サプリメントの不都合な真実
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「サプリメントの不都合な真実」(畝山智香子)を読みました。
畝山智香子さんは、国立医薬品食品衛生研究所に勤めていた方で、こういう系統のバリバリの専門家です。
過去に『「健康食品」のことがよくわかる本』などを読みましたが、一般向けには堅苦しい記述・内容だったかもしれません。
そこで、この本は一般の人の分かり易さを気にして書いたそうです。
・第一章 それでも飲みますか?――紅麹問題から考える
・第二章 そもそも健康食品って?
・第三章 食品が安全ってどういうこと?
・第四章 海外のサプリメント規制はどうなっている?
・第五章 食品と医薬品の境界線
・第六章 サプリメントを飲む前に知っておきたいこれだけのこと
・読書案内
・参考資料
①米+紅麹菌
↓ 培養
②培養物
↓ 混合・調整
③製品化・他社に販売
↓ 外部工場 ここだけGMP対象
④製品
①~③がGMPではなかったそうです。
消費者庁の「GMP告示の対象範囲について」よりGMPの説明文を引用します。
「届出情報を読んでみる」というサブタイトルで、小林製薬の機能性表示食品の届出内容について猛烈な批判がされています。
紅麹原料の製造工程がGMP認証を受けているかどうか読み取れないなどを指摘しています。
「機能性表示食品検索」から”紅麹”で検索すると複数あるのですが、「コレステヘルプa」を試しに見てみました。
機能性関与成分であるモナコリンKの有効性確認を細胞実験でやっているのですが、n=3 でしかやっていなくてビックリしました。
そして、「届出撤回の事由」には「販売終了のため」と書いてありました。
おいおい、「健康被害発生による販売終了のため」じゃねえのか?って思いました。ここら辺からも不誠実さが垣間見られますね。
モナコリンの各国の評価等についても書かれています。
■アメリカ(FDA)
モナコリン含量を強化した紅麴製品をサプリメントとしての販売を禁止している。違反する製品は多々ある。
カビ毒の「シトリニンを含まない」と表示されている製品からも検出している。
■欧州食品安全機関(EFSA)
3mg でも深刻な有害事例があるので、健康に有害影響を及ぼさない摂取量は決定できない=「何ミリグラム以下なら安全」という数値は決められないとした。
■ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)
モナコリンKを含む紅麹製品には筋肉疾患の発生はないとした2019年3月の論文は信憑性に欠けると
■小林製薬
2mg の摂取を想定。そして、BfRの情報などは届出したものには含まれない。
安全評価シートを見たらシトリニンについて次のようにありました。
「小林製薬」とあるので、製薬会社だから信頼していたという人もいたそうです。
一般的に「製薬会社」といったら日本製薬工業協会加盟の新薬開発するところを連想する。
ジェネリック医薬品メーカーの日本ジェネリック製薬協会加盟するメーカーもある。
小林製薬は、処方箋なし購入できる日本OTC医薬品協会加盟であり、研究開発費よりも広告宣伝費の方が多いとのころ。
「小林製薬の糸ようじ」なんてCMで有名ですよね。
広告宣伝費の話で、新聞・雑誌・テレビなどで「いわゆる健康食品」の広告をだしているが、健康食品が原因で健康被害がでた時の責任についても畝山さんは言及されています。
しかし、多くは残念な結果で、ビタミンAに至っては喫煙者の肺がんを有意に増加させるというものだった。
そのため、2000年初めには研究者間ではビタミンサプリメントへの期待はほぼ完全になくなった。
・キトグルカンという成分を含む「蹴脂茶」がトクホでは安全性が確認できないということで認められなかった。
だが機能性表示食品として「蹴脂粒」と届出されたのは消費者庁は容認した。
消費者団体や有識者からの指摘で2018年8月27日に撤回されている。
詳細を「機能性表示食品検索」で見ようとすると、撤回されて2年経過したので詳細は非表示にするとエラーが出て見られなかった。
消費者庁はなめていますね。ムカついたので問い合わせしたがどのような回答が来るかな?
