デマ屋二人が語る、デタラメな「日本の食料安全保障」①
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「日本の食料安全保障とはなにか?」(深田萌絵、鈴木宣弘)を読みました。
悪評で有名な二人の本ということで、今回はなんちゃってファクトチェックをしてみましょう。
「FIJのガイドライン | FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ」の「レーティング基準」に従います。
また、半導体(深田氏の専門分野?)など農業・食料に関係ないもの、どの誰が言ったかわからず確認できないような内容(よくある陰謀論系)は切りがないので除外します。
・はじめに 深田萌絵
・第1章 日本の農業つぶしを狙うアメリカ
・第2章 日本人は健康も食い尽くされる
・第3章 外資の狙いは農協155兆円
・第4章 種子法の廃止と種苗法の改正が農家の権利を奪った
・第5章 驚くべき農業基本法の改悪
コメ不足自体は認めているので、「政府は半年以上、コメ不足を否定」は誤りです。
※2024年9月3日の「坂本農林水産大臣記者会見概要:農林水産省」参照
まず、主語がない。
主語がないのに「流布している」はおかしいでしょう。自然発生的に出てきた言説ならば「流布されている」でしょう。
社会的影響力がある人の責任を全うしていません。まあ、デマ本を出している時点で社会的責任云々という話ではない。
計画しない・報告しない・虚偽報告などは罰金、届出した計画を理由もなく実行しない(実施したがうまく生産できなかった場合は除く)は氏名公表です。
この件は鈴木氏だったら確実に虚偽だが、深田氏は微妙なので誤りの判定です。
「国内企業苛め」というが、コメ生産者は一般的な「企業」はごく少数です。
「農林水産基本データ集:農林水産省」では、農業経営体(以降コメに限らない)は92.9万、団体経営法人体は3.3万。
「企業」は4%未満であるため、ミスリードです。
「外資優遇政策」は、まるっきり根拠不明です。そのような条項はあったとは記憶していない。
諸外国とはどこのことか?
まるっきり意味不明で虚偽としたいところだが、根拠不明が妥当でしょう。
片方は東大の農業経済学が専門の特任教授なのです。
補助金の有無だけで語る浅はかさよ。
2012年時点のFITは 42 円/kWh で、自由化した電気のスポット価格は 14.72 円/kWh であり、補助率は 285%。
※「過去の買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー」、「日本卸電力取引所 取引監視・取引検証 四半期報告 平成 24 年度 秋期」参照
2012年時点のコメの国際価格は 44.92 円/kgで、関税は 341円/kg なので、補助率は少なくとも(関税以外の補助金は無視)759%。
※「米価格の推移 - 世界経済のネタ帳」参照
補助率は格段にコメ農家の方が高い。
当たり前だが、補助率と利益率が比例するわけではなく、コメ農家の方が原価率は高く利益が格段に低い。
ということで、この低レベルな主張はミスリードと言えるでしょう。
これは、1954年農産物貿易促進援助法(PL480)関連の話ですね。
※PL480については、お仲間の本「ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?」(堤未果)のツッコミで詳細を触れています。
戦後1945からPL480が成立した1954年のコメ生産量と輸出量のグラフを見てみましょう。

※米農務省の「United States Rice Production and Exports, 1940-2000」より引用
コメに関して「農産物の余りを日本人に在庫処分させろ」という必要がある状況に見えますか?
戦前から生産量と輸出量が見事にリンクしていて、ダブついているようには見えません。
お次には「U.S. Exports of Surplus Commodities in: IMF Staff Papers Volume 1956 Issue 002 (1956)」(米国による余剰商品の輸出)から引用します。
「アメリカは日本に対してコメを輸出したかった」このような言説は他で聞いたことはないので、誤りではなく虚偽が妥当でしょう。
お次は、麦・トウモロコシが壊滅したかどうか見ていきましょう。

※「その11:小麦の自給率:農林水産省」より引用
昭和40年代に減ったが持ち直し得ている。自給率は10%前後だが、それは消費量が増えたためであり、国内生産量が壊滅したわけではない。
アメリカから輸入しているトウモロコシのメインは、シチューなどに入っているスイートコーンではなく、飼料用・加工用のデントコーンが圧倒的に多い。
2024年度だと、スイートコーンは23,491トン、デントコーンは12,799,975トンであり、99.8%がデントコーンです。
戦前はデントコーンをほとんど栽培されておらず、データを見つけられなかった。
昭和25年2月(終戦から5年弱)の「食糧研究所研究報告 (3) - 輸入玉蜀黍について / 遠藤次郎 ; 松久清子 ; 上村光男/193~213」に面白い記述を見つけた。
デントコーンの栽培がほとんどされていなかったことがうかがえる。
戦後14年経った1959年からの統計がある。
「作物統計調査 作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物) 長期累年作物統計 11 収穫量累年統計 青刈りとうもろこし | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口」
青刈りとうもろこしはデントコーンのこと。
この表を見てもらえばわかるが、生産量は右肩上がりであり、1954年のPL480は無関係であることは明らかだ。
そのため、「麦・トウモロコシが壊滅した」という主張は虚偽です。
※詳細は別記事『「世界で最初に飢えるのは日本」を読むとバカになる』を参照。
なお「世界で最初に飢えるのは日本」は、鈴木氏のデタラメ満載の本です。
誤読しようがない本の内容ですので、これも虚偽と言えるでしょう。
クソ不味い脱脂粉乳だったのに、なぜ牛乳を飲む習慣ができたのですか?都合の悪い話は無視するのですね。

※農林水産省の「MA米の販売状況」より引用
最新の情報である令和5年だと、主食用:1万トン、加工用:9万トン、飼料用:71万トンであり、主食用はミニマムアクセスの1.2%。
令和5年の国内生産の主食用米は661万トンで見ると、主食米の内、ミニマムアクセス米は0.15%でしかない。
そのため、深田氏の主張はミスリードです。
例えば穀物自給率を見てみましょう。一人当たりの耕地面積が狭ければ自給率が低いのは当たり前です。

※FAOの2018年データより作図
カロリーベースの食料自給率を出している国は少ないので国際的統計には載っておらず、他の国の推移はどうなのだろうか?と思っていたが、今回たまたま次の資料を発見しました。
「食料需給表 関連指標 5-2 国際比較 諸外国・地域の食料自給率(カロリーベース)の推移(試算等) | データベース | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口」
上記のデータをそのまま使ってグラフにしたのが以下です。

人口が増えれば同じ生産量でも自給率は減ります。
そのため、統計開始の1961年の人口で補正したものが次のグラフです。
※台湾以外は世界銀行のデータを使い、台湾は「台湾の1950年~2100年総人口推移|実データと未来予測を徹底解説」のデータを使いました。

オーストラリアなどの突出したデータがあるために日本がわかりにくいので、過去に作ったグラフを紹介します。

※詳細はこちら参照
最後に、人口密度で補正したものを紹介します。
可住面積(森林・砂漠などを除く)あたりの人口密度が高ければ、食料自給率が低いのは当たり前ですよね。
その補正をして、日本の食料自給率をベースにした相対的な物を作りました。
人口補正後の食料自給率 × 「1961年の人口 ÷ 可住面積」÷「1961年の人口(日本) ÷ 可住面積(日本)」
この計算式で求めています。
可住面積は、「Land Cover | FAOSTAT」の「Area from WorldCover 」のデータを使っています。
可住面積は、全面積から、陸上不毛地帯 [6979]、沿岸水域および潮間帯 [6982]、樹木が茂った地域 [6974]、内陸水域 [6981]、低木に覆われた地域 [6976]、万年雪と氷河 [6980]、マングローブ [6975]を除外したものです。

