憶測で農薬のことを語る山室真澄東大教授

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山室真澄東大教授がTwitterで次のように農薬に関して適当なことをツイートしていたのでツッコミます。

山室真澄東大教授のツイート

次の観点で見ていきましょう。
新潟市はネオニコが多い時には活性炭を使っている?
秋田県のがん死亡率が高いのは農薬が原因?
そもそも100ng/Lに何の意味がある?

新潟市はネオニコが多い時には活性炭を使っている?

新潟市の水道水は原水の農薬濃度をモニタリングしていて、基準(恐らく100ng/L)を超えそうなときだけ活性炭処理をしています。このため、県単位のネオニコ使用量は秋田県と同等でしたが、水道水から100ng/Lを超えるネオニコチノイドは検出されませんでした。
この箇所について検証していきましょう。

新潟市水道局水質管理計画~令和 7 年度水質検査計画~」で農薬除去のために活性炭を使っているか見てみましょう。
活性炭について書かれていたのは以下の二カ所です。
⑦ 異臭味検査
浄水場では、浄水処理後の水道水に異臭味がないか毎日確認します。水道水に異臭味があるときは、活性炭処理など適切な対策を施し、おいしい水の供給に努めます。

⑩ トリハロメタン検査
トリハロメタンは、水中の有機物と消毒用塩素が結びついて生成する化学物質で、時間が経つにつれて増加します。本市の管路延長は約 4,200km と長く、配水過程での増加が懸念されるため、じゃ口の評価地点(14 ヵ所)において水質基準値の 50%を独自目標値に定めています。トリハロメタンが増加しやすい高水温期に、独自目標値を超えないようモニタリングし、より安全な水道水の供給に努めています※1。
※1 必要に応じて活性炭処理などを行い、トリハロメタンを低減化する
元農林水産大臣の人は残留農薬の味がわかるそうですが、仮に無味無臭でないとしても超高濃度でなければ不可能です。
トリハロメタンは農薬ではありません。
そのため、農薬除去のために活性炭を利用する計画は少なくともこの文書上には示されていません。

農薬の検査について見ていきましょう。以下によると、農薬検査は毎日ではなく年15回だけです。これで、「基準(恐らく100ng/L)を超えそうなとき」を知ることができるのでしょうか?はなはだ疑問です。
水質検査の分類
※「新潟市水道局水質管理計画~令和 7 年度水質検査計画~」より引用

計画上の話は分かったので、実績を見ていきましょう。
水質年報 新潟市」に「令和5年度水質年報」があるので見てみましょう。
全部の浄水場は見ていませんが一部を見たところ、計画の15回より多い17回測定していました。
ネオニコチノイド系農薬の内で検査しているのはジノテフランのみでした。
そして、すべての水源・浄水場、測定日で、目標値の0.6 mg/Lどころか定量限界の0.006 mg/L未満でした。

令和6年度水道事業ガイドラインに基づく業務指標(JWWA Q 100 : 2016)」によると粉末活性炭処理比率は、R4年度26.1%、R5年度35.6%、R6年度32.2%と1/4~1/3で活性炭を使っていることはわかります。

しかし、ネオニコは全て定量限界未満であることから、ネオニコの基準が超えそうな時に使っているのではなく、異臭味・トリハロメタン対策で使っていることがわかります。

このことから、新潟市では基準値を超えそうな時に活性炭を使って除去しているから、ネオニコチノイドの濃度が水道水で100ng/L未満だと主張はデタラメだとわかります。

秋田県のがん死亡率が高いのは農薬が原因?

