ALPS処理水:濃度だけではなく総量も大事って本当?

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バスクリンで有名になった、選挙ウォッチャーちだい氏(「陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点」という本の著者の一人)。

なぜ福島第一原発の汚染水の海洋放出が問題なのかの解説 - YouTube

ちだい氏は菊池誠氏と対談しました。
それにもかかわらず、次のように濃度だけではダメで総量も見ないとダメだと言っています。
「海の体積:ALPS処理水の総量」と「風呂:バスクリンの量」を感覚的にも理解できないからこのようなことを言っているのでしょう。

バスクリンについてはいったん無視して、彼の主張が妥当か見ていきましょう。
①ALPS処理水として放出される放射能量を求める
②その量と福島第一原発事故時の影響と比較する

①ALPS処理水として放出される放射能量を求める

ALPS処理水等の低減状況 | 東京電力』の数字を使います。

2023年8月23日~2026年5月7日で、新たに 59,202 m³ 増えているので、一日あたりに換算すると 59.9 m³ となります。
放出前の量は 1,336,502 m³。
廃炉にこれから200年かかると仮定すると(保守的にこうする。以下同様に保守的な数字を使う)、59.9 m³/day × 365.25 day/year × 200 year = 4,375,695 m³。
ALPS処理水の総量は 5,712,197 m³

ALPS処理水は総告示濃度限度比総和1未満(詳細は『環境省_放射性物質を環境へ放出する場合の規制基準』参照)で放出されます。
計算を簡単にするため、総告示濃度限度比総和1、全量がCs-137とします。
Cs-137の告示濃度限度は 90 Bq/L なので、5,712,197 m³ × 1000 L/m³ × 90 Bq/L = 514,097,730,000 Bq = 514 GBq = 0.514 TBq = 0.000514 PBq となります。

②その量と福島第一原発事故時の影響と比較する

2011年の福島第一原子力発電所の事故では、大気中および海洋にどのような放射性物質がどれくらい放出されたのですか。|根拠情報Q|JAEA』によると、福島第一原発事故時のCs-137の海洋放出量は、直接で3~6 PBq、間接で5~8 PBqとあります。
6 + 8 = 14 PBq と先の数字を比較してみましょう。

0.000514 PBq ÷ 14 PBq ≒ 0.004%

となります。

福島第一原発事故後の海産物で最も汚染されていたものとしては、福島第一原発の港湾内で 74万 Bq/kg、港湾外で 25,800 Bq/kg だと思われます。

単純比例で見積もると、

港湾内:74万 Bq/kg × 0.004% ≒ 27 Bq/kg
港湾外:25,800 Bq/kg × 0.004% ≒ 0.9 Bq/kg

となります。

上記はかなり単純化した仮定による、簡易的な上限見積もりです。

超保守的な数字を使ってきたので、もう少し現実的な条件も考えてみましょう。

今後200年+放出開始から約3年にわたって少しずつ放出するので、0.000514 PBq という数値は過大評価気味です。
毎年均等に放出したとすると、200年後が最も高い残存量になります。
Cs-137 の半減期は30.17年なので、例えば2023年に放出したものは、200年後には元の約1%になります。
均等放出を仮定すると、200年後の残存量は 0.000514 PBq の約21%で、約 0.00011 PBq になります。
実際には寄与率が最も高いのは半減期が長いI-129のため、そこまでは減らない。
 なお、I-129は海藻で濃縮されるがずっと不検出(ALPS処理水海洋放出における海域の環境放射能測定結果(令和7年度(2025年度)第3四半期))。

総告示濃度限度比総和1で計算していますが、『放出実績 | 東京電力』を見ると、最も高いのは2023年度4回目の0.34で、最も低いのは2024年度の0.076であり、1よりかなり低い数字で運用されています。
仮に全て0.34で放出するとすると、

