日本のタネを危うくしたいデマ屋

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日本のタネを危うくする育苗新法案と種苗法再改正法案 - 食からの情報民主化プロジェクト by INYAKU.Net』というデマ記事があったのでツッコミます。

まとめ
育苗新法に関すること
種苗法改正に関すること

まとめ

印鑰智哉のブログの内容で、デマ・ミスリード・誤りのまとめです。
印鑰智哉のブログの内容事実(法案の規定・実態)
自治体の農業試験場などのインフラ提供が義務化される・提供規定があるのは国の農研機構であり、自治体ではない
・農研機構の業務も「行うことができる」とする任意規定であり、義務ではない
育苗新法案が財務省の共同管轄になっている・育苗新法の主務大臣は農林水産大臣のみである
AI・ゲノム解析インフラが無償提供される・法案第9条には「利用に供することができる」とあるが、無償とする規定はない
利益は民間企業が独占できる・育成者権者は、普及を妨げないようライセンス料を「著しく高い額にしない」努力義務を負う
市町村は企業の計画に合わせて農業計画を変更する義務を負う・企業の活動計画は、自治体の「都道府県基本計画」に適合しなければ認定されない(自治体が上位)
・そもそも「都道府県基本計画」の作成自体が任意(「できる」規定)である
優良農地の転用を拒めなくなる・認定の条件として「農地法第4条第6項の不許可基準(優良農地の保護等)に該当しないこと」が明記されている
・農地法の審査基準は緩和されておらず、基準に合わない転用は認められない
・ワンストップサービスとなっただけ
地方自治体の種苗開発を終わりにしてしまう・本法案は「広域普及品種」を重点支援するものであり、自治体の「地域限定品種」の開発を禁止・終了させる規定はない
農民のタネの権利は一切無視されている・品種登録の権利者には個人(農家)による登録も多数存在する
・育成者権の保護は、開発者としての農民の正当な権利を守る側面もある
海外の農民を生産団体を通じて強く管理しようとしている・改正案にあるのは「輸出の差し止め」や「輸出制限の表示義務」などの知的財産権の保護強化である
・生産団体を通じた海外農民の直接管理を規定する条文は存在しない

育苗新法に関すること

育苗新法(重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律案)について触れます。

法律の内容

ツッコむ前に法律の内容を解説します。「重要品種」の定義
法案において、振興の対象となる「重要品種」は、以下の要件をすべて満たすものと定義される(第2条)。

・特性: 省力化、多収化、または高温等の気候変動への耐性を持つ。
・普及性: 広域に普及することが可能である。
・登録: 種苗法に基づく品種登録を受けている。

計画の認定と優遇措置(権利の付与)
民間企業や大学、研究機関などが「重要品種育成事業計画」または「重要品種種苗生産事業活動計画」を作成し、農林水産大臣(または都道府県知事)の認定を受けることで、以下の法的特例や支援を受けることができる。

項目内容根拠条文
航空法の特例認定計画に基づくドローン飛行(生育状況の判別等)について、航空法上の許可・承認があったとみなされる。第8条
研究設備の利用農研機構の施設、設備、プログラム等を優先的に利用できる。第9条
手数料の減免認定を受けた品種の出願料および登録料(第1年~第6年)が軽減または免除される。第10条
農地法の特例認定生産計画に基づく農業用施設の整備において、農地転用許可(農地法第4条・第5条)があったとみなされる。第18条
農業振興地域の特例協議会への参加や、農業振興地域整備計画の変更要請が可能となる。第19条、第27条

強制力および義務
本法案では、認定を受けた事業者や地域関係者に対し、一定の義務や強制力が生じる仕組みが導入されている。

・報告義務と罰則: 認定事業者は、実施状況について農林水産大臣等へ報告する義務がある(第30条)。
  報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、30万円以下の罰金に処される(第32条)。
・育成者権者の努力義務: 認定を受けて品種登録を行った育成者権者は、広域な普及を妨げないよう、利用料(ライセンス料)を著しく高額に設定しない等の努力義務を負う(第11条)。
・栽培管理に関する協定(承継効): 実効性のある生産団地を形成するため、農用地所有者等の全員の合意により「協定」を締結できる。
  この協定は、公告後にその土地の所有者となった者(第三者)に対しても効力が及ぶ(第20条、第24条)。

罰則
・登録品種の名称使用義務(第22条)への違反 20万円以下の過料
・品種登録表示(第55条)の義務違反 10万円以下の過料

以下は、法律の内容をまとめた農林水産省の資料です。
重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律案の概要
※『第221回国会(令和8年 特別会)提出法律案:農林水産省』より引用