この製品は、βアドレナリン受容体を刺激する作用があるため体脂肪を減らすと説明されていた。
βアドレナリン受容体作動薬にはクレンブテロールなど不法に使われているものがある。
「蹴脂茶」に効果があれば、危険であり、安全であるというのならば効果がないと書かれています。
・p.61 に面白い表がある。「小林製薬の紅麹コレステヘルプ」とモナコリンKの薬「プラバスタチンナトリウム錠」の比較表です。
同じ量のモナコリンKを摂取するのに前者は後者の8倍高いのです(保険適用無しの場合、有りの場合は24倍以上高い)。
そして、前者は、濃度がバラバラ・不純物いっぱい&何が不純物か不明・医師のフォローアップなし・副作用被害救済なし、などと散々な内容です。
・『「当社なら必ず有意差を出せます!」 臨床試験を絶対クリアさせるサービスが登場し物議 意図を聞いた - ITmedia NEWS』
この件の話が載っていた。
「機能性表示食品の届出のための臨床試験を有意差が出るまでやり直し、・・・明らかに研究不正を堂々と宣伝していた」と紹介しています。
少なくともGLP認証のある検査機関での報告を必須にすべきだと思いますね。
福島第一原子力発電所事故で避ける必要がないのに煽っていたのは「食べる?-食品セシウム測定データ745」を見てもらうとわかります。
リスクトレードオフの話は、「オランダの政策評価書から明らかになったネオニコチノイド系殺虫剤禁止後のリスクトレードオフ | リスクと共により良く生きるための基礎知識」を見てもらうとより良いと思います。
この章の最後に次の記述があります。
昔から食べられているものは安全だろうということで、農薬・食品添加物などのように安全性評価はしていません。
そのため、どのようなリスクがあるかはわかっていません。
例えば特定の有機農家からしか野菜を買わないという人がいるかもしれません。
その農地が実は汚染されているかもしれません。
この場合リスクを高めています。
そうならないように、いろいろな種類の食品をいろいろな産地のものを摂取すべきです。
それが「食品にはリスクがあります。リスク分散のためにいろいろなものを食べましょう」なのです。
「食の安全」のタグを見てもらうとわかりますが、「食品安全の基本に反する」ものがわんさか出てきます。反面教師としてください。
アルコールの一種でお酒に入っているやつです。中学で習うと思うが、義務教育の知識があれば騙されないことにコロッとやられている人もいます。
オメガ3脂肪酸は、日本人の魚の摂取量がアメリカより多いので不要とのこと。
逆に安全性のリスクのあるものとして次のものが挙げられている。
シリアルを食べるのならば、オートミール/ミューズリー+果物+牛乳・ヨーグルト の組み合わせが個人的には良いと思っています。
ここで思うのは、Uber Eatsなどによるデリバリおよび置き配はどうなのかね?と調べると、ガバガバらしい。
「フードデリバリーサービスの配達従事者への食品防御教育の阻害要因」
HACCP義務化の理由に「O157のような新しい病原性細菌の出現がありました」と書かれていた。
ほう、O157は新しいモノなのですね。
調べると「Phylogeographic Analysis Reveals Multiple International transmission Events Have Driven the Global Emergence of Escherichia coli O157:H7 | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic」が見つかり、見ると1890年頃にO157の共通の祖先がオランダで発生して、1975年にアメリカでO157が見つかったそうです。
これは、良品と悪品が見た目で判断できない場合、良品が駆逐され悪品しか残らないという話です。
3つの提案がされています。
①新規食品の事前評価制度の運用
新規食品とは、今まで食べたことがないもの、今までとは違う食べ方をするもので、培養肉なども対象になります。
食品衛生法第七条に新規食品のことが規定されているが、それを運用できるようになっていない。
予算と人員を投入し、他国の基準と協調しながら基準を決めて運用していくべきだという提案です。
②栄養機能食品の枠組みを拡大して根拠のある健康強調表示を
栄養機能食品は知りませんでしたが、「葉酸は、⾚⾎球の形成を助ける栄養素です。葉酸は、胎児の正常な発育に寄与する栄養素です」のような表示ができるそうです。
この枠組みを拡大して、ポジティブリスト(許可されたものだけが使える)として認めればよいといいます。
「栄養機能食品について | 消費者庁」
③栄養成分表示の充実と教育
この本で言っているようなことを教育しましょうということです。