上記では、下にはいつくばっているオーストラリアなどがわかりにくいので、対数表示にしました。

色々な食料自給率に関するグラフをお見せしましたが、その数字だけをもって、状況の異なる他国と比べる浅はかさを理解頂けたと思います。
しかし、そんなことはないことは百も承知でこの発言。
例えば、国内でほとんど生産しないコーヒーは無税ですが、コメは341円/kgです。
関税により国内農業がどれだけ保護されているか判断する必要があります。
鈴木氏は前作「食の属国日本」で次のグラフでミスリードしています。

2025年の本なのに1999年のデータを持ち出しています。
2023年のデータだと次のようになります。

通常適用されるMFN(Most Favoured Nation、最恵国待遇)税率を見るべきなのですが、1999年の鈴木氏のグラフはそれよりも大分高い拘束関税率を持ち出しているところからも不誠実さがわかると思います。
このことから、彼らの主張はミスリードです。

※欧州委員会傘下の農業・農村開発総局の「CAP expenditure - European Commission」のデータより作図
ほぼ100%とはずいぶん乖離していますね。
しかし、「Supporting European farmers’ incomes through Common Agricultural Policy direct aids: facts and questions」を見ると、2016-2019でフランス83%、ドイツ86%、イタリア28%、スペイン35%、イギリス102%(生産高の上位5カ国)、EU全体では58%。
こちらの数値を見ると、EU28カ国中イギリスだけ100%を超えています。
両方見てイギリスの100%超の例があるので、そこだけは正しいように見えます。
でも、まるっきり違う統計であり、どう考えたらよいのでしょうか?
前者は EU economic accounts for agriculture(EAA)、後者は Farm accountancy data network (FADN) の統計を使っています。
その違いは「Understanding farmer income」に書かれていますが、概要を示します。
EAA
・全農家が対象
・国際比較に使える
・国際比較・政策モニタリングに適する
・農家民宿のようなものも所得に含む
FADN
・一定規模以上が対象
・国際比較に使えない
・農場分布・補助金の受給偏在や経営別影響を分析するのに適する
このことから、イギリスの100%超などというFADNを使ったもので日本の状況と比較するのはEAAを使った最初のグラフである。
厳密にはEAAも国際比較にそのままは使えず、以下のPSEで比較すべきです。

※「Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2024」より引用
このように統計の意味を無視した数字だけを持ち出した主張はミスリードです。食料自給率の話と同じですね。
食料供給困難事態対策法でイモは最初から対象になっていません。
前作の「食の属国日本」では、「途中でイモを対象から外して姑息なことをした」ような事実に反することを言っていました。
最初(農林水産省内の検討会時点)からイモは対象ではなかったが、本作ではそれよりも劣化して、現在でもイモの案が生きていることになっています。
そのため、鈴木氏の主張は明確に虚偽と言えます。
アホくさいですが「食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針」を見てみた。
p.12に次のようにあります。
それでもダメな時には、飼料に回しているミニマムアクセス米を主食に転用すると言っている。
常識ある人が読めば、必要な国内供給量の維持を前提とした基本方針であることがわかります。
このとから、ミスリードと言えるでしょう。
なお、ミニマムアクセス米転用でもダメな場合は、国家貿易している分で確保するとp.16に書いてあります。
『県が台湾で聞き取り「環境上問題なし」 TSMC立地周辺の水質 [熊本県]:朝日新聞』
によると、日本と同じように食生活の変化による自給率低下について語られている。
日本との違いは、水資源が台風に依存していて脆弱なので、それも増産の足を引っ張っているそうだ。
これらのことから、仮に半導体産業に原因があるとしても超過大評価であることがわかります。
そのため深田氏の主張は誤りとなります。
この章では一つだけにします。
札幌のお医者さんと言っているのは次のものです。
「Estrogen concentrations in beef and human hormone-dependent cancers - Annals of Oncology」
アメリカでは多くて 40 pg/g です。
1kgの肉を食べるとすると、0.04μg になります。
「Naturally occurring hormones in foods and potential health effects - Orsolya M Palacios, Heather Nelson Cortes, Belinda H Jenks, Kevin C Maki, 2020」によると、食事からの最大摂取量は 0.411 μg、FAOのADIは0~50 ng/kg 体重/日で体重55kgの人は 2.750 μg になります。
アメリカの肉 0.04μg < 食事からの最大摂取量 0.411 μg < 基準値 2.750 μg
カスの量だということで、ミスリードです。
を見てもらえばわかるが、2024年に所得が1.7倍に増えています。
全体を表す統計ではないが傾向はわかる。
今まで低かった分をカバーできているかどうかはわからないが、それは別の話。
この人は東大の農業経済を専門に教えている人ですよ。理解していないはずがないので虚偽ですね。
「参議院選挙公約2013」を見てもらえばわかりますが、そんなことは言っていません。
農協全体では40%です。
「地域産米の安定生産と集荷増大で信頼勝ち取る JAはだの組合長 宮永均氏|JAcom 農業協同組合新聞」

※農林水産省の「米に関するマンスリーレポート(令和6年11月号)」より引用
金利が上がり保有していた外国債券の価値が相対的に下がったので損失が出ているだけです。
「農林中金、4-6月は4127億円の純損失-資本増強1.3兆円に上振れ - Bloomberg」
なお、「仕組み債」による損害が一部あるかもしれないが、低利の外国債券で損害を出しているので常識的にありえないし、そのように報じているまともなメディアはない。