妄想が激しすぎるね

公的種苗事業の解体
 これまで日本は地方自治体が主軸となった地域に合った種苗開発が基本となってきた。日本を代表するコシヒカリも、ササニシキも地方自治体が育成したものだ。でも、育苗法案はそれを終わりにしてしまう。つまり、国が基本方針を定め、地域を問わない広域品種の育成が目標となり、それに沿った種苗を民間企業が行っていく。地方自治体も開発者として参加は可能なのだが、その役割は従属的なものになるだろう。

育苗法案が公的種苗事業を解体するそうです。
法案をどう読んだらそんな理解になるのでしょうね?

この法律は、重要品種のみを対象としており、それ以外の品種については言及していません。
そのため、都道府県固有の種苗開発は従来どおり実施できます。種苗開発に関する予算総額には限りがあるでしょうから、重要品種に予算を振り向ければ、それ以外の予算が減る可能性はあります。
だが、重要品種を都道府県ごとに個別開発する意味は薄く、共同で進めればその分の予算を抑えられ、他分野へ回せるという発想には至らないのでしょうか。
「国が基本方針を定め」という点は正しい。だが、重要品種育成事業計画を作成するのは民間企業・地方自治体・農研機構などであり、しかもそれは任意だ(以下条文参照)。
六条 重要品種育成事業を行おうとする研究機構、地方公共団体及び地方独立行政法人の試験研究機関、大学、民間企業その他の者・・・は、単独で又は共同して、・・・重要品種育成事業の実施に関する計画(以下「重要品種育成事業計画」という。)を作成し、農林水産大臣の認定を申請することができる。


インフラ提供は義務ではない

民間企業に地方自治体が持つ農業試験場などのインフラの提供が義務化される。
デタラメです。赤字の部分が間違っています。
農林水産大臣によって認定された民間企業等の研究機関が作成した重要品種育成事業計画に従って、農研機構のインフラを利用することができます。
「地方自治体」ではなく「農研機構」、「義務化」ではなく「可能」となる、というのが正しいです。
民間企業等が利用を求めたからといって、必ずしも使えるとは限らない。

長いですが、関係する部分を引用します。
(重要品種育成事業計画の認定)
第六条 重要品種育成事業を行おうとする研究機構、地方公共団体及び地方独立行政法人の試験研究機関、大学、民間企業その他の者(使用者等(種苗法第八条第一項に規定する使用者等をいう。以下この項及び次項第六号において同じ。)に該当する者については、職務育成品種(同条第一項に規定する職務育成品種をいう。以下同じ。)について契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ当該使用者等が同法第三条第一項第一号に規定する品種登録出願(以下「品種登録出願」という。)をすることを定めた上で、職務育成品種として重要品種となる品種の育成をしようとする者に限る。)は、単独で又は共同して、農林水産省令で定めるところにより、重要品種育成事業の実施に関する計画(以下「重要品種育成事業計画」という。)を作成し、農林水産大臣の認定を申請することができる。
この場合において、重要品種育成事業を行おうとする者が共同して重要品種育成事業計画を作成したときは、農林水産省令で定めるところにより、代表者を定め、これを農林水産大臣に提出しなければならない。
・・・
3 重要品種育成事業計画には、前項各号に掲げる事項のほか、次の各号に掲げる行為の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める事項を記載することができる。
ただし、
第三号に定める事項については、研究機構が単独で又は他の重要品種育成事業を行おうとする者と共同して当該重要品種育成事業計画を作成する場合には、記載することができない。
・・・
三 研究機構の保有する研究開発に係る施設、設備、機器、装置、プログラム(情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第二条第二項に規定するプログラムをいう。)及び土地のうち重要品種育成事業の促進に資するものとして農林水産省令で定めるもの(以下「研究開発設備等」という。)の利用当該研究開発設備等の種類その他の当該研究開発設備等の利用の内容及び期間に関する事項

(研究機構の研究開発設備等の供用及び協力に係る業務)
第九条 第六条第三項第三号に定める事項が記載された重要品種育成事業計画について同条第一項の認定があったときは、研究機構は、研究開発設備等を認定重要品種育成事業者が当該認定に係る認定重要品種育成事業計画に従って行う同号に掲げる利用に供する業務を行うことができる。
2 研究機構は、認定重要品種育成事業者の依頼に応じて、前項に規定する業務の実施に関し専門家の派遣その他必要な協力の業務を行うことができる。
3 第六条第三項第三号に定める事項が記載された重要品種育成事業計画について同条第一項の認定があったときは、認定重要品種育成事業者は、当該認定に係る認定重要品種育成事業計画に従って研究開発設備等を利用することができる。

