ウンコノミクス

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「ウンコノミクス」(山口亮子)を読みました。

山口さんの本は過去2冊読んだことがありますが、まともだったので、この本もきっとそうなのでしょう。

目に留まったところを列挙します。

・日本人の一日のウンコは200g。
 昔は倍近くあった。食物繊維などたくさん食べていたからなのでしょうね。
 欧米人はもっと少ない。

 別途調べた「The human carbon budget: an estimate of the spatial distribution of metabolic carbon consumption and release in the United States | Biogeochemistry」によると、炭素としての摂取量は300g、糞は13g、尿5gなどでほとんどは呼吸として排出されるそうだ。
 かなり意外です。

・羽田にある森ヶ崎水再生センターは日本で最も下水の処理量が多い下水処理場なんだって。
 以下は、その森ヶ崎水再生センターからの処理排水です。ツイートしている通り、濁って臭かったです(水道水レベルまで浄化はしていないので当たり前だが)。

 第二沈殿池の匂いは「全然感じません」とのこと。流れがないから臭くないのかな?この違いはよくわからない。

・東京都の事業による温室効果ガスの排出の35%が下水局。
 その内訳は、水処理工程が59.2%、汚泥の処理工程が31.9%。
 汚泥処理の中では、濃縮・脱水・消却に使う電力によるものが14.1%、汚泥焼却工程で出る一酸化二窒素・メタンが12.6%。

・ゴルフ場では肥料を撒くそうだ。芝生に肥料はいらないと思っていたが、1平方メートル当たり50g肥料をやるらしい。

・下水処理場で汚泥を沈殿させるための薬剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を使うところが多かった。
 アルミニウムなので植物の害になるし、アルミニウムとリン酸が結合してしまい、肥料として使ってもリンは吸収されにくい。
 最近はPACではなくポリ鉄(ポリ硫酸第二鉄)を使うところが増えてきたので肥料として使いやすくなっている。

・下水汚泥を使った肥料の話が出ると重金属のことが出てくる。
 工業廃水が下水に流入することがあり重金属が多かった。だが、工場から排出する前に処理するようになったので減った。
 2023年の調査では95%の下水処理場で安全基準値を下回った。

・下水汚泥を低温焼却すると温室効果が高い一酸化二窒素ができてしまうので800℃以上で焼く。
 焼却灰は細かい粒子で肥料として扱いにくいので加水処理して肥料とする。
 できた肥料には16%以上リンが含まれる(焼却しているので窒素は少ない)。
 肥料として使用するには、リンの「ク溶性」の高さが重要になると書かれている。
 ク溶性って聞いたことがないが、本の中でも説明されていない。
 調べると、クエン酸などの弱酸で溶けることをク溶性というらしい。

・「栄養塩を放出する下水処理場に近いほど、海苔の色落ちは抑えられている」とあって、そんなに貧栄養化しているのかね?と思い軽く調べました。
 「農林水産省の施策」を見ると、下水処理場からの狭い範囲までしか効果がないそうだ。

・下水熱を融雪に使っている。熱を循環させるのにポンプを使っていると書いてあった。自動的に循環させられないのかな?と思って調べてみた。
 「下水熱を利用した融雪施設に関する近年の取組~下水の熱源利用と維持管理性について~
 ポンプを使うやつは、液体(不凍液)を循環させる。特徴はポンプが必要なのと広い面積をカバーできるということ。
 調べて出てきたのは、気体・液体を使い、下水に温められたものが気化し融雪によって冷めて液化して戻ってくるというもの。これは電気不要だが小規模。

・下水汚泥を発酵させて作ったメタンを都市ガスに混ぜるのは難しいらしい。
 メタン60%、二酸化炭素40%、少量の硫化水素ができ、高圧をかけて後者二つは水に溶けさせて除去する。
 これでメタンが98%まで濃縮されるがこのままは使えない。わざと匂いをつけるのも必要だし、都市ガスのメタン濃度は9割で残り、エタン・プロパン・ブタンなので、汚泥発生ガスにメタン以外を混ぜてあげないと同じ品質にならない。

・北海道の畜産が盛んなところでは糞尿がでるのでそれを使ってメタンを作りたいが、貯めておくためには国家資格者を常駐させる必要がありそれがネックになっている。

・バキュームカーはタンクの中を減圧することで吸い込めるそうだ。


この本を最後まで読んだが、オンラインメディアなどに掲載した記事に加筆してできているので、同じような話があちこちに出てくる。
本にするにあたって全面再構成して欲しかった。

ウンコノミクス
山口亮子
集英社インターナショナル
2025/4/7

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