「絶対に手を出してはいけない宣伝」ということで3つ提示されています。
①「痩せる」
農薬などの動物実験で出てくる毒性で体重が増える・減るというものがあります。
その毒性がでない1/100の濃度を基準値にしているが、それに対しては忌避するのに、健康食品では喜んでその毒性を受け入れるというのは滑稽ですね。
タバコを吸うと痩せるから吸うというのと同じですね。
②「筋肉増強」
たんぱく同化ステロイドというものがあり、それは副作用が強い。
③「精力増強」「性機能強化」
正規の医薬品があるのだが、偽物が蔓延っていて、健康被害が出ても補償はされない。
「食品の効果についてのメディア報道は信用できない」ということで面白いグラフが載っていました。
「がんと食品の関係について報告された論文の分布」ということで、同じ食品でも、”がんの原因である”と”がんを抑制する”の両方の論文が普通にあるということを表しています。
ワイン・トマト・お茶など、普通に両方の論文があります。
20個食品がある内で、”がんの原因である”だけがあるのは塩・ベーコン、”がんを抑制する”はオリーブだけということでした。
テレビや雑誌は論文の科学的信憑性は無視した上で、一つの論文だけで、○○は△△に良い・悪いと報道するから、畝山さんが言うのももっともです。
↓なんてひどいものです。[この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]との但し書でこの低レベルですから。
ここまで読んで個人的なまとめをします。
健康食品は基本的に摂取すべきではなく、健康のためには、今まで食経験のある食べ方で、いろいろな産地のもので、偏らずバランスのとれた食品を摂取しましょう。
・畝山智香子『食品添加物はなぜ嫌われるのか・食品情報を「正しく」読み解くリテラシー』化学同人、2020年
・畝山智香子『ほんとうの「食の安全」を考えるゼロリスクという幻想』化学同人、2021年
・左巻健男『病気になるサプリリ・危険な健康食品』幻冬舎、2014年
・髙橋久仁子『「食べもの情報」ウソ・ホント-氾濫する情報を正しく読み取る』講談社ブルーバックス、1998年
・髙橋久仁子『「食べもの神話」の落とし穴巷にはびこるフードファディズム』講談社ブルーバックス、2003年
・髙橋久仁子『フードファディズムメディアに惑わされない食生活』中央法規出版、2007年
・髙橋久仁子『「健康食品」ウソ・ホント「効能・効果」の科学的根拠を検証する』講談社ブルーバックス、2016年
・ジェイムス・T・マクリガー『ナチュラルミステイク食品安全の誤解を解く自然食品、オーガニック食品、植物由来製品はあなたが考えるほど安全ではない理由』林真、森田健監訳ILSI Japan 食品リスク研究部会訳、国際生命科学研究機構、2021年
・厚生労働省ホームページ 「健康被害情報」
・小林製薬の紅麹配合食品にかかる大阪市食中毒対策本部調査班「健康被害事例の疫学調査結果(令和6年8月30日時点のとりまとめ)」
第二章
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ「医療用医薬品の添付文書情報」
第三章
・アメリカ食品医薬品局(FDA) ホームページ What's New in Dietary Supplements
・ダイエタリーサプリメントオフィス (ODS) ホームページ Dietary Sup- plements: What You Need to Know
・アメリカ食品医薬品局(FDA) ホームページ Qualified Health Claims: Letters of Enforcement Discretion
・欧州委員会(European Commission) ホームページ Food and Feed Information Portal Database: Health Claims
第四章
・アメリカ食品医薬品局(FDA) ホームページ What's New in Dietary Supplements
・アメリカ食品医薬品局(FDA)ホームページ Qualified Health Claims: Letters of Enforcement Discretion
・欧州委員会(European Commission) ホームページ Food and Feed Information Portal Database: Health Claims
・カナダ保健省(Health Canada) Licensed Natural Health ProductsDatabase (LNHPD)
・欧州委員会(European Commission) ホームページ Food and Feed Information Portal Database: EU Novel Food status Catalogue