ざっと調べた限りでは、東北地方の県庁所在地の水道水で、活性炭処理を全く行っていないのは秋田市だけでした。がん死亡率がワースト1位なのは農薬の影響かもしれませんね。
赤字の部分を見ていきましょう。

75 歳未満年齢調整死亡率(人口 10 万人当たり) 秋田県
※「第4期秋田県がん対策推進計画」より引用

秋田県は一貫して全国平均より高く、平成22年(2010年)から差が大きくなっています。
ネオニコが使われ始めたのは1993年で、1995年より前の細かい数字はないので追跡はできません。
タバコもそうですが、がんは直ぐに発生するものではないので、仮にネオニコに発がん性があったとしても1995年には影響していないと言えるでしょう。
※全体のがん死亡率については「表1-1 都道府県別にみた男の年齢調整死亡率(人口10万対)の年次推移|厚生労働省」で過去に遡れて、秋田県男性はずっと高い

グラフの最初の平成7年(1995年)、全国平均との差が顕著になった平成22年(2010年)、その前の差が小さかった平成19年(2007年)、直近の令和6年(2024年)の詳細を見てみましょう。

秋田県のがん75歳未満年齢調整死亡率の全国順位と部位毎の割合
※「集計表ダウンロード:[国立がん研究センター がん統計]」の「部位別75歳未満年齢調整死亡率」データより作図

目立つ変化がある場所に色をつけました。黄緑は比率が高いものが低下、ピンクは顕著に悪化した(相対的に)ものです。
・部位毎の比率としては胃・肺・大腸が全期間でトップ3
・胃は継続的に低下しているが、全国の低下率よりは低く、順位が高いまま(最新で1位)
・肺の割合はそれほど変わっていないが、全国的には減っているので、順位が悪化している
・大腸はは全国に比べ高いが、比率が一時期減ったが直近では上がっている

肺がんが減らないことが全国順位を押し上げる要因になっているが、肺がんは水道水経由の農薬とは関係ないので今回の議論では無視できる(そもそも、農薬の農家以外の吸気・経皮の曝露量は少ない)。
それ以外に大きく寄与している大腸・胃が農薬により発がんリスクが高まるか見てみましょう。

農薬が原因で大腸・胃がんになるという話は聞いたことがなく、馬鹿馬鹿しくて調べるのは面倒だったので、ChatGPTに次の表のようにまとめてもらった。
IARC分類でGroup 1のみ「ヒトに対して発がん性がある」という分類であり、それ以外は、実際に発がん性があるかは不明という分け方です。
Group 1には、タバコ、アルコール、紫外線、ガンマ線などがあります。Group 2などは動物実験では認められるが、ヒトではかなり疑わしいというもの。

以下を見てもらえばわかりますが、造血系(特に非ホジキンリンパ腫・白血病)などがメインであり大腸・胃のものはありません。
なお、PCB・DDTは農薬として使用できません。

当たり前の結論ですが、農薬により大腸・胃のがんが増えたというのは、根拠のない丸っきりのデタラメです。
農薬活性成分(日本語名)IARC分類ヒトで示唆された関連がん部位(疫学)動物実験で観察された主な腫瘍部位主なIARCソース
ポリ塩化ビフェニル(PCB)Group 1皮膚メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、乳がん等(疫学示唆あり)肝細胞腫瘍、肝がん等(ラット・マウス)IARC Monographs Vol.107
リンデン(γ-HCH)Group 1非ホジキンリンパ腫肝腫瘍(マウス)IARC Monographs Vol.113
DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)Group 2A非ホジキンリンパ腫、精巣がん、肝がん肝細胞腫瘍(マウス)IARC Monographs Vol.113
グリホサートGroup 2A非ホジキンリンパ腫腎尿細管腫瘍、血管肉腫(マウス)IARC Monographs Vol.112
マラチオンGroup 2A非ホジキンリンパ腫、前立腺がん肝腫瘍(ラット、マウス)IARC Monographs Vol.112
ダイアジノンGroup 2A非ホジキンリンパ腫、肺がん肺腫瘍、肝腫瘍(マウス)IARC Monographs Vol.112
アトラジンGroup 2A非ホジキンリンパ腫(t(14;18)陽性)乳腺腫瘍、リンパ系腫瘍(ラット)IARC Monographs Vol.140
アラクロールGroup 2A喉頭がん鼻腔腫瘍、甲状腺腫瘍(ラット)IARC Monographs Vol.140
ビンクロゾリンGroup 2Bヒト証拠不十分精巣間質細胞腫瘍、前立腺関連腫瘍(ラット)IARC Monographs Vol.140
テトラクロルビンホスGroup 2Bヒト証拠不十分肝細胞腺腫/がん、甲状腺腫瘍IARC Monographs Vol.112
パラチオンGroup 2Bヒト証拠不十分肝腫瘍、肺腫瘍(マウス)IARC Monographs Vol.112
2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)Group 2B一貫した関連なしリンパ系腫瘍、肝腫瘍(マウス)IARC Monographs Vol.113

