アリ語で寝言を言いました

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アリ語で寝言を言いました」(村上貴弘)を読みました。

興味深いことが色々書かれていたので箇条書きします。

第1章 アリはすごい!

・働きアリだけになっても7年間コロニーが維持されることがある
・通常、働きアリは年齢で役割が決まっている。若いうちは巣の中で、年を取ると巣の外で働く(危険で残された寿命が短いため)。
・北アメリカやオーストラリアの乾燥地帯にある「ミツツボアリ」は、お腹に蜜を溜め込み、天井にぶら下がり、食料が少ない時期にそれを供給する。
・「ジバクアリ」は、敵に襲われたりした時に胸にある毒腺を膨らませて爆発させる。その時に死んでしまう。
・ひとつの巣に複数の女王を持つ種は珍しくない
・アリは同じ巣の仲間であるかどうかをにおいで識別している。
 グルーミングによって同じにおいをまとうようになる。また、微生物を外から持ち込まないように体を清潔に保つ役割がある。
・北海道の「エゾアカヤマアリ」のスーパーコロニーは10キロ四方にわたる。
 世界最大のスーパーコロニーは、ヨーロッパに侵入した「アルゼンチンアリ」で、ポルトガル~スペイン~イタリアの海岸線6000キロにもわたる。

第2章 農業をするアリ

・ライオンキングでハキリアリが登場するが、アフリカにはいない
・キノコアリはとてもきれい好きで、巣に入るとすぐ、特に触角を念入りにグルーミングする。外から菌などを持ち込むと育てている菌がダメになるなどで有害。グルーミングはほぼ100%する。
・キノコアリの巣にしか生えないキノコに寄生する菌がいて、それをやっつける抗生物質を作るバクテリアはキノコアリの中にしか存在しない
・ハキリアリは細かく分業している。葉を切り落とす、運ぶ、裁断する、菌園の土台に積み上げる、菌糸を抜いて新しい畑に移植する、というのを個体ごとに分業して行われる。
・死ぬと墓場(ゴミ捨て場)に捨てられるが、死んだかどうかはにおいで判断される。①外に運び出すことを促すにおいと、②それを抑えるにおいがあり、②が弱まると外に運び出される。
・キノコ畑は1日メンテナンスを怠るとカビて使えなくなる場合がある
・ハキリアリの女王の話
 ・寿命は10~15年で、長いと20年
 ・結婚飛行で平均5~10匹のオスと交尾する。5000万~3億個の精子を貯蔵する。
  精子を長時間保存できる原理は分かっていない。
 ・生涯で3000万個の卵を産む。巣が安定すると1時間に180個産む。
 ・結婚飛行の前にキノコの菌糸を口に入れて、交尾後新しい巣でそれを植える

第3章 おしゃべりするアリ

・昆虫は頭部・胸部・腹部に分かれているのが基本だが、アリの場合は胸部と腹部の間に腹柄節というのがもう一つある。
・腹柄節を使って音を出している
・足と触角が、音を受け取る点で『耳』に相当する機能を持つ
・アリは音で「この葉っぱはいい」などのコミュニケーションをとっている
・15分に7000回もしゃべっている(音を出している)
・この本のタイトルは、娘に起こされた時に寝ぼけて「キュキュキュキュ、キャキャキャキャ」と言ったのが元になっているようだ
・ハキリアリ農業害虫ということで「ブラジルでは国家予算の10%がハキリアリ対策に費やされているともいわれている」とあった。
 さすがに国家予算の10%はないだろうと調べたが、そのような事実は確認できなかった。

第4章 男はつらいよ…アリの繁殖

・貯めてある精子と卵で受精すると二倍体になってメスが生まれる。未授精だとオスが生まれる。
・オスは減数分裂(あるいは「単倍体」)により、単倍体の精原細胞から単倍体の精子を作る。
・オスは結婚飛行で飛び立つまでは巣の中では働くこともエサも取ることをせず、巣の中では邪魔者扱いされる。
・女王アリがいなくなるとどうなるかというと、女王アリでない働きアリが子供を産むが精子の貯えがないのでオスしか生めない。
 そのオスが結婚旅行で遺伝子を残すことしかできず、元の巣は滅んでしまう。

第5章 働きアリの法則は本当か…アリの労働

・観察すると、①20%はよく働くアリ、②60%は普通、③20%はあまり働かない、に分類される。
 ①③をそれぞれだけとした時にも同じ比率になる。
・女王アリは最初、巣で1匹だけで、働きアリが育つまで飲まず食わずで、幼虫のエサには自身の身体でもう使わなくなった飛ぶための「飛翔筋」を溶かして与える。
・サムライアリの働きアリは、別のアリの巣のなかから、幼虫や蛹をかっさらってきて自身の働きアリとする。かっさらう以外に働きアリはなにもしない。
 女王アリは単独で別のアリの巣に入って女王アリを殺して巣を乗っ取る。においが誤魔化せれば乗っ取りができる。

第6章 ヒアリを正しく恐れる

・インドにツムギアリというのがいて、それはとても攻撃性が高く自分のテリトリーに入ってきたものは何でも攻撃する。
 そのため、昔は生物農薬として使われていた。
・ヒアリは噛まれるのだけが問題ではない。
 アメリカではツバメのヒナや昆虫を食べる。植物の種、果物・花・芽など、なんでも食べるので生態系全体のバランスを崩す。
・ヒアリは原産の南アメリカでは強いアリに追いやられる存在だった。
 元々コロニーに女王が1匹だったが、移入先では多女王性に変わった。
 普通はにおいの違いで別のコロニーのアリであると認識して排除しあう関係なのだが、その排除行動をしなくなり協力し合うように変わった。
 これにより一気に広がった。
 毒も多様・強力なものに変わった。
 これを読んでいて「世界は進化に満ちている」という本に書いてあったものと似ているなぁと思った。
 異なる環境に移入することで進化したという内容。

最後に著者は基礎研究の重要性を語っています。ごもっともです。

アリ語で寝言を言いました
村上貴弘
扶桑社
2020/7/2

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