・オーストラリア・ニュージーランド食品基準庁ホームページ Record of views formed in response to inquiries
第六章
・アメリカ予防医学専門委員会 (USPSTF) ホームページ Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement
・食品安全委員会ホームページ「「健康食品」に関する情報」
サプリメントの不都合な真実
畝山智香子
筑摩書房
2025/1/10
畝山智香子さんは、国立医薬品食品衛生研究所に勤めていた方で、こういう系統のバリバリの専門家です。
過去に『「健康食品」のことがよくわかる本』などを読みましたが、一般向けには堅苦しい記述・内容だったかもしれません。
そこで、この本は一般の人の分かり易さを気にして書いたそうです。
・第一章 それでも飲みますか?――紅麹問題から考える
・第二章 そもそも健康食品って?
・第三章 食品が安全ってどういうこと?
・第四章 海外のサプリメント規制はどうなっている?
・第五章 食品と医薬品の境界線
・第六章 サプリメントを飲む前に知っておきたいこれだけのこと
・読書案内
・参考資料
第一章 それでも飲みますか?――紅麹問題から考える
紅麹サプリメントの製造工程ということで、次の流れを示した図があった。①米+紅麹菌
↓ 培養
②培養物
↓ 混合・調整
③製品化・他社に販売
↓ 外部工場 ここだけGMP対象
④製品
①~③がGMPではなかったそうです。
消費者庁の「GMP告示の対象範囲について」よりGMPの説明文を引用します。
Good Manufacturing Practice (適正製造規範(基準))の略で、GMPは原料の受入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において、「適正な製造管理と品質管理」を求めるもの。この資料の2ページ目の「機能性関与成分を含む原材料の製造」が①②にあたります。
「届出情報を読んでみる」というサブタイトルで、小林製薬の機能性表示食品の届出内容について猛烈な批判がされています。
紅麹原料の製造工程がGMP認証を受けているかどうか読み取れないなどを指摘しています。
「機能性表示食品検索」から”紅麹”で検索すると複数あるのですが、「コレステヘルプa」を試しに見てみました。
機能性関与成分であるモナコリンKの有効性確認を細胞実験でやっているのですが、n=3 でしかやっていなくてビックリしました。
そして、「届出撤回の事由」には「販売終了のため」と書いてありました。
おいおい、「健康被害発生による販売終了のため」じゃねえのか?って思いました。ここら辺からも不誠実さが垣間見られますね。
モナコリンの各国の評価等についても書かれています。
■アメリカ(FDA)
モナコリン含量を強化した紅麴製品をサプリメントとしての販売を禁止している。違反する製品は多々ある。
カビ毒の「シトリニンを含まない」と表示されている製品からも検出している。
■欧州食品安全機関(EFSA)
3mg でも深刻な有害事例があるので、健康に有害影響を及ぼさない摂取量は決定できない=「何ミリグラム以下なら安全」という数値は決められないとした。
■ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)
モナコリンKを含む紅麹製品には筋肉疾患の発生はないとした2019年3月の論文は信憑性に欠けると
■小林製薬
2mg の摂取を想定。そして、BfRの情報などは届出したものには含まれない。
安全評価シートを見たらシトリニンについて次のようにありました。
紅麹の一部にはカビ毒のシトリニンを産生するものがあることが知られているが、当該製品に使用する紅麹の菌株Monascus pilosus はシトリニン産生遺伝子が機能しておらずシトリニンを産生しないため安全である。使おうとしている株菌に含まれていなくても、先ほどあったように「機能性関与成分を含む原材料の製造」がGMPではないので、何の保証にもならないなと思いました。
「小林製薬」とあるので、製薬会社だから信頼していたという人もいたそうです。
一般的に「製薬会社」といったら日本製薬工業協会加盟の新薬開発するところを連想する。
ジェネリック医薬品メーカーの日本ジェネリック製薬協会加盟するメーカーもある。
小林製薬は、処方箋なし購入できる日本OTC医薬品協会加盟であり、研究開発費よりも広告宣伝費の方が多いとのころ。
「小林製薬の糸ようじ」なんてCMで有名ですよね。
広告宣伝費の話で、新聞・雑誌・テレビなどで「いわゆる健康食品」の広告をだしているが、健康食品が原因で健康被害がでた時の責任についても畝山さんは言及されています。
第二章 そもそも健康食品って?
