食のデマの属国日本⑤:農業経済学者を名乗るのを辞めたら?

「食の属国日本」(鈴木宣弘)を読みました。
※既出のデマは基本的に細かく記載しません。過去ログのリンクかタグを見てください。
五回目は「第四章 腰砕けの価格転嫁誘導策」がツッコミ対象です。

このようなグラフを持ち出して『「日本は農産物関税率が高い」は誤り』だと言っています。
2025年の本なのに1999年のデータを持ち出すとはどういうことか?と思うが、珍しくデータソースが示されているので見てみましょう。
「Post-Uruguay Round Tariff Regimes | OECD」
これがその元ネタです。
11.7という日本の数字を探すと p.50 の次の表のデータを使っている模様です。
「Table 2. Post-Uruguay Round simple bound mean tariff rates by HS section」
HSコードごとの拘束関税率(bound tariff rates)の表で、Agriculture部分の単純平均値が載っていて、それが 11.7% ということです。
しかし、このオッサン大丈夫か?
通常適用されるMFN(Most Favoured Nation、最恵国待遇)ではなく、それよりも高く勝手に上げるとWTO違反となる拘束関税率を持ち出している。
意味がない比較ですが、あえて2023年のMFN税率を見てみましょう。

※「WTO | World Tariff Profiles 2024」のデータから作図
MFN税率の単純平均を出しても意味はほとんどないのだが、15カ国中7番目であり鈴木氏が読者を騙していることはわかるでしょう。
農業保護の度合いは、以下のグラフから読み取れます。

※「Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2024 | OECD」より引用
青:Market Price Support(市場価格支持) 関税など
黄:Other potentially most distorting support(その他の最も歪曲的支援) 直接補助金など
◇: Potentially most distorting support(absolute)青+黄を合わせたトータルの支援量
上記の農業保護指標(PSE)を、以下の感情論だけで否定しています。
ということのようです。
それが日本だけで起きていることであれば考慮するべき話かもしれないが、他の国も基本的に自国産が選ばれるので、鈴木教授の指摘はナンセンスです。
「Nielsen: Nearly 75% Of Global Consumers List Brand Origin As Key Purchase Driver」より機械翻訳して引用します。
「農協改革に関する意見(規制改革推進会議 農業ワーキング・グループ)」より関係する箇所を引用します。
まるっきり内容が違いますね。
全労働者の賃金が一律上昇するとも受け取れるが、これは最低賃金だけの話です。
※「France: Minimum wage country profile | European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions」参照
※「Law(Canadian Artisan Dairy Alliance)」参照
食の属国日本: 命を守る農業再生
鈴木宣弘
三和書籍
2025/3/5
※既出のデマは基本的に細かく記載しません。過去ログのリンクかタグを見てください。
五回目は「第四章 腰砕けの価格転嫁誘導策」がツッコミ対象です。
見るべきデータが間違っている

このようなグラフを持ち出して『「日本は農産物関税率が高い」は誤り』だと言っています。
2025年の本なのに1999年のデータを持ち出すとはどういうことか?と思うが、珍しくデータソースが示されているので見てみましょう。
「Post-Uruguay Round Tariff Regimes | OECD」
これがその元ネタです。
11.7という日本の数字を探すと p.50 の次の表のデータを使っている模様です。
「Table 2. Post-Uruguay Round simple bound mean tariff rates by HS section」
HSコードごとの拘束関税率(bound tariff rates)の表で、Agriculture部分の単純平均値が載っていて、それが 11.7% ということです。
しかし、このオッサン大丈夫か?
通常適用されるMFN(Most Favoured Nation、最恵国待遇)ではなく、それよりも高く勝手に上げるとWTO違反となる拘束関税率を持ち出している。
意味がない比較ですが、あえて2023年のMFN税率を見てみましょう。

