原発避難計画の虚構の虚構

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原発避難計画の虚構 公文書が暴く冷酷な国家の真意」(日野行介)を読みました。

証明するものなど存在する?

普通に考えれば、避難計画に実効性があると証明できなければ再稼働(運転)は許されないはずだ。しかしその実効性を証明する法的なプロセスは、実は存在しないのである。政府や自治体の担当者たちは「原発が運転していなくても、核燃料が構内に残されている限り避難計画は必要」という詭弁を繰り出し、再稼働と切り離して自治体に避難計画を策定させている。
これは始まって2ページ目でプロローグの記述なのだが、この時点で読む気が失せました。
赤字の部分ですが、他の法律でも「証明する」ものなど存在しない。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称薬事法)においても「実効性を法的に証明するプロセス」ではなく「実効性を法的に確認できるプロセス」でしかない。
そもそも、プロセスは結果を証明しない。
詭弁だと言っているが、これこそ詭弁の最たるものだ。
完全に不可能なことを実現できないので再稼働は無効だという人は妥協の余地がない以上、そんな人の言うことは聞くだけ無駄だ。

ということで、真面目に読むのはやめ、ぱらぱらとめくってサブタイトルで目に留まったものをツッコんで終わりにします。

Yes/Noで答えられないものが存在することを理解しない無能記者

策定を義務付ける法的根拠はある?
そもそも原発避難計画の策定は法律で義務づけられているのだろうか?長く抱いてきた疑問だった。原子力災害対策指針や関係法令を探しても明確な規定は見当たらない。新聞各紙の記事を調べると、「30キロ圏内の自治体に策定が義務付けられている」と、「30キロ圏内の自治体に策定が求められている」(あるいは「策定が必要とされている」)に記述が二分している。まずは政府に〝公式見解〟を求めることにした。
山本太郎参院議員は2023年4月、「自治体に原発避難計画の策定を義務付ける法的根拠が不明だ」として、法的根拠を示すよう求める質問主意書を提出した。
・・・
法的根拠の有無を尋ねる単純な質問なので、答えは「YES」か「NO」のどちらかしかないはずだ。ところが政府から返ってきた答弁はそのどちらでもなく、分かりにくいものだった。
東京新聞の看板記者?の望月衣塑子氏は本『「安倍晋三」大研究』で、Yes/Noで答えられないのはおかしいと言っていましたが、それとレベルとしては一緒ですね。
Yesでもあり、Noでもあるケースや、そもそも答えられないケースもあり得る。
今回のケースは、YesでもありNoでもあったりするケースです。

当たり前のように山本太郎議員の質問主意書のタイトル、URLが示されていないのでこちらで調べました。
質問部分で本件に関係する部分を「広域避難計画策定に関する質問主意書:参議院」から引用します。
 原子力災害対策特別措置法は、原子力規制委員会に対して原子力災害対策指針の策定義務を定めているが、同指針に避難計画の策定を義務付ける規定はない。

 一方、災害対策基本法では、同法の対象となる「災害」の中に原子力は明確に規定されていない。また、同法が規定する都道府県と市町村の責務の中に事前の計画作成の規定はあるものの、他の規定から見て自然災害のみを想定しているのは明白で、原子力災害の避難計画がここに含まれるものとは解釈できない。