・ビタミン剤が健康に良いということを大規模な試験が1980年代以降世界で行われた。しかし、多くは残念な結果で、ビタミンAに至っては喫煙者の肺がんを有意に増加させるというものだった。
そのため、2000年初めには研究者間ではビタミンサプリメントへの期待はほぼ完全になくなった。
・キトグルカンという成分を含む「蹴脂茶」がトクホでは安全性が確認できないということで認められなかった。
だが機能性表示食品として「蹴脂粒」と届出されたのは消費者庁は容認した。
消費者団体や有識者からの指摘で2018年8月27日に撤回されている。
詳細を「機能性表示食品検索」で見ようとすると、撤回されて2年経過したので詳細は非表示にするとエラーが出て見られなかった。
消費者庁はなめていますね。ムカついたので問い合わせしたがどのような回答が来るかな?
この製品は、βアドレナリン受容体を刺激する作用があるため体脂肪を減らすと説明されていた。
βアドレナリン受容体作動薬にはクレンブテロールなど不法に使われているものがある。
「蹴脂茶」に効果があれば、危険であり、安全であるというのならば効果がないと書かれています。
・p.61 に面白い表がある。「小林製薬の紅麹コレステヘルプ」とモナコリンKの薬「プラバスタチンナトリウム錠」の比較表です。
同じ量のモナコリンKを摂取するのに前者は後者の8倍高いのです(保険適用無しの場合、有りの場合は24倍以上高い)。
そして、前者は、濃度がバラバラ・不純物いっぱい&何が不純物か不明・医師のフォローアップなし・副作用被害救済なし、などと散々な内容です。
・『「当社なら必ず有意差を出せます!」 臨床試験を絶対クリアさせるサービスが登場し物議 意図を聞いた - ITmedia NEWS』
この件の話が載っていた。
「機能性表示食品の届出のための臨床試験を有意差が出るまでやり直し、・・・明らかに研究不正を堂々と宣伝していた」と紹介しています。
少なくともGLP認証のある検査機関での報告を必須にすべきだと思いますね。
第三章 食品が安全ってどういうこと?