※「WTO | World Tariff Profiles 2024」のデータから作図
MFN税率の単純平均を出しても意味はほとんどないのだが、15カ国中7番目であり鈴木氏が読者を騙していることはわかるでしょう。
農業保護の度合いは、以下のグラフから読み取れます。

※「Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2024 | OECD」より引用
青:Market Price Support(市場価格支持) 関税など
黄:Other potentially most distorting support(その他の最も歪曲的支援) 直接補助金など
◇: Potentially most distorting support(absolute)青+黄を合わせたトータルの支援量
上記の農業保護指標(PSE)を、以下の感情論だけで否定しています。
そもそもなぜ、こんなデータが出てしまっているのか。そのカラクリを紐解いてみよう。原因は、日本の輸送費と関税で説明できない価格差(我が国はこの部分が多い)を、すべて「非関税障壁」として、PSEの保護額に算入しているからにほかならない。日本産は外国産より品質が良いから買うのだ!それは非関税障壁ではない!
例えば、スーパーで国産のネギ一束が158円、外国産が100円で並べて販売されているケースがある。
輸入物より国産が高いことはしばしばあり、日本の消費者は、国産がよければ、高くても国産を買うだろう。これを、「158円の国産ネギに対して、外国産が58円安いとき、日本の消費者はどちらを買っても同等と判断している」と解釈すると、この58円分は、国産ネギへの消費者の評価であり、生産者の品質向上努力の結果でもある。
ということのようです。
それが日本だけで起きていることであれば考慮するべき話かもしれないが、他の国も基本的に自国産が選ばれるので、鈴木教授の指摘はナンセンスです。
「Nielsen: Nearly 75% Of Global Consumers List Brand Origin As Key Purchase Driver」より機械翻訳して引用します。
生鮮食品については、当然のことながら、地元ブランドが明らかに好まれています。このカテゴリーを購入した世界中の回答者の大多数は、野菜(68%対11%)、肉(66%対13%)、果物(64%対12%)、魚介類(57%対18%)、ヨーグルト(52%対22%)については、地元ブランドをグローバルブランドより好むと述べています。
藁人形論法
規制改革推進会議などが「農協共販により不当な利益を農協と農家が得ている」として「農協共販を独禁法で取り締まるべき」と主張しているが、これは明らかに的外れの言いがかりにほかならない。よくもまぁこんなデタラメを書けると感心しますわ。
「農協改革に関する意見(規制改革推進会議 農業ワーキング・グループ)」より関係する箇所を引用します。
(1) 生産資材農家の利益にならないから、農協はメーカー側ではなく、農家側に立てと言っている。
① 全農の購買事業の見直し
全農が行う生産資材の購買事業については、生産資材の農業者への取次ぎ規模に応じて手数料を得る仕組みとなっており、生産資材メーカー側に立って手数料収入の拡大を目指しているのではないかとの批判がある。今後は、真に、農業者の立場から、共同購入の窓口に徹する組織に転換するべく、以下の改革を実行すべきである。
まるっきり内容が違いますね。
正確に書きましょう
フランスでは、労働者の賃金も、労働法に基づき2%以上の物価上昇が生じたら自動的に引き上げられることになっている。これは誤解を生む記述ですね(他に比べればカスみたいなことだが)。
全労働者の賃金が一律上昇するとも受け取れるが、これは最低賃金だけの話です。
※「France: Minimum wage country profile | European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions」参照
カナダでは生乳を流通させられない
カナダでは州別MMB(ミルク・マーケティング・ボード)に酪農家が結集しているから、寡占的なメーカー小売りに対する拮抗力が生まれ、価格形成ができる。カナダではMMBを経由しないと、生乳は流通できない。そうしなければ法律違反で起訴される。MMBを経由する、しないに関わらずカナダでは無殺菌の牛乳(生乳)は流通できません。
※「Law(Canadian Artisan Dairy Alliance)」参照

鈴木宣弘
三和書籍
2025/3/5
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