 つまり、自治体に原子力災害避難計画の策定を義務付ける法的根拠がない、あるいは不明である。

 このことに関連して、以下のとおり質問する。

一 原子力発電所(以下「原発」という。)から概ね三十キロメートル圏内の自治体に原子力災害に備えた広域避難計画の策定を義務付ける法的根拠を示されたい。

これに対する回答で該当する部分を引用します。
 御指摘の「原子力災害の避難計画」については、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号。以下「原災法」という。)第二十八条第一項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号。以下「災対法」という。)第四十条第一項及び第四十二条第一項の規定により都道府県防災会議等が作成することとされている地域防災計画(以下「地域防災計画」という。)において、災対法第四十条第二項及び第四十二条第二項の規定により避難に関する事項を定めることとされている。その上で、地域防災計画については、原災法第二十八条第一項の規定により読み替えて適用される災対法第四十条第一項及び第四十二条第一項の規定により、防災基本計画(令和四年六月十七日中央防災会議決定)及び原子力災害対策指針(平成三十年原子力規制委員会告示第八号)に基づき作成することとされているところ、同計画においては、御指摘の「原子力発電所」から「概ね三十キロメートル圏内の自治体」を含め、同指針で示されている原子力災害対策重点区域を管轄に含む地方公共団体については、御指摘の「広域避難計画」等を策定するものとされている。
法律が出てきて、何条がどうの書いてあってわかりにくいのは確かですね。

『「義務」と明記されている法律はあるか?』という質問であれば、Noとなる(「ただし」で上記の文章が付くでしょう)。
だが、今回のケースは違う。

義務と言われるものの中で法的拘束力の強い順に並べます。
1.義務と明記(罰則あり)
2.義務と明記(罰則なしだが認可取消、行政指導などあり)
3.義務と明記(罰則なし)
4.今回のケース
5.努力義務  ・・・基本的に法的拘束力なし。「健康増進法」がその典型

義務はあるがその強さは限定的であり、Yes/Noで答えられる内容ではない。それを求める無能さを理解いただけましたか?

ちなみに、著者のプロフィールを見ると九州大学法学部卒であり、真面目にお勉強していたのならば、Yes/Noで答えられないのは自明のはず。
お勉強をまともにしなかったか、読者を騙そうとしているかのどちらかで、どちらにしても読む価値はありません。
なお、望月衣塑子氏の学歴も見てみたら法学部出身でした・・・

公文書一覧

「公文書が暴く冷酷な国家の真意」とあるのに、巻末・章末に公文書の一覧がまとまっておらず、本文中、URLどころか、それが公開されているかどうかもまともに書いていない。
騙そうとしているとしか思えないですね。