「リスクのトレードオフ」というサブタイトルで次の記述がありました。福島第一原子力発電所事故の後、水道水から一時的に放射性物質が検出されたからという理由で、飲料水を水道水から外国産のミネラルウォーターや井戸水に替えたという人がいました。この選択は発がん物質である無機ヒ素や微生物汚染のことを考えると、かえっリスクを高くする可能性がありました(2011年当時は、ボトル入りミネラルウォーターの基準は水道水より緩いものでした。現在は基準が改定され、ほぼ水道水並みになっています。井戸水を飲用にする場合には、飲用に適するかどうかを検査で確認する必要があります。それでも水道水と同じ数の検査はしません)。リスクトレードオフの良い例ですね。
福島第一原子力発電所事故で避ける必要がないのに煽っていたのは「食べる?-食品セシウム測定データ745」を見てもらうとわかります。
リスクトレードオフの話は、「オランダの政策評価書から明らかになったネオニコチノイド系殺虫剤禁止後のリスクトレードオフ | リスクと共により良く生きるための基礎知識」を見てもらうとより良いと思います。
この章の最後に次の記述があります。
「どの食品が安全なのですか」ということをよく訊かれます。しかし「安全な食品」と「危険な食品」に分けられるのではなく、食品を安全にするのも安全でないものにするのも、私たちの食べ方次第なのです。「○○は危険だから食べるな」「△△は健康食品なので毎日食べましょう」という単純な主張をする書籍や記事が世の中に溢れていますが、そういった主張こそが食品の安全性について理解していない証だといえます。基本は赤字の部分に尽きますね。
「食品にはリスクがあります。リスク分散のためにいろいろなものを食べましょう」
これが食品安全の基本です。つまり、サプリメントをはじめ、同じものを毎日食べるように勧めるいわゆる健康食品は、食品安全の基本に反するのです。
昔から食べられているものは安全だろうということで、農薬・食品添加物などのように安全性評価はしていません。
そのため、どのようなリスクがあるかはわかっていません。
例えば特定の有機農家からしか野菜を買わないという人がいるかもしれません。
その農地が実は汚染されているかもしれません。
この場合リスクを高めています。
そうならないように、いろいろな種類の食品をいろいろな産地のものを摂取すべきです。
それが「食品にはリスクがあります。リスク分散のためにいろいろなものを食べましょう」なのです。
「食の安全」のタグを見てもらうとわかりますが、「食品安全の基本に反する」ものがわんさか出てきます。反面教師としてください。
第四章 海外のサプリメント規制はどうなっている?
人々に最も多く摂取されている典型的な有害物質は、エタノールでしょう。分かり易さを心掛けたそうですが、エタノールが何なのかわからない人もいるでしょうね。
アルコールの一種でお酒に入っているやつです。中学で習うと思うが、義務教育の知識があれば騙されないことにコロッとやられている人もいます。
米国政府の機関であるダイエタリーサプリメントオフィスがマルチビタミン・ミネラルサプリメントについてのファクトシートをまとめているので、紹介します。妊婦の葉酸の話は知っていたが、カルシウムとビタミンDも有用性が認められているのですね。
ダイエタリーサプリメントの中には、食事から十分な必須栄養素を摂取できない場合には役に立つ可能性のあるものがあります。その例として次の4つが挙げられています。
・骨の健康のためのカルシウムとビタミンD
・先天障害リスクを減らすための葉酸
・心疾患予防のためのオメガ3脂肪酸
・加齢性眼疾患研究で使われたビタミンCとE、亜鉛、銅、ルテイン、ゼアキサンチンの組み合わせからなる処方(AREDS処方)
逆に言えば、根拠があると言えるのはこの4種類しかないということです。
オメガ3脂肪酸は、日本人の魚の摂取量がアメリカより多いので不要とのこと。
逆に安全性のリスクのあるものとして次のものが挙げられている。
・ビタミンKは血液凝固抑制剤ワルファリンの作用を抑制する可能性がある。シリアルの話は、グラノーラが該当するのでしょう。
・セントジョーンズワートは抗うつ剤やピル、心臓の薬、抗HIV薬、移植後の薬など各種医薬品の分解速度を速めて有効性を減らす可能性がある。
・ビタミンCやEのような抗酸化サプリメントはある種のがん化学療法の有効性を減らす可能性がある。
・朝食シリアルなどにビタミンが添加されていることがあるなど、想定以上に摂取する場合があり、過剰症のリスクがある。
・妊婦や子どもでの安全性は確認されていないものが多い。
シリアルを食べるのならば、オートミール/ミューズリー+果物+牛乳・ヨーグルト の組み合わせが個人的には良いと思っています。
第五章 食品と医薬品の境界線
食品衛生法は、食品の安全性についての考え方の変化を反映して改正を重ねてきました。最近の重大な改正として、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化を挙げることができます。これは全く知りませんでした。
