反ネオニコ東大教授が反グリホサートに参戦

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反ネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)の東大山室真澄教授が以下のようなツイートをしてます。


濃度の話をせず、グリホサートのせいでアマガエルの個体数が減少したのかもしれないと言う。

東大教授が、
Effects of glyphosate based herbicide exposure in early developmental stages of Physalaemus gracilis | Scientific Reports
という論文を持ち出しているので、一般人は信憑性のあることだと思ってしまうでしょう。
ところがどっこ、そうは問屋が卸さない。

Abstract(要約)から一番分かり易い部分を引用します。
The animals were exposed to environmentally relevant concentrations of a glyphosate-based herbicide (0, 100, 350, and 700 µg L⁻¹) during their first seven days of life. As a result, we observed impairments in anti-predatory behavior, reduced body mass index, and scaled mass index, malformations of the mouth and intestine, increased acetylcholinesterase activity, cardiotoxicity, and oxidative stress.
オタマジャクシは、生後最初の7日間、環境関連濃度(0、100、350、700 µg L⁻¹)のグリホサート系除草剤に曝露されました。その結果、捕食者からの防御行動の障害、体質量指数とスケール調整体重量指数の低下、口と腸の奇形、アセチルコリンエステラーゼ活性の増加、心毒性、および酸化ストレスが観察されました。
「アセチルコリンエステラーゼ活性の増加」なんて笑ってしまいますね。
N=4で統計的に有意性があるとかぬかしている論文です。

350 µg/L以上で影響が出るようにも見えますが、BMI / SMI(BMIはよく聞くやつで、SMIは内臓をのぞいた体重で計算したもの)は、100 µg/Lでは影響が出ていて350 µg/L以上では出ていないという、あからさまにおかしな結果になっています。

100 µg/L という濃度がどれくらいのものか見てみましょう。
Effects of Glyphosate on Germination and Seedling Growth of Rice
この論文によると、畔に推奨量のグリホサートを散布して1時間後に畔から30cmの所で1475ppb、3mで76ppb、24時間後では不検出とのこと。
1475ppbは、1.475 µg/L なので 100 µg/L はあり得ないほどの濃度です。それもすぐ希釈されてしまうので実際の曝露量はもっと少ない。

水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定に関する資料
環境省の非水田使用時の PEC(水質汚濁予測濃度:Predicted Environmental Concentration)は、0.029 μg/L で、3m離れた場所での76ppb(0.076μg/L)と比べておかしな値ではない。
なお、水田使用時の値は、14 μg/L であり100 µg/Lの7分の1です。

このことから、山室教授が示した論文ではオタマジャクシに影響があるとは全く言えない。

なお「化学物質DB/Webkis-Plus 化学物質詳細情報」によると、河川などにおける濃度は高い年で0.11μg/L、他の年は検出下限値未満(いずれも幾何平均)です。

以下は、山室真澄が紹介した論文をChatGPTにまとめさせた表です。形態異常のコントロールについては間違っていたので修正。それ以外はそのまま。
実験項目コントロール
(0 µg/L)
100 µg/L350 µg/L700 µg/L解釈への批判実験方法への批判
心拍数
N = 20
平均値 ± SEM変化なし
(p = 0.8610)
↗︎ 上昇
(p = 0.0007)
↗︎ 上昇
(p = 0.0055)
心拍上昇をGBHの直接毒性と結びつけるには、循環調節系への具体的メカニズム解析が不足。正規性・分散同質性などANOVAの前提条件検証結果が未提示
BMI / SMI
N = 10
基準値 ± SEM↘︎ 低下
(p < 0.05)
変化なし変化なし低濃度でも成長阻害と断定するのは、実環境で多く観測される1–10 µg/Lとの乖離が大きく過剰。群あたりN=10は検出力不足の可能性大。実環境濃度域を含む低濃度群が欠如
AST (行動)
N = 15
逃避行動認める
baseline
変化なし
(p = 0.1682)
変化なし
(p = 0.2195)
↘︎ 抑制
(p = 0.0348)
形質変化と行動変化の因果関係を裏付けるには、追加の相関実験(例:運動能検査)が必要。評価者盲検化の記載がなく、観察バイアスを排除できていない
形態異常
N = 10
腸10 %
口部0 %
腸30 %
口部0 %
腸50 %
口部10 %
腸50 %
口部20 %
低・中・高すべてで腸奇形は生じているが、濃度依存性や閾値を議論せず、一律にリスクと見なしている。カテゴリカルデータに対するχ²検定など有意性評価が実施されておらず、有意差の検討が不十分。
AChE 活性
N = 4
中央値 ± IQR変化なし
(p = 0.1176)
↗︎ 増加
(p = 0.0009)
↗︎ 増加
(p < 0.0001)
AChE増加を即「神経毒性の証拠」とするには、神経組織傷害や行動連関の追加データが必要。N=4 と非常に少数で、効果検出力やサンプル間バラツキの評価(パワー解析)が示されていない。
酸化ストレス
(ROS, NPT, TBARS)
N = 4
基準値 ± IQR変化なしROS ↗︎
(p = 0.0002)
NPT ↗︎
(p = 0.0039)
ROS ↗︎
(p = 0.0005)
TBARS ↗︎
(p = 0.008)
バイオマーカー上昇を「組織損傷の直接的証拠」と結びつけるには、組織病理学的解析や機能的検証が不足。同じくN=4 と少数。助剤(POEA等)単独群がないため、反応の原因成分切り分けが不十分。

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