原子炉の固有の安全性(自己制御性)
※「第5章 原子力発電の安全性 | エネ百科|きみと未来と。」より引用

何らかの異常が発生した場合、中性子を吸収して原子炉を停止させる制御棒を挿入して、原子炉の中で起こっている核分裂反応を止めます。ただし、運転を停止させて核分裂反応が止まればそれでいいのかというと、決してそうではありません。その核燃料は非常に強い放射能を持っています。放射能を持っているということは、エネルギーを放出しているのです。エネルギーを放出しているということは、それ自体が強い発熱体であるということになります。これを崩壊熱と呼びます。
これも樋口氏と同じデタラメな解説をしています。
制御棒を挿入して止めるのは臨界であり核分裂反応ではありません。
核分裂反応を止められるのならば崩壊熱も発生しません。
臨界を止めても核分裂反応は続くのでそれに伴い熱が発生します。核分裂反応によってできた放射線を周囲が吸収し最終的に熱に変わります。それを崩壊熱というのです。

ラ・アーグ

保守のための原発入門」でも書かれているデマの話です。赤字の部分は確実に事実と反しています。
――使用済み核燃料プールの燃料の溶融が起きた事例というのは、これまでなかったのでしょか。
こうした事態は、実は1980年前後には既に問題となっています。フランスのラ・アーグ再処理工場である日、工場の近くで農業をしている人が異様な光景を目撃しました。朝なのに労働者や職員が次々と再処理工場から車で出てくるのです。目撃者は不審に思って環境保護団体に電話をかけ、「再処理工場の内部の雰囲気が何かおかしい」と知らせました。
再処理工場とは、全国の原発から使用済み核燃料を一か所に集め、巨大な使用済み核燃料貯蔵プールの中にそれを沈めて冷却して、そこからプルトニウムを抽出するという工場なわけですから、原発の比ではない膨大な量の使用済み核燃料があります。
その日、何が起きたか調べてみると、使用済み核燃料の冷却ポンプの配電盤が火事になって停電してしまい、水がどんどん蒸発して沸騰を始めていたのです。もちろん補助のモーターもポンプもあったわけですが、あろうことか、その補助のポンプの電源も同じ配電盤に繋がっていたため、起動させることが出来なかったのです。そして手の打ちようがなくなった職員たちは、家族と一緒に死にたいと言ってみんな家に帰ったという話です。
このときはどうして最悪の事態を回避できたか。ラ・アーグからひとつ峠を越えた向こう側に、シェルブールという、雨傘で有名な港町があります。そこはフランス海軍の軍港なのですが、そこから峠を越えて電源車を引っ張ってきて、放射線が噴出しているところに、決死隊の兵士が電線を担いで突入、電源ボックスにそれをつないでポンプを回して、やっとおさまったのです。そういう危機一髪の事故が既に起きています。
La Hague, incendie du poste d'interconnexion du 15 avril 1980」にこの事故のことがまとめられているので、それベースで間違いを正します。

・水がどんどん蒸発して沸騰を始めていた
 ⇒30分後には移動式発電機が設置され、2時間後には電源が仮復旧され、半日後には復旧している。
  噓をつくな!

・手の打ちようがなくなった職員たちは、家族と一緒に死にたいと言ってみんな家に帰った
・フランス海軍の決死隊が消火した
 ⇒施設の消防隊によって1時間後に消火した。
  噓ばっかをつくな!

そもそも、そんな簡単に沸騰するわけがない。
福島第一原発5号機の使用済み核燃料プールも2011年3月11日15時頃に電源喪失して19日5時に冷却が再開したが、8日間で30℃⇒70℃弱という結果だ(「福島原子力事故調査報告書 添付資料」より)。
ラ・アーグなどの再処理工場に行くまでにもっと冷やされているはず(トラック・船で輸送する際の冷却がしにくいから)で、もっと上昇率は低かったはず。

「再処理工場とは、全国の原発から使用済み核燃料を一か所に集め」というのも笑える表現ですね。
「全国」って日本の律令制度からきた言葉なので、フランスなど海外での事例を説明するのには不適切なのですよ。

スリーマイル島原発事故

スリーマイル島原発事故の場合には、水素がどんどんたまっていったのですが、水素爆発をおそれたアメリカ政府と企業が、水素再結合装置というものを開発製造して現場に運び込み、水素ガスを消して爆発を抑えたのです。このときの対処は見事だったと言えます。西海岸で装置を製造して、それを飛行機で空輸し、事故現場に投入して間一髪で助かったのです。
ふ~ん。本当ですか?

TMI事故の経過 (02-07-04-02) - ATOMICA -」より以下を引用します。
1979年3月28日午前4時、TMI-2号炉事故が発生した。初臨界に達してから1年、営業運転を開始してから3カ月後のことである。
・・・
事故発生から15時間50分後、一次冷却材ポンプ1台を再起動し、蒸気発生器を通じての除熱がようやく成功し、事故は制御可能な状態になった。
 しかし、一次系内にはまだ大量の水素が残っていたが、抽出水の脱気操作と加圧器元弁のベント操作を行うことにより、4月2日までにほぼ完全に水素は除去された。
事故発生から5日後までに水素はベントによって除去されたそうです。
水素再結合装置を導入したかどうかは知りませんが、事故時に水素爆発が起きなかったこととは関係ありませんね。
デマお疲れ~。

もんじゅ

1995年に起きた高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故の際にも、換気システムの排気口と吸気口が屋上で向き合って作られていたため、火災によって発生した大量の粉塵が吸い込まれて、建物のあらゆる所に降り注いだことがありました。
マジでそんなことがあったのか!という内容をデマ屋が言うと概ねデマです。
これもそうです。