2021(令和3)年6月1日以降、原則として、すべての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理を行うことになりました。食品等事業者には食品を配達する人も含まれます。HACCP(Hazard Analysisand Critical Control Point)とは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のうち、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。小規模事業者でも実施できるように、手引きや研修が各種団体から提供されています。
ここで思うのは、Uber Eatsなどによるデリバリおよび置き配はどうなのかね?と調べると、ガバガバらしい。
「フードデリバリーサービスの配達従事者への食品防御教育の阻害要因」
HACCP義務化の理由に「O157のような新しい病原性細菌の出現がありました」と書かれていた。
ほう、O157は新しいモノなのですね。
調べると「Phylogeographic Analysis Reveals Multiple International transmission Events Have Driven the Global Emergence of Escherichia coli O157:H7 | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic」が見つかり、見ると1890年頃にO157の共通の祖先がオランダで発生して、1975年にアメリカでO157が見つかったそうです。
第六章 サプリメントを飲む前に知っておきたいこれだけのこと
機能性表示食品の導入時に、機能性表示食品制度が始まれば、いわゆる健康食品のような質の悪いものが淘汰されてよりよいものに置き換わり、市場の健全性が向上するという主張がありました。しかし実際に起こったことは、いわゆる健康食品が相変わらず販売され続け、機能性表示食品の増加によってトクホが減った──つまりより質の悪い、消費者にとってはまったく歓迎できない市場になった、ということです。「レモンの原理」が発動されましたね。
これは、良品と悪品が見た目で判断できない場合、良品が駆逐され悪品しか残らないという話です。
3つの提案がされています。
①新規食品の事前評価制度の運用
新規食品とは、今まで食べたことがないもの、今までとは違う食べ方をするもので、培養肉なども対象になります。
食品衛生法第七条に新規食品のことが規定されているが、それを運用できるようになっていない。
予算と人員を投入し、他国の基準と協調しながら基準を決めて運用していくべきだという提案です。
②栄養機能食品の枠組みを拡大して根拠のある健康強調表示を
栄養機能食品は知りませんでしたが、「葉酸は、⾚⾎球の形成を助ける栄養素です。葉酸は、胎児の正常な発育に寄与する栄養素です」のような表示ができるそうです。
この枠組みを拡大して、ポジティブリスト(許可されたものだけが使える)として認めればよいといいます。
「栄養機能食品について | 消費者庁」
③栄養成分表示の充実と教育
この本で言っているようなことを教育しましょうということです。
「絶対に手を出してはいけない宣伝」ということで3つ提示されています。
①「痩せる」
体重が減るというのは相当強い毒性影響で、食欲抑制剤や下剤成分が含まれる可能性があります。元も子もない表現ですが、そのとおりなのでしょう。
ごくまれに、本当に「脂肪を燃やす」作用のある薬物である2,4-ジニトロフェノール(DNP)という物質が含まれていることがあります。これは、海外で死亡例が多数報告されています。「おなかの脂肪が気になる方に」といった文言を表示している特定保健用食品など、多くの健康食品ではほとんど効果はなく、それゆえ安全なのです。本当に痩せてしまうようなサプリメントには、命にかかわる危険が潜んでいます。
農薬などの動物実験で出てくる毒性で体重が増える・減るというものがあります。
その毒性がでない1/100の濃度を基準値にしているが、それに対しては忌避するのに、健康食品では喜んでその毒性を受け入れるというのは滑稽ですね。
タバコを吸うと痩せるから吸うというのと同じですね。
②「筋肉増強」
たんぱく同化ステロイドというものがあり、それは副作用が強い。
③「精力増強」「性機能強化」
正規の医薬品があるのだが、偽物が蔓延っていて、健康被害が出ても補償はされない。
「食品の効果についてのメディア報道は信用できない」ということで面白いグラフが載っていました。
「がんと食品の関係について報告された論文の分布」ということで、同じ食品でも、”がんの原因である”と”がんを抑制する”の両方の論文が普通にあるということを表しています。
ワイン・トマト・お茶など、普通に両方の論文があります。