※「第23号特別分析トピック:我が国と世界の肥料をめぐる動向(更新)」より引用
2022年以降ロシア・ベラルーシからのカリウムの輸入はストップしていますが、2023年・2024年の食料自給率は38%のままです。
3分あれば調べられることを東大特任教授が知らないはずがないので虚偽と言えるでしょう。
「農業競争力強化支援法8条の4項」は「生産の知見を提供することの推進」であって「育成者権の譲渡を義務付け」はしていない。
あまおうの件も単に苗を売っているだけです。
そのため、虚偽×2です。
主要農作物種子法(種子法)は、都道府県に稲、大麦、はだか麦、小麦、大豆の種子生産を義務付けていたが、それの義務を無くしただけです。
種子生産をやめさせたのならば、地方自治体による種子条例は違法になるが、やめさせていないので、もちろん違法にはならない。
先ほど登場した「あまおう」の育成者権は福岡県のままなので、企業から購入する必要はありません。
そして、2025/01/20に育成者権は消滅(25年経過したため)しており、自家採種は完全自由になっています。
なお、この対談が行われたのは2025年4月以降であるので(p.149で深田氏が「農水省は備蓄米を4月時点でも出し渋りしています」と言っているため)、育成者権の消滅後です。
「自家採種は許諾してもらえない」もデタラメです。
例えば、「早生かみなり」という中原採種場株式会社が所有しているネギは、自家増殖の許諾は不要となっています。
一律認めないものもあれば、許諾料の支払いを求めるものもあれば、このケースのように制限なしのものもあります。
企業が持っているのは、一律認めないものが多いというだけです。
解説しましょう。
「農家には自家採種の権利が認められるべき」とは、ITPGR条約(食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約)のことを指していると思います。
条約の日本語訳を引用しますが、他の条約の決まりがあったらそちらが優先ですよと言っています。
まとめると、UPOV条約はITPGR条約に優先し、UPOV条約を適切に適合させるために種苗法が改正されたのであり、「国際ルールに反して、農家の権利を奪った」ことには当たらない。
「国家公務員法等の一部を改正する法律の概要」を見ると分かりますが、あくまで幹部職が担当で課長補佐は含まれないので誤りとなります。
実際何と書いてあるかというと「日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」です。
必要な措置があればやるし、なければやらないと言っていて、規制改革会議の言うとおりにやるっていうことではない。
これも過去に指摘されていないはずはないので虚偽でしょう。
国の機関である農研機構が保有している品種の利用許諾を与えた件数であり、譲渡したものではありません。
これは山田氏のデマを未確認で垂れ流しているだけかもしれないので、誤りと判断しましょうか。
※「カネミ油症の手引き― 症状と治療について ―」参照
PCB自体も開発したのはモンサントではなく、Swann Chemicalであり、モンサントは買収することで獲得しています。
そして、枯葉剤について、モンサントは原料製造していた一企業に過ぎず、開発した会社とは言えない。
※『第2回 枯葉剤「エージェント・オレンジ」の実態と構成成分【ラウンドアップ「枯葉剤」説の虚構 “反農薬・反GMO・反資本主義” 活動家が作った構造的デマ】 | AGRI FACT 農と食の科学的情報サイト』参照
以上から、誤り×2となります。
「Organic Seed Growers and Trade Association v. Monsanto Company, 2012-1298 (Decided: June 10, 2013)」
これよると、モンサントは「意図せずして生じた1%未満の偶発的な汚染に対しては、特許権を行使しない」と拘束力のある宣言をしています。
そのため訴訟を起こそうとしても受理されない可能性が高いということを完全に無視しています。
「多くの農家が破産した」というのは誤りです。
「Center for Food Safety. (2005). Monsanto vs. U.S. Farmers.」では、90件の訴訟(農家147人、小規模企業または農場会社39社)のことが書かれています。
この中の8件で破産があったが、これは「多く」とは言わない。またその8件は、1997年から2004年の期間に破産したというだけで、訴訟が原因かどうかはわからない。
そして、花農家の話をしているが、花農家にサツマイモ(そもそも第1章で言及した通り増産対象の特定食料となっていない)の生産能力はないので生産要請対象ではない。
食料供給困難事態対策法の第十七条を元に定められている食料供給困難事態対策法施行規則の第四条を引用して解説します。
そのため、花農家がそれを満たしていないのは自明です。
上記を知らないはずはないので虚偽×2です。
なお「食料供給困難事態対策法について:農林水産省」を見ると面白いです。
「花農家にコメやイモなど無理やり作らせる」「有事には支援せず命令だけは行う」「国が増産を指示」などは誤情報だと書かれています。
東京大学の農学部の特任教授が率先して誤情報を流布しています。
これは単なる間違いの可能性があるので誤りが妥当ですね。
絶対・0%・100%など極端なものが出てきたら疑いましょう。特にデマ屋が言う場合は。
「必ずしも実行されるわけではない」「実行されないことも多い」などならばわかるが「絶対に実行しません」ときたら嘘だと思うべきです。
実行されている具体例を紹介しましょう。
2013年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議」というのがあります。
これでは「国連障害者権利条約の締結に向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締結に向け、早急に必要な手続を進めること」とあります。
「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)|外務省」にある通り、2014年1月20日に批准し、2月19日に発効しています。
以上のことから「絶対に実行しません」は虚偽と言えるでしょう。
ChatGPT/Claude/Geminiに聞いたらすべて新規だと誤認すると答えました。
「農業経営発展計画制度:農林水産省」にその制度のことが書かれていますが、ページタイトルを見ればわかりますが、既存農家の農業経営を発展させるものであり、新規に農業法人を立ち上げる時の話ではありません。
例外的な制度であり、既存の農業者として5年以上の実績があることなどの条件があり、無条件に適用されるものではない。
みごとなミスリードですね。
「【事業のご案内】畑地化促進事業について:農林水産省」
これは何なのでしょうかね?
やっと第5章まで終わりました。残り5章ありますが、ここでいったん切ります。
ここまでなんちゃってファクトチェックをしましたが、その結果です。
ミスリード:9個
根拠不明:2個
誤り:12個
虚偽:17個
その手の専門家がやったらどのくらいの数になるのやら。根拠不明は腐るほど挙げられるのでしょう。
著者の片方は東京大学特任教授・名誉教授なのですよ。酷いものです。
日本の食料安全保障とはなにか?
深田萌絵、鈴木宣弘
かや書房
2025/5/28
悪評で有名な二人の本ということで、今回はなんちゃってファクトチェックをしてみましょう。
「FIJのガイドライン | FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ」の「レーティング基準」に従います。
ミスリード:一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。上記以外に正確/ほぼ正確/判定留保/検証対象外がありますが、これらについては触れません。根拠不明もほとんどは面倒なので対象外とします。
不正確:正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
根拠不明:誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
誤り:全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
虚偽:全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
また、半導体(深田氏の専門分野?)など農業・食料に関係ないもの、どの誰が言ったかわからず確認できないような内容(よくある陰謀論系)は切りがないので除外します。
・はじめに 深田萌絵
・第1章 日本の農業つぶしを狙うアメリカ
・第2章 日本人は健康も食い尽くされる
・第3章 外資の狙いは農協155兆円
・第4章 種子法の廃止と種苗法の改正が農家の権利を奪った
・第5章 驚くべき農業基本法の改悪
はじめに 深田萌絵
国はコメ不足を否定していた?
政府は半年以上、コメ不足を否定し備蓄米放出を拒んだ結果、コメ価格は前年比2倍超えの4233円(5キログラム、税込み、全国のスーパー約1千店で売られた平均価格、5月7日農水省発表)とまでなったのだ。政府はコメ不足を認めた上で、民間在庫で乗り切れるとしていました。
コメ不足自体は認めているので、「政府は半年以上、コメ不足を否定」は誤りです。
※2024年9月3日の「坂本農林水産大臣記者会見概要:農林水産省」参照
まずは国語の勉強をしたらどうですか?
さて、そこで出てくる言説が非常に興味深い。ファクトの話ではないが、おかしな文章ですね。
「政府がコメ農家を苛め続けた結果こうなった」
「政府がコメ農家を保護し続けた結果こうなった」
という、まったく逆の言説が同時に流布しているのだ。
まず、主語がない。
主語がないのに「流布している」はおかしいでしょう。自然発生的に出てきた言説ならば「流布されている」でしょう。
社会的影響力がある人の責任を全うしていません。まあ、デマ本を出している時点で社会的責任云々という話ではない。
食料供給困難事態対策法のあるある
政府は、有事を意識しているかのように2024年に「食料供給困難事態対策法」を成立させ、2025年4月に実施に関する基本方針を発表した。内容は杜撰なもので、農家を支えずに農作物が計画通りに生産できなければ農家に罰金を課し、食料を輸入に依存しようという「産業のコメ」と同じ国内企業苛め、外資優遇政策と言えるものであった。食料供給困難事態対策法の罰則がまるっきりデタラメです。
計画しない・報告しない・虚偽報告などは罰金、届出した計画を理由もなく実行しない(実施したがうまく生産できなかった場合は除く)は氏名公表です。
この件は鈴木氏だったら確実に虚偽だが、深田氏は微妙なので誤りの判定です。
「国内企業苛め」というが、コメ生産者は一般的な「企業」はごく少数です。
「農林水産基本データ集:農林水産省」では、農業経営体(以降コメに限らない)は92.9万、団体経営法人体は3.3万。
「企業」は4%未満であるため、ミスリードです。
「外資優遇政策」は、まるっきり根拠不明です。そのような条項はあったとは記憶していない。
100%保護とは何?
諸外国では大規模な穀物農家を政府が100%保護しているために「低価格」で輸出できているという一面もある。100%保護とは何ぞや?
諸外国とはどこのことか?
まるっきり意味不明で虚偽としたいところだが、根拠不明が妥当でしょう。
第1章 日本の農業つぶしを狙うアメリカ
農業経済学者のくせに利益率という言葉を知らない?
深田 補助金で守られているなら、もっとコメ農家が増えそうですよね。太陽光パネル市場のほうは本当に補助金で守られているから、面積当たりの太陽光パネル数において日本は世界一になりました。いや~。低レベル過ぎるな議論ですね。
鈴木 そうですよ。補助金で守られているのであれば、農業は太陽光パネルのようにどんどん広がるはずなんです。だって儲かるんだから、もっともっと若い人も入ってきます。
深田 確かに、補助金が手厚かった時代の太陽光パネルは新規参入する方がすごく多かったですね。
鈴木 当然自給率も上がるはずです。それが、実際には高齢化で、農業をやる人がいなくなって、村がなくなると言っています。これで農業が過保護に守られてるとは、何を言ってるんですかと。誰が考えてもおかしいでしょう。
片方は東大の農業経済学が専門の特任教授なのです。
補助金の有無だけで語る浅はかさよ。
2012年時点のFITは 42 円/kWh で、自由化した電気のスポット価格は 14.72 円/kWh であり、補助率は 285%。
※「過去の買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー」、「日本卸電力取引所 取引監視・取引検証 四半期報告 平成 24 年度 秋期」参照
2012年時点のコメの国際価格は 44.92 円/kgで、関税は 341円/kg なので、補助率は少なくとも(関税以外の補助金は無視)759%。
※「米価格の推移 - 世界経済のネタ帳」参照
補助率は格段にコメ農家の方が高い。
当たり前だが、補助率と利益率が比例するわけではなく、コメ農家の方が原価率は高く利益が格段に低い。
ということで、この低レベルな主張はミスリードと言えるでしょう。
生産していないものは壊滅しようがない
鈴木 なぜ「世界で一番過保護だ」と刷り込まれたかというと、アメリカの戦後の占領政策から始まっています。アメリカでたくさん出る農産物の余りを日本人に在庫処分させろ、食わせろと。だからコメ以外の農産物の関税をどんどん撤廃しろと。これがアメリカの政策でした。戦後、「アメリカは日本に対してコメを輸出したかった」だそうですよ。
深田 戦後、食料が足りなかった日本がアメリカに支援を求めたところ、アメリカは日本に対してコメを輸出したかった。ところが、日本は主食のコメを保護するために小麦や他の農産物に変更するようにアメリカに求めたそうですね。
鈴木 そう言われて、日本のコメ以外の麦や大豆、トウモロコシの生産がほぼ壊滅しました。
これは、1954年農産物貿易促進援助法(PL480)関連の話ですね。
※PL480については、お仲間の本「ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?」(堤未果)のツッコミで詳細を触れています。
戦後1945からPL480が成立した1954年のコメ生産量と輸出量のグラフを見てみましょう。