0.00011 PBq × 0.34 ≒ 0.000037 PBq

となります。

これは最初に求めた 0.000514 PBq の約7%です。
海産物の最大値も再計算すると、

港湾内:27 Bq/kg × 7% ≒ 1.9 Bq/kg
港湾外:0.9 Bq/kg × 7% ≒ 0.06 Bq/kg

となります。

食品の基準値は 100 Bq/kg なので十分低い値ですし、事故前の測定結果を『環境放射能・放射線データベース』で見ると、0.06 Bq/kg を上回る値は普通に存在します。

さらに、長期間にわたる放出であるため、事故時よりも海流による希釈が効きますが、それを無視しても上記の結果です。
そもそも、上記は「最大値」の単純推定であり、平均値ではありません。
実際のモニタリング結果については、東京電力のモニタリング結果を参照してください。

以上から、総告示濃度限度比総和1未満であれば、総量は影響評価上無視できることになります。

2026/05/25追記

次のポストがありムカついたので対応します。

「典型的な詭弁」とだけ書いてその根拠を示さないこの人はどんな人間かGrokに聞いて見ると、他の核種の生物濃縮を問題にしているようだ。
低濃度であれば問題ないのだが見ていきましょう。

よく言及されるC-14、I-129、Sr-90、Pu-239を検討していきます。

C-14

事故時のC-14の海洋放出量は試算されていないので、Cs-137と同じようには比較できません。

福島第一原発から10km圏内に放出したものが留まるという超ありえない想定で計算しましょう。
令和 3年度福島県近沿岸海域等における放射性物質等の状況調査』を見ると平均水深が15mほどなので、海水は次の量あります。

1/2× π × 10,000 × 10,000 × 15 = 2,356,194,491 m³

Q&A | 東京電力』によると、タンクの中の最大値は215 Bq/L(平均は42.4 Bq/L)とのことなので、これを使います。

5,712,197 m³ × 215 Bq/L ÷ (5,712,197 m³ + 2,356,194,491 m³)= 0.52 Bq/L

放出前の海水中と魚のC-14は『環境省のモニタリング実施状況』によると、
0.005 Bq/L、24 Bq/kg
のため、4800倍に濃縮されることになります。

0.52 Bq/L × 4800 ≒ 2496 Bq/kg

C-14の食品中の基準値は無く、コーデックス委員会のガイドラインでは1000 Bq/kgとあり、その2.5倍となります。

タンクの最大値ではなく平均値を使うと492 Bq/kgですし、最大値を使ったとしても10年後は160 Bq/kgです。

10km圏内に留まるという超ありえない前提を、20km(水深は15mのまま)というありえない前提にすると1/4(距離の二乗に反比例する)の624 Bq/kgとなります。

C-14においてもCs-137と同じ結論になりました。

I-129

ALPS処理水の最大濃度が2.2 Bq/LなどでC-14と同じ10kmに留まるとすると、0.0053 Bq/Lになります。

I-129の海藻に対する濃縮係数(CF)は10,000のため(こちら参照)、53 Bq/kgとなります。
コーデックス委員会のガイドラインでは100 Bq/kgのため、これも問題ありません。

Sr-90

福島第一原発港湾から流出した放射性ストロンチウム90Sr(89Sr)量の経時変化の推定』によると、事故による海洋放出量は0.04 PBqとのこと。
Sr-90の告示濃度は30 Bq/Lであり、Cs-137と同様の計算をすると、0.000171 PBqとなります。

全てがSr-90で、総告示濃度限度比総和1としても、事故時の0.43%が排出されることになります。
事故の放出量に比べれば誤差のレベルであり問題ありません。

Pu-239

事故時の海洋放出量が不明のため、放出するALPS処理水の最大値を見ようとしても、ND(検出限界値の0.025 Bq/L未満)なのです。
0.025 Bq/Lだとして、C-14と同様の計算をすると、0.000060 Bq/L。
海藻の濃縮係数は10000のため、0.6 Bq/kg。
コーデックス委員会のガイドラインでは1 Bq/kgのため、これも問題ありません。

上記から、槍玉にあがる核種について、あり得ない想定で総量を見てみましたが、問題ないということになりました。

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