20個食品がある内で、”がんの原因である”だけがあるのは塩・ベーコン、”がんを抑制する”はオリーブだけということでした。
テレビや雑誌は論文の科学的信憑性は無視した上で、一つの論文だけで、○○は△△に良い・悪いと報道するから、畝山さんが言うのももっともです。
↓なんてひどいものです。[この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]との但し書でこの低レベルですから。
「超加工食品」にはタバコ並みの依存性が? どのような健康被害があるか管理栄養士が解説(Medical DOC) - Yahoo!ニュースhttps://t.co/9l9nLyucE5
— 晴川雨読 (@Seisenudoku) September 25, 2024
>超加工品は、体によくありません
みごとに量について語っていない。
(1/6)
ここまで読んで個人的なまとめをします。
健康食品は基本的に摂取すべきではなく、健康のためには、今まで食経験のある食べ方で、いろいろな産地のもので、偏らずバランスのとれた食品を摂取しましょう。
読書案内
・畝山智香子『「健康食品」のことがよくわかる本』日本評論社、2016年・畝山智香子『食品添加物はなぜ嫌われるのか・食品情報を「正しく」読み解くリテラシー』化学同人、2020年
・畝山智香子『ほんとうの「食の安全」を考えるゼロリスクという幻想』化学同人、2021年
・左巻健男『病気になるサプリリ・危険な健康食品』幻冬舎、2014年
・髙橋久仁子『「食べもの情報」ウソ・ホント-氾濫する情報を正しく読み取る』講談社ブルーバックス、1998年
・髙橋久仁子『「食べもの神話」の落とし穴巷にはびこるフードファディズム』講談社ブルーバックス、2003年
・髙橋久仁子『フードファディズムメディアに惑わされない食生活』中央法規出版、2007年
・髙橋久仁子『「健康食品」ウソ・ホント「効能・効果」の科学的根拠を検証する』講談社ブルーバックス、2016年
・ジェイムス・T・マクリガー『ナチュラルミステイク食品安全の誤解を解く自然食品、オーガニック食品、植物由来製品はあなたが考えるほど安全ではない理由』林真、森田健監訳ILSI Japan 食品リスク研究部会訳、国際生命科学研究機構、2021年
参考資料
第一章・厚生労働省ホームページ 「健康被害情報」
・小林製薬の紅麹配合食品にかかる大阪市食中毒対策本部調査班「健康被害事例の疫学調査結果(令和6年8月30日時点のとりまとめ)」
第二章
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ「医療用医薬品の添付文書情報」
第三章
・アメリカ食品医薬品局(FDA) ホームページ What's New in Dietary Supplements
・ダイエタリーサプリメントオフィス (ODS) ホームページ Dietary Sup- plements: What You Need to Know
・アメリカ食品医薬品局(FDA) ホームページ Qualified Health Claims: Letters of Enforcement Discretion
・欧州委員会(European Commission) ホームページ Food and Feed Information Portal Database: Health Claims
第四章
・アメリカ食品医薬品局(FDA) ホームページ What's New in Dietary Supplements
・アメリカ食品医薬品局(FDA)ホームページ Qualified Health Claims: Letters of Enforcement Discretion
・欧州委員会(European Commission) ホームページ Food and Feed Information Portal Database: Health Claims
・カナダ保健省(Health Canada) Licensed Natural Health ProductsDatabase (LNHPD)
・欧州委員会(European Commission) ホームページ Food and Feed Information Portal Database: EU Novel Food status Catalogue
・オーストラリア・ニュージーランド食品基準庁ホームページ Record of views formed in response to inquiries
第六章
・アメリカ予防医学専門委員会 (USPSTF) ホームページ Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement
・食品安全委員会ホームページ「「健康食品」に関する情報」
サプリメントの不都合な真実畝山智香子
筑摩書房
2025/1/10
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