新「ラウンドアップ」は45倍危険というデマ

人気ブログランキング

新「ラウンドアップ」は45倍危険 - 食品と暮らしの安全』(猪瀬聖)というデタラメな記事を見つけたのでツッコミます。

これは、アメリカでラウンドアップに関する訴訟があり、旧ラウンドアップの主成分グリホサートを含まない新ラウンドアップを出しているが、その安全性に関する記事です。
この記事は、アメリカの「Friends of the Earth(FoE)」が出した「New Roundup, New Risks」をベースにしたものです。
日本のダメな記事の典型ですが、この資料の名称も無ければもリンクもありません。

危険だという箇所を引用します。
より深刻な問題は、グリホサートの代わりに新たに採用された有効成分の中に、グリホサートよりはるかに危険な化学物質が含まれていたことです。
 それらは、二臭化ジクワット、フルアジホップ-P-ブチル、トリクロピル、イマザピックという4種類の化学物質。
 バイエルは、これら4種類の化学物質を組み合わせて、グリホサートの代替品に仕立てていました。
・・・
 4種類のうち最も危険な物質は、すべての新ラウンドアップ製品に含まれている二臭化ジクワット。
 グリホサートの200 倍の慢性毒性があり、非常に危険な農薬に分類されている、と報告書は説明しています。
・・・
4種類の新たな有効成分のリスクを総合的に判断すると、新「ラウンドアップ」は、長期にわたる慢性的な曝露による人体への毒性が、平均して旧ラウンドアップの45倍も高いと、報告書は結論付けています。
主にここにあることにツッコんでいきます。

それはリスクの話なのか?

FoEのタイトルは「New Roundup, New Risks」であり、元記事では「新たな有効成分のリスク」とリスクという言葉を使っている。

大前提として、ここで言っているのはリスクの話ではない。

ハザード:物質が本来的にもつ有害性の強さ
リスク:ハザード × 曝露量

わかりやすいように例を出しましょう。
青酸カリは危険だ!と言っても、普通に生活しているだけだと青酸カリとご対面することはないので、リスクはもの凄く低い。
青酸カリは危険だ!というのがハザードです。

普段の生活でどれくらい青酸カリを体に取り込んでいるかという曝露量が大事なのです。

この記事は、ハザードの話をリスクだと偽っているので、その時点でお話にならないのです。
これで終わりにもできるのですが、もう少し見ていきましょう。

45倍とは何のこと?

FoEは、グリホサートが主成分の旧ラウンドアップと比べて、新ラウンドアップは急性毒性が3.9倍、慢性毒性が45.6倍であると言っています。
急性毒性は農薬の誤飲、慢性毒性は食品・水・空気からの曝露をイメージしたものです。

45.6 倍の方を持ち出しているのですが、この数字をどのように出しているかを見ると笑えますよ。

旧グリホサート系6種類と新非グリホサート系の3種類の製剤の平均を出していますが、それぞれ一つをピックアップしてどの様に算出しているかを示します。

■製剤中の有効成分の割合とグリホサートとの慢性毒性比
旧#4 グリホサート50%(1倍)
新#1 ジクワット1.5%(200倍)、フルアジホップ2.0%(196倍)、イマザピック1.6%(2.2倍)、トリクロピルトリエチルアンモニウム2.5%(20倍)

■全体の慢性毒性の比率
旧#4 50/50*1=1
新#1 1.5/(1.5+2.0+1.6+2.5の合算=7.6)*200 + 2.0/7.6*196 + 1.6/7.6*2.2 + 2.5/7.6*20 = 98.1

この二つだけで比較すると、新は慢性毒性が98.1倍強いとしています。

#4、#1と書いているのは、以下のFoE資料のもので、各有効成分の割合はこの表の値を使っている。
Appendix Table 2. Active Ingredients Grouped by Primary Roundup Formulations for Sale at Lowe’s and Home Depot in 2024


この計算の仕方を見てびっくりしました。
この計算だと、新#1の各濃度を1/100にしても毒性が変わりません。

具体的な例でおかしさを説明しましょう。
有効成分がグリホサート50%だけのものと、グリホサート5%だけのものを、それぞれ1L飲んだとしても、このおかしな計算では毒性が変わりません。

やるのならば、有効成分の割合×慢性毒性比の合算をすべきなのです。
それで再計算してみましょう。

旧#4 50*1=50
新#1 1.5*200 + 2.0*196 + 1.6*2.2 + 2.5*20 = 745.5

745.5/50=14.9

FoEの計算では新は98.1倍慢性となっていましたが、14.9倍になりました。

この計算でも、まだおかしいのです。

何がおかしいというと、農薬を使う時に希釈するのです。希釈率が一緒ならば14.9倍でよいのですが、製剤ごとに違います。

旧#4は27倍、新#1は9.5倍にします。
(745.5/9.5)/(50/27)=42.4

希釈率を加味すると42.4倍になります。
同様に旧6種類、新3種類を求めて平均を出して割ると9.0倍になります。

45.6 倍9.0倍でまるっきり違う数値が出てきました。
ですが、これは先ほども触れたとおりで、この値は「リスク」の倍率ではありません。

農薬を散布した時のハザードの比較であり、残留したものがどれくらいあるか分かりません。
各有効成分で統一した残留試験結果がないので、リスクは出せません。

例えば、光での分解速度は製剤ごとに異なり(グリホサートの半減期は30日程度だが、イマザピックは6時間程度)、製剤の濃度比率と残留する比率は一緒だとは言えず、計算で求められない。

また、グリホサート・ジクワットは非選択性のものなので、家庭菜園の野菜などには直接散布できない(FoEは家庭用の農薬に限定している)。
そのため、散布量から残留量は推量できない(散布量より十分少ないことは推察できる)。

結論として、曝露量が不明なのでリスクは求められないということ。

本当に約束を守っていない?

 同時に、2023年から家庭向けの「ラウンドアップ」にはグリホサートを使用しないと公言し、グリホサートに代わる新たな有効成分の開発を進めてきました。
 ところが、「地球の友」の調査で、いろいろな事実が明らかになりました。
 まず、バイエルは約束を守っていませんでした
 大手ホームセンター・チェーンのホームデポとロウズの店舗で売られている様々なタイプの「ラウンドアップ」を調べたところ、今年10月時点で、少なくとも7種類のラウンドアップ製品にグリホサートが使われていました。
本当にバイエルは約束を守っていないのでしょうか?

以下を見てもらえばわかりますが、バイエルは家庭向けの製品として製造・販売を止めていますが、ホームセンターに在庫が残っているだけです。
RoundUp Active Ingredient Safety | Bayer Global

そのため、約束を守っていないというのは間違いです。

今回初めて猪瀬氏の記事にツッコみましたが、資料をちゃんと読んでおらず、事実確認もしていないことがよくわかりました。

この記事へのコメント