※米農務省の「United States Rice Production and Exports, 1940-2000」より引用
コメに関して「農産物の余りを日本人に在庫処分させろ」という必要がある状況に見えますか?
戦前から生産量と輸出量が見事にリンクしていて、ダブついているようには見えません。
お次には「U.S. Exports of Surplus Commodities in: IMF Staff Papers Volume 1956 Issue 002 (1956)」(米国による余剰商品の輸出)から引用します。
For rice and cotton it appears that the more recent fall in U.S. exports reflected a government policy of not offering these commodities at competitive prices during 1955.コメについては小麦のような扱いをしなかったことからも、デタラメであることがわかるでしょう。
コメと綿花については、1955年における米国輸出の最近の減少は、政府がこれらの商品を競争力のある価格で提供しないという政策を反映したものと見られる。
「アメリカは日本に対してコメを輸出したかった」このような言説は他で聞いたことはないので、誤りではなく虚偽が妥当でしょう。
お次は、麦・トウモロコシが壊滅したかどうか見ていきましょう。

※「その11:小麦の自給率:農林水産省」より引用
昭和40年代に減ったが持ち直し得ている。自給率は10%前後だが、それは消費量が増えたためであり、国内生産量が壊滅したわけではない。
アメリカから輸入しているトウモロコシのメインは、シチューなどに入っているスイートコーンではなく、飼料用・加工用のデントコーンが圧倒的に多い。
2024年度だと、スイートコーンは23,491トン、デントコーンは12,799,975トンであり、99.8%がデントコーンです。
戦前はデントコーンをほとんど栽培されておらず、データを見つけられなかった。
昭和25年2月(終戦から5年弱)の「食糧研究所研究報告 (3) - 輸入玉蜀黍について / 遠藤次郎 ; 松久清子 ; 上村光男/193~213」に面白い記述を見つけた。
米国においては玉蜀黍はもちろん大部分飼料であるが、一部は食用として加工工夫され、一人一年約30ポンドが消費されているというが、日本の現状においては玉蜀黍の食糧としての大量消費の形態については、まだ結論的に確立されたものがない。従ってこれを大量に加工して配給のルートに載せるためには現在までのこれを製粉してコーンミール(以下便宜上ミールと呼ぶ)としてそのまま配給するか、さらにこれをパン、麺類菓子などに混入加工するか、味噌、醤油などの醸造原料にするのが精一杯であった。従って現段階では玉蜀黍加工の出発点は、一応ミールに加工することにあると思われる。玉蜀黍はトウモロコシのことで、この時に輸入されたのはデントコーン。
デントコーンの栽培がほとんどされていなかったことがうかがえる。
戦後14年経った1959年からの統計がある。
「作物統計調査 作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物) 長期累年作物統計 11 収穫量累年統計 青刈りとうもろこし | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口」
青刈りとうもろこしはデントコーンのこと。
この表を見てもらえばわかるが、生産量は右肩上がりであり、1954年のPL480は無関係であることは明らかだ。
そのため、「麦・トウモロコシが壊滅した」という主張は虚偽です。
二人の話を聞くとバカになる
鈴木 学者の回し者まで使って、コメを食うと馬鹿になるという本まで書かせました。・・・コメを食べるとバカになると言ったのではなく、コメばかり食べているとビタミンBが不足するので、主食を小麦にするか、コメを主食のままでビタミンBを摂れる食事に変えようと言っているだけです。
深田 『頭脳―才能をひきだす処方箋』(林課著、光文社1958年)ですね。発売3年で50刷を超えたと聞いています。
鈴木 大ベストセラーで、日本社会に与えた影響は非常に大きかったんです。本書には「米食低能論」がまことしやかに書かれています。著者の林氏によると、日本人が欧米人に劣っているのは、主食のコメが原因なのだそうです。
※詳細は別記事『「世界で最初に飢えるのは日本」を読むとバカになる』を参照。
なお「世界で最初に飢えるのは日本」は、鈴木氏のデタラメ満載の本です。
誤読しようがない本の内容ですので、これも虚偽と言えるでしょう。
矛盾してませんか?
深田 団塊世代の母が子供の頃は、脱脂粉乳が相当臭かったようですが、飲んだ後にドロップがもらえるので子供たちは我慢して飲んだと聞いています。ぷぷぷ。
鈴木 我々はそんなふうにアメリカの戦略にまんまとハメられたわけです。
クソ不味い脱脂粉乳だったのに、なぜ牛乳を飲む習慣ができたのですか?都合の悪い話は無視するのですね。
ミニマムアクセス米は何に使われる?
深田 日本の農業は関税で守られていると思っていました。海外からの最低限米輸入(ミニマム・アクセス)の枠が77万トンあって、日本人の主食・米の関税無税分は一割だけですものね。以下を見ればわかりますが、ミニマムアクセス米の内、「主食」に用いられるものは極わずかです。