書いていないことを言うな

国が予算をつぎ込み、農研機構のAI・ゲノム解析インフラの無償提供など国や地方自治体のインフラが使われ、その利益は民間企業が独占できる。
先ほど引用した第九条を見れば分かるとおり、有償か無償かは法律では定められていない。勝手に話を盛らないでもらいたい。

「利益は民間企業が独占できる」という。だが、以下にあるように、普及の障害となるような価格(≒利益)はNGとされている。あくまでも努力義務なので罰則等はないが、それ以降の計画承認のハードルは高くなるでしょう。
(育成重要品種の育成者権者の育成重要品種の種苗の利用における努力義務)
第十一条 前条第三項の規定により品種登録出願がされた品種であって、品種登録を受けたもの(以下この育成者権が消滅するまでの間、当該育成重要品種の種苗の利用(その品種の種苗について行う種苗法第二条第五項第一号に掲げる行為をいう。)に対し受けるべき金銭の額を著しく高い額とすることその他の当該育成重要品種の種苗の広域の普及の妨げとなると認められる行為をしないよう努めなければならない。

公金で私物を作る、ということだ(今回の育苗新法案が農水省だけでなく、財務省の共同管轄になっていることにも注意)。
「デマ屋であることに注意」と言って差し上げましょう。
この法案に財務省は直接関係ありません。法案を見れば分かりますが、「財務」という言葉はどこにもありません。
令和8年4月3日(金)定例閣議案件 | 首相官邸』に「農林水産・財務省」とあるから、そのように言っているのでしょう。
他の法案を見ても、ほとんど関係のない話で財務省が出てきています。
財務省設置法』の第三条・第四条が絡んでいるだけです。こういうのを陰謀論というのでしょう。

デマ創造力にあきれるばかり

地方自治体の服従と農地の接収
 種子条例や農地保護の権限が国の上位法によって無効化され、市町村は企業の計画に合わせて地域の農業計画を変更する義務を負わされる。地方自治体の農地保護権限が事実上奪われる。国の認定を受けた企業が『種苗工場』を建てたいと言えば、市町村は地元の優良農地をコンクリートで固める(農地転用)ことを拒めなくなる。これはタネの収奪であると同時に、土地の収奪でもある。
よくもまあ、こんなデタラメな話を思いつくものだと感心します。
第二節 重要品種種苗生産事業活動計画に係る措置」の第十二条〜第二十七条に関することなので、その条文を引用して解説します。

「市町村は企業の計画に合わせて地域の農業計画を変更する義務を負わされる」は、主従が逆です。
都道府県は、国の基本方針に基づき都道府県基本計画を作成します(第十二条。基本方針の策定は国の義務だが、都道府県基本計画の策定は義務ではない)。
(重要品種種苗生産事業活動計画の認定)
第十六条 同意都道府県基本計画における実施区域において重要品種種苗生産事業活動を行おうとする農業者、農業に関する団体その他の者は、単独で又は共同して、農林水産省令で定めるところにより、重要品種種苗生産事業活動の実施に関する計画(以下「重要品種種苗生産事業活動計画」という。)を作成し、当該実施区域を管轄する都道府県知事の認定を申請することができる
・・・
4 都道府県知事は、第一項の規定による申請があった場合において、その申請に係る重要品種種苗生産事業活動計画が次の各号のいずれにも適合すると認めるときは、その認定をするものとする。
 一 同意都道府県基本計画に適合するものであり、かつ、当該重要品種種苗生産事業活動計画に係る重要品種種苗生産事業活動が確実に実施されると見込まれるものであること。
企業などが、重要品種種苗生産事業活動計画を作成して申請することができる。
申請されたものが都道府県基本計画に適合するならば認定される。
このような内容であり、企業の都合で地方自治体が何かをする義務はなく、企業等にも任意であり、計画を立てる義務はない。