全部読んでリストアップするのは面倒なのでNotebookLMにまとめてもらいました(ただし、あっているかどうかは知らない)。
文書名ページURL一般公開されているかどうか概要
原子力災害対策指針(策定・改定)第3章 / 第6章 / エピローグ97, 103, 104, 223, 224, 231, 232, 297, 298, 301, 302記載なし策定・改定された。2012年10月末策定でPAZ/UPZを導入。2015年4月22日改定でSPEEDIを使わず「1ミリシーベルト」基準を適用。2022年7月20日改定でバス運転手の被ばく限度を「1ミリシーベルト」に設定。
開示された茨城原発敷地全資料 / 避難シミュレーション第1章 / 第5章18, 23, 24, 147, 148記載なし情報公開請求により開示された(約800枚)。茨城県東海第二原発に関する広域避難計画の資料一式。2020年3月25日公表の広域避難シミュレーション資料。
地域原子力防災協議会作業部会 (議事概要/配付資料/音声記録)第1章24, 27, 29, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 39, 40内閣府HPに掲載(概要・資料)概要・資料は公開。音声記録は不開示(非公開)。避難手段の確保、福祉避難所の確保策に関する資料(2015年3月20日ワーキングチームまとめなど)。
PAZ内の施設敷地緊急事態における対応第2章59, 60, 61, 62記載なし談話後廃棄(非公開)。PAZ内での施設敷地緊急事態時の対応に関する資料。
道府県原子力防災担当者連絡会議(復命書と音声記録)第2章 / 第8章53, 54, 293, 294, 295, 296記載なし復命書、音声記録は保持されていない(非公開)。2023年9月18日開催会議など、道府県会議の事務方の議事メモや音声記録。
意見書・質問主意書(規制庁の対応)第1章43, 44内閣府HPに掲載公開されている。規制庁の「緊急時対応のあり方」策定プロセスに関して、自治体から提出された質問趣意書と答弁書。
避難退域時検査等に係る資機材の整備及び運用等の手引き第1章 / 第5章47, 48, 157, 158記載なし情報公開請求により開示を求められた。2017年5月10日付。避難退域時検査の資機材整備および運用に関する手引き。
汚染検査 (車両用ゲートモニタリングに関する内部文書)第2章79, 83, 84記載なし記載なし内閣府が規制庁に配布した、車両用ゲートモニタリングによる汚染検査に関する2ページの技術的な文書。
合同ワーキングチーム 試算結果 (伊方原発避難時間)第3章87, 88, 93, 94記載なし規制庁が作成し、第2回合同WTで示された、避難時間シミュレーション結果(「影の避難」)。
第2回合同ワーキングチーム議事録/資料第3章74, 99, 100, 105, 106, 117, 118記載なしかつて公開されていたが、後に削除された。2014年11月30日の会議資料及び議事録。JAEAの試算に関する内閣府の解説資料も含まれる。
安定ヨウ素剤緊急配布場所方針(案)第4章133, 134, 137, 138記載なし一般公開されていない。茨城県が作成した安定ヨウ素剤の緊急配布場所を定めた方針案(2022年11月時点)。
茨城県復命書 / 静岡復命書第4章 / 第6章135, 136, 139, 140, 141, 142, 203, 204記載なし記載なし茨城県および静岡県が作成した、バス運転手問題、ヨウ素剤確保、甲状腺モニタリングなどに関する復命書。
避難退域時検査等に係る資機材、運用と安全審査に関する報告書(案)第5章157, 158, 159, 160記載なし公開された。車両用ゲートモニタの運用と安全審査に関する報告書(2018年9月作成)。
内閣府(令和3年度原子力防災事業) 避難退域時検査及び簡易除染に関する資機材について第5章161, 162内閣府HPに掲載公開されている。避難退域時検査資機材の整備に関する内閣府の資料(2022年3月作成)。
車両用ゲートモニタの性能検証試験(2020年度 JAEA報告)第5章163, 164記載なし記載なしJAEAが2020年度に実施した、車両用ゲートモニタの性能検証試験に関する報告。
JAEA/NEAT 試算報告書第5章173, 1742023年8月に公開公開されている。JAEA/NEATによる避難退域時検査の効率に関する試算結果。
避難退域時検査及び簡易除染マニュアル第5章179, 183, 184記載なし制定された(令和5年9月28日)。避難退域時検査や簡易除染の最新マニュアル。
福島第一原発事故による原子力災害住民避難対応及び運転手確保等に関する調査結果(案)第6章213, 214記載なし現在は保持されていない。JAEAによるバス運転手確保に関する調査結果。
令和2年度第1回バス研修会 議事概要第6章217, 218記載なし記載なし2020年12月10日に実施されたバス研修会に関する議事概要。
バス運転手の被ばく限度に関する内閣府の見解第6章225, 226記載なし記載なし2022年7月7日付で内閣府が作成した、バス運転手の被ばく線量限度に関する見解を示した行政文書。
「甲状腺被ばく線量モニタリングに関する調査報告書(案)」第7章249, 250, 259, 260記載なし情報公開請求により入手。2017年1月作成。甲状腺被ばく線量モニタリング調査に関する報告書案。
推進評価委員会(第6回、2017年2月27日)第7章257, 2582ページの議事概要と配布資料は公開。甲状腺被ばく線量モニタリングの推進と評価に関する会議資料。
第6回合同会議における新潟県の復命書(原文)第7章251, 252記載なし記載なし新潟県が作成した甲状腺モニタリングの実施に関する復命書。
原子力災害時屋内退避の運用に関する検討チーム資料プロローグ / 第3章11, 12, 101, 102記載なし記載なし2012年2月27日の規制委員会の会合で設置された検討チームの資料。
原子力規制委員会設置会議資料第3章 / 第8章17, 23, 101, 285, 286記載なし記載なし2012年11月22日に開催された原子力安全対策指針策定に向けた最初の会合で用いられた資料。


原発避難計画の虚構 公文書が暴く冷酷な国家の真意
日野行介
朝日新聞出版
2025/10/7

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