「排気口と吸気口が屋上で向き合って作られていた」というのは調べても見つけられなかった。
福井県の「高速増殖原型炉もんじゅ - 主要建物鳥瞰図」を見ると排気筒が独立して存在するが、これは上記で触れている排気口の話とは別系統だと思う。

デマと言える根拠は『「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故とその後の取り組み』や『ナトリウム漏えい事故について|高速増殖原型炉もんじゅ』を見ると簡単に見つかります。
前者から引用します。
 漏えいしたナトリウムは約700kgで、室内の空気により燃焼し漏えい直下の足場材や排気ダクトに穴が開き、白煙が建屋内に広く拡散した
排気ダクトに穴が開いてしまえば、排気口と吸気口がどこにあろうが関係ないからです。

福島第一原発事故

-1号機のベントや水素爆発前に、核燃料が損傷しないと外部に出ないテルル132が検出されたという停止直後の放射性物質濃度のデータがあったことが、事故から3か月近い6月3日になってようやく公表されました。つまり、原発の敷地外に放射性物質が放出されていたことを知っていたわけです。こういう「情報隠蔽体質」では、信用しろと言っても無理に思えますが。
テルル132が検出されたということは核燃料が損傷していることを示しています。事故発生の早い段階で、原子炉が空焚き状態になっていて、炉心の溶融が始まっていることが分かっていたことになります。このことがその時点で明らかにされていれば、住民の余分な被曝を避けることも出来たはずです。
テルル132の検出をもって避難を開始していれば余計な被曝を避けられたと言っていますが、これも当たり前のようにデマです。

朝日新聞社の「事故当初の放射線データ公表 保安院、遅れを「反省」 - 東日本大震災」にもありますが、テルル132検出は2011年3月12日、避難開始は3月11日であり関係ありません。
内閣官房の資料」に詳細が書かれていますが、朝日新聞の報道は間違っていません。

「情報隠蔽体質」と言っているが、内閣官房の資料を見ると、データ形式が整理されたものではなかったので公表を漏らしてしまったと書かれています。
そもそも本当に隠蔽体質なのなら5月末に見つけたものも無視して公表しなかったでしょうに。

事故発生から4か月以上たっても、原子炉の冷却には成功していません。相当長期にわたる極めて困難な作業が続いています。この状態は決して安定しているとは思えず、いつ何時原子炉の爆発が起こっても不思議ではありません。
よくもこんなデタラメを言えますね。

プラント関連パラメータ(水位、圧力、温度など) | アーカイブ(2011年) |東京電力」にある7月11日(4か月後)のグラフを見てみましょう。
3月22日くらいに最高値の400℃を記録した後は下がって100℃くらいに下がっています。
日本原子力研究開発機構の資料によると原子炉圧力容器の運転温度は290℃とのことなので冷却に成功しているといえるでしょう。

1か月以上経ってもヨウ素131がいっこうに減りませんでした。以後も低下傾向だったにも関わらず、5月28日に採取した海水からヨウ素131が1cc当たり24ベクレルと国の基準の600倍の濃度で検出されました。ヨウ素は8日で半分になりますから、3週間強で8分の1になるはずです。それが減っていないということは、どこかで核分裂反応が継続していると考えざるを得ません。
デマ仲間の小出裕章氏も「3週間以上たっても減らないどころか、逆に増加している」と言っていたが、それ同等のデマ屋ですね。
海水中ではなく空気中は以下のように減っています。

福島第一原発事故後の放射性ヨウ素131(半減期8日)濃度
※東電のプレスリリース2011年3月分4月分から作成

「5月28日に採取した海水」とあるので、東電のプレスリリースを見てみましょう。
プレスによると、4.0 Bq/L であり、国の基準 40 Bq/L の1/10です。
嘘ばっかつくな!

制御室は停電しています。照明を灯すことはできても、コンピュータが復活して動き出したとか、計測装置が機能しているとか、コントロールシステムが回復したとか、そういった情報は何も出てきません。ということは、完全に死んでいる状態です。
事故直後の話ではなく、2011年6・7月くらいの話をしている。
アホか。
外部電源、全号機へ接続:時事ドットコム
3月22日には電源復旧しています。
そんな馬鹿な、と思って調べると全部嘘ですわ。

茨城県と福島県の沖合で水揚げされたコウナゴからヨウ素が検出され、ニュースでは「コウナゴは貝類が食べて、貝類を大きな魚を食べるから、それにしたがって濃度は薄まっていく」などと報じていましたが、それこそ悪質なデマです。逆に食物連鎖で生物濃縮(化学物質が生熊系での食物連鎖を経て生物体内に濃縮されてゆく現象)が起こることは、言うまでもありません。デマを公共の電波を使って流布することは、犯罪に等しい行為です。
デマ屋が他人をデマだ、犯罪だという。盗人猛々しいとはこのことだ。

北方海産生物におけるCe,Iの濃縮係数」によると海産動物において濃縮係数(CF)はほぼ一定であるため食物連鎖をしたところで比率は変わらない。
ということで、藤田氏がデマ屋で犯罪者ってことですね。

そもそもヨウ素131の半減期は8日なので食物連鎖の間に勝手に減っていきます。
悪質なデマですね。こんなデマ本が普通の本と同じように図書館に置かれるのは犯罪的行為ですね。デマ本コーナーに置かないとだめですわ。


これで第1章は終了。他にも胡散臭いものが沢山あったが、調べるのが面倒なので飛ばしました。
とてもではないがこんなデマ本を最後まで読めないので第1章で終わりにします。

最後に参考文献に出てくるデマ屋を紹介します。
小出裕章、広瀬隆、明石昇二郎
この本のレベルがこの名前だけからも想像できるというものです。

もう原発にはだまされない
藤田祐幸
青志社
2011/8/11

この記事へのコメント