川辺川ダムがあったら球磨川は氾濫しなかったか?その2

球磨郡球磨村渡で川辺川ダムがあったら氾濫しなかったかどうか計算してみました。

その1では、2020/07/04の大雨で球磨川の人吉水位観測で川辺川ダムがあったら氾濫を防げたかどうか計算してみました。
人吉市より下流で狭隘部の球磨郡球磨村渡を対象にします。
「狭隘部=川幅が狭い=水位が上がりやすい」ので、人吉市内より影響を受けやすいだろうことは、計算する前から想像されます。

川辺川:四浦水位観測 ・・・川辺川ダムが作られる予定だった場所の近く
球磨川:人吉水位観測
球磨川:渡水位観測
上記の3つで比較しながら、渡水位観測でどうなったのか見ていきます。



計算の元ネタ

3つの水位観測所の位置関係は以下の通りで、上流から四浦、人吉、渡となっています。
球磨川上流水位観測所位置図
※国土交通省の水位・流量観測所位置図より引用し、赤丸マーク追加しています

今回と同等の水位になったことはないため直接比較では出来ませんが、2018年7月7日にそれなりの水量が発生しているので、それをベース考えます。
以下、2018年7月7日の水位グラフです。
2018/07/07の球磨川・川辺川の水位グラフ
※グラフの詳細は、こちら参照。
2018年1月1日の四浦の水位をスタート点として、3か所のグラフを重ねています。
このグラフからも、渡がやばい感じのカーブになっていることがわかります。

以下、2018年7月4日の水位グラフです。
2020/07/04の球磨川・川辺川の水位グラフ
人吉・渡は7月4日の8時から欠測(1時間単位のグラフなので、実際は7時40分から)となり、人吉は7月5日18時に復活しています。

算出結果

以下が算出結果です。
2020/07/04の球磨川・川辺川水位・水量
※HQ式(水位流量曲線)定数というのは「水量 = a × (水位 + b)2」の定数部分です。
 この定数は、2018の豊水位かつ水位上昇時のデータから算出しています。
※背景黄色のは、計算から導かれたものです。それ以外は実測値です。
※人吉・渡のピーク水量は、四浦の2018年7月7日⇒2018年7月4日での増加比(2.25倍)から算出。
 人吉・渡のピーク水位は、その水量からHQ式で算出。
※氾濫直前水位は欠測直前の水位で、氾濫直前水量はその水位からHQ式で算出
※氾濫後増加水量=2020/07/04ピーク水量-氾濫直前水量

渡水位観測所の氾濫後増加水量:4,455.73(m3/sec) > 四浦水位観測のピーク水量:3,480.26(m3/sec)

このことから、川辺川ダムがあって四浦水位観測からの水量(流量)がゼロになったとしても渡水位観測所では氾濫していただろうことが推察されます。

この記事へのコメント

考えるヒントをありがとう
2020年09月03日 13:46
こちらにも続編の記事があったのですね。

7月10日の時点で、川辺川ダムがあったら、人吉周辺に被害は出るが被害は幾分減少できるであろう。但し、中下流域のあたりの被害軽減には役に立っていないであろうとの推論をある程度のデータ付きで出せてるのはスゴイですね。

私もいろいろな情報から感覚的に、ダムがあっても氾濫は防げなかったが、人吉の被害は減ったかも、ぐらいはあったのですが。