東大特任教授:コメ増産し小麦を代替すれば食料自給率49%!はぁ?
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東京大学鈴木宣弘特任教授がいつもにも増して低レベルなコラムを出しているのでツッコミます。
「【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】コメ増産こそが自給率を向上させる~輸入小麦をコメで代替すれば49%|JAcom 農業協同組合新聞」
この主張を検証してみましょう。

※「荒廃農地の現状と対策 令 和 6 年 1 2 月 農林水産省」より引用
小麦以外の自給率は変わっていないので、水田を畑に変えたものをもとに戻すことは考えておらず、耕作放棄地などを復活させることを想定していると思われます。
常識的には上記資料から耕作放棄地(≒荒廃農地面積)は 9.0万ha(鈴木氏は令和4年のデータを使っているためこの数字を使う)。
令和4年のコメの生産量は 726.9万t(「令和4年産水陸稲の収穫量:農林水産省」より)、作付面積は 235.2万ha(「令和4年耕地面積(7月15日現在):農林水産省」より)。
この数値から耕作放棄地を水田として復活するとどれだけコメ生産量が増えるか計算してみましょう。
726.9万t / 235.2万ha × 9.0万ha =27.8万t
30万t弱で、600万tの20分の1にもなりません。
過去水田であったところを全て復活させるつもりなのでしょうか?
上記のグラフからピークは350万haくらいあるので、それで計算すると355万t(=726.9万t / 235.2万ha ×(350万ha ー 235.2万ha))であり600万tの半分強であり足りません。
「日本の水田をフル活用」と言っているので、元畑だったところを復活させるのは主張に反しますが計算すると、556万t(=726.9万t / 235.2万ha × 180万ha))となり、600万t近い数字になります。
「日本の田畑をフル活用」して556万tという数字を出しましたが、水稲の単収で出しているので正しくなく、「畑もフル活用」する場合は陸稲の単収で計算する必要があります。
「令和4年産水陸稲の収穫量:農林水産省」によると、陸稲の単収は2.16 t/haとあるので、これをもとに計算しなおしてみましょう(水稲の単収は、726.9万t / 235.2万ha=3.09 t/ha)。
計算の前提ですが、水稲は連作障害が起きないが、陸稲の場合は発生するので、2年に1回しか作れない計算をする必要があります。
3.09 t/ha × 115万ha + 2.16 t/ha ÷ 2 × 65万ha = 426万t
600万tの7割しかありません。
この数字もそもそも過大なのです。
昔、田畑だった場所は全て森林・草原になったのでしょうか?
そのようなことはありません。道路になったり、ショッピングモールになったり、工場になったりして転用されているものは田畑に戻せません。
転用はどの程度されたのでしょうか?
「農地の拡張・潰廃と転用許可・転用規制」によると、1967年~2014年で、60.4%が農地復活できないものへ転用されています(太陽光パネル設置で最新のものはもっと比率が高まっていると思われる)。
このことから、田畑に復活できるのは4割しかなので、その計算をすると、169万t(=426万t×(1 -0.604))であり600万tの28%でしかない。
「日本の水田(水田と言いつつ実は畑も含まれる)をフル活用すれば」どうなるか表にまとめました。
小麦の輸入量は551.2 万t(「食料需給表 確報 令和4年度食料需給表項目別累年表 2 輸入量 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口」より)で、歩留まりを7割(「小麦粉のできるまで | 極める | 木下製粉株式会社」によると1等粉で6割なのでそれより多めの数字を使う)とすると、386万tの小麦粉が輸入小麦から作られていることになる。
「山形県米粉利用拡大プロジェクト」によると、玄米⇒白米の歩留まりが9割、白米⇒米粉が8.5割らしい。
②の現実的なシナリオでは、28万t×0.9×0.85=21万tで、386万tの5.5%でしかない。
③のあり得ないシナリオでも、169万t×0.9×0.85=129万tで、386万tの33.5%にしかならない。
そもそも、全ての用途で米粉が小麦粉の代替とはなり得ないので机上の空論もよいところだ。
鈴木氏は、小麦自給率15.7%⇒100%、食料自給率37.6%⇒48.8%というが、
②の現実的なシナリオでは、小麦自給率15.7%⇒20.3%、食料自給率37.6%⇒38.2%であり、
③のあり得ないシナリオでも、小麦自給率15.7%⇒43.9%、食料自給率37.6%⇒41.3%にしかならない。
以上のことから、小麦を増産したコメで100%代用した結果として全体の食料自給率を49%にできるというのはデマレベルの主張だと言える。
「【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】コメ増産こそが自給率を向上させる~輸入小麦をコメで代替すれば49%|JAcom 農業協同組合新聞」
日本の水田をフル活用すれば、今の700万トンから1,300万トンにコメ生産を増やせる。これは酷い。人間ここまで落ちぶれたくないですね。
・・・
表2は、小麦についてのみ着目し、輸入小麦を国産のコメで代替できたら、どうなるかを試算したものだ。単純化した試算ではあるが、これだけで自給率は49%まで上昇する。
コメを700万トンから1,300万トンに増産できるか?
コメを現状の1.86倍増産できると言っています。この主張を検証してみましょう。