※農林水産省の「MA米の販売状況」より引用
最新の情報である令和5年だと、主食用:1万トン、加工用:9万トン、飼料用:71万トンであり、主食用はミニマムアクセスの1.2%。
令和5年の国内生産の主食用米は661万トンで見ると、主食米の内、ミニマムアクセス米は0.15%でしかない。
そのため、深田氏の主張はミスリードです。
比較できないものして、くだをまく自称「専門家」
鈴木 高い関税で保護されていて、農業鎖国みたいに言われますが、鎖国なわけがありません。だって、日本は先進国で自給率が最も低いのですから。食料自給率の値だけを見ても何も見えてこないが、それを堂々と開陳していて見ているこちらが恥ずかしくなります。
深田 そうですね。農業が守られていたら、自給率はもっと高まりますよね。ひれ伏したわけです。
鈴木 実際、戦後すぐ、1946年度の日本のカロリーベースでの食料自給率は88%でした。その後は緩やかに下がり続け、現在(2023年度、農林水産省試算)は38%で、さらにじわじわと下がりつつあります。海外に目を転じてみると、カナダは204%、オーストラリアが233%、アメリカが104%、フランスが121%(2021年度、農林水産省試算)などとなっており、日本との差は歴然としています。
例えば穀物自給率を見てみましょう。一人当たりの耕地面積が狭ければ自給率が低いのは当たり前です。

※FAOの2018年データより作図
カロリーベースの食料自給率を出している国は少ないので国際的統計には載っておらず、他の国の推移はどうなのだろうか?と思っていたが、今回たまたま次の資料を発見しました。
「食料需給表 関連指標 5-2 国際比較 諸外国・地域の食料自給率(カロリーベース)の推移(試算等) | データベース | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口」
上記のデータをそのまま使ってグラフにしたのが以下です。

人口が増えれば同じ生産量でも自給率は減ります。
そのため、統計開始の1961年の人口で補正したものが次のグラフです。
※台湾以外は世界銀行のデータを使い、台湾は「台湾の1950年~2100年総人口推移|実データと未来予測を徹底解説」のデータを使いました。

オーストラリアなどの突出したデータがあるために日本がわかりにくいので、過去に作ったグラフを紹介します。

※詳細はこちら参照
最後に、人口密度で補正したものを紹介します。
可住面積(森林・砂漠などを除く)あたりの人口密度が高ければ、食料自給率が低いのは当たり前ですよね。
その補正をして、日本の食料自給率をベースにした相対的な物を作りました。
人口補正後の食料自給率 × 「1961年の人口 ÷ 可住面積」÷「1961年の人口(日本) ÷ 可住面積(日本)」
この計算式で求めています。
可住面積は、「Land Cover | FAOSTAT」の「Area from WorldCover 」のデータを使っています。
可住面積は、全面積から、陸上不毛地帯 [6979]、沿岸水域および潮間帯 [6982]、樹木が茂った地域 [6974]、内陸水域 [6981]、低木に覆われた地域 [6976]、万年雪と氷河 [6980]、マングローブ [6975]を除外したものです。

上記では、下にはいつくばっているオーストラリアなどがわかりにくいので、対数表示にしました。

色々な食料自給率に関するグラフをお見せしましたが、その数字だけをもって、状況の異なる他国と比べる浅はかさを理解頂けたと思います。
不都合なことは言わない自称「専門家」
深田 日本の農産物の関税は、諸外国と比較してそんなに高いのですか。すべての農産物が一律で同じ関税率であれば赤字部分の主張は成り立ちます。
鈴木 高くないです。高かったらこんなに輸入品が入ってくるわけがない。
しかし、そんなことはないことは百も承知でこの発言。
例えば、国内でほとんど生産しないコーヒーは無税ですが、コメは341円/kgです。
関税により国内農業がどれだけ保護されているか判断する必要があります。
鈴木氏は前作「食の属国日本」で次のグラフでミスリードしています。

2025年の本なのに1999年のデータを持ち出しています。
2023年のデータだと次のようになります。

通常適用されるMFN(Most Favoured Nation、最恵国待遇)税率を見るべきなのですが、1999年の鈴木氏のグラフはそれよりも大分高い拘束関税率を持ち出しているところからも不誠実さがわかると思います。
このことから、彼らの主張はミスリードです。
深田 国際比較で見ると日本の農家の補助金の割合は高いほうなのでしょうか。面白いことを仰る。
鈴木 ヨーロッパの主要国では農家の補助金はほぼ100%なんですよ。あるいは100%を超えています。

※欧州委員会傘下の農業・農村開発総局の「CAP expenditure - European Commission」のデータより作図
ほぼ100%とはずいぶん乖離していますね。
しかし、「Supporting European farmers’ incomes through Common Agricultural Policy direct aids: facts and questions」を見ると、2016-2019でフランス83%、ドイツ86%、イタリア28%、スペイン35%、イギリス102%(生産高の上位5カ国)、EU全体では58%。
こちらの数値を見ると、EU28カ国中イギリスだけ100%を超えています。
両方見てイギリスの100%超の例があるので、そこだけは正しいように見えます。
でも、まるっきり違う統計であり、どう考えたらよいのでしょうか?
前者は EU economic accounts for agriculture(EAA)、後者は Farm accountancy data network (FADN) の統計を使っています。
その違いは「Understanding farmer income」に書かれていますが、概要を示します。
EAA
・全農家が対象
・国際比較に使える
・国際比較・政策モニタリングに適する
・農家民宿のようなものも所得に含む
FADN
・一定規模以上が対象
・国際比較に使えない
・農場分布・補助金の受給偏在や経営別影響を分析するのに適する
このことから、イギリスの100%超などというFADNを使ったもので日本の状況と比較するのはEAAを使った最初のグラフである。
厳密にはEAAも国際比較にそのままは使えず、以下のPSEで比較すべきです。

