核兵器

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核兵器」(多田将)を読みました。

内容は良いと思うのですが、読みにくい。
「発条」と書いていて、何と読むのだろう?と考えてしまう。
文脈から「バネ」であることはわかるが、普通そう書かないし、「発条」と書く理由がわからない。
ちゃんと校正してもらいたかった(わざとこうした?わざとならば何の意図がある?)。
他には、硼素(ホウ素)、弗化水素酸(フッ化水素酸)、沃素(ヨウ素)、延いては(ひいては)、齎す(もたらす)、雖も(いえども)、跋(ばつ:あとがきという意味)など。
「イメージ」も「イメイジ」としていたり意味わからん。

特に目に留まった内容を列挙します。

・ポロニウムの話が出てくる。
 発見者の故郷がポーランドなのでその名前をとった。ニホニウムなどと同じですね。
 寿司にまぶして内部被曝で暗殺するのに使われたとある。
 p.92 に放射線被曝を減らすために「ロンドンでは寿司を食べない、などの対策を行うことが望ましいです」とジョークをかましていました。
 最初読んだ時に何だろう?と思ったが、上記に関係するのだなと後で気付いた。
 ちなみに、「リトビネンコ事件 - Wikipedia」によると寿司ではなく緑茶にポロニウムを混ぜていたらしい。

 肥料中に含まれる放射性物質⇒葉っぱに付着⇒タバコで肺から入って被曝 1日20本吸うと被曝量は 0.19mSv/y 。
 経口摂取(野菜など)での実効線量係数は低いということかな?
 「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」を見ると、1桁しか違わない。
 排出基準を見ると4桁違う。よくわからないが、吸引摂取の方が格段に被曝しやすいのでしょう。
 なお日本人は魚介類をよく食べるのでポロニウムによる被曝量は多い。
 年間内部被曝線量(青森県)
 ※2006~2010年に青森県で調査した「青森県民の食物含有天然放射性物質からの内部被ばくについて」より引用

・X線とγ線はエネルギー(振動数)の違い(X線 < γ線)がある電磁波という程度の認識だったが、電子が発生源のX線、原子核が発生源のγ線という違いがあるそうだ。
 γ線の遮蔽効果は鉛が高いと勘違いされているが、水・コンクリート・鉛どれも同じ重量を用意すれば遮蔽効果は同じ。
 鉛は比重が高いというだけ。γ線の発生源が原子核であるということに起因するのだろうと思った。

・《因みにこの半減期は、温度や圧力といった環境では一切変化しません。福島第一原子力発電所事故後に湧いて出た詐欺師たちが謳うような「なんとか菌」や化学反応的なものでも、全く変えることは出来ません。》
 これを読んでいて笑ってしまった。なんとか菌ってEM菌のことですね。
 最近、この表現を見たな~と思って調べると、多田氏の「第3章 放射能と半減期について考えよう | 放射線について考えよう。」でした。
 このシリーズは超おすすめです。

・《感受性の高い箇所は、生殖腺、骨髄、白血球、リンパ組織などであり、感受性の低い箇所は、筋肉、血管、脂肪、神経、骨などです。皮膚や、胃腸の消化器官、肝臓などは、その間くらいの感受性となります。
これも福島第一原子力発電所事故後に出たデマのひとつで、被災地で心筋梗塞となる人が増え、それは放射線のせいだ、などというものがありました。血管や筋肉の塊である心臓は感受性が低い、即ち放射線に対して比較的強い箇所ですので、デマを流布した者が、弱い箇所ではなく強い箇所をわざわざ選んでいたところが、笑えると言えば笑えるところです(ですが、デマによる悪影響を考えると、笑っている場合ではなく、デマの流布者を適切に罰するべきです)。「セシウムが筋肉に溜まり易い」とのことから出たデマなのでしょう。》
 ごもっとも。

・β線・γ線の放射線加重係数が1なのは知っていたが、中性子線が一定でないとは知らなかった。
 しかもエネルギーに比例するのではなくピークがある。なおα線は20。

・タイヤのゴムを平らにするのに放射線を使っている。
 高分子に放射線をあててラジカルにして架橋を作るらしい。
 大昔、有機化学の授業で聞いたような気がする。

・PWR(加圧水型原子炉)で一次冷却材兼減速材である軽水にホウ素を入れているのは知っていた。
 その中性子捕獲断面積は10の3乗オーダーだが、キセノンは280万(原子炉における連鎖反応の邪魔をしやすい)。だからキセノンを原発で放出しているんだ!というのがわかった。

・重水炉でウラン濃縮がいらないのは、中性子捕獲断面積が軽水と比べて3桁くらい小さいから。

・ウランはボヘミアングラス(チェコのボヘミア地方)として使われてきた。ウランは紫外線を吸収して緑の傾向を発するためらしい。
 キュリー夫人が実験に使ったのは安いボヘミアングラスの材料の残りを使っていた。

・鉄鉱石などは鉱山では鉱石を掘り出してそのまま出荷しているが、ウランはそうではない。
 硫酸に溶かして硫酸ウラニルとして出荷している。ウラン鉱石に石灰岩の成分が多いと石灰と硫酸が反応してしまうので、その場合はアルカリ溶液(炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合水溶液)を使う。
 アメリカの水を通しにくい鉱床ではアルカリ溶液を岩盤中に注入し、ウランが溶け出した浸出液を吸い出すやり方をしているところがある。