そもそも100ng/Lに何の意味がある?

山室教授は「100ng/L」という数字を持ち出しているが、これに何の意味があるのだろうか?

新潟市のところで唯一検査しているネオニコであるジノテフランの目標値の0.6 mg/L(1mg=1,000μg=1,000,000ng)であり、この値は「100ng/L」の6千倍高いものであり、「100ng/L」を超過しているかどうか調べる意味はないように思える。
何を意味する数字か調べてみる。

その答えは以下を見るとわかります。
Is the EU Drinking Water Directive Standard for Pesticides in Drinking Water Consistent with the Precautionary Principle?(EUの飲料水指令における飲料水中の農薬基準は予防原則と整合しているか?)
Pesticides - Drinking Water Inspectorate(農薬 - 飲料水検査局)

二つ目のはイギリスのものですが、短くまとまっているので、それを機械翻訳して引用します。
飲料水中のほとんどの個々の農薬について、最大許容濃度は0.1μg/l(マイクログラム/リットル)である。これは100億分の1の濃度に対応する。これは健康に基づく基準ではなく、当時の分析手法の限界を反映し、農薬を一般的に制限する環境政策として、1980年に欧州委員会が設定した限界値に基づいている。本指令ではさらに、総農薬(検体中に検出された全物質の合計)について0.5μg/lの基準値を設定している。英国では現在使用が禁止されている4種類の特定有機塩素系農薬については、より厳格な個別の健康基準が設けられている。これらの基準は国内法に組み込まれており、英国がEUを離脱した後も引き続き適用される。
当時の定量限界から定められたものであり、健康基準ではないとのこと。

水道水が100ng/Lを超えた

ヒト発がん性について言及

というのが山室教授の論理です。

しかし、上記から基準値の意味を理解せずに単に数値しか見ておらず、害のある理解をしていることがわかりました。


なお、遺伝毒性発がん物質は農薬として求められず、遺伝性の無い発がん物質の場合は、安全の基準値(ADI)が定められます。
発がん性がある化学物質を含む食品の安全性について

先に出てきたジノテフランのADIは0.22 mg/kg体重/日ですが、EUでは使えないので他の例を見てみましょう。
他のネオニコで使用が認められているアセタミプリドは、EUで0.005 mg/kg 体重/日、日本で0.071 mg/kg 体重/日。
ADIの2割が食品以外から摂取なので、水道水からその2割、そして1日2Lの水を飲み体重が55kgだとして計算してみましょう。

EUでは水道水に最大 27.5 µg/L のネオニコチノイド系農薬であるアセタミプリドが含まれても安全だと言っていることになります。
27.5 µg/L は 27,500 ng/L なので、山室教授の言っている 100ng/L の275倍が水道水から検出されてもEUは安全だと言っているのです。

ADIの話を出したのでジノテフランの件も計算してみましょう。
ネオニコチノイド系農薬の検査結果について|秋田市公式サイト
これによると、浄水場で定量限界の 3,000 ng/L 未満だったのこと。
同様に計算すると、食品以外で摂取する分の 0.25% にしかならないので、こちらも安全であるといえます。

山室教授のように権威のある人がデタラメを言っているとことがわかりました。

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