※「Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2024」より引用
このように統計の意味を無視した数字だけを持ち出した主張はミスリードです。食料自給率の話と同じですね。
イモは関係ねぇ
深田 食料供給困難事態対策法が成立しました。しかしその内容は酷いです。平時は農家を支援しないけれども、有事に農家は政府の指示に従い畑をカロリーの高い穀物や根菜類に変更し、計画通り生産しなかったら罰金を科すみたいな、根本的な解決になっていない法律になっています。こんなデタラメが本に書かれていて「情けない気持ちになります」。
鈴木 おかしな話で、平時には支援しないでへとへとになってる農家に、その時だけ引っ叩いて罰金で脅して作らせればいいなんて、政府に都合のいい法律が2024年の通常国会で成立し、2025年4月1日に施行されました。もちろんそのための補助金なんて出ません。そんなことはできるわけがない。やっていいわけもない。実際にいきなりイモを作る難しさについて、その法律の立案者は考えたことすらないのでしょう。金は出さずに罰金で脅して作らせればいいみたいな、そんな発想しか出てこないのは、情けない気持ちになります。
イモを育てるには、まずは畑を耕す必要があります。同じ場所で同じ作物を作り続けると生育が悪くなったりします。これを「連作障害」と言います。それに対する対策もしなければなりません。
食料供給困難事態対策法でイモは最初から対象になっていません。
前作の「食の属国日本」では、「途中でイモを対象から外して姑息なことをした」ような事実に反することを言っていました。
最初(農林水産省内の検討会時点)からイモは対象ではなかったが、本作ではそれよりも劣化して、現在でもイモの案が生きていることになっています。
そのため、鈴木氏の主張は明確に虚偽と言えます。
アホすぎる
深田 食料供給困難事態対策法の基本方針が先日決まりましたが、食料供給が困難になったらお米は輸入に頼りましょうということになりました。これまで減反政策で水田を減らし、2023年には国内需要が賄えないほどまでになりました。そこまで日本のコメ供給を減らす政策を取りながら、需要が供給を上回り、価格が高騰してコメ農家が増産する意欲を持ち始めたところで「法律で輸入しましょう」というのは酷いなと思います。日本の政治家は、産業のコメだけでなく、食料のコメにまで外資優遇、国内企業に対しては冷淡だなと思います。酷いと思うのはあなたのアホな主張に対してですね。
鈴木 お金を握ってるところもそうじゃないですか。
アホくさいですが「食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針」を見てみた。
p.12に次のようにあります。
国内で自給可能な米穀については、食糧法にのっとり、「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」に基づいて国が主食用米を備蓄しているほか、民間在庫が150万~200万トン程度存在していると見込まれる。これらにより平時需要の約2割(140万トン)以上を確保可能であることから、食料供給困難事態の目安である全国的に供給が2割以上減少する事態にも対応可能となっている。これらの対応によってもなお、国民が最低限度必要とする食料の供給が確保されず、又は確保されないおそれがある事態に至った場合にはミニマム・アクセス米を活用することとし、その具体的方法を事前に検討する。要約すると、国家在庫・民間在庫で食料供給困難事態の目安である供給2割減にも対応できる。
それでもダメな時には、飼料に回しているミニマムアクセス米を主食に転用すると言っている。
常識ある人が読めば、必要な国内供給量の維持を前提とした基本方針であることがわかります。
このとから、ミスリードと言えるでしょう。
なお、ミニマムアクセス米転用でもダメな場合は、国家貿易している分で確保するとp.16に書いてあります。
専門もかな~り疑わしいですね
深田 台湾の食料自給率は30%、半導体産業による農地汚染も低自給率の原因です。次の朝日新聞の記事にある通り、TSMCの向上ができたことによってヒ素・フッ素の河川濃度は上がったが基準値未満であると言っています。
『県が台湾で聞き取り「環境上問題なし」 TSMC立地周辺の水質 [熊本県]:朝日新聞』
光と影のTSMC誘致(深田萌絵)https://t.co/g8P7Vam9O0
— 晴川雨読 (@Seisenudoku) June 21, 2025
目に留まったので「まえがき」の一部を見てみると
《台湾は河川の約25%、農地の約5%を重度の汚染で失った》
と噓八百。さすがデマ東大教授と共著を出すだけある。
まぁデマ屋同士でお似合いだけどね。
「Taiwan Food Security Situation Overview」農地で汚染されているのは5%ではなく0.15%。
— 晴川雨読 (@Seisenudoku) June 21, 2025
デマ屋の出す数字は高頻度で間違っていますな。https://t.co/gRy3kBOCuG
によると、日本と同じように食生活の変化による自給率低下について語られている。
日本との違いは、水資源が台風に依存していて脆弱なので、それも増産の足を引っ張っているそうだ。
これらのことから、仮に半導体産業に原因があるとしても超過大評価であることがわかります。
そのため深田氏の主張は誤りとなります。
第2章 日本人は健康も食い尽くされる
ツッコミ箇所が多すぎて全部指摘するのは無理なのでピックアップします。この章では一つだけにします。
鈴木:札幌のお医者さんが調べたら、アメリカの肉から600倍のエストロゲンが出てきたという話もあります。これは日本におけるホルモン依存性がんの増加と関係があるそうです。さすがデマ屋ですね。その数字の意味するところを語らず、単に相対的に多いと言って煽っています。
札幌のお医者さんと言っているのは次のものです。
「Estrogen concentrations in beef and human hormone-dependent cancers - Annals of Oncology」
アメリカでは多くて 40 pg/g です。
1kgの肉を食べるとすると、0.04μg になります。
「Naturally occurring hormones in foods and potential health effects - Orsolya M Palacios, Heather Nelson Cortes, Belinda H Jenks, Kevin C Maki, 2020」によると、食事からの最大摂取量は 0.411 μg、FAOのADIは0~50 ng/kg 体重/日で体重55kgの人は 2.750 μg になります。
アメリカの肉 0.04μg < 食事からの最大摂取量 0.411 μg < 基準値 2.750 μg
カスの量だということで、ミスリードです。
第3章 外資の狙いは農協155兆円
この人の専門は農業経済学ですよ
鈴木:コメや野菜の値段がすごく上がっても、農家は潤っていません。「2024年の稲作経営の所得は上がったが、今の米価が適正価格なのか? | 農業利益創造研究所」
を見てもらえばわかるが、2024年に所得が1.7倍に増えています。
全体を表す統計ではないが傾向はわかる。
今まで低かった分をカバーできているかどうかはわからないが、それは別の話。
この人は東大の農業経済を専門に教えている人ですよ。理解していないはずがないので虚偽ですね。
2013年の自民党公約
自民党は2013年に行われた選挙の時にTPPには断固反対だと、絶対に農業を守ると言って選挙で300人近くも当選しました。しかし選挙が終わったら、1ヵ月も経たないうちに「TPPを推進します」と安倍晋三総理が宣言して、びっくり仰天ですよ。それではJA組織も農家も怒りますよ。それに対して、「君らの権限をなくしましょう」と、農協が総攻撃を受けたわけです。これは誤りです。
「参議院選挙公約2013」を見てもらえばわかりますが、そんなことは言っていません。
TPP等の経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します。
農協の集荷率
鈴木:コメの場合、農協の集荷率がすでに4割くらいまで減ってきていたのに、今回のコメ不足でさらに3割程度になり、極端に下がりました。JA全農では26%なのでそのことを言っているのであれば正しいのだが、農協全体のことを鈴木氏は言っているので誤りです。
農協全体では40%です。
「地域産米の安定生産と集荷増大で信頼勝ち取る JAはだの組合長 宮永均氏|JAcom 農業協同組合新聞」
1俵の価格
鈴木:生産調整もね、減反をやって価格を吊り上げたみたいな議論もあるけれど、もともと今回、米価が上がる直前の価格は60キログラムで9000円台まで下がっていました。これも誤りです。鈴木氏から9000円という数字がよく出てくるが、最低価格などを引っ張り出しているのでしょう。