「土地の収奪でもある」というのもデタラメです。
農地転用の特例(みなし許可)に関することですが解説します。条文があちこちに飛んで分かりにくいのは確かですが、お付き合いください。
第十八条で、みなし許可のことが書かれています。
(農地法の特例)
第十八条 認定重要品種種苗生産事業活動実施者が認定重要品種種苗生産事業活動計画(第十六条第三項第一号に掲げる事項が記載されているものに限る。次項において同じ。)に従って同号の農業用施設の用に供することを目的として農地を農地以外のものにする場合には、農地法第四条第一項の許可があったものとみなす。
2 認定重要品種種苗生産事業活動実施者が認定重要品種種苗生産事業活動計画に従って第十六条第三項第一号の農業用施設の用に供することを目的として農用地を農用地以外のものにするため当該農用地について農地法第三条第一項本文に規定する権利を取得する場合には、同法第五条第一項の許可があったものとみなす。
農地法第四条、第五条というのは、(農地の転用の制限)(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)のことです。
このみなし許可は無条件で与えられるのではなく、第十六条第三項第一号にある「認定重要品種種苗生産事業活動計画に従って」いなければなりません。

そして、第十六条第4四項第二号で、みなし許可の条件が定められています。
二 当該重要品種種苗生産事業活動計画に前項第一号に掲げる事項(同号ロの土地が指定市町村(農地法第四条第一項に規定する指定市町村をいう。以下同じ。)の区域以外の区域内にある農地であり、同号の農業用施設の用に供することを目的として、農地である当該土地を農地以外のものにするに当たり、同条第一項の許可を受けなければならないものに係るものに限る。)が記載されている場合には、同条第六項の規定により同条第一項の許可をすることができない場合に該当しないこと。
農地法第四条第六項の転用を許可してはならない基準に該当する場合は、農地転用はできない。
一言でまとめると、別々に許可をもらう必要がなくなるワンストップサービスになるだけで、農地法の制限を緩めているわけでもなく、何かを強制するものでもない。

ということで、「地方自治体の服従と農地の接収~土地の収奪でもある。」は、全てがデタラメだということです。

恥ずかしいねぇ

そして、開発方法はスマート育種。AI育種と「ゲノム編集」、重イオンビームなどになっていくだろう。実は従来の品種改良手法は日本は世界でも屈指の技術力を持っていたが、この転換によって、それが失われてしまおうとしている。
AI育種が何なのか分かっていないのでしょうね。
各種分析を効率化するのにAIを使うだけで、実際に育種へ用いる技術は既存のもの(交配・選抜・ゲノム編集・重イオンビームなど)であり、その既存技術が失われるわけではない。
※『広報誌「NARO」| 農研機構』参照

己の主張の一貫性くらいは担保したら?

巨額の公金を費やして、果たしてそれが成功するかというと、まったく疑問だ。・・・もしタネで失敗したら、社会は生存が危うくなる。ここにこの法案の最大のリスクがある。
矛盾の塊ですね。
先ほどは、重要品種の「利益は民間企業が独占できる」と言っていたのだから、成功する前提なのですよね?
気候変動に対応した重要品種の開発を促進しようとするのがこの法律ですが、それがリスクだとするのなら、何もしない方がリスクが低いということですか?

アホすぎる。

種苗法改正に関すること

改正内容

種苗法「新旧対照条文」。
以下は、改正内容をまとめた農林水産省の資料です。
種苗法の一部を改正する法律案の概要
※『第221回国会(令和8年 特別会)提出法律案:農林水産省』より引用

R8種苗法改正デマ

 さらに深刻なのは、農民のタネの権利は一切無視されているということだ。この2法案にはタネの開発者(育成者)の権利だけが考慮される。そして、その独占権は世界に類のない35年(樹木40年)という長さに延長される。世界で反対の声が集まるUPOVではこれは20年であることを考えればその異常さがわかるだろう。国連のさまざまな国際条約や宣言で規定されている農民の権利には一切何の配慮もない極端に偏った法案になってしまっている。さらに戦略的海外ライセンスによって、海外の農民にも生産団体などを通じたさらなる強い管理を及ぼそうとしている。
 タネは人権の基礎である。タネを失えば人は生きていけないからだ。そのタネの権利を一切否定した法案が成立したら、日本の民主主義はもはや存立しえなくなる。
「農民のタネの権利は一切無視されている」そうですよ。
品種登録迅速化総合電子化システム』で、出願公表日が2025年で、取り下げされていないものをカウントすると524件あります。
このうち、日本人個人名と思しきものは47件(品種は62件)あります。
この個人名の方の多くは農民だと思われます。農民の権利の話でもあるのです。
種苗の権利が保障されず、誰が開発してくれると思っているのでしょうね?

もう一カ所の赤字の「さらに戦略的海外ライセンス~なる強い管理を及ぼそうとしている。」ですが、法律案の概要を見れば分かるとおり、そのような改正はありません。
似たような話はどこかで話題に挙がっていたような気もしますが、条文をまともに読んでいないのでしょうね。

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