・いろいろな漫画などに登場するイエローケーキと呼ばれているものは六フッ化ウランのこと。
 この六フッ化ウランを使ってウラン濃縮する。単体のウランの4100℃であり扱い難い。片や六フッ化ウランは57℃。
 ガス拡散法、遠心分離法を使ってU235の比率が高い六フッ化ウランの濃度をあげたら、水素を添加し四フッ化ウランにして、カルシウム・マグネシウムを使いフッ素を抜き金属ウランを作るそうだ。
 ウラン濃縮にフッ素を使うというのはこういう理由なのですね。

・人類初の原子炉は、CP1(Chicago Pile 1)で1942年12月2日に初めて臨界に達した。
 天然ウランを使い減速材は黒鉛、冷却材は空気(単に空気中に置いてあるだけ)、制御棒はカドミウム。
 制御棒の出し入れは人手でやっていた。

・プルトニウムを使った核兵器は、Pu239を使うが、質量数238~242の放射性同位体がある。
 ウランの核分裂で最も多くできるのはPu239でその次はPu240。
 自発的核分裂頻度はPu239が 7 Bq/kg であるのに対して、Pu240は 482,000 Bq/kg。Pu240の割合が増えるとちょっとした拍子で爆発してしまうので割合を抑える必要がある。
 商用軽水炉ではU235を3%程度に濃縮し1%を切ったら燃料を交換するが(2%分消費したら交換)、兵器級プルトニウムを作ろうとした場合0.2%消費したら交換しないとPu240が増えすぎてしまう。
 そのため、商用軽水炉で兵器級プルトニウムを作るのは効率が悪い。そのため核疑惑があるところは重水炉・黒鉛炉を軽水炉へ転換しようとしている。
 1トンのウランから兵器級プルトニウムは562gしかできない。

・上記の様に兵器級プルトニウムの生産は非常に非効率なので大量の放射性廃棄物が出る。
 ソ連最大のプルトニウム生産施設であるマヤークでは、20,000PBqを湖に捨てていた。チェルノブイリ原発事故で放出されたのは12,000PBq。

・重水素の濃縮は、水と硫化水素の平衡状態になるのを利用したGS法で8~15%にした後、蒸留法(気化温度の違いを利用)して90%までして、最後は電気分解法で99.75%までする。

・三重水素(トリチウム)は減速材の軽水・重水素水から取り出すのではなく、リチウム6に中性子を食わせて作るほうがよっぽど効率が良いのでそれをしている。
 福島第一原発のALPS処理水の話でトリチウムを分離できる!と言っていた人達はいましたが、全くもって実用的ではないのです。
 中性子捕獲断面積は、リチウム6 > 軽水 > 重水 であり、それぞれ3桁違うのでリチウム6を使った方が作りやすい。
 リチウム6は7.59%、リチウム7が92.41%で両方からトリチウムを作れるが、リチウム7は高速中性子(2MeV以上)でないとほとんどできないが、リチウム6は低速で十分にできる。

・広島型の核爆弾(Mk-1)はウラン235を使ったものだが、イニシエーター(起爆剤)としてポロニウム210とベリリウム9を使っていた。
 ポロニウム210がα崩壊してヘリウム4ができる。ヘリウム4とベリリウム9から炭素12(放射性でない普通の炭素)と中性子ができる。
 この中性子をウラン235が吸収して連鎖反応が起きるという仕組み。
 このMk-1は仕組みが簡単なので起爆実験はせずにいきなり実践投入した。
 仕組みは簡単だが実際に反応したのは1.7%という非効率なものだった。

・変わった核融合型核爆弾で中性子爆弾というのがある。
 通常はタンパー(内部で発生した中性子を閉じ込めて核反応を継続させるもの)にウラン238を使うが、それよりも効果が低いクロム52を使うと外部に中性子を出す。

あとがきに次のようにありました。
著者は、核兵器が所謂「非人道的な兵器」だとは思っておりません。何故なら、それはまるで、「人道的な兵器」というものが存在するかのような言い方だからです。人を殺すのに、「人道的な殺し方」など、あろうはずがありません。
そしてまた、兵器がなくなれば平和が訪れるわけでもありません。兵器が人に戦いを行わせているわけではありません。人類が誕生したときから持ち続けてきた闘争心が、相手をより効率的に打ちのめすために兵器を生み出したのであって、その逆ではないからです。もし仮に今存在する全ての兵器を取り上げたとしたら、人類は、その辺りに転がっている棒切れを拾って、また殺し合いを続けるでしょう。それは全く本末転倒なのであって、本来は、平和が訪れたときに、人々が本当に平和を求めたときに、自然と、人々の手は兵器を離すのです。
その通りだと思います。
広島・長崎に落とした核爆弾より、兵器ではないが枯葉剤の影響の方がよっぽど長期的影響があるので結果的には「非人道的」でしょう。

核兵器禁止条約に加盟しろと言っている人達は何を考えてあのような行動をしているのでしょうか?
理想だけ言っていても仕方がない。0点をいきなり100点にしようとして0点のままであるよりも、まずは5点でもよいのでそれを目指すべき。

核兵器
多田将
2019/4/17
明幸堂

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