※農林水産省の「米に関するマンスリーレポート(令和6年11月号)」より引用
ぷぷっ仕組み債だってさ
深田:そもそも中金があれだけ損失を出しているのは、仕組み債ですよね。外資の金融機関が中心になって組成してきた、危ない商品が原因ですよね。ちょっとニュースを見れば誤りだとわかる超低レベルな話ですね。これは虚偽と言って良いでしょう。
鈴木:そうです。
金利が上がり保有していた外国債券の価値が相対的に下がったので損失が出ているだけです。
「農林中金、4-6月は4127億円の純損失-資本増強1.3兆円に上振れ - Bloomberg」
なお、「仕組み債」による損害が一部あるかもしれないが、低利の外国債券で損害を出しているので常識的にありえないし、そのように報じているまともなメディアはない。
第4章 種子法の廃止と種苗法の改正が農家の権利を奪った
現状、食料自給率は22%らしい
鈴木:ウクライナ戦争勃発後の今、ロシアとベラルーシにとって日本は敵国です。ですからその2国が「日本には化学肥料の原料のカリウム鉱石を売りません」ということになってしまったら38%の自給率は実質22%にまで下がってしまうのです。またまた面白いことを仰りますね。

※「第23号特別分析トピック:我が国と世界の肥料をめぐる動向(更新)」より引用
2022年以降ロシア・ベラルーシからのカリウムの輸入はストップしていますが、2023年・2024年の食料自給率は38%のままです。
3分あれば調べられることを東大特任教授が知らないはずがないので虚偽と言えるでしょう。
農業デマ屋を見分けるマジックワード「農業競争力強化支援法8条の4項」
鈴木:さらにいい種は企業に渡しなさいという法律までできてしまったのです。・・・お金は発生するかもしれませんけども、「譲渡しろ」と言われたら、とにかく渡さなければいけないということになりました。「農業競争力強化支援法8条の4項」で、そういう理不尽なことが決まってしまったのです。定番のデマですね。
元農林水産大臣の山田正彦氏に「あまおう」のお話を聞きました。福岡県が開発した「あまおう」という美味しいイチゴがあります。あまおうの種や苗、知見を、法律に基づいて企業に渡しなさいという要求が来たわけです。福岡県議会はなんとかしようとしたけれども、法律で決まったことなのでどうにもなりませんでした。あまおうの知見を、国内か海外か分からないけれども、どこかの企業に渡さざるを得なくなったということが実際に起こっているそうです。
「農業競争力強化支援法8条の4項」は「生産の知見を提供することの推進」であって「育成者権の譲渡を義務付け」はしていない。
あまおうの件も単に苗を売っているだけです。
そのため、虚偽×2です。
種子法・農業競争力強化支援法8条の4項デマ
鈴木:①(種子法廃止)国・県によるコメなどの種子の提供事業をやめさせこれも低レベルな虚偽ですね。
主要農作物種子法(種子法)は、都道府県に稲、大麦、はだか麦、小麦、大豆の種子生産を義務付けていたが、それの義務を無くしただけです。
種子生産をやめさせたのならば、地方自治体による種子条例は違法になるが、やめさせていないので、もちろん違法にはならない。
③(種苗法改定)農家の自家採種を制限し、企業が譲渡で得た種を毎年購入せざるを得ない(自家採種は許諾してもらえない)これも虚偽×2ですね。
先ほど登場した「あまおう」の育成者権は福岡県のままなので、企業から購入する必要はありません。
そして、2025/01/20に育成者権は消滅(25年経過したため)しており、自家採種は完全自由になっています。
なお、この対談が行われたのは2025年4月以降であるので(p.149で深田氏が「農水省は備蓄米を4月時点でも出し渋りしています」と言っているため)、育成者権の消滅後です。
「自家採種は許諾してもらえない」もデタラメです。
例えば、「早生かみなり」という中原採種場株式会社が所有しているネギは、自家増殖の許諾は不要となっています。
一律認めないものもあれば、許諾料の支払いを求めるものもあれば、このケースのように制限なしのものもあります。
企業が持っているのは、一律認めないものが多いというだけです。
ITPGR条約とUPOV条約をちゃんと読みましょう
鈴木:公共性が高いものを企業が独占できるようにしたわけです。「農家には自家採種の権利が認められるべき」というのが国際ルールですけれども、日本は例外的にそこに制限をかけた。それが今回の種苗法の改正になります。これも虚偽ですね。散々指摘されていて知らないはずがない。
深田:国際ルールに反して、農家の権利を奪ったということですか。
鈴木:端的に言うと、そうなります。
解説しましょう。
「農家には自家採種の権利が認められるべき」とは、ITPGR条約(食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約)のことを指していると思います。
条約の日本語訳を引用しますが、他の条約の決まりがあったらそちらが優先ですよと言っています。
この条約のいかなる規定も、他の国際協定に基づく締約国の権利及び義務に変更を加えることを意味するものと解してはならない種苗法のもとになっている条約であるUPOV条約では次のように規定されています。
第 15 条 育成者権の例外品種の権利が認められているもので自家採種を認めることは「任意的例外」であり、それを認めるには「育成者の正当な利益を保護することを条件」なのですが、旧種苗法では育成者の権利が保護されていなかったので改正されたのです。
(1)[義務的例外]育成者権は次の行為に及ばない。
(i) 私的にかつ非営利目的で行われる行為
(ii) 試験目的で行われる行為
(iii) 他品種を育成する目的で行われる行為,及び第 14 条(5)の規定が適用される場合を除くほか,当該新品種に関する第 14 条(1)から(4)までに規定する行為
(2)[任意的例外]第 14 条の規定に拘らず,各締約国は,合理的な範囲内で,かつ,育成者の正当な利益を保護することを条件として,農業者が,保護されている品種又は第 14 条(5)(a)(i)若しくは(ii)に規定する品種を自己の経営地において栽培して得た収穫物を,自己の経営地において増殖の目的で使用することができるようにするために,如何なる品種についても育成者権を制限することができる。
まとめると、UPOV条約はITPGR条約に優先し、UPOV条約を適切に適合させるために種苗法が改正されたのであり、「国際ルールに反して、農家の権利を奪った」ことには当たらない。
官邸の人事権
深田:その根源は2014年に改正された公務員制度ですね。公務員制度の改革によって官邸主導の人事になりました。以前の公務員人事に変わって、すでに課長補佐クラスまで官邸にその人事権を握られています。はい、ダウト!
「国家公務員法等の一部を改正する法律の概要」を見ると分かりますが、あくまで幹部職が担当で課長補佐は含まれないので誤りとなります。
1.幹部職員人事の一元管理等
・・・
ⅰ 内閣総理大臣は、以下に掲げる者について、幹部職(長官、事務次官若しくは局長若しくは部長の官職、又はこれらに準ずるもの)に属する官職に係る標準職務遂行能力を有することを確認するための審査(「適格性審査」)を政令で定めるところにより公正に行う。
TPP定番のデマ
鈴木:その合意内容がすごかった。「アメリカの投資家が日本にやってもらいたいことがあったら、規制改革推進会議を通じてやります」と宣言しているのです。TPPの話ですが、相変わらずで、弁護士でお仲間の山田正彦氏と同じく日本語を読めない人は困りますね。
実際何と書いてあるかというと「日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」です。
必要な措置があればやるし、なければやらないと言っていて、規制改革会議の言うとおりにやるっていうことではない。
これも過去に指摘されていないはずはないので虚偽でしょう。
デマネットワーク万歳!
鈴木:先ほど「あまおう」の話をしましたが、イチゴは主要穀物ではないけども、日本の国や各県の大事な品種の知見が相当な数あります。それらが農業競争力強化支援法8条の4項に基づいて、もう企業に譲渡されています。譲渡された種子はすでに1000種を超えているとのことです。先ほど「あまおう」のデマの話はしましたが、赤字の部分は山田氏の流しているデマと同じものです。