※「荒廃農地の現状と対策 令 和 6 年 1 2 月 農林水産省」より引用
小麦以外の自給率は変わっていないので、水田を畑に変えたものをもとに戻すことは考えておらず、耕作放棄地などを復活させることを想定していると思われます。
常識的には上記資料から耕作放棄地(≒荒廃農地面積)は 9.0万ha(鈴木氏は令和4年のデータを使っているためこの数字を使う)。
令和4年のコメの生産量は 726.9万t(「令和4年産水陸稲の収穫量:農林水産省」より)、作付面積は 235.2万ha(「令和4年耕地面積(7月15日現在):農林水産省」より)。
この数値から耕作放棄地を水田として復活するとどれだけコメ生産量が増えるか計算してみましょう。
726.9万t / 235.2万ha × 9.0万ha =27.8万t
30万t弱で、600万tの20分の1にもなりません。
過去水田であったところを全て復活させるつもりなのでしょうか?
上記のグラフからピークは350万haくらいあるので、それで計算すると355万t(=726.9万t / 235.2万ha ×(350万ha ー 235.2万ha))であり600万tの半分強であり足りません。
「日本の水田をフル活用」と言っているので、元畑だったところを復活させるのは主張に反しますが計算すると、556万t(=726.9万t / 235.2万ha × 180万ha))となり、600万t近い数字になります。
「日本の田畑をフル活用」して556万tという数字を出しましたが、水稲の単収で出しているので正しくなく、「畑もフル活用」する場合は陸稲の単収で計算する必要があります。
「令和4年産水陸稲の収穫量:農林水産省」によると、陸稲の単収は2.16 t/haとあるので、これをもとに計算しなおしてみましょう(水稲の単収は、726.9万t / 235.2万ha=3.09 t/ha)。
計算の前提ですが、水稲は連作障害が起きないが、陸稲の場合は発生するので、2年に1回しか作れない計算をする必要があります。
3.09 t/ha × 115万ha + 2.16 t/ha ÷ 2 × 65万ha = 426万t
600万tの7割しかありません。
この数字もそもそも過大なのです。
昔、田畑だった場所は全て森林・草原になったのでしょうか?
そのようなことはありません。道路になったり、ショッピングモールになったり、工場になったりして転用されているものは田畑に戻せません。
転用はどの程度されたのでしょうか?
「農地の拡張・潰廃と転用許可・転用規制」によると、1967年~2014年で、60.4%が農地復活できないものへ転用されています(太陽光パネル設置で最新のものはもっと比率が高まっていると思われる)。
このことから、田畑に復活できるのは4割しかなので、その計算をすると、169万t(=426万t×(1 -0.604))であり600万tの28%でしかない。
「日本の水田(水田と言いつつ実は畑も含まれる)をフル活用すれば」どうなるか表にまとめました。
| シナリオ | コメ増産量 | 実現可能性 |
|---|---|---|
| ①鈴木宣弘特任教授 | 600万トン | 非科学的であり得ない |
| ②耕作放棄地を全て水田として復活した場合 | 28万トン | 人口減のため厳しい |
| ③旧田畑で転用していない土地を復活し水稲・陸稲をした場合 | 169万トン | 新規に森林開墾するようなものなのであり得ない |
小麦粉・米粉の歩留まりは?
米粉を小麦粉で全量置き換えることは不可能ですが、それができる仮定のもと鈴木氏は計算しているので、仕方がないので計算してみましょう。小麦の輸入量は551.2 万t(「食料需給表 確報 令和4年度食料需給表項目別累年表 2 輸入量 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口」より)で、歩留まりを7割(「小麦粉のできるまで | 極める | 木下製粉株式会社」によると1等粉で6割なのでそれより多めの数字を使う)とすると、386万tの小麦粉が輸入小麦から作られていることになる。
「山形県米粉利用拡大プロジェクト」によると、玄米⇒白米の歩留まりが9割、白米⇒米粉が8.5割らしい。
②の現実的なシナリオでは、28万t×0.9×0.85=21万tで、386万tの5.5%でしかない。
③のあり得ないシナリオでも、169万t×0.9×0.85=129万tで、386万tの33.5%にしかならない。
そもそも、全ての用途で米粉が小麦粉の代替とはなり得ないので机上の空論もよいところだ。
鈴木氏は、小麦自給率15.7%⇒100%、食料自給率37.6%⇒48.8%というが、
②の現実的なシナリオでは、小麦自給率15.7%⇒20.3%、食料自給率37.6%⇒38.2%であり、
③のあり得ないシナリオでも、小麦自給率15.7%⇒43.9%、食料自給率37.6%⇒41.3%にしかならない。
以上のことから、小麦を増産したコメで100%代用した結果として全体の食料自給率を49%にできるというのはデマレベルの主張だと言える。


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