国の機関である農研機構が保有している品種の利用許諾を与えた件数であり、譲渡したものではありません。
これは山田氏のデマを未確認で垂れ流しているだけかもしれないので、誤りと判断しましょうか。
少しは調べてから発言しましょう
深田:M社はカネミ油症事件などで悪名高いPCB(ポリ塩化ビフェニル)やベトナムで使われた枯葉剤を開発した会社です。カネミ油症事件の原因物質のメインはPCB自体ではなく副生成物であるダイオキシンがメインでした。そのためモンサントが開発したわけではない。
※「カネミ油症の手引き― 症状と治療について ―」参照
PCB自体も開発したのはモンサントではなく、Swann Chemicalであり、モンサントは買収することで獲得しています。
そして、枯葉剤について、モンサントは原料製造していた一企業に過ぎず、開発した会社とは言えない。
※『第2回 枯葉剤「エージェント・オレンジ」の実態と構成成分【ラウンドアップ「枯葉剤」説の虚構 “反農薬・反GMO・反資本主義” 活動家が作った構造的デマ】 | AGRI FACT 農と食の科学的情報サイト』参照
以上から、誤り×2となります。
意図しない交雑は対象外なのよね
鈴木:風で飛んできた種が育っただけで、勝手に使ったと言いがかりをつけて損害賠償を求める。本来だったら被害者であるはずの農家が賠償をさせられるみたいなことは起こるでしょう。今後も意図せぬ交雑で損害賠償請求されるというのはみごとなミスリードですね。
深田:M社のケースでは、少なくとも100件の訴訟が起き、多くの農家が破産したと聞きました。やっていることが悪魔的すぎて「Mサタン」と呼ばれたりもしていました。
「Organic Seed Growers and Trade Association v. Monsanto Company, 2012-1298 (Decided: June 10, 2013)」
これよると、モンサントは「意図せずして生じた1%未満の偶発的な汚染に対しては、特許権を行使しない」と拘束力のある宣言をしています。
そのため訴訟を起こそうとしても受理されない可能性が高いということを完全に無視しています。
「多くの農家が破産した」というのは誤りです。
「Center for Food Safety. (2005). Monsanto vs. U.S. Farmers.」では、90件の訴訟(農家147人、小規模企業または農場会社39社)のことが書かれています。
この中の8件で破産があったが、これは「多く」とは言わない。またその8件は、1997年から2004年の期間に破産したというだけで、訴訟が原因かどうかはわからない。
第5章 驚くべき農業基本法の改悪
食料供給困難対策法
鈴木:実は有事などの際には、有事立法で対応できると言っています。どういうことかというと、今苦しんでバタバタ倒れてる農家はもうこれ以上は支えない。その代わり、有事になったら有事立法に基づいて命令します。なので、農家のみなさんは指示に従って、花を育てている農家も、カロリーを生むサツマイモなどに作付転換して、増産し、命令に従って供出しなさい。食料供給困難事態対策法の話なのだが、なぜ有事立法の話になるのだ?
そして、花農家の話をしているが、花農家にサツマイモ(そもそも第1章で言及した通り増産対象の特定食料となっていない)の生産能力はないので生産要請対象ではない。
食料供給困難事態対策法の第十七条を元に定められている食料供給困難事態対策法施行規則の第四条を引用して解説します。
(農林水産物生産可能業者の要件)特定食料を生産し得る気候・土地であり、機械・技術を保持していることが増産依頼対象たる要件です。
第四条
法第十七条第一項の主務省令で定める要件は、当該措置対象特定食料等(法第十七条第一項に規定する措置対象特定食料等をいう。以下この条から第六条までにおいて同じ。)以外の農林水産物の生産の事業を行う者であって、気象条件、地理的条件その他の自然的条件を考慮して、現に利用することができる土地、施設、設備、機械、技術その他の経営資源を活用することにより当該措置対象特定食料等の生産をすることができると認められるものであることとする。
そのため、花農家がそれを満たしていないのは自明です。
上記を知らないはずはないので虚偽×2です。
なお「食料供給困難事態対策法について:農林水産省」を見ると面白いです。
「花農家にコメやイモなど無理やり作らせる」「有事には支援せず命令だけは行う」「国が増産を指示」などは誤情報だと書かれています。
東京大学の農学部の特任教授が率先して誤情報を流布しています。
深田:2025年4月11日に食料供給困難対策法の基本方針が決まりました。コメの輸出8倍の35万トンに拡大し、食料が足りない場合は輸入米を活用するという方針です。コメの輸出の話は食料供給困難対策法の基本方針(食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針)ではなく「食料・農業・農村基本計画」の話です。
これは単なる間違いの可能性があるので誤りが妥当ですね。
附帯決議
鈴木:今回は13項目の附帯決議がついた。いい附帯決議が入っているのでなんとかなるのではないか、という期待をしている人たちが一般の方にもいます。まったく逆です。・・・附帯決議に書いたということは、やらないという証明だと逆に認識するのが正解です。付則は法的拘力があるけれど、附帯決議にはありません。・・・そこに書いたことで終わっているわけで、絶対に実行しません。「食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」の話です。
絶対・0%・100%など極端なものが出てきたら疑いましょう。特にデマ屋が言う場合は。
「必ずしも実行されるわけではない」「実行されないことも多い」などならばわかるが「絶対に実行しません」ときたら嘘だと思うべきです。
実行されている具体例を紹介しましょう。
2013年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議」というのがあります。
これでは「国連障害者権利条約の締結に向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締結に向け、早急に必要な手続を進めること」とあります。
「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)|外務省」にある通り、2014年1月20日に批准し、2月19日に発効しています。
以上のことから「絶対に実行しません」は虚偽と言えるでしょう。
デマ屋がよくやるやつ
鈴木:これまでは農業をやる時、農業法人の出資比率において、農外資本は半分未満と法法律で決まっていました。それが3分の2まで引き上げられて、企業が農業に参入しやすい条件を整えたわけです。これを見ると、新規に農業法人を立ち上げる時の話だと読めますよね。
ChatGPT/Claude/Geminiに聞いたらすべて新規だと誤認すると答えました。
「農業経営発展計画制度:農林水産省」にその制度のことが書かれていますが、ページタイトルを見ればわかりますが、既存農家の農業経営を発展させるものであり、新規に農業法人を立ち上げる時の話ではありません。
例外的な制度であり、既存の農業者として5年以上の実績があることなどの条件があり、無条件に適用されるものではない。
みごとなミスリードですね。
畑地化促進事業
鈴木:他のものを作る転作にもお金が出なくなりました。噓八百なので虚偽です。
「【事業のご案内】畑地化促進事業について:農林水産省」
これは何なのでしょうかね?
やっと第5章まで終わりました。残り5章ありますが、ここでいったん切ります。
ここまでなんちゃってファクトチェックをしましたが、その結果です。
ミスリード:9個
根拠不明:2個
誤り:12個
虚偽:17個
その手の専門家がやったらどのくらいの数になるのやら。根拠不明は腐るほど挙げられるのでしょう。
著者の片方は東京大学特任教授・名誉教授なのですよ。酷いものです。
日本の食料安全保障とはなにか?深田萌絵、鈴木宣弘
かや書房
2025/5/28
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